公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
陽一郎の葬儀を終え、悲しみに包まれた小野家。純子(山口智子)は夕食を作り、昭(岩芝公治)、雄太(高岡俊広)、恭子(松本友里)を励まし、あき(伊藤榮子)を支える。その夜大阪から寺内ぬひ(西岡慶子)が弔問に来て、雄太をどこかの施設に預けたら、と言うが純子は反対する。興園寺家にあいさつに来た純子に北川(細川俊之)は、陽一郎の最後の言葉について優しく語り、それまで泣くのを我慢していた純子は泣き崩れる。
前回の臨終シーンから今日の野辺の送りも丁寧に描くなあ。
美山村に春が訪れる少し前、陽一郎はまことにあっけなくこの世を去りました。死の間際、どんな幻を見ていたのか。「ナイスプレー」という言葉を残して。
牛山家・鴨居のところに軍人らしき遺影が4枚。
うめ「人を送るというんはつらいもんやなあ」
かき「ほやけど純子ちゃんは気丈な子や。うち見やったけどな涙の一つも流しなかった」
きん「おお、そやったな」
もも「悲しすぎて涙も出らんていうことあるわな。泣けるうちはまだええかも分からん」
きん「そやけどな、この家のおなごは4人もあって、だ~れも亭主が死んだんみとってないんやがな」
うめ「ほやな…。みんなお骨を迎えただけやいて。白木の箱を」
ももの夫・金太郎の父はフィリピン沖で輸送船が沈み、海の底で眠っている。うめの夫・金太郎のひいじいちゃんは日露戦争で亡くなった。きんの夫はなんの戦争だったのか。
もも「けどな…うちどっか心の底でほっとしたあるんや」
きん「何で?」
もも「純ちゃんのお父ちゃんが死んで、ああこいでやっとうちと同じになったんやなて思て」
うめ「もも! そがいなこと言うたらあかん!」
かき「ほやらな。気の毒やて思わなあかん」
もも「分かったある。気の毒やなとも思たある。けど正直ああこいでうちより幸せな家が一軒減ったなって…。分かったある。そがいなこと考えるうちは悪い女や。恐ろしい女や。けど…」
きん「もも。そやな。ほんまにそうかも分からんな。お母ちゃんかてな何でうちだけがこがな目に遭うんかなと思たもんな」
こういう本音を書いてしまう脚本がすごいな。性格悪いとかそういう簡単な言葉で片付けられない思い。
小野家。陽一郎のお骨の前にいる恭子。陽一郎の戒名は「禅学陽徳信士」。あきと純子は食事の準備。
純子「人間て不思議なもんやね」
あき「何で?」
純子「こんな時でもちゃんとおなかがすくんやもん。こんな時でもごはん食べて、寝て…」
あき「ほんまやね」
雄太は外で涙をぬぐいながらハーモニカを吹いていた。昭もグローブをはめて涙がぽろぽろ。純子は明るく恭子を励ます。無言の夕食。
そこに訪ねてきたのはぬひだった。昭と雄太が寝た後、火鉢に当たりながら話をする。
ぬひ「そやけどな、奥さん。旦さんもえらいもん連れて帰ってきはりましたな」
あき「雄太のこと?」
ぬひ「そうでんがな。今のご時世、自分の子供かて育てるの大変でっせ。こんなこと言うたらなんでっけどな、あの…どこぞ施設にでも預けはったらよろしおまんのに」
純子「そんなことでけへんて」
恭子「かわいそうや」
ぬひ「そうかて…」
純子「大丈夫。お父ちゃんの代わりにうちが大黒柱になるさかい」
ぬひ「うちにはようしまへんけどな」
翌日、つやにお礼を言う純子。小野家の志を渡す。
清彦「純子ちゃん、どうや? 少しは落ち着いた?」
純子「何やもうぽかっと穴が開いたような気がして」
清彦「そやろな。けど、元気出してな」
あの家もこの家も父親のない家が多い。つやに久助がしょげ返ってると聞かされた。中学から30年来の親友か…まだ40代かな?
興園寺家で北川に「大丈夫?」と声をかけられた純子。
北川「おいで」いい声で。
縁側に座る北川と純子。
北川「お父さんの最期の言葉『ナイスプレー』だったって?」
純子黙ってうなずく。
北川「ナイスプレー。野球の試合のことだけじゃないんだろうな。人生そのもの…。そりゃあ苦しいしつらいし、おまけにこんな世の中だ。これからっていう時に心残りがあっただろうけども、でも終わってみればナイスプレーだった。精いっぱい生きた人だけに言える言葉だね。勝っても負けてもナイスプレーと言ってゲームを終わりたいね。どうした? ん?」
純子「私…私…。絶対に泣くまいと思ったんです。母や妹や弟たちがおるさかい私だけは絶対に泣いたらあかんて。そない思たんです」
北川「そう。しかしね泣いた方がいいんだよ。思いっきり泣いた方がいいんだよ」
北川の肩で泣く純子。
北川「泣かないからって強いんじゃないよ。泣いたからって弱虫じゃない。泣きなさい。神様はね人間にね、涙という美しいものを与えてくださったんだよ。悲しみを洗い流すために涙はあるんだよ」
いつまでもいつまでも泣き続ける純子でありました。陽一郎が亡くなって3日目に初めて見せた涙でありました。
胡散臭い詐欺師でとびっきりいい声の北川さんが純子を泣かせてしまうとは…。ずっと泣きながら見てしまいました。