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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(46)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

捕まえた泥棒少年は、東京大空襲で一家が全滅した知り合いの浜田屋の子供・吾郎(前田晃一)だった。ひとまず桂木家で暮らすことになった吾郎は、正道(鹿賀丈史)になつき、元子(原日出子)と好き合っていることを見抜く。幸之助(牧伸二)との間に子供がいない小芳(左時枝)は、トシ江(宮本信子)に吾郎をもらえないかと相談する。元子と正道の仲について、しだいにうわさがうわさを呼び、宗俊(津川雅彦)の耳にも入って…。

ちゃぶ台に桂木一家5人+正道+吾郎。雑炊を食べながらもジロジロと周囲をにらみつけている吾郎。黄色かったから卵かけごはんと思ったけど、おかわりもそのまま黄色かったからかぼちゃの雑炊かな。

 

宗俊「こら、子供がそんな目つきで人(しと)を見るんじゃない。ん?」

元子「そうよ。もう心配はいらないんだって、ゆうべおねえちゃんがちゃんと言ったでしょう」

無言でカラのごはん茶わんを差し出す吾郎。

トシ江「はいはい、こっちおよこし。うん」

 

キン「ちょいとおかみさん、この子、もう3杯目ですよ」

巳代子「いいじゃないの。私とお姉ちゃんが半分ずつにすれば」

彦造「育ち盛りが何言うんですか。あっしの分をどうぞ」

トシ江「大丈夫、余分に炊いてあるから。はいよ」

 

おかわりをもらってもじろじろ見るのをやめない吾郎。

順平「ほら、それをやめろとお父ちゃんが言ったんだ」

吾郎は順平をにらみつける。

元子「吾郎君」

吾郎、箸を置いて立ち上がる。

元子「ちょっと…」

 

正道「こら」

吾郎「放せよ! 放せ! 何…」

正道「ちょっと失礼します」

吾郎「放せよ」

正道は小学生男子を軽々小脇に抱え出て行く。

吾郎「放せったら!」

順平も追いかける。

吾郎「放せ! 放せよ!」

 

正道「さあ、こい!」

吾郎「よ~し、行くぞ! おらぁ~!」

正道「よっ…」

裏庭で吾郎、順平2人を相手に相撲を取る正道。

吾郎「くそぉ~!」

正道「おっ、来た、ハハ…。よっ、よっ…。さあ来い!」

吾郎「くそぉ~!」

トシ江も元子も微笑ましく見守る。

 

純ちゃんの応援歌」の昭と雄太みたいというつぶやきをいくつも見かけたけど、昭と雄太も秀平好きだったよね。体のでっかい若い男。

 

吾郎少年はこんなふうにして宗俊一家の子供になりました。

 

吉宗

元子「どうもありがとうございました。また、どうぞ」

 

小芳「こんにちは」

元子「あっ、いらっしゃい」

小芳「その後、あの子の話、どうなった?」

元子「うん、今日もね、千住の伯父さんってうちへ行ってきたんだけれど暮れが来るというのにひどい話なのよ」

小芳「引き取らないっていうの?」

 

トシ江「こう言っちゃおしまいなんだけどね何てたってまだ防空ごう暮らしなんだって。まあ、あの子にとっては、おっ母さんの姉さんの嫁ぎ先にあたるらしいんだけど、お年寄りもいて御多分に漏れず楽じゃないらしいのよ」

小芳「だからってね」

トシ江「しかたがないわよ。もうみんな自分たちの生活で精いっぱいなんだし、別にあの子のこと見捨てたわけじゃないんだろうけどね。まあ、悪さばかりされて頭ばっかり下げて歩いてちゃ、ついねぇ」

小芳「つい、何だっていうのさ」

元子「あの子の方も叱られるたんびに面白くないだろうし、まあ上野の方は親を亡くした子供がいっぱいいるから、ついその仲間に入ったんだろうけど。おんなじかっぱらいやるんでも生まれ育ったこの辺ってところが、もう私、かわいそうで。しばらく、うちで預かりますからって挨拶してきたの」

 

小芳「で、今、あの子は?」

トシ江「うん、プイッていなくなったかと思うとね、おとうさんたちの仕事を見に行ってるらしいんだよ」

小芳「学校はどうするの? ちゃんと行ってたとしたら5年生でしょう」

 

昭和20年に小学5年生の吾郎は昭和9年生まれ。その2つ下の順平は昭和11年生まれ。ほー、順平は「男はつらいよ」の寅さんと同じ年だね。寅さんって大昔の映画のような気がしてるから意外と若いよな、といつも思う。

 

元子「全部いっぺんにってわけにはいかないから、あの子が落ち着いたところを見計らってってことになってんの」

小芳「いいわ、そいじゃ、私、それやるわ」

トシ江「あんたが?」

小芳「うん、お宅だって忙しいし」

元子「おばさん」

 

小芳「ねえ、あの子、私にくれない?」

トシ江「小芳さん…」

小芳「ゆうべもうちのと話、したんだけどね、そしたら、自分で掛け合ってこいって。吉宗、口説けないようじゃ、この先、あの子供のおふくろなんかになれやしねえよって」

元子「ちょっと待ってよ、おばさん」

小芳「ううん。今までね、小なし夫婦で言われていながら一度として子供もらおうかなぁなんて考えたこともなかったんだよ。けどね、今度ばっかしはつくづく考えさせられたの。幸い、うちも焼けず、あの人も無事、復員してきたし、なのに親もうちも無くしてしまった子供一人、面倒見られないようじゃ、あんまりいい後生は送れないんじゃないかなって」

元子「でもね」

小芳「お願いしますよ。まあ、すっとこどっこいの夫婦でさ、親らしい親になれるかどうか分かんないんだけどさ」

トシ江「そんなこと急に言われたって」

小芳「分かってるよ。まあ、こんなこと言ったら悪いんだけどさ、あんたたちは順平ちゃんとは分け隔てなくしてることは知ってるよ。でもね、あの子にしてみれば、やっぱりひがみが生まれたってしょうがないことだし。情は移っているだろうけれども…。ねえ、あの子のためだと思ってお願いしますよ」

 

さて、その晩のことです。

 

茶の間

長火鉢の前に宗俊、こたつにはトシ江と正道。

宗俊「いや、俺もな、今日、秀美堂から同じこと口説かれたんだ」

トシ江「それであんた」

宗俊「うん? うん…」

トシ江「駄目ですよ。犬だ猫だって、あの夫婦、今までだって何匹もらってきちゃあ捨てたか分からないんですよ。今度は人間の子なんですから尻癖が悪いからって箱に入れて捨てるわけにはいかないんですから」

 

夫婦ともども動物を捨てる人たちなのかー…。

 

宗俊「そんなこたぁ分かってるよ」

トシ江「だったら」

宗俊「いやぁ、今度は大まじなんだよ」

トシ江「だから始末が悪いわよ」

宗俊「いや、大原さんはな、子供の気持ちも聞いてみるべきじゃねえかって、そう言うんだ」

トシ江「どうして?」

 

正道「はい、それが順序じゃないかと思いまして」

トシ江「駄目ですよ。そんなことしてごらんなさいな。せっかくなじんできたっていうのに、ああ、俺は邪魔者だったんだなって、そう、あの子がそう思うに決まってますよ」

正道「いや、それは話のしかただと思いますけど」

トシ江「え? どんな話のしかたなんです?」

宗俊「いや、つまりだな、秀美堂を親にしてやってくれねえかとか」

トシ江「冗談じゃないわよ。そんな器用な話し方、私にはできません」

宗俊「あ~、それは大丈夫(でえじょうぶ)だ。大原さんが話をしてくれるそうだ。ねえ?」

 

正道「は…はい。本当にあの子のことを考えたら今、情に流されずに、あの子のためを思ってやるべきだと思うんです。疎開から帰ってきたら恋しい親兄弟は、みんな死んで点にも地にもたった一人という思いをあの年で味わってるんです。だから何よりもはっきりと自分の家というものが必要なんじゃないですか」

宗俊「そうだろうなぁ。まあいくらこっちで順平と同じようにと思ってもよ、子供にとっちゃあ、お前、居候気分は抜けねえだろうよ」

トシ江「そりゃ、そうですけどね」

宗俊「まあ俺だって手放すのは情けないけどよ、こりゃ大原さんの言ってることの方がまっとうだと思うぜ」

 

トシ江「だったら大原さん言ってよ。大原さんの口からあの子に言ってちょうだいな」

正道「はい、承知しました」

トシ江「そのかわり、できるだけ、あの子の気持ちを傷つけないように、ね。そう言ってやってください」

正道「はい、大丈夫です。せっかく懐いてるのを手放したくないのは自分もおんなじですから」

宗俊「嫌な役割ですまねえな」

 

宗俊、すっかり大原さんを頼っている感じですが…。

 

2階

元子に勉強を見てもらっている吾郎。

元子「よ~し、できた。吾郎君、なかなか頭がいいじゃないの」

吾郎「頭じゃなくて勘だよ。勘が悪くちゃ、とても一人じゃ生きてらんないんだ」

元子「まあ、言うわね。だけど、君はもう一人(しとり)じゃないんだからね」

吾郎「はいはい、おかげさんで」

元子「子供が生意気言うんじゃないの」

吾郎「そんなににらむと嫁のもらい手がないぜ」

元子「ちょっと!」

 

正道「よう、坊主」

吾郎「何だい、居候」

元子「吾郎君!」

正道「おっ、ハハ…いや、いいんですよ」

元子「だって」

吾郎「あにきがいいって言ってんだからいいじゃねえか」

元子「もう」

 

正道「ちょっとな、話があるんだ」

吾郎「分かってる。三味線屋のことだろ?」

元子「君…」

吾郎「言っただろ、勘が悪けりゃ生きてられないって。みんなが心配そうにヒソヒソやってりゃピンと来るもん」

正道「うん、確かにいい勘だ。第一級だな。こら、ハハ…」

吾郎「もう一つ勘を働かせれば、あにきは、ねえちゃんにほれて、ねえちゃんはあにきに」

 

隣の部屋で会話を聞いていた巳代子が反応。

 

元子「何を言いだすの!」

正道「し…失礼だぞ、おねえさんに!」

吾郎「見ていてじれったいからさ」

元子、恥ずかしそうにうつむく。

正道「こらっ! ちょっとそこ立て! 尻出せ!」

吾郎「代わりに言ってやってたたかれたんじゃ、合わないけど、まあ、顔を立ててやんないとな」

正道「減らず口たたくな! 出せ、この!」

吾郎「はいはい」尻を向ける。

正道「こいつは…」

 

順平「何するんだよ!」

吾郎「いいんだよ、俺もあにきが好きなんだから」

正道「けどな、吾郎君」

吾郎「俺はどっちでもいいぜ。あにきが行った方がいいって言うなら三味線屋に行ってもいいぜ」

順平「行っちゃ駄目だ!」

吾郎「ガキは引っ込んでな」

 

正道「よし、それじゃ男だぞ。今までこそ泥で世間に迷惑をかけてきた分、三味線屋行って親孝行してこい」

吾郎「分かった。でもどうしても嫌になった時は?」

正道「その時はいつでも飛び出してこい」

 

順平「駄目だ、駄目だ、駄目だ! 駄目だ、駄目だ…」

元子「順平」

 

…とまあ、そんなわけで吾郎は幸之助夫婦のもとへ引き取られることになりました。

 

吾郎は順平より2つ年上だけど、年齢以上に大人なのは、やっぱり「純ちゃんの応援歌」の雄太を思い出す。まだ雄太は満州にいる頃だもんね。

 

台所

トシ江「本当にあっけないわねえ…」

キン「相手は子供なんですよ。そんなもんじゃないんですか?」

 

小芳「ごめんなさいよ。あの、うちの子来てないかしら」

キン「あら、また雲隠れなんですか?」

小芳「いや、ちょいと留守番頼んで出てきたらね、もういないんだよ」

キン「それで、財布は…」

トシ江「おキンさん!」

キン「あっ、いえね、そうだと困るなぁと思ったもんだから」

小芳「当たり前ですよ。放り出しとたって持っていきゃしませんよ」

 

赤毛のアン」でもアンが引き取られる前、引き取られた後、周囲の大人はみんな同じような心配をしていたなあ。

 

元子「大丈夫よ、また工事現場へくっついていったんじゃないの?」

小芳「どうしてあの子はそんなに大原さんが好きなのかしら」

元子「さあ」

 

2階ベランダ

吾郎「何だチビ。お前、きょうだいなのに気が付かなかったのか?」

順平「だって俺だって大原さん好きだもん」

吾郎「男と女が好き合うってのは、また違うんだよ」

順平「ふ~ん」

吾郎「何だよ、うそだと思ってんのか?」

順平「そういえばさぁ、この前の晩、大事な話をしてるんだとお姉ちゃんに怒られた」

吾郎「見ろ」

 

小芳「いた!」

 

夜、2階

巳代子「大事な話?」

順平「うん」

巳代子「二人っきりで裏で?」

順平「うん」

巳代子「うそ言ったら承知しないからね」

順平「うそじゃないよ」

巳代子「う~ん、そりゃあ、まあ私だって大原さんはいい人だと思うけど…」

 

台所

キン「じゃあ、2人が手ぇ握ったとこ見たってんですか」

巳代子「そこまでははっきりしないんだけど大事な話があるって、お姉ちゃん、順平にはっきりそう言ったそうよ」

キン「大事な話ですか」

巳代子「うん」

キン「私はね、旦那も大原さんをすっかり気に入っちまったようだし、いい取り合わせだと思うんですよ」

巳代子「じゃあ、もしもの時はお姉ちゃんを応援してやってくれる?」

キン「もちろんですとも! もちろんですけどね…」

 

吉宗

トシ江「そんな…」

小芳「けどさ、『世間の口には戸を立てられない』って言うじゃないか」

トシ江「ちょいと待ってよ。そんなことがうちの河内山の耳にでも入ろうもんならどうなることか」

小芳「だからそれでおキンさん心配して私んとこ言ってきたんじゃないの」

トシ江「どうしよう」

小芳「もうしっかりしてよ、母親じゃないか。それでも心当たりがないわけないんだろ?」

トシ江「えっ」

peachredrum.hateblo.jp

元子にもたれかかる正道を思い出す。トシ江はあの時スルーして平然と部屋に入っていったのに。

 

小芳「やっぱり…」

トシ江「ちょっと冗談じゃないわよ。大原さんは礼儀正しい人だし、そんなこと、あるはずないじゃないか」

小芳「ん…もう残念だわ。せっかくおめでたい話だと思ってたのに」

トシ江「おめでたい話…?」

 

路地

宗俊「まさか」

幸之助「…と思ったけどよ」

宗俊「おうよ。お家の御法度ってわけじゃあるまいし、どうでもその気になりゃ、俺に言わねえわけがねえじゃねえか」

幸之助「まあな」

宗俊「見ろ。めったなこと言うんじゃねえ。俺ぁ、こう見えてもな、話の分からねえ、おやじじゃねえんだ」

幸之助「けど『灯台下暗し』って言うしよ」

宗俊「この野郎! てめえ、何の恨みがあってうちにいちゃもんつけやがんだい!」

幸之助「バカ言え。うちじゃあ小芳が心配してるからこそ」

宗俊「心配ならな、てめえんちの手癖の悪い新しいせがれのことでも心配しやがれ」

幸之助「何だと!」

 

さあ、この手の話、聞いたが最後、穏やかならぬものとなるのが世の習い。『知らぬが仏』と当事者だけに相なります。

 

茶の間でまったり過ごす家族。

キンは縫い物をしながら宗俊をチラ見。宗俊は長火鉢の前で新聞を読みながら、こたつで仲よく並ぶ元子と正道を見る。

元子「大原さん、お茶もう一杯召し上がる?」

正道「あっ、お願いします」

元子「はい」

 

宗俊の湯飲みもカラ。

元子「お父さん」

宗俊「断る」

元子「えっ?」

トシ江「どうかしたんですか、おとうさん」

宗俊「え? いや~、ちょっと歯が痛(いて)えんだよ」

元子「どうしたのかしら? 甘いもん食べないのに」

宗俊「おおかた虫がついたんだろうよ」元子や正道に視線を向ける。

 

正道「あの、一時押さえですけども痛み止め持ってますから取ってきますよ」

宗俊「いらねえよ、そんなのは」

正道「いえ、万事、手当ては早い方が大事には至りません」

元子「すいません」

正道、部屋を出て行く。

 

宗俊「何だい、男のくせに」

元子「どうしたの?」

宗俊「こっちゃあ、とっくに覚悟はできてるんだ。奥歯にものの挟まったような言い方しやがって」

トシ江「あら、痛むの奥歯だったんですか」

宗俊「うるせえ」

元子「何一人で怒ってんのよ。大原さんに失礼じゃないの」

宗俊、何か言いたそうな顔。

 

元子「どうしたの?」

トシ江「うん? ううん、何でもないのよ」

 

雲行きが怪しくなってまいりました。

 

つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

吾郎を引き取るという話から、元子の恋バナに展開していくのが面白いなあ。吾郎役の子は当時の子役としては器用で上手だね。これからもちょいちょい出てほしいな~。