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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (63)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

マリ子(熊谷真実)が挿絵家となって早半年。ある日、呉服屋の金沢(西村淳二)とともにはる(藤田弓子)が帰宅する。召集令状が届き、店を閉めることになったと言う。持ってきた反物を大金で購入したはるに抗議する娘たち。その夜、オネスト神父(ラッドバウト・モリン)が伝導の旅から帰ってきて、戦時下の悪状況を嘆き、生きる姿勢について説く。マリ子ははるが神の教えに従い、助け合って生きていこうとしていると気づき…。

梅雨です。マリ子が挿絵画家となってはや半年。仕事は極めて順調でした。

 

あめふりのアレンジバージョンがかかり、浴衣のヨウ子をモデルにマリ子が描いていた。

 

日曜日。マチ子は出かけていったはるに「たまにはうちで母親らしくする気はないのかしら?」とマリ子とヨウ子に話しかけた。食事の用意はヨウ子が自分でするといい、マリ子は休憩して3人で作ればいいと言うが、マチ子はたまにはおすしを取って食べようと提案した。

 

マチ子「私、おごるから!」

マリ子「大きく出たこと」

マチ子「だって現に私たち働いているんですもの。今やそんじょそこらの勤め人以上の画料は頂いてるんですからね」

 

はるに認識させようとするがすぐ逃げてしまうとマチ子は言い、マリ子は相手になるわけはないと言う。

マチ子「どうしてあの人あんなに強いんだろう?」

ヨウ子「それはヒトラーだからでしょう?」

マチ子「なるほど。でもいないとさみしくなるっていうのも変よね。我がおふくろ様も」

 

はるは誰か男の人を連れてきた。金沢良造(よしぞう)という大きな風呂敷包みを背負った男で、たくさんの反物を持っていた。200円といいたいところだが175円というとさらっと財布からお金を出すはる。

 

鎌田さんのとこに出入りしている呉服屋さんのそのまた知り合いの呉服屋さんで川崎の天松屋召集令状でお店を畳まなければいけないことになり、反物を頂くことにした。

peachredrum.hateblo.jp

以前、壺もただであげたし、いいカモにされてないか!?

 

はるは反物はお嫁に行くときにたんすにいれていくものだと言い、これからはぜいたく品は作っちゃいかんとお上のお達しがあったから、地紋のものや漆入りは絶対に手に入らないと良造もはるに加勢する。

 

金沢良造役の西村淳二さんは結構よく見る顔だなと思ってwiki見たら、2006年にお亡くなりになっていてそちらにびっくりした。最近も何かドラマで見たと思っていたら、「おしん」の1週目に老おしんをタクシーに乗せてあちこち行った方で、それ以外でも結構見かける方だった。

 

はるが良造を送りに行き、部屋に残った三姉妹。

マチ子「175円だって…。マー姉ちゃん、どうする気なのよ!?」

マリ子「どうするったって、もう払っちゃったんだもん。どうしようもないじゃない」

ヨウ子「でもよくそんなお金がうちにあったのね」

マチ子「感心してる場合じゃないのよ! マー姉ちゃん、あれほど言っといたのに、またお母様にお財布預けちゃったのね!?」

マリ子「しかたないでしょう。仕事をしながら金勘定なんてできないもの」

 

マチ子「ねえ、東郷新八郎さんのお月給いくらだか知ってる?」

マリ子「確か75円だって言ってたけど」

マチ子「でしょう? 帝大出て一流紙の毎朝記者で75円よ。また始まったのよ、また…」

マリ子「何が?」

マチ子「お母様の病気」

マリ子「もう脅かさないでよ」

マチ子「だったら、この反物の山はどういうことよ!」

 

反物は茶箱にしまっておく、夕方からオネスト神父が来ると言うはる。

マリ子「再発だわ…完全な再発よ」

 

マリ子は以前のようにゼロになってから通帳を見せるようなことは絶対にしないで下さいとはるに言う。

マチ子「もう二度とお母様のご趣味であんな目に遭うのはまっぴらです」

 

はる「何ば言うとっとですか、あなたたちは!」

マリ子「ですから…」

はる「大きく目を開けんしゃい。人間ほっとした時に一番堕落をするのです。トンテン、トンテン自分をたたいて御教えに従ったからこそ、あの時の窮地から私たちは立ち直れたのではありませんか。オネスト神父もちょうど伝道の旅からお帰りになられたのです。今、私たちはどのように生きなければならない、そのお教えを伺わなくてどうします? 漫画や挿絵をただ描いているだけでは人間の心は磨けないのですよ」

 

まさに再発です。しかしながら、物価統制令によりヤミという言葉が生まれたこの年、生きる姿勢を自らに問うていた日本人が一体どれほどいたでしょうか?

 

オネスト神父の説教を磯野家、天海親子、ウラマド姉妹が聞く。

神父「だから今までのように恵まれない人々のために働くことを続けながら私たちはこの国のことを考えなければいけません」

はる「はい」

神父「この国とこの国の人たちのこと」

はる「はい」

神父「アメリカの友達から呼びかけがありました。『日本は自殺する気か』」

マリ子「自殺?」

神父「『日華事変はもう3年目に入っているが戦争は少しも終結に近づいていない』」

ウララ「ええ、そのとおりですわ」

神父「『そして、命を奪われた者、数知れず。灰となった財貨は幾十億。中でも日本の受けた痛手はチャイナ、それよりも大きい』」

タマ「どうしてですか? だって日本は勝ってるんでしょう?」

はる「し~!」

 

神父「『工業組織は全面的に軍隊優先となり海外貿易も止まってしまった。あと1年ぐらいは持ちこたえられるかもしれないが、必ず最後には日本の経済は壊れるであろう』。私たちは今、神のお声に耳を傾け、今、戦争をやめなければ日本は国を挙げて自殺へのゴールへ進むのみである」

マドカ「まあ…なんと恐ろしいことでございましょう」

神父「今、神に仕える者たちには、みんな特高がついています。私が愛する日本のためにこんな話することもだんだんとできなくなります。でも皆さんは忘れないでください。今、この時にもチャイナでは罪なき子供たちが日本軍隊に殺されつつあることを」タマ「そんなバカな…。そんなひどいことを日本軍がするはずがありませんよ」

 

神父「そう? でも何のための戦争ですか?」

タマ「それは…あいつらが悪いからですよ」

ウララ「でもね、おかみさん。亡くなった主人が申しておりましたわ。ちょうど二・二六の時でした。これからは軍が強くなるだろうって。国民には軍の都合の悪いことは次第に知らされなくなるだろうって」

 

あら? ウララさんの旦那さんが亡くなったのって結構最近?

 

神父「そうです。そのとおりです」

ウララ「私ども洗礼を受けておりませんが、神父様のおっしゃるとおりだと存じますわ。この戦争は何の得にもならないばかりか日本を滅ぼすものになるだろうと思ってますの。ヨーロッパにおりましただけでも物量の差を感じますのに…。中国にはアメリカがついているのでございましょう?」

マドカ「そのアメリカから日本は自殺する気かなんて言われたら私たちは一体どうしたら…どうしたらよろしいのでございましょうか?」

神父「私は私の力のないことを知るばかりです」

はる「神父様…」

神父「でもこう申し上げましょう」

はる「はい」

神父「どんな世の中になっても自分を失ってはいけません。それは一番怖いことです」

はる「はい」

神父「みんなが右を向いてもまっすぐに歩いてください。でもよく考えた上で右を向いたら、それは許すほかありません」

 

ウラマド姉妹、天海親子がそれぞれ帰る。

タマ「本当かねえ…日本が自殺しているだなんて…」

朝男「俺は難しいことは分からねえよ。だけどな」

タマ「だけど何だい?」

朝男「俺に召集が来たら、やっぱり軍艦に乗って大砲撃ってくるだろうってことだよ」

タマ「朝男…」

朝男「あの人たちの言ってることは本当かもしれねえ。けどな…俺は男だからよ」

 

台所で後片付けをする三姉妹。昼間、あんなバカバカしい買い物するかと思うとオネスト神父からあんな大変な話を聞いたりして、一体どっちが本当の母親なのかしら?とマチ子は言う。マリ子はバカバカしい買い物も呉服屋さんの家族を援助するつもりだし、伝道を助けるのと全く同じだという。あれだけ神様を信じているお母様だけは絶対に天国に行ける。

 

お母様はすごいという結論になる三姉妹。

ヨウ子「戦争って本当に嫌」

マチ子「それを大きな声で言えない自分の方がもっと嫌だわ」

戦意高揚の漫画を描けと言われたら筆を折るつもりのマチ子だが、それだけでいいのか?とも思う。マリ子はどうすることもできないと言う。

マチ子「私、それが悔しくてたまんない」

 

まさに3人の青春は破滅に向かう戦争の真っただ中にありました。

 

時々、おしんみたいな強い視線を感じるマチ子。でもまだ昭和14年