公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
マリ子(熊谷真実)と新八郎(田中健)の結婚式当日。義姉の孝子(今出川西紀)から、自身が嫁いだ時に使ったという筥迫(はこせこ)を借り、持参した着物で身支度するマリ子。略式ながらも厳かに式が終わり、隆太郎(戸浦六宏)と貴美(三木弘子)は孝子の家に旧婚旅行に行き、はる(藤田弓子)は東京へ帰る。皆の計らいにより、残された時間を家でゆっくり過ごすことになったマリ子たちだが、皆が帰った後、どこか他人行儀で…。
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今日明日と2話連続放送になります。
一夜明ければいよいよマリ子たちの結婚式ですが、時節柄それはごく内輪なものでした。
桜島を見ている新八郎。家では屏風の前に青と赤の座布団が並んでいるのを見ている隆太郎。マリ子を着つけるはる。
これがマリ子の花嫁姿でしたが、はるがその手で心を込めて支度をしてやりました。
はる「きれいですよ。とってもきれい」
マリ子「ありがとう、お母様」
はる「さあ、鏡を見てごらんなさい」
そこに孝子という女性が部屋に入ってきた。
孝子「まあ…」
はる「いかがでしょうか?」
孝子「とてもおきれいですわ。本当に」
はる「ありがとう存じます」
孝子は「これを花嫁さんの胸に飾っていただけませんでしょうか?」とはこせこを差し出した。
化粧ポーチのようなもの。
孝子「いえ、ただ私がこの東郷家に嫁入りした時に使ったものですので」
はる「そういうお品でしたら、ありがたく拝借させていただきます。ねっ、マリ子」
マリ子「ありがとうございます。お義姉様」
はるがはこせこをマリ子の胸元にさす。
はる「決まりましたよ、マリ子。立派な花嫁さんです。見てんしゃい。ねっ?」
マリ子の義姉・孝子役の今出川西紀さんは「おしん」の最初の奉公先の奥様だと指摘している人が何人かツイッター上にいて気付きました。中川材木店の奥様で優しい人ではあったけど、そのせいで古参の女中のつねに言いくるめられてしまった。
高砂や この浦舟に帆を上げて
この浦舟に帆を上げて
月もろともに出潮(いでしお)の
波の淡路の島影や
遠く鳴尾の沖過ぎて
はやすみのえに着きにけり
はやすみのえに着きにけり
お千代ねえやの結婚式の時は、マリ子たちの父の会社の村田さんが高砂やを謡った。今回は割と長めに隆太郎が謡う。
マリ子、新八郎、隆太郎、貴美、はる、孝子だけの結婚式。
隆太郎「では略式ながらこれで両家の結婚式をつつがなく終えもす。おめでとうごわす」
はる「おめでとうございます。新八郎さん」
新八郎「はあ。いろいろありがとうございました」
はる「ふつつかな娘でございます。長い一生の間には、さぞご不満も起きることとは思いますけれど、どうぞ共白髪まで連れ添ってやってくださいましね」
新八郎「はい」
はる「それでは、マリ子。汽車の時間もありますので、私はそろそろおいとまいたしますけれど、あなたは旦那様第一にお仕えするのですよ」
マリ子「はい、お母様」
隆太郎「じゃっどん、駅にはあたいらもお見送りに参りもんで何もあいもはんどん、めでたか酒ずしでん食べていってくいやんせ」
はる「とんでもございません。このような時にお見送りなどいただきませんでも、私は…」
貴美「いいえ、私どももこの嫁と一緒に参りますので」
はる「はあ?」
隆太郎「新婚旅行をとも思いもしたが汽車に乗ったり降りたり時間のなか時に2人も面倒じゃろう。そいじゃっで、こん際、あたいら夫婦が跡取りの家に旧婚旅行をして、こん隠居所を2人に明け渡そうっちいうことに決まりもしてな」
はる「まあ…」
隆太郎「花嫁どんも疲れるばかりじゃし、新八郎も我が家で残っちょる時間をたっぷり過ごした方がよかじゃろう」
はる「さようでございますか。何よりでございますとも。ねっ、マリ子」
マリ子「はい…」
孝子「私どものうちは隣町ですぐですから何かお分かりにならんことがございもしたら、どうぞお電話ください。義母でも私でもすぐに飛んでまいりますので」
マリ子「よろしくお願いいたします。お義姉様」
新婚夫婦水入らずにするとは、やるなあ~。しかし、新八郎って久留米育ちじゃなかった?と思ったら、両親は鹿児島、新八郎は久留米生まれと言っていた。
久留米にどのくらいいたか分からないけど、今は両親の隠居所も跡取りの家も鹿児島にあるということ。
祝い膳が終われば別れの時間が迫ります。
帰り支度をしているはる。
はる「幸せにね」
マリ子「お母様…」
マリ子と新八郎は家の前で見送り。
マリ子「私と同じ慌て者ですので、どうぞ、よろしくお願いいたします」
はる「まあ。それでは」
はると隆太郎、貴美、孝子が行ってしまう。
新八郎「急に静かになったな」
マリ子「ええ」
新八郎「しかたがない。お茶でも飲むか」
マリ子「はい」
マリ子が先に家に入っていく。
新八郎「ねえ」
マリ子「はい」
新八郎「あの…えらく他人行儀なんだな」
マリ子「えっ?」
新八郎「いや、式を挙げたからって亭主面をして言うんじゃないんだけど、何か僕を見る度に困ったような顔してさ」
マリ子「だって本当に困ってるんですもの」
新八郎「何が?」
マリ子「全然別の人みたいなの」
新八郎「僕が?」
マリ子「だって東郷さんの坊主頭って今度初めてなんですもの」
新八郎「ああ~、そうか。そうだっけね?」
マリ子「そうよ、健忘症」
新八郎「ハハハハッ! やっと調子が出てきたな、マー姉ちゃん」
マリ子「お言葉ではございますが、私はあなたのお姉ちゃんになった覚えはありません」
新八郎「おい、こら。ちょっと待ちなさい! こら!」
マリ子がお茶を入れる。
マリ子「どうぞ」
新八郎「う~ん…」
マリ子「どうかしまして?」
新八郎「いや…本当に何て呼んだらいいんだろうな?」
マリ子「何のこと?」
新八郎「君のことをだ」
マリ子「どうぞお好きなように」
新八郎「しかしね…」
マリ子「まあ、とぼけて。もう、『おいこら』って呼んだくせに」
新八郎「いや…あれはだね…」
マリ子「いいわよ。あんまり威張ったらさっさと逃げちゃうから」
新八郎「おいおい…ちょっと…」
マリ子「あっ…」
新八郎に腕をつかまれてちょっと気まずくなる2人。
磯野家では三郷さんがヨウ子を見舞っていた。
智正「そうですか…。そんなに急に結婚式を…」
マチ子「ええ。でもさっき電報が来まして、母はもうこっちへ向かっているそうなんです」
智正「そう。早く言ってくれればおばさんでも泊まりによこしましたのに」
おばさんというのは、トセさんのことか妻のことか!?
マチ子「大丈夫です。ただ、ヨウ子がちょっとかわいそうなだけで」
ヨウ子「あら! さみしがっているのはマッちゃん姉ちゃまの方みたいだったのに」
マチ子「ん…まあそれは認めるけれど、私が台所に立つとヨウ子に食べさせるものの味がガタンと落ちるし」
ヨウ子「さあ、味だけだったですか?」
マチ子「えっ?」
ヨウ子「お大根の千六本が百一本でそれがまた全部つながっていたりして」
マチ子「うわ~、もうヨウ子はそんな裏切り者だったの!?」
千六本とは千切りより少し太めでみそ汁などに入れる。
智正「いやいや、ハハハッ! ヨウ子ちゃんの目は昔から公明正大でしたよ」
マチ子「ああ、三郷さんまで意地悪~!」みんなで笑う。
みんな、明るさの上に明るさを装って不安に耐えているのでしたが…
せき込むヨウ子に心配するマチ子、三郷。
ヨウ子「大丈夫。マッちゃん姉ちゃまの顔がすごいんですもの。むせただけ」
蒸気機関車の映像と車内にいるはる。
おどけている妹たちも一人、夜汽車に揺られている母も同じく案じているのは花嫁・マリ子のことでした。
午前0時過ぎ。新八郎は筆で手紙を書いていた。マリ子がお茶を持ってそっと机に置く。
マリ子「どうぞ」
新八郎「ありがとう」
そばで控えるマリ子に「先に休みなさい」という新八郎。
新八郎「今日はいろいろあって疲れたと思う。先に休んでていいんだよ」
マリ子「はい」
新八郎「僕はこれを書き終えたら寝る。遠慮はしなくていい」
マリ子「新八郎さん」
新八郎「寝なさい!」
新八郎は部屋を出て中庭へ。新八郎の背中に語り掛けるマリ子。
マリ子「なんじ、我を愛するや。富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も、なんじ、我を愛するや。私はあなたの妻です。ですから、死が2人を分かつまでいつまでもどこまでも」
新八郎振り向く。「愛しているんだ、僕は! 愛してるよ。愛しているからこそ、僕は…」
マリ子「私もです! ですから…あなたを永久に失いたくないの」
マリ子を抱きしめた新八郎。
新八郎「この大バカ野郎が!」
マリ子「新八郎さん」
新八郎「黙れ、大バカ者! お前みたいな大バカ者の女房がどこにおる! この大バカが! バカ者!」
もうすぐ戦争に行って死んでしまうかもしれないような男の妻になるなんて、この大バカ者!っていうのは分かるんだけど、耳もとで大声でバカバカ言われたくなーい。