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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(88)「禁じられても...」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

徳永家の長女、由利子(邑野みあ)が、フォークの集会で仲間から詩を書いてみるよう勧められる。一方、町子(藤山直美)に週刊誌の編集者からベトナム戦争を取材している報道写真家との対談の話がくる。その対談相手は野村寛司(平田満)。女学生時代の町子(尾高杏奈)の友人であり、亡き父の写真教室の生徒だったカンジ(森田直幸)である。思わぬ再会に驚き、そして喜ぶ町子。時間を忘れて対談を楽しむ2人だった…。

徳永家の玄関前の路地

由利子と千春が出てきた。

純子「お出かけ?」

由利子「おはようございます」

千春「おはようございます」

純子「おはようございます。あら、ギター? フォーク集会?」

由利子「はい」

 

純子「気を付けて行ってらっしゃいね」

由利子「行ってきます。行こ」

千春「うん」

 

このところ、毎週日曜日になると徳永家の長女・由利子はフォーク集会に出かけていきます。

 

由利子と千春が歌いながら路地を歩き、その歌声は仕事部屋の町子にも届いていた。

 

純子「おはようございます!」

 

町子「おはようございま~す!」

 

応接間

純子「対談ですか?」

亀山「ええ。この間、電話でチラッとお話した…」

純子「あっ、報道写真家の」

亀山「ベトナムの取材に通っているカメラマンです。ちょうど花岡先生と同じ年くらいの。野村寛司さんとおっしゃるんです」

純子「野村寛司?」

亀山「大阪出身ですので、多分、先生と同時期に大阪で戦中戦後を過ごされたはずです。仕事も精力的なんですが、読書家ですし…面白いのは食べることが何より大好きで。何か言う時に必ず『ほんまのとこ』ってくっつくんです。口癖なんですね」

 

週刊陽春

自分の目で見て確か××

伝えないとアカンと××

報道写真家

野村寛司

 

写真は平田満さん。最近も見たばかりだし、再放送ドラマでもよく見るし、本当に息の長い俳優さん。

peachredrum.hateblo.jp

純子「あっ、じゃあ原稿が上がった頃、先生にお話しいたします」

亀山「1時間ほど一回りしてきますから」

純子「申し訳ございません」

 

2階から降りてきた健次郎。「また待たしてんのかいな。出版社の編集さんも大変やね」

純子「野村寛司…野村寛司…『ほんまのとこ』。あ…分かった! カメラマンになってたの?」

健次郎「どないした?」

純子「大先生、実は…」←昨日のミニ予告のとこだね。

 

茶の間

週刊陽春を読んでいる健次郎。

町子「出来た! 出来た、出来た、出来た、出来た!」

純子「お疲れさまです!」

町子「純子さん、出来た!」

純子「ありがとうございました」

 

町子「あれ? 亀山さんは?」

純子「ちょっと外に行ってらっしゃいます」

健次郎「お疲れさん」

町子「はい」

 

純子「あの、先生、先日、ご相談申し上げた対談の件なんですけど『週刊陽春』さんの」

町子「あの、報道カメラマンの方?」

純子「はい。戦地へ出かけて取材なさってるそうなんです」

健次郎「ベトナムや」

町子「はあ~!」

 

純子「お受けしてよろしいでしょうか? あの、先生とでしたら、もういろんな話題が広がると思うんです」

町子「うん。ちょっとお話も聞いてみたいね」

健次郎「うん。それ、絶対面白いな」

町子「ほんと?」

健次郎「うん」

 

町子「面白いと思う?」

健次郎「うん」

町子「ほんと、思う?」

健次郎「思うて」

 

町子「ほな、純子さん、このお仕事よろしくお願いします」

純子「はい、分かりました! フフッ」

町子「え? 何?」

健次郎「うん? いやいや…」

町子「え?」

 

亜紀「お父ちゃん、はよ万博行こうな!」

健次郎「あ~、ごめんごめん。ほな、ちょっと行ってくる」

町子「行ってらっしゃい! へえ~、そう。ふ~ん」

 

教会

新聞

米軍がまた北爆

 

男「うちの親なんか最近関心薄いで」

女「飛行機、沖縄から飛んでんねやろ? よその国のことやからて知らんふりすんの恥ずかしいことやわ」

男「問題はそもそも何でベトナムアメリカが介入するのかというとこにもあるわな。徴兵で戦地に送られた米軍兵士の中にも苦しんでいる人は、ようけいてるらしいからな」

男「由利子ちゃん、どない思う?」

由利子「あ…え~っと…」

 

千春「内海さん、こっちこっち!」

ススム「聞いたで。学校でビラ貼りしたんやて?」

男「今、徳永君の意見、聞いてたとこなんや」

ススム「あっ、そうなんや。で、由利子ちゃんどないなん?」

 

由利子「あ…。第2次世界大戦でたくさんの犠牲者を出した日本やのに大人たちは今、平和になって大事なこと忘れてしもてると思います。実際、空襲に遭うた人の話によると町はもう地獄みたいやったて」

千春「あのな、由利子のお母さんて花岡町子さんやの」

由利子「千春!」

ススム「あの小説家の?」

 

菅原「へえ、そうかいな」

由利子「お母さんやないんですけど」

菅原「知ってる、知ってる。カモカのおっちゃんの奥さん、町子おばちゃんや」

ススム「ほんだら、由利子ちゃんも詩、書いてみたらどうや?」

由利子「私は、そんな才能ないです」

千春「亡くなりはったお母さんかて作家さんやったやんか」

 

由利子「そやけど…」

菅原「やってみたらどないや?」

由利子「私、ギターも弾かれへんし…」

千春「私が弾くから、由利子歌い」

ススム「あっ、それええな! なっ!」

 

千春「なあ、由利子、やろ」

ススム「そや。由利子ちゃん、やろ。詩に詰まったら、僕、相談に乗るで」

由利子「内海さんが?」

ススム「うん」

「ええやん。やりいな、やりいな」

ススム「やってみたらええねんな」

 

千春、勝手にしゃべったり勧めたり…うーん。

 

夜、茶の間

亜紀「お父ちゃんな、また動く歩道でなこけそうになってんで」

町子「え?」

健次郎「降りしながむつかしいねん、あれ」

 

町子「ねえ、健次郎さん、歩く歩道をね、反対側向いて、ず~っとこうやって歩いてったらどうなんの?」

健次郎「警備員がすぐ飛んできてえらいこと怒られます」

町子「ああ」

健次郎「何を子供みたいなこと言うてんねんな、あんた」

 

亜紀「月の石て何べん見てもロマンチックやなあ。私、宇宙行きたいなあ」

清志「宇宙飛行士になったらどや?」

隆「女の宇宙飛行士なんていてへんで」

町子「いや、これから分からへんよ。男にできて女にできんてことはないからね」

 

健次郎「あんな、女の子がそんな遠いとこで働かんでよろしい。電車で行けるとこにしとき」

町子「けど、宇宙進出というのは女の方が適任かも分からへんね」

健次郎「え?」

 

町子「そやかて、ほら、よその星の人に会うた時に『まあどうも初めまして、こんにちは』て言うけど、男の人みたいにすぐ『戦争しよか』とか思わへんもん」

健次郎「宇宙人いてることが前提かいな?」

町子「そう」

2人の笑い声

 

健次郎「由利子は、また集会か?」

町子「まだみたいやね。うん」

清志「いや、帰ってきてたよ」

町子「えっ?」

清志「いや、何か部屋で勉強してる」

町子「勉強?」

清志「うん」

 

由利子「おばちゃん!」

町子「はい」

由利子「ちょっとええ?」

町子「あ…はい」

 

廊下

町子「え? 何?」

由利子「あんな、詩の本なんてある?」

町子「詩? うん。あると思うよ。待ってて」

 

仕事部屋

町子「え~っと…これ。由利子ちゃん、谷川俊太郎さんでいい?」

由利子「貸してもらえる?」

町子「詩に興味あんの?」

由利子「あんな、今日、教会の集会…」

町子「え?」

 

由利子「ううん。ありがとう」

町子「ねえ、あの、ごはんよ」

由利子「すぐ行く!」

町子「うん。はあ~。詩か…」

 

由利子の部屋

机に向かって詩集を読んでいる。

由利子「はあ…難しなあ…」

 

町子「由利子ちゃん」

 

由利子「はい」

 

襖を開ける町子。「遅いからみんな食べ終わったよ」

由利子「ごめん。すぐ行く」

町子「ねえ、それ、面白いでしょ?」

由利子「詩て簡単そうで難しいね」

町子「詩に興味あんの?」

由利子「私にも書けるかな?」

町子「うん。書いてみたらええやないの。ねっ」

 

翌朝、5時過ぎ

由利子は机にそのまま寝てしまい、慌てて起きる。

 

待合室

鯛子「やあ、おはよう!」

由利子「鯛子さん、あんね…」

鯛子「どないしたん?」

由利子「夜、時々息苦しいなんねんけど何か病気やろか?」

鯛子「息苦しい?」

由利子「心臓のとこがキュッて痛なったり…」

 

藪下「そういう時、大抵、特定の人のこと考えてへん?」

由利子「え?」

藪下「そうやとしたら病気やあらへんわね。そやなかったらレントゲンで調べた方がええけど。相手は? クラスメート? 電車で会う子? あっ、友達のお兄ちゃん?」

由利子「忘れてください、今の話」逃げ去る。

 

たこ芳

 

一方、町子は例のカメラマンとの対談の日を迎えていました。

 

本日午後八時まで

貸切りです 

      りん

 

町子「ほな、その人が言いだしはったんですか? 『関東煮き屋さんで対談したい』て。粋な方なんですね」

純子「野村さんが先生のエッセーご覧になってて、どうしてもたこ芳でって」

りん「まあ、うれしいことですわ」

町子「え~、あのどんな方なんですか?」

純子「え~、フフフ!」

町子「『え~』て何なんですか?」

 

亀山「こんにちは! お待たせしました!」

 

町子「初めまして」

寛司「うわ~、久しぶり! 野村寛司です!」

町子「初めまして。花岡町子でございます」

寛司「何や? 分からへんの? 俺、そんな変わったかな。ほんまのとこ」

町子「え?」

 

寛司「(眼鏡を外して)カンジ。カンジ!」

町子「カンジ? カン…野村寛司君!?」

 

回想

peachredrum.hateblo.jp

カンジ「取ったった。食べたろ思て」

peachredrum.hateblo.jp

ホットケーキを食べているカンジ。ここかな?

peachredrum.hateblo.jp

カンジ「どっちが大変なんやろか? ほんまのとこ」

回想ここまで

 

町子の女学生時代の友人であり、亡き父・徳一の写真教室の生徒だった寛司でした。

 

町子「はあ~、けどびっくりしたあ! 報道写真?」

寛司「僕の方こそびっくりした。あんたが…あ…『あんた』なんて言うたらあかんな」

町子「ううん。昔のままでええの」

寛司「賞取ったんは知ってたけど『楽天乙女』に俺のこと出てくんねんもん、びっくりしたわ」

町子「『ほんまのとこ』でしょ?」

寛司「ハハハ!」

 

町子「純子さん、人が悪いわ、隠してて」

純子「驚かれるだろうと思いました」

セリフはないけど、亀山も手を口で覆い、驚きを隠せない。

 

そして、対談は戦時中の大阪のことから寛司のベトナムでの仕事、食べ物まで広がり話題は尽きませんでした。

 

寛司「フォーいうお米で出来た麺がものすごおいしいねんな」

町子「へえ~。けど、ようそんな大変な場所に取材に行く気になったもんやね」

寛司「自分の目で見て確かめて、ほんで正確に伝えなあかんて思たんや。今、そこで何が起きてんのか。お父さんに最初に写真教えてもろた時に言うてはった」

町子「え?」

 

寛司「『真実を写す』と書いて写真という。『芸術であろうが報道であろうが真実を写すことは一緒や』て。今でもそれは大事なお守りみたいな言葉やわ」

町子「ねえ、危険な目にも遭うたんでしょ?」

寛司「ま、それはな…」

町子「戦場というのは人の命が簡単に奪われてしまう場所やからね…。あ、そや、ねえ、寛司君、結婚したんでしょ?」

寛司「うん。してるけど…」

町子「うん?」

 

寛司「こんな仕事やろ。家庭を大事にしていくのと両立はなかなか難しでえ」

町子「そやね。ねえ、うち来てよ。そうよ。続きしゃべろ。うち来てすぐやから。ねえ、来てよ。ねえ、ねえ。ねっ、いいやん、いいやん。おっちゃんも喜ぶから。ねっ」

寛司「おっちゃん? ああ、ご主人か」

純子「大先生もお会いしたいっておっしゃってました」

町子「来てよ、近いから。ねえ、来て来て」

 

寛司「行きたいけど、ちょっと今日は約束があって…。もしよかったら日改めてお邪魔さして」

町子「本当? 絶対約束よ。私、おいしいもん作るわね。お酒も一緒に」

寛司「あの時のお母さんのホットケーキよりうまいか?」

町子「あのホットケーキおいしかったもんね!」

寛司「うん。うまかった~」

 

由利子の部屋

 

♪禁じられても 逢いたいの

見えない糸に ひかれるの

禁じられた恋

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詩がうまく書けず、ベッドに寝転がる由利子。

 

ミニ予告

千春「『電話しても無駄』や言うてたのに」

 

カンジが平田満さんになった!

peachredrum.hateblo.jp

そういや、ももさんが秀平のカメラマンの仲間に一瞬でフラれる回があって、ツイッターでその人が平田満さんに似てると(というか本人と思ってる人もいた)話題になっていたなあ。秀平は町子やカンジと同世代でカメラマンなので、何か縁を感じます。

 

この回は写真について熱く語ってるしねえ。秀平曰く写真とは「時代の証言者」。秀平は言うことは立派なんだよ、言うことは。

 

学生運動をしてきた人をイマイチ冷めた目で見てしまうのは親世代の戦争を生き抜いた人々へのリスペクトを感じないことと、結局、反戦とか言っといてそれを訴える手段が暴力だったりするからかな~。