徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】がめつい奴

1960年 日本

 

あらすじ

大阪の釜ヶ崎を舞台に、幸せを求めもがく人々をエネルギッシュに描く群像劇。ロングラン公演された菊田一夫の戯曲を基に、舞台から続投の三益愛子ら演技派が、ふてぶてしい駆け引きを繰り広げる強烈な人物を快演する。釜ヶ崎で簡易旅館を営む鹿(三益愛子)は、戦災孤児のテコ(中山千夏)を引き取って育てながら、泊り客の管理を息子・健太(高島忠夫)に任せ、貯め込んだ札束を数えるのを生きがいとしていた。一帯の元地主の娘のホルモン焼き屋の初江(草笛光子)や、食えない熊吉(森雅之)ら常客の思惑も様々に錯綜し、予期せぬ事態が次々と巻き起こる。

2022.11.9 日本映画専門チャンネル録画。1959年、東京の芸術座で上演され、記録的な大ヒットをした菊田一夫の舞台劇の映画化。

 

大阪のカスバ・釜ヶ崎。人形を抱いて歩いている少女・テコは車同士の衝突事故を目撃する。知らせを聞いた男たちは宿を飛び出し、運転手を病院に送り出して車を解体して売り飛ばす。ここは日本か!?

 

テコは両親を亡くした上に精薄児と言って脳の足らん子やというお鹿婆さんの言葉にギョッ。紀州の大水の時にお鹿婆さんに拾われたということは、あの「純ちゃんの応援歌」でプロポーズされたあの水害と同じかな!?

peachredrum.hateblo.jp

ケチなお鹿婆さんは宿泊客が持参している米の袋に穴を開ける。床に落ちた米は宿のものだと言ってわざと床にこぼす。

 

お鹿婆さんの息子が高島忠夫さん。1930年生まれだから当時30歳。「純ちゃんの応援歌」当時の高嶋兄弟よりちょっと年上で、顔は高嶋政伸さんの方が似てるかな?

 

草笛光子さん演じる小山田初枝は、この辺り一体の大地主の娘だったが、戦争で丹波疎開している間に両親は亡くなり、戦後、戻ってくるとお鹿婆さんがこの土地は自分のものと主張していた。お鹿婆さんは初枝の家で下女中をしていた。初枝は裁判を起こして地所を取り返すつもりでいる。

 

初枝の妹・絹は健太に惚れていて土地云々のことはそれほど興味ない。

 

ある日、向山彦八というお鹿婆さんの義理の弟が訪ねてきた。お鹿婆さんの死んだ夫の弟ね。森繁久彌さんか〜。昔の映画見ると晩年の姿と違いすぎて、いちいちびっくりするんだよな。彦八はお鹿婆さんが3000万貯めてると言う話を聞きつけて釜ヶ崎荘にやってきた。

 

初枝はポンコツ屋の熊吉から協力を申し出され、裁判を起こすことをお鹿婆さんに話す。絹は健太と結婚するといい、お姉ちゃんみたいに売れ残りになりたくないと言う。思わずビンタする初枝を健太は止める。お鹿婆さんは裁判に負けたら釜ヶ崎荘を出るように言う。

 

熊吉が初枝に弁護士を紹介すると言って、別の宿に連れ出す。なかなか弁護士が来ず、酒を勧める熊吉。権利書を見せろとしつこい。熊吉は、おたかという占い師の内縁の妻がいながら初枝に性的暴行。事が終わった初枝はうちを捨てんといてとしなだれかかる。ええ〜。

 

権利書を初枝から預かった熊吉は健太に2000万でどうや?と話をする。おたかはロシア人ハーフ(映画では“あいのこ”)でいつか父がやっていたパン屋を再建させるのが夢。熊吉は夫に死なれて一人で店をやっていたおたかに声をかけ、店を売却させた前歴を持っていた。もう赤い髪は飽きたと暴言を吐く。

 

初枝はいよいよ裁判を起こすと健太とお鹿婆さんに宣言。健太は熊吉から土地を買ってくれと言われたことを初枝に話す。初枝は騙されたかもしれないと熊吉のところへ行こうとするが、おたかが熊吉に触らんといて!とケンカになる。男の脚本だな〜。何でおたかが初枝に怒りをぶつけるんだ。絹も初枝はオールドミスでヒス起こすとバカにしている。

 

お鹿婆さんは毎日1円でテコにおからを買わせていたが、おからを入れるポリチチリン(ポリエチレン?)の袋が目当てだった。その袋に札束を入れ、梅干しのかめに隠している。お鹿婆さんはテコだけを信用していてお金のありかを教えている。

 

健太がお鹿婆さんの金を半分寄越せと言う。隣の部屋で寝起きしていた健太はかめにお金を隠していたことを知っていた。健太と揉めるうちにお鹿婆さんは倒れた。死んだと思った健太は焦り、妹のお咲(原知佐子)も大騒ぎする。みんなが集まると息を吹き返したお鹿婆さんは健太に怒る。

 

熊吉が権利書を売った升金が釜ヶ崎荘を取り壊すと言う。おお、升金の手下に西村晃さんいるなあ。お鹿婆さんもテコもその騒ぎを受け、釜ヶ崎荘へ。

 

その間に彦八はお鹿婆さんの部屋を漁る。彦八はついに梅干しのかめを見つけた。戻ってきたテコに800円やるから梅干しを食べたいという彦八。そんなに梅干しが好きなんかとここにもあるよと場所を教える。彦八は梅干しのかめを車に積んで逃げた。

 

彦八は借金した相手に金を返そうとしたが、かめに入っていたのは梅干しだけだった。

 

夜、穴を掘ってかめを埋めるお鹿婆さん。

 

熊吉を見つけた初枝。隠し持っていた包丁で刺した。目の前で見ていたおたかは止めない。人通りの多いところへ助けを求めて出て行った熊吉が死んだ。みんな服を目当てに熊吉を運ぶ。

 

警官(加東大介)がおたかに事情を聞きにくるが、おたかはしらを切り通す。死体も見つからないので、事件もないことに!? 服を盗んだ男たちは初枝が自首すると服を盗んだ事がバレるので止めた。

 

初枝が熊吉を刺殺したことを知ったお鹿婆さんは升金の元へ行き、300万の立退料を請求。釜ヶ崎荘の宿泊客には5000円の立退料を払うという約束だったのに、健太は300円の立退料から30円の手数料を取った。

 

初枝は自首するという。絹は悪い人殺してなんで自首するの〜?って感じ。

 

この町にいたらこうなると初枝は自首を決意する。運勢を見たおたかは来年の春は商売繁盛するといい、初枝はおたかにパン屋を開こうという。

 

健太と絹はうどん屋を開いた。お鹿婆さんとテコは天王寺公園で座り込んで物乞いをしていた。(終)

 

再放送の朝ドラを見ていると、ヒロインは恵まれているという感想を時々見る…けど、例えば初枝みたいなヒロインを見たいか!? 元は大地主の娘だったが、戦後のどさくさで土地を取られ、取り返すことができなかった…。

 

私は恵まれててうまくいく方が見てて安心するけどな。だから、この映画は、いろんな意味で胸糞だったな〜。実在の場所というのも今じゃあり得ない。

 

草笛光子さんの変わらなさがすごい。昭和35年にはもうオールドミスと呼ばれるような年代だったことに驚き。あんまり普通の主婦役を見たことないかも。「澪つくし」でも女親方だし、「あぐり」でもカフェの女主人だったしね。

 

映画の内容は何じゃこりゃと思ったけど、舞台→映画→ドラマ化2回と人気あったんだねえ。お鹿婆さんはずーっと共通して三益愛子さん。朝ドラの「鮎のうた」にも出てたのか。見たい。

 

舞台版だと、初枝の妹・絹役に八千草薫さんや映画版では健太の妹の咲役だった原千佐子さんがいた。ていうか、この2人といえば「岸辺のアルバム」! 同じ役をやってたんだな~。初枝役は舞台だと森光子さんと乙羽信子さん。

 

エネルギッシュかもしれないけどここに落ちたら這い上がれないというどんよりした気分になる映画。