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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (122)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

夏の甲子園大会が始まり、浜風荘にも選手たちが泊まりに来る。忙しい純子(山口智子)の元に、つや(白川由美)と綾(繁田知里)が顔を出し、恭子(松本友里)も、手伝いに来た、とやって来る。あき(伊藤榮子)は西川とけんかでもしたんじゃないかと疑うが、恭子は違うと言う。すると、正太夫笑福亭鶴瓶)が西川からの花束とメッセージカードを持ってくる。純子は秀平とすれ違っていることを気にして、深夜まで帰りを待つが…。

月曜日回

 

栄冠は君に輝くが流れる。

 

昭和30年夏、再び高校野球の季節がやって来ました。全国1,721校の中から予選を勝ち抜いた23校。

 

歓迎 北海道代表

    道北学園御一行様

 

浜風荘は春に続いてまた北海道の代表校を引き受けたのであります。

www.jhbf.or.jp

昭和30年 実際に甲子園に出場した北海道代表は芦別高等学校。

 

玄関前を清原先生が水まきをしていた。

 

医師と看護師がいて、生徒達を診察している。

医師「はい、舌出して。あんた、ポジションどこや」

生徒「セカンドです」

医師「夜は寝られるか?」

生徒「はい」

医師「よっしゃ」

生徒「ありがとうございました」

医師「はい、次」

 

女将部屋? 電話のある部屋

つや「健康診断の先生まで用意するなんて大変やなあ」

純子「春のセンバツの時はピッチャーの子が熱出してえらいことでしてん。そやさかい、やっぱり用心しとくに越したことない思て」

つや「甲子園までせっかく出てきたんやもの」

純子「ほんまですね」

 

綾「お母ちゃん! こんなところで油売りいらんとちょっと手伝うて。生徒さんらのお昼の支度があるんやで」

つや「分かった、分かった」

綾「もう…」

つや「こんな忙しいんやったらなあ、久助、そこに座っとったらええのに」

純子「そんな」

 

つや「しょうもない出版社にしがみついてたって…。そっちの方がよっぽどええと思うけどな。結局な、うちが赤字の尻拭いをしたんやけど、あのままほっといた方がよかったやんかと思うわ」

純子「そない言わはったら校長先生がかわいそうですやん」

 

元木「静かにせんか」

生徒「はい、すみません」

元木「何か着ろ」生徒たちは上半身裸のまま歩いていた。

生徒「すみません」

 

元木「すみません。いや~、申し訳ないですな、騒々しくて」

純子「いいえ、監督さん」

元木「すみません、貴重品、またお願いします」

純子「はい、分かりました。ちょっと待っててください」金庫に入れる。

 

元木「はいはい。あの…たばこいいですかな」

つや「どうぞ。純ちゃん、この灰皿いいのか?」

純子「はい、すんません」

元木「ああ、恐れ入ります、どうも」

 

電話に出る純子。「はい、浜風荘でございます。はい。8月16日ですか? すんません、17日まで高校野球がおますよってにお断りしてますねん。はい」

タバコを吸いかけたが、驚いて純子を見る元木監督。

純子「そうです。北海道の代表の生徒さんたちが泊まってはりますさかいに」

元木「あ…あの、女将さん」

純子「はい、また、よろしくお願いします。すんません」

 

元木「どうぞ、構わんですよ、予約入れて」

純子「いいえ。決勝戦まではお部屋は空けさしてもらいます」

元木「いや…とんでもない。我々はこう言っちゃ何ですがね、決勝までいられるなんて思っちゃいないんですから。いや、北海道の予選の時だってね、代表になって誰がびっくりしたって、自分たちが一番びっくりしたんですからな」

 

純子「そんな。野球はやってみな分からしませんやんか」

元木「まあ、そう…そうありたいもんですな。アハハハハ。いや、それじゃ…アハハハハ。それじゃよろしくお願いします。どうも失礼」

純子「どうもご苦労さんでした」

 

つや「面白い監督さんや」

純子「ほんまですね」

 

もも「純ちゃん、生徒さんたちのお昼の用意でけた」

純子「はい」

つや「あら、ももさん、また手伝いか?」

もも「そうです。阿倍野の食堂ね、ぬひさんに任して、うち、こっち出てきたんやらよ」

つや「大変やな」

 

純子「なあ、ももさん」

もも「はい」

純子「なあ。冷蔵庫にあった桃な」

もも「はい」

純子「桃」

もも「はい」

 

純子「3箱あったやろ? 桃。あっ、桃」

もも「こっち? はい」

純子「あの桃のうなってんのやけど、ももさん知らへん?」

もも「ああ、あれは秀平さんに持たしたけどな」

純子「秀平さんに?」

 

もも「取材先の混血児のいる養護施設にな、何かお土産ないか言うから、ああそれやったら桃ある言うて。ほな、これ持っていきて持たしたけど、あれ、あかんかったんかいな」

純子「ううん、それやったらかまへん」

もも「そうか。ほな」

 

純子「何やの。私が施設へは手ぶらでええのて言うたら、かまへんて言うててからに…」

 

あき「すんません、ほったらかしで」

つや「忙しくて大変やねえ」

あき「いいえ。綾ちゃんにまた来てもろて助かってますのや」

つや「いや、もう、うちのは村におっても何にもすることないねん。どうぞここで使うてください。アハハハ。それはそうとしてな、あきさん、誰かええ人おらんやろか」

あき「え?」

 

つや「綾。もう23にもなってな、どっからも話がないねん」

あき「そんな。綾ちゃんあんなにきれいなんやし、これからですやん」

つや「いやいや、もう。行き遅れてしまうんじゃないかって、それが心配でな」

純子「そんなことあらしませんて」

 

昭和30年だと、多分、純子が26歳。雄太、小百合、金太郎が20歳。恭子はその間で23歳だから、やっぱり綾は恭子の同級生か。恭子は演じてる人が変わらないのに、綾は途中まで子役だったから何となくややこしい。

 

綾「お母ちゃん、余計なこと言うたらあかんで」

つや「何や? 余計なことって」

綾「どうせいい人いてへんかいう話やろ」

つや「聞こえたったか」

綾「聞こえんでも分から。ちょっとね、自分が北川さんと再婚したもんやさかい、今度うちの番や思て。そうや。おばちゃんからも少し言うて。食前食後に縁談の話、もう、うち、かなわん」

小百合「綾ちゃん、行こ」

綾「ほんまやな。もう行こ行こ」

 

廊下を歩く綾と小百合。玄関でははっぴを着た清原先生が座っていた。

 

電話の音

純子「お母ちゃん、ええよ。はい、浜風荘でございます。いや、北川さん。はい、ここにいてはります。ちょっと待ってください。旦那さんです」

 

つや「嫌や、旦那さんだなんて。もしもし。はい、うちです。はあ、ええ、ゆっくりさしてもらってます。ええ、暑いですなあ。あの、北川さん、まめにシャツ着替えてます? はあ、ええ、そうやねえ、あの…。ヨットの柄の開襟のシャツと違います? アハハハ、そうでしょ。ええ、それで、あのズボンは綿の水色のズボンで。アハハ、やっぱり? ほなうち分かります? いや~、そうやわ。はあ、絽のお召しです。アハハハハ。ええ。えっ? 東京へ一緒に? そうですね、はい。はあ、分かりました。はい、ほな楽しみに。はい、はい、さいなら」

 

純子「いや~。北川さんの着てはるもんまで分かるんですか?」

つや「まあ、おおよその見当やけどな」

あき「いや~」

純子「秀平さん、今日は何着ていったんやろ」

 

あき「東京からですか?」

つや「神戸へな、お商売で来てるんだけれども、東京へ一緒に帰らへんかって言うてな」

あき「よろしいやないですか」

純子「ほんま羨ましいわ。あっ、そうや、私、秀平さんが今日はどこへ取材行くかも聞いてへんかったわ」

 

清原「秀平君はね、今日はね、虹の家という施設に行ったよ。終電車で帰ると言ってたよ」

純子「そうですか」

あき「純子、あんた聞いてへんの?」

純子「うん。何やバタバタしてしもたもんやさかい」

 

つや「ほな、うち、ちょっと神戸行ってきますわ」

あき「あら、お昼は?」

つや「お昼は向こうで一緒にいただいてきます」

純子「ほんまに?」

 

つや「じゃ、また来ます」

あき「そうですか」

つや「ごめんなさい」

あき「ほんならまたどうぞ」

 

玄関

清原「もうお帰りですか」履き物を出す。

つや「先生、そんなことしていただいたら罰が当たります」

清原「とんでもない」

つや「すみません。ほな失礼します。さいなら」

あき「またどうぞ」

純子「どうも」

 

女将部屋

恭子「よっ」

純子「恭子!」

あき「いつ来たん?」

恭子「たった今。お勝手から」

 

純子「どないしたんや?」

恭子「忙しいんやろ? 手伝いに来たんや。ありがたいと思て」

あき「ほんまに?」

恭子「ほんまや」

純子「西川さんは?」

恭子「ああ、あの人はパントマイムの教室を持ってるさか留守番や」

 

物音

清原「こらこら、廊下は静かに歩きなさい」

生徒たち「すみません」

 

純子「なあ、ほっといてもええの?」

恭子「かまへん」

あき「恭子、あんた、なんぞあったんと違うんか?」

恭子「なんぞって?」

あき「西川さんとけんかしたとか」

恭子「何でえな。けったいなこと言わんといて」

あきと純子は釈然としない。

 

清原「正太夫君が来ましたよ」

太夫「こんにちは」

純子「こんにちは。どないしたん?」

太夫「何やよう分からんのやけど、これ、恭子ちゃんに届けてくれ言うて」

バラとカスミソウの花束。

恭子「私に?」

太夫「これがメッセージや」

 

メッセージカードには毛筆で「ごめん」

純子「何やの? それ」

太夫「分からんのやけど、西川君から電話があってな、ほいで、これ」

恭子「あの人からの花束?」

太夫「そうやらよ。何やとにかく豪華な花束届けてくれ言うて。恭子は浜風荘行ってるさかい言うて。で、中に『ごめん』て書いたカードを添えといてくれ、金はないさかい、立て替えといてや言われて、それで僕来たんやらよ」

恭子「へえ~」

あき「ほら、やっぱり何かあったんやないか」

 

2階の部屋? 花束を抱えた恭子。

純子「やっぱりけんかして出てきてんねやんか」

恭子「ほんまはそうやねん。大体な、ちょっとパントマイムの方が調子がええ思て、のぼせ上がってんねん」

純子「何があったん?」

 

恭子「いや、パントマイムを習いに来てる女の人を5人も連れて鎌倉まで泳ぎに行ってんねん」

純子「泳ぎに?」

恭子「そやねん。失礼やと思わへん? 午前中にレッスン終わって『そや、ちょっと泳ぎに行こか』言いだして、そのまま電車で鎌倉まで行ってしもたんやで。それで2時間も泳いで」

純子「何や。アハハハハ」

 

恭子「おかしい?」

純子「えやないの。なんも1対1で行ってるわけやないのやから」

恭子「そらそうやけど、こっちかて頑張ってんのに面白ないわ」

純子「アホやな。そんなやきもちやかんかて」

 

恭子「何言うてんの。お姉ちゃんかてやきもちやきのくせに」

純子「いや、私はそんなことない」

恭子「いや、私な、このごろ、愛情って何やろって思うねん」

純子「愛情?」

 

恭子「うん。うちとこもな、私が旅興行で出ることも多いし、帰ってきても疲れてしもてろくに夫婦らしい話もせえへんねん。それがあかんのやろか。お姉ちゃんとこはうまいこといってる? ちゃんと夫婦で話し合うてる?」

純子「それは…。秀平さんもこのごろ忙しいし、私の方もてんてこまいしてるし、ろくに話らしい話もしてへんなあ」

恭子「危ないんと違う?」

純子「そやろか」

 

恭子「いや、分からへんけど結婚して安心すると、どこかに落とし穴があるで、きっと」

純子「そやなあ」

テーブルの上の恭子の手元には「ごめん」のメッセージカード。

 

板場

純子は一人待っていた。

あき「純子、はよ寝んと、明日生徒さんたち8時から練習や言うてはるさかい、5時には起きなあかんで」

純子「うん。秀平さん、終電車で帰ってきはるそうやから、今日は起きて待ってるわ。ほな」

 

女将部屋でそろばんをはじく純子。あくびをかみ殺す。

 

今夜こそ擦れ違い続きの秀平に優しい言葉の一つもかけようと思う純子なのでありますが、こんな時に限って遅いんですねえ、旦那様のお帰りが。

 

純子と秀平って見た目はお似合いなんだけど、ことごとくかみ合わない夫婦という感じがする。西川さんは誠実そうに見えたけど、若い妻もらって調子乗ってるなあ。