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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(130)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

宗俊の納骨を済ませ、元子(原日出子)たちが帰宅する。トシ江(宮本信子)は、法事が滞りなく済んだのも、彦三(森三平太)や善吉(小松政夫)が宗俊急逝のあと年納めの仕事に精を出してくれたおかげと感謝する。そこへ見覚えのある男が訪ねてくる。元子の最初の子を死産で亡くす原因となった男・草加(冷泉公裕)だった。藤井(赤塚真人)と善吉はいきり立ち、怒鳴りつけて追い返そうとするが、元子は草加を受け入れる…。

吉宗 處物染御

 

宗俊、四十九日の納骨を済ませたのは師走に入ってのことでした。

 

都合により

 本日休業

 

の貼り紙が店のガラス戸に貼ってある。

 

順平「ただいま」

キン「お帰りなさいまし。まあ、ご苦労さまでございました。お寒かったでしょう、今日は特別ね」

トシ江「白いものが落ちてきそうな天気だわね」

キン「おこた、あったかく用意してございますから。あっ、大介坊ちゃんたちは?」

巳代子「うん、弘美や道子ちゃんと私んち寄った」

キン「さいですか、それで皆さん…」

正道「ええ、もう秀美堂さんたち、そこで別れましたしね、洋三叔父さんは、お寺さんからまっすぐお帰りになりましたよ」

キン「さいですか、ハハハハ…」

 

巳代子「それじゃ、お姉ちゃん、私、着替えてすぐ来るから」

元子「うん」

 

桂木家茶の間

キン「すぐお茶をおいれいたしますから。それともあの一本おつけいたしましょうか?」

正道「いえ、もうみんなね、向こうで十分頂いてきましたから」

キン「さいですか」

 

順平「じゃあ、僕はちょっと着替えてくるから」

福代「はい」

 

仏壇に手を合わせるトシ江を見ている元子、正道、藤井。

トシ江「今日は皆さん、寒いとこ本当にありがとう存じました」

正道「どうもお疲れさまでした」

藤井「しかし、お骨を納めてしまうと、またさみしいもんですねえ」

トシ江「ええ…でもまあ、いつまでもいてもらうわけにはいかないしねえ」

彦造「へえ…本当に結構な法事でした」

 

トシ江「彦さんや善さんのおかげですよ。年内納めの仕事の最中にぽっくり逝ってしまったんだもの。あんたたちが精出してくれなかったら、お父さんも安心して、お墓には入れなかったと思います」

彦造「まあ、とんでもねえ…。順平若旦那が弔い合戦のつもりでやり抜こう、そう言ってくれなすったからですよ」

善吉「旦那への恩返しは、これしかありやせんからね」

トシ江「ありがとう…本当にありがとう」

 

戸が開く音

⚟男「ごめんくださいまし」

 

元子「はい」

 

戸の前に隠れるように立っていたのは草加

元子「まあ、草加さん…」

 

茶の間

藤井「草加?」

善吉「草加って、まさか、あの草加…?」

 

吉宗

草加「どうもあの節は大変ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。今更こうしてお伺いできる筋合いじゃないんでございますが」

元子「いいんですよ、草加さん。お父さんのために線香をあげに来てくだすったんでしょう」

草加「はい」

元子「だったら、どうぞ。ねっ」

草加「奥さん」

 

善吉「あ~、やっぱりこいつだ。そうはいかねえんだ、この野郎!」

藤井「どういうつもりで来たか知らんがな、君が今更このうちに来られた義理じゃないだろう!」

正道「ちょっ…ちょっと待ちなさい」

善吉「帰(けえ)れ帰れ! この野郎。今日はな、旦那の四十九日だ。てめえみたいな野郎には、このうちの敷居またがすわけにはいかねえんだ」

正道「そういうわけだ、草加さん。また日を改めて出直してくれないかな」

藤井「いいえ、お義兄(にい)さん、この男は亡くなったお義父(とう)さんにも恩をあだで返した男なんですよ。二度と顔を見せるな!」

 

元子「けど、お葬式の時だって、ちゃんと見送りに来てくだすったんですよ」

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善吉「この男がですかい…」

元子「ええ」

正道「そうだったんですか…。それは、どうもありがとうございました」

藤井「お義兄さん!」

 

トシ江「上がってくださいな、草加さん」

キン「おかみさん」

トシ江「いいんだよ。元子、上がっておもらい」

元子「はい。さあ、どうぞ」

 

宗俊の写真の前に香典を供え、手を合わせる草加

 

この草加とは、元子の最初の子を死産で亡くす原因となったあの復員兵でした。

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草加「本当にありがとうございました」

 

頭を下げる藤井、順平、正道、元子、トシ江。

トシ江「よく分かったわね」

草加「はい。店で旦那とちょいちょい一緒になるお客が教えてくれました」

正道「店っていいますと?」

草加「ええ、浅草の方で板前2人置いて小さなすし屋をやっております」

トシ江「おとうさんがあなたのお店へ?」

草加「ええ。10年ほどになりますか、あれからいろいろやりまして、どうにかこうにか小さな店を持つことができました。けど、こちらさんの敷居が高くて水天宮様にお参りの時に帰りによくこのお店の前を通らせてもらいました。その時、ばったり旦那と」

正道「会ったんですか?」

草加「はい。大原さんは松江の方でお暮らしだとか。あのあと、お子さんに恵まれたから心配することはないとおっしゃってくださいました」

 

トシ江「そう…おとうさん、そんなこと…」

草加「へえ。浅草へ来るたんびに私どもの店へ寄ってくれまして…。1年ほど前から、お酒はお医者に止められてると聞いてましたんで、私も心配していたんですが…。本当に長い間、申し訳ありませんでした」

元子「本当によく来てくださいました、草加さん。お父さんもきっと喜んでると思います。ねえ、お母さん」

トシ江「ああ、そうだとも。ねえ、草加さん、あなたは正大を連れて帰ってきてくれたんだもの。ね。そう思うからこそ、おとうさん、きっとね…」

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草加「はい…」

 

雪がちらつく外。

 

明けて昭和41年。元子一家は松飾りをせずに正月を過ごし、寒さの厳しくなる中で、やがて2月を迎えようとしていました。

 

大原家茶の間

靴下をはいている正道。

元子「松本っていったら雪が多いんでしょうね」

正道「うん、僕も初めてだからな、よく分からんけどね」

元子「そんな雪ん中歩いて足を折ったとこが痛んだら困るのに」

正道「大丈夫だよ。ちゃんと用心していくから」

元子「それにしても急な話ねえ」

正道「ん? いや、見学したいってのはね、前から申し込んであったんだけども、向こうがいいっていう時に行かないとな、いいもの見るチャンスなくすからね」

 

元子「で、お帰りは?」

正道「うん、着くのは夜だから2泊になるかな。まあ、向こうの様子次第で電話するよ」

元子「じゃあ、あの、毛糸の下着入れておきましたから、くれぐれも冷やさないようにしてくださいよ」

正道「ハッ…大丈夫だよ。それより大介にな、風邪ひくなって言っといてくれよ。何せ受験前なんだからね」

元子「はい」

正道「僕が訪ねる人はね、ほら、先月号の住宅雑誌、あれに載った僕の椅子にね、関心示してくれてるんだけども、民芸家具にね、長いこと興味を持っていてね、自費でヨーロッパの古い家具をかなり集めてるんだよ」

元子「ええ」

正道「それもね、単にマニアとして集めてるだけじゃなくて、それこそ、200年前の農家の椅子とか教会のテーブルを実際の生活の中で使ってんだな。それをやっぱりこの手で触ってきたいし、ちゃんと見てきたいんだよ。何しろな、日本の洋家具は、まだまだ歴史が浅いからな」

元子「分かりました。けど、くれぐれも凍った道を歩いて転んだりなさったら嫌ですよ」

 

正道「ん? ハハ…君もだんだんお義母(かあ)さんに似てきたな」

元子「何が?」

正道「え、苦労性のところがさ」

元子「そういうあなたこそ河内山に似てきましたよ」

正道「えっ、僕がかい?」

元子「ええ。思い立ったら何が何でも行きたいってとこ」

正道「そうかなあ」

元子「そうですよ」

正道「しかしね…」

元子「いいえ。ほら、汽車の時間に遅れますよ」

正道「あっ、いけないいけない」

元子「はい。かばん、かばん…」

 

大原家

門を出たところ

トシ江「あっ、おや…」

正道「ああ、お義母さん」

トシ江「こんにちは。まあ、お出かけ?」

正道「ええ、ちょっと松本へ」

トシ江「まあ、気ぃ付けてね」

正道「はい。お義母さんもゆっくりしてってくださいね」

トシ江「どうもありがとう」

正道「それじゃ、行ってきます」

元子「行ってらっしゃい。気を付けてね」

正道「はいはい」路地を走っていく。

 

トシ江「松本といったら長野でしょう」

元子「ええ」

トシ江「寒いとこなのに足大丈夫なのかねえ」

元子「さんざん言ったんだけど、大丈夫なんだって」

トシ江「初めて入院した時のことを思えばね、うそみたいに元気だわ」

元子「さあ、とにかく上がって」

トシ江「ああ」

元子「寒いから」

 

大原家ダイニング

寿司折を開ける元子。「まあ…それじゃ、草加さんの店、行ったの」

トシ江「ああ。場所もいいし、なかなかのお店でね、結構はやってるようだったわよ」

元子「けど、またどうして?」

トシ江「だって、過分にお香典も頂いたし、そのお返ししがてらね、どんなふうかなと思ってさ」

元子「お父さんが座ったのとおんなじカウンターの椅子に座ってみたい。そういう思いがあったってわけね」

トシ江「ねえ、そういうの、小説風っていうのかしらねえ」

元子「ん…文学的って言ってほしかったわ」

 

トシ江「まあ…。まあ、うち空けなければ、そういうのも女の商売として悪かないんだけどね」

元子「大丈夫よ。大介の入試までは、うちでやれる仕事しかとってないんだから」

トシ江「あっ、そうそう、驚いたことにね、大介、草加さんのお店、行ってたのよ」

元子「えっ?」

トシ江「まあ、大介の方は何にも分かっちゃいないんだけど、おとうさんがね、ちょくちょく連れてったみたい。初めてのあの子のことね、とっても気にしてた」

元子「うん…」

トシ江「まあ、そんなこともあってさ、おとうさん、大介を見せに連れてったんだろうね」

 

元子「フフ…」

トシ江「何よ」

元子「えっ? 私ね、お父さん、脅かしたことがあるのよ」

トシ江「えっ?」

元子「お通夜の席にね、見たこともない妹や弟に来られても困るから、すねに傷があるんだったら、今のうちキリキリと白状しちまいなさいって」

トシ江「まあ…」

元子「どんな天一坊が現れるかって仏さんには悪いけど、実は半分ぐらいは心配してたのよね。けど、そのかわりに現れたのが草加さんだった」

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トシ江「うん…」

元子「死んだ子の年は数えるな。お父さんによくそう言って叱られたけど、お父さん、お父さんのやり方で供養してくれてたのね」

トシ江「ああ」涙を拭く。

元子「お母さんも現れたのが草加さんでよかったわね」

トシ江「何言ってんのよ」

 

大原家玄関

元子「あっ、どうもご苦労さまでした」

郵便配達員「はい、どうも」

 

郵便配達員…金子一郎さん。80年代の大河ドラマ3作品に出演。

 

元子「まあ、松江のおばあちゃま…」

 

大原家ダイニング

波津の手紙を読む元子。「『今は一年で一番寒い時ですが、大介殿にも高校受験を目の前に控え、毎晩遅くまでお勉強のことと存じます。東京には悪い風邪もはやっているとか。くれぐれも体には気を付けていただきたく、邦世さんともども綿入れを作りました。本日送りましたので勉強の時など着ていただければ幸いと存じます』」

 

松江

書を書く波津。「正道殿にも新しい仕事に精を出している様子にて安堵しております。あなた様にも人形町のお父上様亡きあと何かとお寂しいことと存じますが、ますますよい仕事にご精進くださいますよう、はるか松江の地より毎日祈っております」

 

方言指導…青砥洋さん

     藤山律子さん

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波津役の原泉さんは松江の出身なのに、方言指導がいるのね。青砥さんは以前、正道の親戚としても出演。藤山さんは女優として数々のドラマに出演してるけど、徳島出身なので、福代さんの方言指導かな? 

 

大原家ダイニング

大介「やっぱり、ひいばあは字が上手だねえ」

道子「だけど、お母さんに読んでもらわなければ道子には何だか分かんないな」

大介「しょうがないだろ、お習字の先生なんだから」

道子「あっ、そうか」

元子「けど、お母さん読んであげたんだから、お返事は自分たちで書けるでしょう」

道子「うん」

大介「じゃあ、道子、出しておけよな。お兄ちゃんの返事は合格通知で応えますからって」

元子「ずるいの。それはそれでしょう」

大介「けどさ、こんなのを縫ってくれたんだから絶対合格しなくちゃね」

元子「そうよ」

大介「だったらさ、今夜の夜食、張り込んでよね」

元子「まあ、おすしごちそうになったくせに」

大介「それはそれ。じゃ、勉強してきます」

元子「頑張って」

大介「はい」綿入れを着て出ていく。

 

道子「これ、とってもあったかい」

元子「そう、よかったわね」

道子「うん」部屋を出ていく。

 

大介が高校入試に合格したら一度、みんなで松江に帰ってこようか、元子はふとそんなことを思っていました。

 

つづく

 

草加のこと、よく許せたな。でも、あれは藤井や善吉と徹底的に相性が悪かったというのもあったからなあ。あの時期、腰を痛めていた彦さんはほとんど出てなかったもんね。彦さんがいたらまた違ったかも。寿司屋修業はちゃんとできたんだから。