徒然好きなもの

ドラマの感想など

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(43)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)とトシ江(宮本信子)はアメリカ人相手に古着を売り、金の代わりにアメリカのたばこやチーズなどと交換してもらう。それをヤミ市へ売りに行くのが宗俊(津川雅彦)と彦造(森三平太)だ。しかし子供に商品を盗まれたりして上手くいかず、宗俊はふて腐れて布団をかぶってしまう。そんなとき、歌舞伎役者の番頭が吉宗にやってきた。そろいの手ぬぐいを作りたいという。戦後初めての仕事らしい仕事に宗俊は張り切る。

日本の民主化と非軍事化のために占領軍は次々と改革指令を出しました。昭和20年の米の出来高は明治末年以来の大凶作。それに、外地からの引き揚げ者によって人口が増えつつあり、食糧危機を一層深刻なものにしていました。

 

当時の資料映像。街を歩く人々や道端に寝っ転がっている人々。

 

吉宗

着物を見ているG.I。G.I役のポール・シルバーマンと検索するとこの作品が出ました。

昔から「衣食足りて礼節を知る」といいますが。

 

元子「やっぱり商売は着るもんより食べもんなのね」

トシ江「私もね、みんなひどい格好してるし、もっと焼け出されのお客さんが来るかと思ったわよ」

元子「私もよ。何だかアメリカさんの土産物屋になっちまったみたいで気が引(し)けちゃう」

トシ江「けどさ、何事も辛抱。『堪え難きを耐え、忍び難きを忍べ』って陛下もそうおっしゃったんだからね」

元子「空襲で逃げ回ってた時のことを考えれば、ぜいたくは敵ですね」

トシ江「本当だ本当だ」

 

ここで堪え難きを耐え…を出してきた。

 

立ち上がってG.Iのもとへ行くトシ江。「いかがですか? あのこれは地が綸子(りんず)の手描き友禅なんですよ。若いお嬢さんならどんなところへ着ていっても恥ずかしくない着物なんです。あのお土産になさるんだったら日本の着物として恥ずかしくないものを買ってってくださいな。あの、ちょいとこの子に着せてみましょうか」

G.I「プリーズ」

トシ江「着てみてくれってさ」

元子「全く完全、日本語で通じちゃうんだから」

トシ江「はいはい…」

 

着物を着てくるっと一回り。

G.I「ビューティフル」

元子「ハハハ…」

トシ江「気に入ったって」

元子「きれいだって言ってんの」

トシ江「まあ、どっちだっておんなじことじゃないか、ねえ」

G.I「OK。ハウ マッチ?」

 

元子「あっ、ジャスト モーメント。はい、お母さん。え~っと…。ウイスキー ツー オア シガレット スリーカートン オア え~、チーズ アンド バター。OK?」

G.I「OK。アイ シー。(リュックから荷物を出す)ワン…」

 

商売は物々交換が一番。毎日がインフレでまあ、この時代ほどお金が頼りにならなかったことはなかったでしょう。

 

元子「お…OK」

 

闇市

闇市の男「さあ、うめえぞうめえぞ。いらっしゃい、へい。栄養満点だよ。2匹でたったの1円50銭だ、え。有楽町より50銭安いぞ。はい、いかがですか」

 

宗俊、彦造も元子がG.Iから物々交換したものを売っている。

彦造「ねえ、旦那」

宗俊「うん?」

彦造「ありゃあ、やっぱアメリカ生まれのいわしなんですかねえ」

宗俊「どうしてだい」

彦造「だってさ、日本のいわしなら、やっぱ配給なんだろうし」

宗俊「まあな。脂ののり具合から見るとアメリカ生まれかもしれねえな」

彦造「やっぱ兵隊とおんなじに食い物がいいからなんでしょうねえ」

 

宗俊「1皿食うか?」

彦造「いえ、めっそうもねえ」

宗俊「水くせえぞ、遠慮するこたぁねえや」

彦造「冗談じゃねえですよ。わしら毎日遊びに来てんじゃねえ。商いに来てるんだよ、旦那」

宗俊「全く情けねえな」

 

闇市の男「何だ何だ喉から手が出そうないい品物並べてるくせにしけた話だね。どっかからくすねてきたんだろ?」

宗俊「冗談じゃねえや。こう見えてもな、日本橋で8代続いた吉宗だ。そんな怪しげな品物扱っちゃいねえや」

 

闇市の男 東龍明…今は東隆明さん(読みは同じ”りゅうめい”)。ウルトラマン仮面ライダー、刑事モノ、時代劇などに交じりポツンとこの作品。

 

男「おう、洋もく1箱くれ」

彦造「へい、1箱ですね、へい」

男「おっと、1箱は1箱でも、ほら、でっかい方の1箱だよ」

彦造「そうですかい」

闇市の男「よっ、景気がいいね、おにいさん。どうだい、ついでに栄養満点のいわしは。いわしの塩焼き」

男「バカ。それは俺が今朝、千葉から担いできたいわしだよ」

闇市の男「フッ、やれやれ。どうりで景気がいいと思ったよ」

 

陰から出てきた少年が宗俊たちの店のタバコなどを盗もうとする。

彦造「こら、何すんだ! 何やってんだ、おい! 待ちやがれ、泥棒! 待ちやがれ!」

宗俊「こら、待て! おい、こら待て!」

2人とも子供を追いかけて行ってしまう。

 

闇市の男「バカだねえ。品物放り出しちゃったら、あとは別の泥棒にくれてやる…。こら、何…こら~! 俺の…泥棒!」

宗俊たちの品物を取ろうとする人たちを追い払い、品物を自分の懐に入れる闇市の男。

 

2階

布団をかぶって寝ている宗俊。

トシ江「それで黙って帰ってきちまったんですか」

宗俊「もう、しかたねえだろ。やったのは隣のいわし屋だって分かってんだが証拠がねえじゃねえか」

トシ江「本当に内弁慶なんだから」

宗俊「てやんでぇ、こちとらだって江戸っ子だい。出るとこへ出てずだ袋開けてもらおうじゃねえかと言ったんだ。けどお前、あの野郎、PXの横流し進駐軍の軍事裁判だって抜かしやがった」

トシ江「冗談じゃありませんよ。うちの品物はお金の代わりに現物で払ってもらってるんですよ」

宗俊「だからってもうたくさんだよ! 俺ぁ紺屋だ。闇屋には向いちゃいねえんだよ」

トシ江「あんた…」

宗俊「初めにかっぱってたのはガキだぜ。大人だってな、食い物にゃお前、目の色変わるご時世だ。子供が腹すかしてんのは当たり前じゃねえか。それを追いかけてったてめえも情けねえしよ成金しか買えねえ品物売ってるてめえも情けねえや」

トシ江「そんな…バターやチーズはご病人には何よりの栄養なんですよ」

宗俊「けどよ、そんなもの、お前、買ってもらえるご病人が幾人いるんだ? 結局買うやつはギトギトした闇屋ばっかしじゃねえか。あ~あ、俺ぁ、もう食わなくていいからよ、もうこんな商売たくさんだよ」布団をかぶる。

 

茶の間

元子「しかたないわよ。職人ってのは昔っから作るのが仕事で売るのは仕事じゃないもんね」

彦造「けど、そんな甘ったれたことじゃ通用しねえご時世だってことは分かってんですがねえ」

キン「本当にこのうちは、おかみとお嬢がいなかったらとっくに空中分解してるよ」

元子「何言ってんの。今にきっと紺屋ができる時が来るわよ。まあ、私とお母さんがやってんのが、いわば、それまでのつなぎなんだから」

彦造「本当にそんな時がもう一度来るんでしょうかねえ」

元子「気弱なこと言わないで」

 

戸が開く音

浜村「ごめんくださいまし」

元子「はい。まあ、高麗屋さんの」

浜村「アハハハハ…。どうもしばらくでございました。で、大将はお達者で?」

彦造「へえ、体だけはピンシャン達者でおりますとも」

浜村「アハハ、そりゃよかった、ハハ」

キン「どうぞお掛けなすって…」座布団を差し出す。

 

浜村「実はね、ちょいとお願(ねげ)えがあって来たんですけどね」

彦造「へい」

浜村「実はこの月、うちの松本幸四郎が『菅原伝授手習鑑』を通しで出すんですがね」

www2.ntj.jac.go.jp

彦造「それはそれは」

浜村「ええ。で、ごひいきさんがひとつ、こう、パ~ッと手拭いを配りてえっておっしゃいましてね、まあ、手拭いならやっぱし吉宗さんだけど品物がそろうかどうか相談に来たんですよ」

彦造「へえ! ほら、何やってんだよ、ばあさん。さっさと大将呼んでこねえか」

元子「いいわよ、私が呼んでくるから」

キン「ああ、すいませんね」

彦造「そんじゃお茶だよ、ばばあ!」

キン「分かってるってば! ハハ…ただいますぐ、ハハハ…」

 

浜村 矢田稔さん。ドラマや声優、吹替えなど。wikiには「マー姉ちゃん」もあったけど、分からないなあ。「北の国から」立石先生、「早春スケッチブック」落合先生、「東京ラブストーリー」栗山先生…先生多いな。「ひとつ屋根の下」文也の父、へえ~。

 

2階

布団から飛び起きる宗俊。「何? 高麗屋が相談に?」

元子「どうにも手拭いがそろわないからって番頭さんの浜村さんが」

宗俊「来た来た、来た来た! こう来なくっちゃ! おう、どいたどいた! ごめんよ!」

 

キン「お嬢! お嬢! 放送局の恭子さんから電話ですよぉ」

 

元子「は~い!」

 

嬉しそうに布団を畳むトシ江。

 

モンパリ

テーブル席でアメリカ人客に酒を出している洋三。

 

カウンターに立つ絹子。「そうね…。いっつもそうだもんね。へえ~、それで宗俊、元気になったってわけ?」

元子「全く現金なんだから」

笑い声

恭子「でも張り切ってるのが目に見えるようだわ」

のぼる「ねえ、ブルースがね婦人の時間の専任のアナウンサーになったんですってよ」

www2.nhk.or.jp

元子「あら、本当?」

恭子「そのかわり月曜から土曜まで通しでしょ。忙しくなると思うんだ」

元子「でもやりがいがあるじゃないの」

恭子「おまけに担当ディレクターが例の近藤女史なのよ。まあ怖いことは怖いけれど例によって、あの英語ペラペラでGHQを相手にバリバリ言いたいこと言ってのけてるわ」

元子「わぁ、胸がすくわね」

のぼる「負けずに頑張ってよ、ブルース」

恭子「ええ」

 

絹子「それでは成功を祈ってお祝いしましょ」

元子「賛成!」

のぼる「マスター!」

絹子「あっ、またやってる。アメリカの新聞記者なのよ」

元子「へえ~」

 

ハヤカワ「ノーノーノー。日本人には戦争負けたいうこと全然分かってないね」

洋三「そんなことないよ。いや、戦争が終わったってことは日本人にとって人間らしく、こう、生きていく道を見つけるきっかけになった…」

外人記者「それ! それなんですよ! 戦争、終わったのではない。日本、戦争、負けたのです」

洋三「いや、それはまあ、そうだけど…」

ハヤカワ「そうなのね。バット、日本人なぜ敗戦を終戦、言いますか? なぜ占領軍を進駐軍言いますか? みんなごまかしですよ」

 

元子「そんなことありません」

ハヤカワ「オー、あなたはそうでも、ほかの日本人は、みんな敗戦、占領、災難と思っていますよ」

のぼる「災難?」

ハヤカワ「イエス地震、台風と同じね。頭、縮こめていればいずれ通り過ぎるもの。みんなそう、それと同じに思っていますね」

のぼる「とんでもないわ。戦争には負けても国民はプライドを持って頭を高く上げて歩かなくては、これから先、どうやって歩いていったらいいのか分からないじゃありませんか」

記者「ではどうして戦争責任の追及しませんか?」

 

のぼる「だってそれはあなた方がやってるじゃありませんか」

記者「はい。リメンバー パールハーバーね。だからこの戦争起こした日本の責任者に戦争犯罪があります。バット、あなたたちも間違った戦争に巻き込まれたこと、なぜ怒りませんか?」

元子「私は怒っています」

ハヤカワ「ベリー グッド。バット、日本のリーダー、アー、国民に対しての責任意識、全くありませんね。だからみんな国民、自分のことだけ心配してます」

のぼる「みんな疲れ果てています。戦勝国と敗戦国の違いでしょう。今の日本人は皆、食べることに精いっぱいなんです」

ハヤカワ「そのとおり。だからみんなアメリカ任せよ」

 

のぼる「あなた方はせっかちすぎるわ」

ハヤカワ「せっかち?」

のぼる「そうよ。だって私たちは放送局にいて、うその戦果を発表したりして疑問を持ったし、そのことについて正直に物が言えなかったり、軍の司令なんだからしかたがないんだって、そう思い込んでしまった自分に対して責任を感じているんです。だから、何がいけなかったのか、どうしてそんなことになってしまったのか、ゆっくり考えなければ分からないし、それにはこれからはまずそれがどんなにバラ色に見えても軽々しくそれを信じないことが大事だと思ってるわ」

 

ハヤカワ「ベリー グッド。ベリー ワンダフル。これからはそういう意見大切です。我々は、いいフレンドになれそうですね」立ち上がり、手を差し出す。

洋三「頑張れ、六根」

元子「そうよ。けんかする相手としては不足なさそうじゃないの」

ハヤカワ「オー ノー。けんかは駄目ね。あなたファイトあります。私、負けますよ。お手柔らかに」のぼると握手。

洋三「ハハハハハハ…」

絹子「それじゃ、ミスターハヤカワにもブルースのお祝いに合流していただきましょうよ」

洋三「おお、そいつはいいね。恭子さん、そいじゃ、こっちいらっしゃい」

 

元子の心の声「すごいなあ。ブルースは1つの番組の担当のアナウンサーになったし、六根はアメリカの記者を相手にあれだけ言えるほど勉強しているみたいだし私も負けちゃいられないわ」カウンター席からカウンター内へ移動。

 

ここで28分だったので、またあの歌来る!?と思ったら、市川房枝女史!

www2.nhk.or.jp

まさしくこの映像だ!

 

新日本婦人同盟

  市川房枝女史 というテロップが出ている。

市川「婦人参政権は戦争という大きな犠牲を払ってもらったことになりますから、大事にしなきゃいけないと思います」

 

婦人参政権を要求して、市川房枝会長のもとに新日本婦人同盟結成。戦後の大きな変化は家長制度のもとに従属していた婦人が自分の意見と発言をしっかりと持ち始めたことでしょう。

 

仕事にとりかかっている宗俊。

元子「お父さん、お茶にしませんかって」

宗俊「おう、紺屋の娘、手順見て物言え」

元子「はいはい」

 

宗俊の方も戦後初めて仕事らしい仕事が来て大張り切りです。

 

宗俊「どうだ、え、いい色に仕上がるぞ。やっぱり藍は日本の色だ」

元子「粋ですねえ」

宗俊「あたぼうよ。粋が命だ。な。これが舞台からパ~ッとまかれてよ、ご婦人客が黄色い声に二の腕まで見して取り合うところを思っただけでもワクワクしてくらぁ。こう来なくちゃ日本の復興はありませんよ」

元子「大した鼻息だこと」

宗俊「おう! しみったれた古着屋なんかやめちまえ!」

 

キン「彦さん、お茶だよ!」

宗俊「駄目だ駄目だ! 今、何言ったところで聞こえるもんかい」

キン「はいはい」

トシ江も元子の近くに来て笑顔で見守る。

 

つづく

 

物おじせずに意見できるのぼるがすごい。のぼるも恭子も元子もみんな声がよくてずっと聞いていたくなる。群像劇という感じで元子にだけスポットが当たる話じゃないから私は好きなのかも。

 

ハヤカワ役の深水三章さんといえば「阿修羅のごとく」の陣内英光。

今度、BSプレミアムで再放送があるので、「芋たこなんきん」でいしだあゆみさんの演技が好きになった人は是非とも見てほしいな。宇崎竜童さんも出てるよ。

peachredrum.hateblo.jp

このドラマが数年前に再放送された時に、いろいろ調べて深水三章さんがすでに亡くなっていたことにも驚いたし、このドラマに出ている赤木啓子役の萩尾みどりさんと夫婦だったことにも驚いた。ドラマはパート2も含めて面白い。「岸辺のアルバム」を見たあとだと八千草薫さんと風吹ジュンさんが姉妹役なのが不思議な感じ。

 

外人記者はフィリップ・グライスマンさんというのか。ダニエル・カールさんになんとなく顔だちが似てるなと思っちゃった。