徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】人情紙風船

1937年 日本

 

あらすじ

江戸深川の長屋を舞台にそこに暮らす人間がやがて破滅に向かう様を描いた、山中貞雄監督の遺作となった時代劇。河竹黙阿弥の歌舞伎『髪結新三』を三村伸太郎が脚色。この作品を撮り終えた山中貞雄は出征し、戦争により短い生涯に幕を閉じた。江戸時代。貧乏長屋に住む髪結いの新三は、同じ長屋に住む浪人が首吊り自殺したのを良いことに、通夜をやるからと大家から酒をせしめ、住民仲間とただ酒を飲んで馬鹿騒ぎを行うような男だ。彼は賭場を巡るトラブルから借金を抱えており、質屋の店主の娘であるお駒を誘拐し、長屋に連れ込んでしまう。

2021.7.4 日本映画専門チャンネル録画。なかなか日本の戦前の作品を見る機会がないので録画しました。昭和13(1938)年、日中戦争で28歳で戦病死した山中貞雄監督の遺作。明治42年生まれだと、吉行あぐりさんより年下か…。ほぼ同世代ですが。

 

長屋で首くくりが起こった。調べが済むまで外に出てはいけないと言われて不満げな住人たち。首くくりしたのは年をとった侍。大家が通夜に酒5升を出し、長屋の男たちで飲んで騒ぐ。翌朝、二日酔いの男たち。

 

同じ長屋の浪人・海野又十郎は昨年、父を亡くし、父の知人の毛利三左衛門に仕事を頼むが相手にされない。質屋の白子屋に行った毛利は、質屋の娘・お駒を家老の子息に嫁がせようとしていたが、お駒は番頭の忠七とできていた。質屋について行った海野は毛利が呼んだ若い衆に取り囲まれて殴る蹴るされた。

 

その中の1人が加東大介さん。さすがにこの映画で知ってるのはこの方くらいだな。海野又十郎役の河原崎長十郎さんは河原崎長一郎さんのお父さんだそうだけど、あまり似てる感じもないなあ。

 

長屋の新三は髪結だが、今は賭博にハマって金がない。白子屋に行き、髪結の道具を持って行くが断られた。外ではヤクザたちに暴力を振るわれた。

 

海野の妻のおたきは紙風船を作る内職をしていた。おたき役の山岸しづ江さんは1936年に河原崎長十郎さんと結婚。河原崎長一郎さんのお母さんなのか。

 

雨の夜、再び毛利に会いに行き、頭を下げる海野だったが、明日の朝、屋敷に来るように言う。以前、屋敷に行った時に門番に追い返されたことがあり、何度も念を押すが、もう声をかけるなと言われ駕籠に乗って行ってしまった。

 

雨の中、立ち尽くす海野。

 

新左は白子屋のお駒を誘拐した。「忠七、忠七」と叫ぶお駒を殴る新左。お駒の泣き声に気付く隣の部屋の海野。壁越しに話をする。

 

翌朝、新左の家に白子屋に頼まれたヤクザ一行がお駒を探しにくるが、お駒は海野の家にいたがヤクザたちは見つけられなかった。新左は親分の源七から出された5両も受け取ろうとしなかった。源七に頭を丸めて手をついて謝ってもらいたいという新左。源七は帰って行った。

 

大家の長兵衛は新左を褒めにきた!? 源七の鼻を明かしたことが痛快ということかな? 新左はお金などいらないと本気で言うが、そんな罰当たりなことをしたら目が潰れると言う長兵衛。

 

長兵衛は白子屋にお駒を連れて行くと言って、海野のところからお駒を連れて50両をせしめ、賭博に誘う。新左は長屋の男たちを酒に誘い、海野にも小判を渡す。

 

長屋の女房たちは海野さんもおとなしそうに見えて誘拐の片棒担ぐとはとんだ悪党だと噂話をしていたが、海野の妻のおたきが現れると話をやめた。

 

長兵衛が毛利から金をせしめたと知るとこれは愉快だと笑う海野。しかし、飲みの席を中座して一度妻に話してまた戻ると新左に言って帰った。

 

おたきに毛利の屋敷に行ったが仕事は断られたと言う海野。夜も更けて、海野が寝ている部屋でおたきは短刀を手に取っていた。明かりが消え、翌朝、心中があったと長屋が騒ぎになっていた。(終)

 

えー!? なんという終わり! 映画後に山下達郎さんと軽部真一さんの対談あり。山下さん曰く教訓がないのがいいということで、そういうものなのかな。当時も暗い話だと批判の方が多かった。トーキー映画なのできちんと声を出して芝居のできる前身座の俳優が中心。

 

この映画の封切りの日に監督に赤紙がきた。脚本はもう少し明るかったのに監督が暗くした。海野と新左の役者が逆だった。などなど裏話がたくさん聞けました。