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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (120)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

9回表まで2対0で北嶺が勝っていて、純子(山口智子)は魚屋に鯛を注文する。わらべ出版には債権者の男(日高久)が押しかけて、正太夫笑福亭鶴瓶)と節子(布勢真穂)を問い詰める。試合は2対1で9回2死まで進むが、ピッチャーゴロを宮下(滝知史)の暴投でサヨナラ負けしてしまう。落ち込んで帰って来るであろう選手たちをどんな顔で出迎えたら、と純子たちは考えるが、選手たちは意外に明るい顔をして帰ってきて…。

ラジオ「9回の表、得点は2対0。北嶺高校が依然として2点をリードしています」

 

板場

あき「あと1回やな」

純子「うん。石田君。あの、秀平さん呼んできて。お洗濯、後でもええやん言うて」

石田「はい」

もも「9回やで」

石田「はい」

完全に作業の手を止めてラジオの前でじっと聞いている純子たち。

 

ラジオ「第4球を投げました。打ちました、三塁ゴロ。サード前進してくる、ツーバウンドすくい上げた。捕って一塁へ投げる。一塁はアウト」

 

小百合「勝てるやろか」

純子「大丈夫。勝てる勝てる」

 

ラジオ「北嶺高校、打順が…」

 

純子「そや。やっぱり魚屋さんに電話しとくわ」

あき「えっ、鯛か?」

純子「うん、そうや35匹。なっ、もうええやろ。やっぱり1回戦で勝った時にはパ~ッと景気つけとかんと」

あき「そやな」

 

秀平「よ~し」

 

ラジオ「前進して捕りました。ツーアウト。北嶺高校1番、初球打ちでしたが、レフトライナーに倒れました」

 

わらべ出版

太夫「すいません。もうちょっと待っていただけませんか」

債権者「社長はどないしたんや?」

太夫「社長は金策に走り回ってるんですが」

債権者「専務は? 頭のこないになった人(手であたまをなでる仕草をする)。こないだ3日中にはなんとかて言うてはったで」

太夫「あの…そう頭のこないなった人。あの人、えっと…。身内に不幸があって、くにへ帰ってますねん」

 

債権者「いつ帰ってくんのや?」

太夫「さあ…」

節子「どうぞ…」お茶を出す。

債権者「社長はおらん、専務はいつ帰ってくるや分からん。話にならへんやないか」

 

太夫「すいません!」節子も一緒に頭を下げる。

債権者「あんた、なんとか責任取んなはれ」

太夫「あんた…僕ですか?」

節子「いや、この人は、わらべ出版の人とは違いますねん。関係ないんです」

太夫「関係ないんですわ」

 

債権者「ほな、あんた何やねん?」

太夫「えっ…いや、僕、何も関係ないです」

債権者「何も関係ない僕が何でこんなとこいてんのや。あんた、わらべ出版の人でしょ」

太夫「いや、僕は違います」

 

債権者「今、ごちゃごちゃ言うてたやないか。あんた、社員なんやろ?」

太夫「いや、違います」

債権者「おかしいやないか。社員でもない人間が何で言い訳したり、謝ったりするんや」

節子「でも、ほんまに違うんです」

債権者「ほな、何でここにいるのや!」

太夫「いや、そやさか、あの…。あの、この人のとこ、ただ遊びに来たんですわ」

 

債権者「遊び?」

太夫「あの、僕らあの…こういう仲なんです」節子の肩を抱く。

節子「えっ?」

太夫「仲ようしやるんです。ほんで借金取りに一人で謝るの心細いさかい一緒に謝ったろ思て。かわいそうでしょ」

 

ラジオ「ホームイン、1点入りました、2対1!」

 

太夫「あかん、1点入ってしもた」

債権者「1点がどないした! こっちは2万円貸してんのやで」

ラジオを消し「不謹慎じゃ!」

 

太夫「はあ」と言って頭を下げ、節子も頭を下げた。

 

板場

ラジオ「9回の裏、ツーアウト、ランナーは二塁三塁、僅かに1点リードの北嶺高校。その1点を守り抜けるかどうか。バッターは6番の三好です。ボールカウントはツーエンドツー。ピッチャーの宮下がじ~っとキャッチャーのサインをうかがいます。スタンドはとにかく一塁側三塁側とも総立ちになっています」

 

小百合「お願いや」

 

ラジオ「第5球を投げた。打ちました、あっとピッチャーゴロ、当たり損ないピッチャーゴロ、万事休す!」

 

純子「勝った!」

歓声

 

ラジオ「あっと高い高い暴投になった、暴投になった。三塁ランナーはホームイン同点だ。ライトがボールを追っている、懸命に追っている。二塁ランナーも三塁ベースを回った。ライトがボールを返す。バックホーム、ボールが来る。ランナーが走る、タッチして滑り込んで、タッチはどうだ? セーフ! セーフ、逆転! 3対2、逆転勝ち! 黒潮高校9回土壇場…」

 

あき「えっ…」

もも「負けたんか」

あき「うん」

純子「あかん…」

 

雄太「くっそ~」

秀平「逆転サヨナラか」

清原「惜しかったねえ」

 

昭和30(1955)年 第27回選抜高等学校野球大会

平安 (京都) 4 - 2 北見北斗 (北海道)

 

あき「あっ、純子、鯛!」

純子「あっ、そうや」

あき「はよ断らんと」

もも「かわいそうに。北海道からはるばる出てきたのによ。あ~っちゅう間に負けてしもてなあ」

秀平「しかたないですよ、ももさん。それが野球なんだから」

 

あき「生徒さんたち、どんな気持ちやろな」

小百合「逆転負けなんてかわいそすぎるわ」

ヨシ子「宮下君、エラーして責任感じてるやろなあ」

雄太「いや、そうかも分からんけど一回でも甲子園で投げられたんや。僕に言わせると羨ましいぐらいやわ」

秀平もあきもうなずくが、あきは複雑な表情。

 

女将部屋?で電話を切った純子。

あき「どないしたんや」

純子「魚屋さんの方でも分かってはったわ。残念やったですねて言うてくれはって」

あき「悪いことしたな。そやけど負けて帰ってきはるのに鯛出すわけにもいかへんし。ま、しょうがない。今度何かほかのもんで埋め合わせさしてもらうさかい」

 

純子「選手の人たちが帰ってきはったら、どんな顔して出迎えたらええのやろな」

あき「あんな負け方しはったんや。泣いて帰ってきはるやろなあ」

純子「やっぱり私らは明るい顔で拍手して、ようやったって出迎えてあげなあかんな」

あき「そやな。慰めの言葉もないし」

 

玄関にスリッパを並べる清原先生。

小百合「選手の皆さん、帰ってきはりました!」

純子「はい」

純子たちは着物を着て、玄関でお出迎え。

あき「純子」

 

一同「ただいま!」

純子「お帰りなさい。残念やったですね」

あき「もうひと息やったのにね」

滝川「いやあ、実力どおりですよ。あの黒潮から2点取ったんですからね、満足してます」

野田「せっかく応援してもらったのに申し訳ありません」

一同「ありがとうございました!」

 

純子「ご苦労さんでした。さあどうぞ。お疲れさんでした」

滝川「ありがとうございました」

部員「ありがとうございました」

もも「頑張ったな」

 

板場

お茶を飲んでいる金太郎。

もも「みんな泣いて帰ってくんのかな思たけど、案外けろっとしてはったな」

あき「ほんまやな。やっぱり今の子やな」

純子「けど、よかった。あれで泣いて帰ってきはったら、どんな顔してええのんか分からへんとこやったわ」

あき「ほんまや」

 

宮下・木崎「失礼します」

木崎「すみません、お茶もらいに来ました」

もも「はいはいはい」

 

純子「どないしはったん?」

宮下「すみません。おばさんたちが気を遣うから、みんなで笑って帰ろうって申し合わせて帰ってきたんですけど…」

木崎「部屋に入ったら、やっぱり残念で悔しくて…」

宮下「俺がエラーしてしまって…」

 

純子「何言うてはるんですか。ナイスプレーやったやないですか。ええゲームやった。立派です」

peachredrum.hateblo.jp

宮下「おばさん、ありがとうございました」

あき「いいえ」

宮下「おかげで風邪が治って甲子園で投げることができました。一生の思い出になりました」

おばさん、おばさんて…。純子さん、あきさんなんて呼んだらおかしいし、お姉さんと呼ぶのわざとらしいけどさ。

 

もも「おまいが見に行くさかい」

金太郎「何でえな。だって綾ちゃんが一緒に行こうって…」

もも「おまいが見に行くまでは勝ったあったんや。すんませんな。この子が見に行ってしもたさかな」

宮下「いや、そんなことないです」

小百合「はい、これ、お茶。これ、熱いから気を付けて」

宮下・木崎「失礼しました」

 

あき「はあ~、疲れたな」

純子「ほんまや。高校野球いうのは大変やわ。気ぃ遣うて気ぃ遣うて。私、もう疲れてしもたわ」

あき「ほんまやな。ああ、しんど」

純子「旅館いうのは大変やな。生徒さんたちのお世話するやなんて、私らの手に負えんのかもしれんな」

 

もも「あ…。まあ1回戦で負けてしもたさか、こいからは楽にならよ」

あき「ももさん」

しゅんとなるもも。わりと失言するタイプだもんね。

 

純子「お母ちゃん、どないしたん?」

あき「うん、何や、だるいねん」

純子「大丈夫? あ、お母ちゃん熱があるやんか」

あき「そうかも分からへんわ」

 

純子「あかん。宮下君の風邪がうつったのかもしれん。はよ、お薬飲んで寝なあかん」

あき「今まで気ぃ張ってたさかいな」

純子「さあ、お母ちゃん、はよう。ももさん、ここお願いします」

もも「はいはい」

 

布団で寝ているあきに純子が絞った手拭いを額に乗せる。

あき「おおきに」

雄太「4~5日ゆっくり寝てたらええねん」

あき「そやな」

純子「ま、そいでもみんな喜んでくれはってホッとしたわ」

あき「少し人を入れんといかんな。今度はなんとかしのいだけども、ももさんも小百合ちゃんも明日には帰ってしまはるし」

純子「えらいこと引き受けたのかもしれんな。この旅館の前の旦那さんが高校野球の生徒さんを断らはったって聞いたけど、気持ち分かるわ」

あき「そやな」

 

翌日の朝、北嶺高校野球部の一行は北海道に帰っていきました。

 

もも「気ぃ付けてな」

木崎「女将さん、夏の大会できっとまた来ます。その時はよろしくお願いします!」

一同「よろしくお願いします!」

純子「はい。きっとまた来てくださいね。お部屋空けて待ってますさかい」

野田「どうもお世話になりました」

一同「お世話になりました」

 

純子「おおきに」

木崎「夏、来ます」

純子「気ぃ付けて」

もも「元気でな」

純子「待ってます。気ぃ付けて」

ももたちは旅館の中へ。

 

純子「あかん」

秀平「どうした?」

純子「夏まで待ってるて言うてしもたわ。ゆうべは高校野球のお世話は手に負えんて言うてたんやけど」

秀平「だったらやるしかないね」

純子「そやね。約束してしもたんやもん」

いつまでも見送る純子。

 

静かな旅館。

純子「お母ちゃん、もう起きてもかめへんの?」

あき「うん。もう熱も下がったさかいな、少し働いてピリッとせんとな。いつまでも寝てられん」

純子「そや、東京から3人さん、予約が入ってね。明日から2晩お願いします言うて」

あき「そうか」

 

「ハロー! ハロー、ミセスジュンコ!」と聞き覚えのある声!?

純子「いや…あっ」

 

浜風荘の玄関には白い洋服姿のつやと隣には北川。

純子「いや~、奥さん! 北川さんも」

つや「純ちゃん、お久しぶり。あきさんもお元気そうで」

北川「ハロー。ハウ アー ユー?」

 

純子「いらっしゃい」

つや「久しぶり、会いたかった~! (純子を抱きしめる)うれしい~。純ちゃん、懐かしい、このふわふわっとしたお顔!」抱きしめられて笑顔だけど戸惑う純子。

 

つやさん、北川さん久しぶり。「純ちゃんの応援歌」より前の作品だけど、「純ちゃんの応援歌」を見たうえで、「はね駒」を見ると、より面白いかもしれない。ジョージ北川はずっとナレーションで最終回だけ出てくる。つやさんは女学校の舎監。あきさんは津田むめ(梅子)先生で英語ペラペラ、きれいなドレスを着ている。それぞれ出番自体は少ないけど、今回の役とはギャップがあって、そこが面白い。