公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
マリ子(熊谷真実)が目を覚ますと、庭には凄まじい気迫で木刀を振り上げる新八郎(田中健)がいた。朝食時に、鹿児島の男は亭主関白だと話す新八郎を前に、マリ子はあの剛剣で切り合うことが戦争なのだと痛感し、別人のようで怖かったと新八郎に告げる。そんなマリ子に新八郎は、西郷隆盛像や桜島など、自分が生まれ育った鹿児島を案内して回る。新婚旅行のように楽しい時が過ぎ、新八郎はある歌にマリ子への思いをのせて…。
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本来の木曜日回。
朝、庭で「キエ~ッ! チェスト~!」という掛け声とともに木刀を振り上げる新八郎。何度も練習台?をたたく。
マリ子はその声に目を覚まし、庭を見る。
それは、マリ子が生まれて初めて出会った男のすさまじいばかりの気迫だったのです。
朝食。
新八郎「ああ~、うまいな~。今朝のみそ汁は特別だな。うん?」
マリ子「はい」
新八郎「しかし、考えてみると君の手料理でこうやって2人だけっていうのは初めてだもんね」
マリ子「ええ」
新八郎「家事には絶対的に自信がありませんって堂々と宣言され過ぎていたせいかな、僕はね内心は怖くて怖くてしょうがなかった。でも、どうしてどうしてこの卵焼きなんか大したもんだ。ええ? うん、我ながら実にいいかみさんをもらったもんだ。こら」
マリ子「はい」
新八郎「どうしたんだ?」
マリ子「いえ」
新八郎「ちっとも飯が減ってないじゃないか。ええ?」
マリ子「はい」
新八郎「鹿児島は亭主関白の国だからな。朝からしっかり食べておかないと僕は多分、大きな顔をして威張り腐るからとても太刀打ちできないぞ。ああ~…本当にどうしたんだ?」
マリ子「ああやって人を殺すんですか?」
新八郎「!」
マリ子「ああやって人を殺さなければ、あなたが殺されるんですね」
新八郎「…」
マリ子「そして、それが戦争なんですね」
新八郎「マリ子」
マリ子「いいえ。暴力がいけないなんて今は子供みたいなことは言いません。でも…でも怖かったんです、あなたが。あの時のあなたはまるで別の人みたいで…」
新八郎「あとで散歩でもしようか」
マリ子「えっ?」
新八郎「よし! 飯が終わったらね、案内するよ。俺の鹿児島を。なっ?」
本当に鹿児島ロケしたんだなー。「おしん」の佐賀はずっとセットだったのに。
新八郎「ほら、これがおいどんの西郷どんだ」
マリ子「まあ、洋服を着てらっしゃるわ」
新八郎「そうとも。西郷どんといえば、みんな着物を着ているものだとばかり思われている。あれは上野の銅像のせいなんだろうね」
マリ子「でも何だか私にはあっちの方が本当の西郷さんみたい」
新八郎「どうして?」
マリ子「だって犬を連れてるもの」
新八郎「犬? そうか、犬か。しかしね、これが本当の西郷さんなんだ。よし、じゃあ次は城山へ回ってみよう」
マリ子「はい」
新八郎「あっ、それからあんまり近づかないように」
マリ子「えっ?」
新八郎「いや、そういうお国柄なんだよ」
マリ子「まあ!」
新八郎「ああ~うそ、うそ! いや~…てれくさいんだな。マリ子さんがあまりにも新妻っぽいからね」
マリ子「ひどいわ。みんな私のせいにして」
新八郎「だから初めに言ったじゃないか。鹿児島では男が偉いんだ!」
マリ子「はい、耳にタコが出来るくらいに」
新八郎「あっ、それは申し訳ない。気を付けて」
マリ子「はい」
「男が偉い」なんて一見、セリフだけだと炎上!? でもその後の態度見たら、申し訳ないと謝ったり、気遣ったりしてるからね。
ここは南洲神社。または南洲墓地ともいわれ、明治10年 西南の役で戦死した将兵が総大将・西郷隆盛と共に眠っています。
新八郎「あれが西郷さんの墓だ」
マリ子が手を合わせる。
そしてここは磯庭園。薩摩藩主・島津公の別邸で、いわばこれが2人の新婚旅行だったのでしょう。
鯉に餌をやったり、庭を散策したり、石段を登って桜島を見る。
新八郎「『我が胸の 燃ゆる思ひにくらぶれば 烟(けむり)はうすし 櫻島山』。この歌はね、本当は恋の歌じゃなくて、むしろ憂国の歌なんだ。でも、まさに今の僕の気持ちそのものだ。愛してるよ。君を何ものにも代えがたいほどにだ」
マリ子「新八郎さん」
新八郎「示現流といってね、今朝、僕が稽古していたのは、古来この鹿児島に伝わる独特の剣法なんだ。小手先の技は一切使わず、敵と出会ったらただ一撃、脳天から真っ二つに斬り倒す。まあ、幸か不幸か中国戦線ではそういう場面に遭遇しなかったがね」
マリ子「今度は…今度はそういうことがあるとおっしゃるの?」
新八郎「いや、多分、そういうことはないだろう。だけどね、僕は君という妻を得てだ、今はどんなことがあっても生きて、マリ子のもとへ帰りたいと思ってる」
マリ子「はい」
新八郎「そのためにはだ」
マリ子「はい」
新八郎「もし、僕の前に立ち塞がるものがあったら、そいつを脳天からたたき割ってでも僕はマリ子のもとへ帰ってくる」
マリ子「新八郎さん」
新八郎「僕は必ず君のもとへ帰ってくる。そういう一念があればだ、たとえ諦めざるをえないような事態の中でも僕は決して諦めたりしないだろう」
マリ子「そうよ、諦めたりしたら嫌。どんなことがあっても最後の最後まで私たちのために諦めたりしたら嫌」
新八郎「うん」
マリ子「きっとよ」
新八郎「見ろよ、あの桜島。そのかわりだ、最悪の場合は指の一本くらいなくなっても構わんだろう」
マリ子「えっ?」
新八郎「いや、君のもとに帰ってくるためにはさ」
マリ子「もちろんよ、もちろんだわ! 足が一本なくなってたっていい!」
新八郎「おいおいおい…人のものだと思って、そんな景気のいいこと言うなよ」
マリ子「だって…」
新八郎「ハハッ、じゃあ誓ってくれないか? あの桜島にだ。必ず旦那様のご帰還をお待ち申し上げておりますって」
マリ子「そのかわり、あなたもよ。必ず奥方の所に帰ってきますって」
新八郎「よし」
新八郎は立ち上がり、マリ子を立たせる。
新八郎「♪我が胸の 燃ゆる思ひにくらぶれば
烟はうすし 櫻島山
我が胸の 燃ゆる思ひにくらぶれば
烟はうすし 櫻島山」
はるは均に荷物持ちをさせて帰ってきた。
マチ子「それじゃあ、マー姉ちゃんは!」
はる「ええ、今ね、兵隊さんのためのパンフレット作りの仕事をしているんだって、こう申し上げたらね、ということはとりもなおさず新八郎のためにもなることなんだから結婚したからというて、そのまま鹿児島にいてくれなくてもいい。東京へ帰って仕事を続けてくださいって向こうのお父さんがそれは熱心におっしゃってくださってね」
マチ子「よかった~!」
ヨウ子「でもいいのかしら?」
マチ子「いいのよ。だってあちらのお父様からそうおっしゃってくださったんですもの」
ヨウ子「でも、私が風邪をこじらせてるなんてことは…」
はる「いいえ。そんなことはひと言も言いませんでしたよ。だってなにも死ぬほどの大病ではないんだし、わざわざ新八郎さんに心配かけることはなかでっしょう」
ヨウ子「それならよかった」
新八郎の着替えを手伝うマリ子。
新八郎「ああ~、さっぱりした。君も入ってきたらいい。いい風呂だ」
マリ子「はい」
新八郎「うん」
娘を持つ親ならば、いつかその日を共に夢みて用意した花嫁衣裳ではありましたが…
豪華な花嫁衣裳を見ているはる。想像の中でマリ子が着用。これは持っていけなかったのかな?
東京の新聞記者時代のチャラさがなくなってしまった新八郎。「澪つくし」の梅木も低姿勢だったのに結婚した途端偉そうになったしな。女性より男性が変わってしまう印象があるな。マリ子は長男の嫁じゃないから割と自由がきいたということか。