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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(120)「子離れ、親離れ」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

健次郎(國村隼)が下校途中の亜紀(鍋本帆乃香)と出会う。眼鏡をしていないので、問いただすとなくしたという。健次郎は新しい眼鏡を買ってやるが、亜紀はなぜか不満顔。翌日、亜紀が学校でケガをして帰ってくる。転んだという亜紀に、由利子(邑野みあ)は、亜紀が学校で眼鏡をかけていないのではと疑う。健次郎が問いただすと、亜紀は眼鏡をしたくないという。町子(藤山直美)らは、その理由を知ることになるのだが…。

朝、茶の間

亜紀「おはよう」

町子「あ、おはようさん」

健次郎「亜紀、ちょっとここ座り」

亜紀「何?」

 

健次郎「あのな、昨日、担任の福井先生から電話あってな」

亜紀「えっ?」

健次郎「いつもテスト頑張ってんねやてな。今回、成績が急に悪なったからいうて、先生、心配してはったんや。別に点数のこと言うてるの違うで。先生はな、授業ではちゃんと答えられてるのに、テストで間違うてたことを心配してはる」

亜紀「慌てててん」

健次郎「慌てとった?」

亜紀「問題読みそこのうただけ」台所へ

顔を見合わせる町子と健次郎。

 

隆「おはよう」

町子「あ、おはようさん」

登・清志・由利子「おはよう」

町子「おはようさんです」

 

その日の午後のこと

 

工藤酒店前

貞男「涼しなってきたさかいな、日本酒がようけ出るわ」

健次郎「そうか、えらいもんやなあ」

貞男「ハハ、忙しいてな」

 

タエ「いや、亜紀ちゃんお帰り」

亜紀「ただいま」

健次郎「亜紀」

亜紀「ん? あ、お父ちゃん」

 

健次郎「『あ、お父ちゃん』やないやろ、お前。眼鏡どないしたんや? 学校、忘れたんか?」

亜紀「なくしてん」

健次郎「なくした!?」

亜紀「落としたんかも」

健次郎「よう捜したか?」

亜紀「あらへんね」

 

健次郎「おいで」

亜紀「えっ、どこ?」

健次郎「眼鏡屋さん」

亜紀「ええねん、見えてるから」

健次郎「見えてへんやないか。僕が誰か分からへんかったのに。けがでもしたらどないすんね。はい」

亜紀、健次郎に手を引っ張られて歩く。

 

ピンクのフレームの新しい眼鏡をかけている者の不満顔の亜紀。いや~、今は手ごろな値段の眼鏡屋さんも多くなったけど、小学生から眼鏡をかけている私としては、昔は眼鏡って高かったねえ~。

 

茶の間

由利子「眼鏡…今度はその色にしたんや」

健次郎「『前より近視が進んどる』て」

由利子「かいらしいで」

亜紀「由利子姉ちゃんも兄ちゃんも目、悪ないのに…」

健次郎「今度は落としたらあかんで」

亜紀「はい…」

 

夜、茶の間

風呂上がりの亜紀がパジャマ姿で牛乳瓶に書かれた「タカハシ乳業」の文字を見ている。

町子「あ、亜紀ちゃん」

亜紀「はい」

町子「はい!」テーブルの上にスッと何かを差し出す。「フフッ…眼鏡入れるケース」

亜紀「おばちゃん、縫うてくれたん?」

 

赤い水玉の巾着型の眼鏡ケース。

町子「ほれ、そこに鈴つけてあるから落としても分かるでしょ」

亜紀「ありがとう」

町子「フフフ、フフッ」

 

たこ芳

町子「亜紀ちゃん以外、みんな、目ええのにね。あの子、勉強のしすぎなんかな?」

健次郎「うん、そやなあ。僕も目は、ええ方やったしな」

戸が開く音

健次郎「おう」

駒蔵「ここだとお聞きしまして。よろしいですか?」

健次郎「ああ、もちろんどうぞ。すいません」

 

駒蔵「先日はお騒がせして本当に申し訳ありませんでした」

町子「あの、息子さんは?」

駒蔵「東京へ帰りました。あとは…息子自らが決めることです」

町子「そうですか…」

 

駒蔵「徳永さんのおかげです」

健次郎「いいえ」

駒蔵「親子というのは、実にやっかいですなあ…。しかし、この年になって、やっと親離れ、いや、子離れができたような気がします」

健次郎「う~ん、子離れ」

駒蔵「遅すぎたんでしょうがね…」

 

町子「そんなことはないと思います」

駒蔵「先生、徳永さん、いろいろお世話になりました」

健次郎「いえ…」

町子「そんなとんでもないです。もう…東京にお帰りですか?」

 

駒蔵「いや、これからあの九州に行こうと思ってるんですよ。新しい目撃情報が出たもんですから」

町子「ツチノコ?」

駒蔵「はい。家族のこともツチノコのことも私の人生です。あっちもこっちも私の人生です」

町子、深くうなずく。

 

町子「あっ、それで田村さん、あの、お願いしてました小説のモデルの話なんですけれども…」

駒蔵「家庭小説ですか? しかし、あの…」

町子「いや、実際のご家族には触れません。もう家族というのは別の設定にさせていただきます。私ね、ツチノコを追い求める男の方を登場させたいんですねえ。その、田村さんのようにね、何と言うかな、うまいこと言えませんけど、男性としてものすご~くかわいげのある人をね、私、その、自分の小説に登場させたいんですよ!」

あらすじ

中年たちをユーモラスに描いた長編小説。 大阪の新興団地に住む中年夫婦の悲喜こもごもの日々。息子は学生運動、夫はツチノコ探険、妻は感傷旅行…。人生の応援歌といえる“中年もの”の代表作。

 

1973年にドラマ化もされていて面白そう。テレビ銀河小説も再放送して欲しい。このドラマは、妻が三ツ矢歌子さん、夫が戸浦六宏さん。

 

駒蔵「かわいげって…あの、お役に立てるんなら、どうぞ」

町子「ああ! ありがとうございます!」

駒蔵「それじゃあ、東京帰りましたらもうちょっと資料をお送りしましょうか?」

町子「いえいえ、もう、もう十分で」

 

駒蔵「あの、でも昨日の奈良の報告はしてませんでしたよね?」

町子「聞かせていただいておりません」

駒蔵「あ、そうでしたね! あ、あの、奈良の話はね、結構面白い話が聞けたんですよ。ええ、あのですね…」

町子「はい」

 

駒蔵「あの、ツチノコの鳴き声ですがね、『チ~!』じゃなくて『シュウ』じゃないかっていう人がいるんですよ」

町子「おかしい」

駒蔵「ええ、おかしいですね」

町子「『シュウ』は土に入ります」

駒蔵「入りますね」

町子「おかしいです」

駒蔵「『チ~!』じゃないと跳べないですもんね」

 

大真面目に話している町子と駒蔵に挟まれた健次郎さんの笑いをこらえる顔が何とも面白い。マチ子も駒蔵も大真面目にやってるから笑えるのであって、本人たちも笑っていたら白けていただろう。

 

こうして駒蔵の一件は落ち着いたのですが、その翌日のこと。

 

仕事部屋

純子が何か書いている。

由利子「おばちゃんは?」

純子「あ、今、打ち合わせに出かけられてますけど…どうかしたの?」

由利子「亜紀が…」

純子「え?」

 

玄関

けがをしている亜紀。「痛い…」

福井「あ、担任の福井です。亜紀ちゃん、帰る時に玄関の段差で転んだらしいんです。膝、内出血で湿布貼ってますけど折れたりはしてないと思います」

純子「大丈夫?」

 

茶の間

台所からコップに入れた牛乳を2つ運んでくる純子は、由利子と亜紀の前に出す。

純子「よかったね。大したことなくて。お友達とおしゃべりしてたの?」

亜紀「よそ見しててん」

 

純子「あ…」

健次郎「亜紀、こけたんやて?」

純子「晴子先生が診てくださいました。大したことないって」

健次郎「あ、そう」

純子「ええ」

健次郎「鈍くさいなあ。誰に似たんや?」

 

由利子「お父ちゃん」

健次郎「ん?」

由利子「ちょっと…」

 

廊下

健次郎「何や?」

由利子「あ…眼鏡」

健次郎「は?」

由利子「亜紀、学校で眼鏡外してんの違うやろか?」

 

健次郎「外してるて何で?」

由利子「理由は分からへんねんけど、そんな気する。テストかて間違うたんやろ。それって…」

健次郎「ほな、落としたいうのも…」

 

茶の間

健次郎「亜紀。お前、学校で眼鏡かけてへんのか? ひょっとして落としたいうのもうそか? ちゃんと答えなさい!」

亜紀「眼鏡、嫌やねんもん!」

健次郎「え?」

亜紀「『メガネザル、メガネザル』て言われんねもん! お父ちゃんには分かれへんわ! もう眼鏡なんて絶対かけへん!」眼鏡を外して、部屋の外へ出ていく。

健次郎「これ、亜紀!」

 

夜、茶の間

町子「けがまでして?」

健次郎「ほんまに何を考えとんね、あいつは」

町子「学校でからかわれるんやね」

健次郎「猿なんかにひとつも似てへんがな」

 

町子「いや、子供の言うことやもん。言葉の上だけ」

健次郎「それやったら別に気にすることなんかないやん」

町子「気になるよ、女の子やもん。いや、私も子供の時にね『眼鏡恥ずかしい』言うてた同級生いてたもん」

健次郎「『恥ずかしい』言うたて、それはかけなしゃあないがな」

町子「しゃあないでは納得でけへんねんよ、女心は」

健次郎「小学校2年生に何が女心や」

町子、大きなため息。

 

しかし、その翌朝

 

亜紀の部屋

町子「ねえ、亜紀ちゃん、本当にお休みすんの?」

亜紀「脚、痛い」

町子「ふ~ん」

 

健次郎「ほんまに具合悪いんか?」

亜紀「休む」

健次郎「うん…。眼鏡が嫌で休むんやったら一生学校行かんでええで。そのかわり、仕事探しや」

町子「はあ? ちょっと健次郎さん!」

 

布団をかぶっていた亜紀は、健次郎や町子が部屋を出ていったあと、布団から顔を出しため息をついた。

 

台所

町子「ねえ、健次郎さん、あんなこと言うてええの?」

健次郎「嫌なもん行かしてもしゃあない」

町子「けど何でやろ? 最近まで眼鏡のことなんか気にしてなかったのに、ひどいからかわれ方でもしたのかな?」

健次郎「しゃあないがな。なんぼからかわれても…眼鏡なかったら生活でけへんねから」

町子「いや、そらそやけどね…」

 

健次郎「あ…あんた、お母さんのことどないなっとんねん?」

町子「ああ、私、忙しいでしょ。『話、しに来て』て説得したの」

健次郎「あ、そう」

町子「うん」

健次郎「ほな」

町子「私ね…健次郎さん! はあ…」

 

由利子「おばちゃん」

町子「あ、びっくりした。あれ、あんた学校は?」

由利子「試験休み」

町子「あ、そうか」

 

由利子「おばちゃん、亜紀のことやけど…」

町子「うん」

由利子「亜紀きっと好きな子いてるんやわ、同じクラスに」

町子「ああ…」

由利子「その子の前でからかわれて嫌になったんと違うやろか?」

 

ベッドの中で雑誌を見ている亜紀

春の足音が聞こえたら

ジャンパールックでGO!

 

ジュニアモード’70

 

ノックが聞こえて、慌てて雑誌をよむのをやめる。

由利子「安心し。お姉ちゃん」布団をめくると、亜紀のおなかの上には「中二時代」という雑誌。「ずる休み」

 

亜紀「お姉ちゃん」

由利子「ん?」

亜紀「小学校2年生でできる仕事て何かある?」

由利子「アホ! 学校行きたないの?」

亜紀「うん」

 

由利子「眼鏡のこと、みんなにいじめられてんの?」

亜紀「違う」

由利子「かいらしいけどなあ、亜紀の眼鏡」

亜紀「かいらしない。眼鏡でかわいい子なんかいてへん」雑誌を広げて見せる。

 

由利子「この子らと一緒にしてどないすんの!」

亜紀「お姉ちゃんは眼鏡かけてへんから分かれへんねん」

由利子「お姉ちゃんかてな『もっと鼻が高かったらなあ』とか『もっと目が大きいてパチッとしてたらなあ』とか思うで」

亜紀「お姉ちゃんも?」

由利子「うん!」

 

仕事部屋

町子「創刊号の対談ですけど」

純子「はい」

町子「ねえ、相手どなたにしたらいいと思います?」

純子「そうですね…」

 

由利子「おばちゃん」

町子「何?」

由利子「大当たり」

町子「え、何が?」

 

由利子「亜紀な、やっぱり好きな子がいてんねんて。牛乳屋の高橋修君」

町子「由利子ちゃん、そんなこと聞き出したの?」

由利子「亜紀とは学校のテストで1番2番争うライバルらしいねん。その子の前では眼鏡が恥ずかしいねんて」

町子「へえ~」

 

純子「お姉ちゃんにはちゃんと話すんですね」

町子「ねえ」

 

亜紀の部屋

亜紀「はあ…やっぱり誰も眼鏡かけてへん」

 

そして、その日の夕方

 

玄関

町子「はい」

高橋「徳永さんのお見舞いに来ました。2年3組、高橋修です」

町子「ああ…高橋君」

 

亜紀が思いを寄せるクラスメートが訪ねてきました。

 

ミニ予告

和代「何でそう年寄り扱いしますね」

町子「いや、何でって…」

 

駒蔵がツチノコ探しをやめて子供に向き合うみたいな展開じゃない所がよかった。趣味は趣味で大事。定年まで勤めあげたんだから後は好きにさせてよ。田辺聖子さんはたくさん電子書籍化されてる作品もあるんだけど、読みたい作品に限って絶版ばかりなんだよな~。