公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
作家・町子(藤山直美)のよく行く店の紹介記事で、おでん屋「たこ芳」は繁盛したが、店に入りきれなかった客にちょうちんをつぶされる。だが、町子には知らせないよう周りは気遣う。一方、徳永医院では喜八郎(小島慶四郎)がお金をたびたび持ち出し、イシ(岩本多代)が健次郎(國村隼)に相談する。また、徳永家の男の子たちに、町子と仕事をしている出版社から少年雑誌の景品が届き、子どもたちは大はしゃぎするのだが…。
茶の間
健次郎「みゆき館まで客増えたて?」
町子「それでね、私の手をギュ~ッと握って何べんも『ありがとうございます。ありがとうございます』言われるから、私、恥ずかしかった~」
健次郎の隣にいるイシはぼんやり。
健次郎「雑誌の影響力ちゅうのはバカにでけんもんやな…」
町子「うん」
純子「あら、それをおっしゃるんでしたら町子先生の影響です。先生の読者、若い女性が急増してるんです」
健次郎「へえ~。けど、女子供にだけ売れて喜んどったら、すぐに飽きられます」
純子「あら! 大(おお)先生は結構厳しいんですねえ」
健次郎「大先生?」
町子「大先生?」
純子「先生がお二人ですから町子先生と大先生」
健次郎「ああ…大先生な…」
イシ、ぼんやりしていたがハッと気づく。「うん? あっ、あんた往診に行かんと」
健次郎「あっ、ほんまや。行ってくる」
町子「行ってらっしゃい、大先生」
健次郎「うるさい、町子先生」
アムール前
和田「取材や取材や! そこしっかり掃いてや!」
晴美「はい」
和田「カウンターもピッカピカに磨いてな! それからお花、飛び切り派手なやつ買うてきて!」
晴美「はい!」
和田「高うてもかまへん! さあ、取材や取材や! ハハッ! (周囲に聞こえるような大きな声で)取材やで~!」
晴美「そやけどママ、たこ芳みたいに…」
和田「あ~、あれはな、おりんさん客さばき下手やさかい。お客さん増えたかてうまいことやらな客商売やっていかれへんねんで」
工藤酒店
一真「ほんまか? ちょうちんを?」
貞男「うん。さっき配達に行ったらな…」
回想
割られた提灯を発見した悲しそうなりん。
一真「誰がそんなむちゃすんねんな!」
タエ「アムールの性悪ちゃうか? ほら、あの、たこ芳が雑誌に紹介されて、お客増えたから、ママ、すねてたみたいやから、キャキャキャキャキャキャ! あ~、怖、怖! うっとこでも気ぃ付けなあかんで、お父ちゃん」
貞男「だから違うんやて。話聞いたらな、昨日の晩に例によって満員で入られへんかった酔っ払いがごねてもめたんやて」
一真「おりんさんと?」
貞男「そいつが閉店後に嫌がらせしたんやろて」
一真「ああ、それは皮肉な話やなあ…。雑誌に紹介したんが裏目に出たて耳に入ったら町子さんかてあんた…」
健次郎「町子が何?」
一真「いやいや、それは別に…」
健次郎「裏目って何や?」
一真「なあ…」
貞男「いやいや、あの町子さんの話なんかしてまへんで。なっ?」
タエ「はい。ひと言も」
和田「こんにちは!」
貞男「い…いらっしゃい!」
タエ「あっ、毎度毎度!」
貞男「忙しい忙しい、ほんま。何にしましょ?」
和田「ソーダ1ダースとそれから、え~っと瓶ビール2ケース届けてちょうだい」
貞男「はい、毎度」
和田「あっ、そうそう!」
貞男「え?」
和田「たこ芳、なっ、えらい災難やったんやてな!」
健次郎「災難て何?」
貞男「あ~、ママ、ママ、ママ! 新しいウイスキー出たんやけどな、これ1本、見本でどない?」
和田「雑誌に載ってな、一見さんやら若いお客急に増えて、お店が荒れてしまういうことは、ようあることやしなあ。ほんまにもう、おりんさん気の毒になあ…」とハンドバッグで口を隠してたけど、笑い堪えてないか?? 面白いなあ、もう。
健次郎「何かありましたんか?」
一真「いや、いや、いや…」
和田「ほな、よろしゅうにな! え~、これいや、おおきに!」
健次郎「なあ、どういうことやねん?」
徳永家廊下
純子「もうお見えになりますよね。私、速達出したら、お茶菓子買ってすぐ戻ります。編集者の方、お一人ですか?」
町子「そうです。お願いします」
純子「行ってまいります」
町子「気ぃ付けて」
健次郎「あっ、あのな、夕方ちょっと出かけてくるから晩、先、食べといて」
町子「往診ですか?」
健次郎「おう。まあ、そんなようなもんや」
隆「エイヤ~! タ~! ウルトライダー見参!」←昨日のミニ予告
お面をかぶり、棒を持った隆が廊下を走り、階段を上っていった。
町子「ウルトライダーって大はやりやね。エイヤ~! タ~! 見参や!」
待合室
喜八郎「ちょっと借りただけじゃろ!」
イシ「ここの持っていくのはやめてくださいって、お願いしたでしょ」
喜八郎「ここのもあっこのも、うちのもんは、みんな一緒じゃろ。後でお前が返しといてくれたらええのじゃ!」
イシ「何を言うてはりますの!? お父さん!」
喜八郎「何を言うてんねんな!」
健次郎「どないしたん? どないしたん?」
喜八郎「あ…いやいや、何でもない。気にすんな」
健次郎「『何でもない』て、大きな声出して…」
喜八郎「うん、すまん」
健次郎「お母ちゃん?」
応接室前
純子「失礼いたします」
町子「は~い!」
純子が障子を開けると、階段を下りてきた隆がそのまま応接室へ。
純子「あ~っ!」
隆「ウルトライダー見参!」
編集者「ハハハ!」
町子「ねえ、隆君、お仕事の大切なお客さん来てはりますから、あっちで遊んでちょうだい」
隆「ライダービーム剣!」
編集者「うわ~、やられた~! かっこいいぞ! ハハハハハ!」
町子「どうもすいません」
編集者「いいえ。今は日本中の男の子がウルトライダーに夢中ですからね」
純子「すごい人気ですよねえ」
編集者「はい」
町子「うちもね、男の子3人いてるんですけど、時間になったら、ちゃ~んとテレビの前に帰ってきてくれはりますわ!」
編集者「実はあれ、うちの出版社の小学生向けの雑誌に掲載されていたマンガなんです」
町子「『冒険少年』ですよね」
編集者「そうです。もうね、オリジナルのプレゼント付けたら、売り上げが伸びて伸びて!」
町子「へえ~!」
この回は昭和42年11月ごろ? 昭和42年10月から「ウルトラセブン」が放送されていた模様。でもウルトラマンて漫画原作じゃないよね? いろんなヒーローものが混じってるんだろうけど。この時期だと昭和43年1月から「ゲゲゲの鬼太郎」1期が始まる。「ゲゲゲの女房」ではだいぶ仕事が忙しくなってる頃かな。
診察室
イシが入ってくる。
健次郎「患者さんは?」
イシ「うん。今、途切れてる。お父さんのことやけど…」
健次郎「さっきのことか?」
イシ「金庫からお金持ち出しては飲みに行ってるみたいやの…。あんたには黙ってたけど、前からチョコチョコとな…」
健次郎「知っとったよ」
イシ「え?」
健次郎「お母ちゃんが後で返しよったやろ?」
イシ「知ってたん? もうこのごろ回数が多なってな…もうどこに飲みに行ってんのやら。まあ、大した金額やあれへんねけど…」
健次郎「難儀なこっちゃなあ。お金というより…なっ」
イシ「年も年やしねえ…」
健次郎「隠居しても現役の時の癖は抜けんねんなあ…」
イシ「にぎやかに飲むのが楽しみなんやもんねえ…」
健次郎「お金、すぐに金庫から別の場所に移すようにしよか?」
イシ「それぐらいしかあれへんもんねえ…。はあ…」
健次郎もイシも頬に手を当て同じ格好で悩む。昭一は喜八郎似か。
廊下を歩く純子。「わっ! どうしたの、その顔? ちょっとそのけが!」
登「大したことあれへんて!」
茶の間に来た登はランドセルを投げ出し、シャツを脱いだ。
由利子「登、またけんかしたんやろ?」
登「してへん」
由利子「うそ。見てた子がいてるもん。『プールのとこでけんかしてた』て」
純子「けんか…何でけんかしたん?」
シャツを畳に叩きつけると、茶の間を出ていった登。
純子「ちょっと! 消毒しないと!」
由利子「慣れてるから自分でやりやる」
純子「慣れてるの…」
仕事部屋
町子「けんか?」
純子「何か学校で…」
町子「子供同士でもいろいろあるんやねえ…。あら、時間や。お疲れさまでした」
純子「失礼します」
町子「また明日」
純子「5人いると楽しさも心配事も5倍なんですね」
町子「ああ…。あのおっちゃんにしたら、私がいてるから、そう…6倍。ううん、違う。お父さん、お母さん、妹さん、ほんでお兄ちゃん…。あらまあ、大変やわ…」
純子「ほんと、大変!」
2人の笑い声
たこ芳
壊れたちょうちんにそのまま灯りをともしている。
健次郎「あのちょうちんて大事なものやったの?」
りん「あれ、私が関東煮き教えてもろた先代のたこ芳の大将から譲り受けたもんですわ」
健次郎「先代?」
りん「あ~、あの、ミナミの方でお店やってはってね、私はもともとそこの客やった」
健次郎「え~、初めて聞いたで!」
りん「生まれて初めてそこで、たこいうもの口にしましてね。はあ~、もうそれもおいしいてね、びっくりした。うちの親、絶対、食べへんかったからね。西洋人ってね、悪魔や思てますねん。おかしいやろ? こんなおいしいもん」
健次郎「ハハハ! ほんまや。こんなうまい悪魔ないのにな」
りん「ほいでまあ、大将が引退しはる時、『おい、おりん、悪魔食ろうたら、もう怖いもんあれへんやろ。お前、ワシの店、継げ』。それからここへ移って、もう、かれこれ…まあ、長いことね…」
健次郎「そうでしたか。そんな大事なちょうちんやったのに…」
りん「形あるもんは、いつかないようなる。もうよろしねん…。大事なんは大将のこのおだし。どうぞ。あっ、そやそや…こないだの騒ぎの時、間に入ってくれはったんは、先生とこのお父さんでしたで。たまたま来てはってね」
健次郎「おやじ、ここに来てるんですか?」
りん「まあ、たまにやけど何人か連れてきてくれはりますわ。『どこそこで隣で飲んで気が合うた』とか…」
健次郎「ふ~ん…」
アムール前
おめかしした青いドレスのママが写真を撮られている。
和田「『月刊スナック』て見たことないなあ…」
男「飲食業界の人が見はりますね。『今月の美人ママの店』いうコーナーですわ」
和田「美人ママ? ハハハ」
男「それで10万ですわ。安いもんですがな」
和田「え? 10万?」
男「ええ宣伝になりますで~! お客もど~んと増えて」
和田「お金払うの…」
工藤酒店
貞男「おおきに。おおきに。毎度、どうも。いらっしゃい!」
喜八郎「ど~んと飲まな! ハハハ!」2人の男を引き連れて来店。
貞男「こんばんは」
喜八郎「こんばんは。1杯ずつ頼むわ」
貞男「あの…3人ご一緒ですか?」
喜八郎「一緒、一緒、一緒!」
貞男「あっ、一緒…」
喜八郎「それじゃ、まあこれで頼みまっさ」お札を渡す。
貞男「あ、はい」
喜八郎「おにいちゃん、飲んでや。飲んで、飲んでや、パ~ッと! ハハハハハ!」
茶の間
顔に傷の出来た登を見ていたイシ。「ヤンチャばっかりして! お友達は、けがせえへんかったの?」
町子「え?」
登「してへん」
清志「ほな、負けたんや」
登「負けてへんわ!」
イシ「何でけんかしたの?」
健次郎「ただいま」
一同「お帰りなさい!」
健次郎「あれ? おやじは?」
イシ「出かけてる…」
町子「どうぞ」ご飯をよそう。
健次郎「うん。ありがとう」
夕食後、茶の間
健次郎「けんか? そんな、ほっとけほっとけ。男の子やがな、日常や」
町子「私、お母さんがね、『相手はけがせえへんかったの?』て言わはるまで、そんなこと考えもせえへんかった。いや、私の弟ね、友達とけんかするようなことなかったから」
健次郎「うちはな、兄貴も血の気が多いし、おやじも今でこそあんなやけども、若い時は、まあ気の荒い人でな。徳永家でジェントルマンは僕だけです」
町子「何を言うてんのよ、もう!」
健次郎「何や」
町子「ねえ、健次郎さん」
健次郎「うん」
町子「最近、お父さん、よう外で飲んではるね?」
健次郎「うん…」
その数日後のことでした。
茶の間
隆「ウルトライダー見参!」
登「ライダービーム剣!」
清志「ライダービーム剣返し!」
登「そんなんないわ~!」
ライトセーバーみたいな棒で遊ぶ3人。
晴子「何や、えらい騒ぎやね」
清志「晴子叔母ちゃん、これな抽選で当たらなもらわれへんやつやねんで!」
晴子「え~、3つも当たったん?」
町子「編集者の人がね、人数分送ってきてくれはったんです」
晴子「あ~、さすが有名人の特権やね」
純子「あっ、頼んだんじゃないんです! あちらがご厚意で送ってくださったんです!」
隆「清志兄ちゃんに総攻撃!」
町子「何かお礼を考えなあきませんね」
清志「逃げろ~!」
隆「待て! ひきょう者!」
町子「すいません」
純子「はい」剣が入っていた袋などを片づける。
町子「はあ…」
電話が鳴る。
町子「はい、もしもし、徳永でございます。あ~、おりんさん。はい。いいえ。ちょうちん? 新しいちょうちんですか? うちのお父さんが? いやいや、いや、何にも…ええ…。いや、知らないです、はい」
ミニ予告
健次郎、町子、晴子が立っている。
晴子「お父ちゃん!」
イシさんが相当しっかりしていたから健次郎も晴子も医者になれたのかな。岩本多代さんは朝ドラではいいとこの奥様役が多かったからお金に苦労する姿が新鮮。まあ、「澪つくし」では正妻といえど女性関係でかなり苦労してそうだったけどね(^-^;