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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(16)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

様々な物資が足りなくなる中、芸者の金太郎(木の実ナナ)が白米を持って桂木家に来た。兵器工場の慰問に行って芸を見せ、祝儀代わりにもらったという。末っ子の順平(吉田紀人)に腹いっぱいギンシャリを食べさせたくて、と言う金太郎にトシ江(宮本信子)は涙ぐみ頭を下げる。宗俊(津川雅彦)は、金太郎を守るべき自分が、米をもらって食っている情けなさを嘆く。元子(原日出子)は、父と金太郎の微妙な関係を作文に書くが…。

空襲警報が鳴っている。

防空頭巾をかぶって階段(地下?)に避難している元子たち。

恭子「モンテーニュの原書といったらやっぱりフランス語でしょう」

良男「ということは、やっぱり仏領インドシナ辺りじゃないかなあ」

元子「でも、知り合いの将校さんが兄の部隊は満州へ行ったらしいって言ってるの」

のぼる「うん、満州だって大連や長春は、かなりの大都会だし原書を読もうっていうインテリだって結構いると思うわよ」

元子「すると、やっぱり満州に行ってるのよね。なまじ原書が手に入ったなんていうから迷っちゃうんだわ」

 

恭子「でも戦場でモンテーニュを読むなんて感動してしまう」

元子「私、その手紙が来て以来、ずっと考えてるんだけど兄は何かもっともっといろんなことを勉強したかったんじゃないのかなって…」

良男「僕もそう思う。勉強はできる時にしとかないとね」

トモ子「そうよ、桑原先生だって放送員たる者、常に学び、常に教養を高める心を持ちなさいっておっしゃったし」

のぼる「そうね、ここへ来るまでは何かと言えば進め一億火の玉だったけど、ここへ来て、もう少し広く情勢を読む目を開かせてもらったような気がするし」

元子「もしかしたら、今、日本中で一番身になる勉強をしてる学生というのは私たちなのかもしれないわね」

うなずく良男。

 

トモ子「だけど、これからどうなるのかしら」

元子「どうなるか分かんないけど、とにかく今は一日も早く放送員になること以外、考えたくないわ」

トモ子「それは私だって!」

のぼる「私だってそうよ」

 

空襲警報解除のサイレン

元子「あっ。よ~し、警報で遅れた勉強を取り返さなきゃ」

トモ子「そういうのを『一難去ってまた一難』っていうの」

光子「なぁして?」

トモ子「鬼のアクセント矯正特訓が待ってるもの」

光子「あ~、ハハハハ…」

トモ子「だけど、負けないからね、私は」

元子「頑張ろうね、我が戦友よ」

トモ子「お~!」

 

吉宗

友男「ひい、ふう、みい、よお…」

トシ江も手伝っている。

 

たばこの配給です。この11月から男子一日6本、隣組を通じての配給になり、また、紙不足で新聞も2ページということになりました。

 

友男「…ここの、とおと。はい、これで5日分、大将の分ね」

トシ江「ありがとうございました」

友男「数え直してね」

トシ江「数え直すなんて、そんな」

友男「その間に彦さんの分、数えんだからさ」

 

金太郎「こんちは」

トシ江「あっ、こんにちは。ゆうべ大丈夫でした?」

金太郎「うん、本当はね、ゆんべ持って寄りたかったんだけどさ、間に合わなかったのよ。はい、お土産」

トシ江「あら、これ…」

金太郎「重さがあるからお見通しですよ。お米。真っ白の銀シャリ

トシ江「まあ、あなた、そんな貴重なものを」

金太郎「大丈夫ですよ。ほんのあぶく銭…じゃなかった、あぶく米か、アハハ」

 

友男「何だい? そのあぶく米ってえのは」

金太郎「まあ『芸は身を助ける』と申しましょうか。社長さんに頼まれてね、三味線1丁に扇1本持って工員さんたちの慰問に行ったと思ってよ」

友男「思った、思った」

金太郎「ね。そしたら、まあ、みんな喜んでくれて帰りしなにね、炊事係の人が、これ、ほんの気持ちだけど、お礼なんだってくれたのが、このお米。だから、あぶく米でしょ」

トシ江「それにしたって」

友男「あるとこにはあるもんだねえ」

 

金太郎「兵器工場だから、まあ何かの時の特配があるんじゃないの? せっかくのお志だから遠慮なくちょうだいしてきたけどさ、ねえ、ちょいと少年団にドングリ拾(しろ)えって命令、あれ一体何よ」

友男「そうだ」

金太郎「そんなことで、まあ大事な少国民が立派に育つわけないじゃないか」

友男「全くだ、全くだ」

 

金太郎「だからね、この金太郎ねえさん、意地でも順平ちゃんには混じり物のない真っ白なごはんをもう一度でいいから食べさせたくってさ」

トシ江「ありがとう、金太郎ねえさん。本当にありがとう」涙を拭く。

金太郎「いや、ちょいと…嫌ですよ、そんな。お米の2升や3升でも吉宗さんのおかみさんともあろう人が…ちょっとつけとくれよ」配給品のタバコをくわえる。

友男「はい、よかったよな、ほらほら、そんなことで泣くことはねえんだ…」金太郎のタバコに火をつける。「ちょちょちょ待て…何だよ!」慌てて取り上げる。

金太郎「何だい、ケチ。こんなどっさりあるじゃないか」

友男「あるったって、これ、これは配給もんなんだぞ」

 

トシ江「あっ、そんな構いませんよ。子供たちにね、白いごはんを食べさせることができるんだったら、うちの人のたばこのね、1本や2本…さあさあ、さあ、どうぞどうぞ」

金太郎「駄目ですよ、旦那のをピンはねするわけにはまいりません。ねえ、中の湯さん」

友男「『ねえ、中の湯さん』じゃねえんだよ。俺は頭悪(わり)いからよ、勘定得意じゃねえんだ、な。こうやって配って回ってくると必ず数が足らなくなるんだよ。毎回、隣組長の俺としてはね、割食うことになってるんだよ」

金太郎「情けないねえ、いい年して何だい」

友男「ひと言多いんだよ、いい年が」

 

トシ江「だから配給もんは回り持ちの当番ってことにしましょうよ。いくら隣組長の中の湯さんだからって一人だけじゃ大変なんだし」

友男「さすがおかみさん、頭いいや。ハハハ…ねえ。いや、でもね…」タバコをくわえる。

金太郎「ちょいと」

友男「何だよ」

金太郎「それ、配給もんなんじゃないのかい?」

友男「俺の分がこん中に入ってるんだよ! いいじゃないかよ」

金太郎「まあ、どうもすいませんでしたよ」

トシ江の笑い声

 

茶の間

正大の写真の前に白いごはんを置く。

 

宗俊「ふ~ん、金太郎のやつがねえ」お茶わんに盛られたご飯を見る。

トシ江「ええ。でね、さんざ考えたんですよ。うれしいお米だから少しずつ足し米をしようか、それとも思い切って銀シャリにしてしまおうかってね。でも、思い切って銀シャリにした方がパッとありがたみが出ると思ったから」

元子「賛成。江戸っ子、思いっきりが肝心だもの」

宗俊「ケッ、聞いたふうな口ききやがって」

 

キン「けどねえ、私らまでお相伴させてもらっちゃ申し訳ないですよねえ」

彦造「そうだよ。金太郎さんだって順坊やに腹いっぺえ食わしてやりてえってね」

宗俊「ガタガタ言うんじゃねえ」

彦造「けど、旦那」

宗俊「彦さんもおキンさんも、な、トシ江のやつが一度だって、うちのもんと差ぁつけたことがあるかい」

キン「いえ、それは…」

宗俊「だったら文句を言わずに一緒に食いな。な? おめえ、そのかわりな、こういうご時世だ、芋の葉っぱの時も一緒だ」

彦造「へい、それはもう…」

 

トシ江、宗俊の優しさに感動。

 

元子「何よ、せっかく豪気に白いごはん目の前にしてしめっぽくなるなんて変よ」

トシ江「そうですよ。景気よくいきましょう、景気よく」

宗俊「違(ちげ)えねえ。よし、頂きます」

一同「頂きま~す!」

順平「あ~あ、俺、いつまでお預けさせられるのかと思って死にそうだった」

元子「いや~ね、犬じゃあるまいし、お預けだなんて」

巳代子「ううん、私ももう生唾だら~りと来そうだから目ぇつぶって待ってたの」

トシ江「ハハハハ…」

宗俊「うめえ!」

巳代子「おいしい」

 

うれしいですねえ。物のない時代だからこそ、みんなの心がこまやかになるのでしょうか。

 

元子「おいしい」

 

宗俊たちの部屋

布団に寝転んでキセルをふかしている宗俊。

元子「寝たばこは駄目だって言ったでしょ」

宗俊「ああ」

元子「お母さんがね、冷えてきたから、ふとん、薄いのを一枚出しましょうかって」

宗俊「ああ、近頃、めっきり冷えてきやがったよな。まだ11月に入(へえ)ったばかりだろ」

元子「栄養が足りないんじゃないのかな」

宗俊「そうかもしれねえが、今夜ばかりは、おめえ、そんなこと言っちゃバチが当たるぜ」

元子「そうよね。白いごはん3杯も食べちゃったんだもん。明日の作文は頑張らなきゃ」

宗俊「何だ、昨文か」

 

元子「うん、何しろ女子大での秀才ばっかりだからね」

宗俊「でもな」

元子「え?」

宗俊「おい。ちょいとはんてん取ってくれ」

元子「あっ、はい」

宗俊「おめえ、学問はねえけどよ、金太郎みてえな心のきれいなやつをバカにしちゃいけねえぞ」

元子「それはもう」

宗俊「ああいうのをな、本当にいい女ってんだよな」

元子「現金なんだから。お米もらわなくたって知ってたわよ、昔っから」

宗俊「バカ野郎! そんなこと言ってるんじゃねえや! 俺ぁ、情けねえんだよ」

元子「お父さん…」

 

宗俊「横町のよ、勇の字のやつに赤紙が来た時に俺はな、勇の字に手ぇついて金太郎のことを頼まれたんだ。俺ぁ、胸たたいて引き受けた。その引き受けた俺がだ、金太郎から米もらってんじゃ世話ねえじゃねえか。俺ぁ今晩、白い飯食いながらよ、勇の字に申し訳なくてすまなくってよ。しかし、あれだな、勇の字もいい女にほれたよな」

元子「うん」

宗俊「あん時な、金太郎が『うん』と言わなきゃ、勇の字のやつ大川に飛び込んで死ぬなんて血迷いやがってよ、『明治一代女』の花井お梅じゃあるまいし、そんなことされちゃ困るってんで、俺が勇の字に成り代わって、金太郎を夢中で口説いてさ…」

明治一代女

明治一代女

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元子「で、どうしたの?」

宗俊「ん? ああ、勇の字がお前、ガキの頃からの親友じゃなきゃ、俺がとっくに囲ってらぁ」

元子「まあ」

宗俊「はなっから金太郎はな、俺に気があったんだぜ」

元子「何よ、聞いてやれば、それが娘に話すことですか」部屋を出ていく。

宗俊「てやんでぇ。これがかかぁに話せることですかってんだ」

 

宗俊役の津川雅彦さんは白髪が多いせいか、勢いのいい話し方のせいか長門裕之さんに似てるなあと思う。他の作品だとそう思ったことはないんだけど。 

 

吉宗前の路地

植木に水やりしているトシ江。「おはようございます」

通行人・男「おはようございます」

 

巳代子・元子「行ってまいります!」

トシ江「行ってらっしゃい」

 

トシ江「おはようございます」

通行人・女「おはようございます」

 

研修室

黒板には「作文自由題」と書かれている。

桑原「では、今、提出した作文をこれから皆さんに一人一人朗読してもらいます」

一同「え~!」

桑原「ああ、はしたないですねえ。年頃の女性がどうしてそんな声を出すのですか?」

のぼる「いえ、作文だとおっしゃるから、私」

桑原「そうですよ。自由題で確かに作文を書いてもらいましたよ」

恭子「あの、だから、まさか、みんなの前で声を出して読むなんて、私、考えもしませんでしたので」

桑原「考えもしなかったから?」

恭子「え…いえ、別に」

 

元子「私、もう駄目です」

桑原「ほほう、何かまずいことでも書きましたか?」

元子「あ…いえ。正しいと思ったことを書いたんですけれど」

桑原「それなら何も心配はないでしょう」

元子「それがそうでないかも分かりませんし」

 

桑原「よろしい。では、まず桂木さんから読んでもらいます」

元子「先生!」

桑原「大丈夫。あなたが先頭を切れば、みんなも安心するでしょうし」

元子「それ、どういう意味ですか?」

桑原「え?」

元子「いえ…何でもありません」

桑原「では、どうぞ」

元子「はい」

 

手渡された作文を読み始める元子。「題『友について』桂木元子。男同士の友情と男女の愛とでは一体どちらが強いのであろう」

キャーキャー騒ぐ声。

桑原「お…皆さん、お静かに。続けなさい、桂木さん」

元子「はい。芳町の金太郎といえば人形町では知らぬ人(しと)はいないという芸ときっぷのよさで知られたおねえさんである。彼女の恋人は、父の幼なじみで私の父はその彼から彼女のことをいろいろと頼まれているらしいが、実は微妙な三角関係のようなものを私は感じることがある。だが、父には母という人がいるので正確には四角関係になるのだろうか」

頬を染めるトモ子。良男ももじもじ。

元子「とはいえ、この四角関係が醜いどころか、私たちの目にもほほ笑ましく見えるのは多分に関係者それぞれの人柄によるものと私には思われる。あけすけのくせに人見知りでやせ我慢を粋とする江戸っ子の美意識を土台に思ったことをポンポンと言うつきあいが、この四角関係をうれしいものにしている気がする。ポンポンという言葉は下町独特のぞんざいなものだが、本当のことを言おうとした場合、私には、やはり、この言葉でしか語ることができない気がする。その点で私もやはり一地方人なのであろう。

私には東北なまりのひどい一人の友人がいる。その人のなまりはうつると言われ、ひところ急に口が重くなって心配したのだが、もともとは明るく粘り強い人である。私は今日、私も一地方人としてその友人に私の心を伝えたい。

ちょいとお若いのなまりなんざ、くよくよするこたぁ、ちっともありゃあしねえよ。そもそもなまりなんてものぁ、キウリもみと酢のもんにするのが一番。これがまたおつな味でねえ。何が標(しょう)準語だってんだ、べらぼうめ! こちとら、お日(し)様ガシカシカ光(しか)ってんだよ。そんなにガタガタ言うんなら、はなっから地方出をとらなきゃいいもんをとっといてからなまりなまりとかつおの安売りじゃあるめえし、仙台娘は先々代からなまってるんだと日本放送協会に剣突(けんつく)食らわしてやるくれえの威勢がなくってどうするんだい。花の16期生にはお立合い、三井にあにさんには悪いけど、女でもってるんだよ、本当のところ。卒業するまで、もう少し、ここは歯ぁ食いしばってめでたく一緒に卒業といこうじゃないか、我が友よ」

トモ子は笑顔を見せ、のぼるや光子、恭子は拍手を送る。

トモ子「ガンコ!」

のぼる「頑張るのよ、ふれちゃん!」

トモ子「うん、ありがとう! 本当にありがとう! ありがとう! ありがとう!」

教室中から拍手。桑原先生も笑顔でうなずく。

 

女心と秋の空、変わりやすいといわれながら、このユニークなのがそろった16期生の友情は、このあとも少しも変わることはありませんでした。

 

つづく

 

明日あさ7時15分から第17・18回を放送とテロップ。

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

そう! 男女差別かもしれないけど男性の脚本家だとこういう視点がないというか、女性同士の友達は恋のライバルに描かれがちなのが気になった。「純ちゃんの応援歌」とか好きな作品なんだけど、静尾ちゃんって途中からフェードアウトしちゃうしさ。

 

明日は続けて2話。楽しみ。

 

「本日は晴天なり」の宗俊やってる津川雅彦さんを見た人に「岸辺のアルバム」の堀先生も見て欲しい~。すごいギャップある。落ち着いたトーンで闇抱えてるようにも見える37歳独身高校教師、髪は真っ黒オールバック。