公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
信彦(森田順平)の熱烈な愛の告白を受けた茜(島本須美)は、マリ子(熊谷真実)の口添えもあり、信彦とやり直すことを決意する。一方、マチ子(田中裕子)が描いた漫画は華々しく雑誌デビューとなった。その快挙は福岡の千代(二木てるみ)たちにも届いており、皆、姉妹の話題で盛り上がっていた。東京では、田河(愛川欽也)が赤飯を炊いたり、大造たちがお祝いの会をひらく中、マリ子の元に茜から一通の手紙が届いて…。
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茜のアパート
マリ子「あんまりです。どうして私が声をかけるまで待っていてくれなかったんですか?」
信彦「すまない。しかし僕は…」
茜「そうよ! マリ子さんの口添えだからこそ会う気にもなったのにこれは信彦のルール違反ね!」
マリ子「いえ、いいんです。もう会えちゃったんですもん。あとはお二人で話してください」
信彦「マリ子さん…」
マリ子「そのかわりけんかはしないでね。お願いします」
しかし、茜がマリ子を引き止めて、茜と信彦の痴話げんかを目の前で見ることに(^-^;
信彦「僕のどこがそんなに嫌になったの? なぜ2人になるのを避けるんだよ」
茜「そういうふうに我が物顔されるのがたまらないのよ」
信彦「しかし、君はもう僕のものだ!」
茜「いいえ、誰のものでもないわ。私は私です」
信彦「だけど僕らはもう他人じゃない」
茜「お互い相手の自由を認めるっていう話でああいうことになったんでしょう?」
信彦「そうとも僕は君の自由を認めるよ!」
茜「だったら私は結婚なんて望んでいないわ!」
信彦「じゃあなぜ君は僕と?」
茜「好きだったからよ。それで十分でしょう?」
信彦「なんという女なんだ、君は…。僕は君を誰にも渡さない! 愛してるんだよ、君を!」
茜「だったらこのままにしといて!」
信彦「いや、僕はもう君のうちへ正式に結婚の申し込みをしたよ」
マリ子うなだれるが、顔を上げる。
茜「何ですって!?」
信彦「今、人を立てて伊豆の君のお父さんの所へ行ってもらってる。僕もゆうべ一晩考えての結論だ」
茜「なんていうことをしてくれたのよ、あなたは! 父が『うん』って言うわけないのに!」
信彦「しかし、僕らにはもう既に既成事実がある」
茜「父にとってはそんなこと問題じゃないわ。いいえ、下手をしたらあなたは告訴されるわよ」
信彦「告訴?」
茜「そうよ! はあ…もうおしまいだわ。私は絶対に連れ戻されてもう二度と東京へは出してもらえないわ」
信彦「そんな…」
茜「いいえ。あなたたちは私の父を知らないからよ。私が生まれた時にはもう結婚相手を決めた、そういう人なのよ」
信彦「愛してるのかい? 君はその男を」
茜「誰が! だけど絵を描くことは許しても結婚だけは絶対に…! どうしてくれるのよ、信彦! 勝手に独走して私をどんな窮地に追い込んだと思ってるの!? 責任を取ってちょうだい!」
信彦「もちろんだとも」
茜「駄目よ…。父は大地主で山も持ってるし、議員をやってるから命令を聞く人はいくらでもいるのよ。そういう人たちから私を守れると思うの?」
信彦「守ってみせるとも。それが僕の愛の証だ!」
茜「愛の…証し?」
信彦「ああそうだ」
マリ子「茜さん。応えてちょうだい。今のこの信彦さんの気持ちに正直に」
茜「ありがとうマリ子さん。私、信彦に懸けてみるわ」
マリ子「茜さん」
茜「お人形みたいに家のために結婚するくらいなら私、信彦の今の言葉に懸けてみます。本当にありがとう。あとは2人で話し合ってみるわ」
マリ子「お願いします。お幸せに」
信彦「本当にありがとう、マリ子さん」
マリ子の絵は2人の激しい愛の渦に巻き込まれ、一時中断となりましたが、マチ子の漫画は全国の人々に晴れがましくデビューしておりました。
ひゃー、茜と信彦の舞台を見ているみたいだった。
戦前から戦後すぐまでは、高名な漫画家に弟子入りすることが漫画家デビューするほぼ唯一の方法でしたね。長谷川町子は田河水泡に15歳で弟子入りし、16歳で「少女倶楽部」でデビューしましたが、「僕の弟子の中でもあの子は全く天才だ」という田河水泡の推薦文が付いてました。 pic.twitter.com/vrTkmCRYeI
— 竹熊健太郎《地球人》 (@kentaro666) January 13, 2021
田河水泡先生がお褒めになる
少女漫画家 磯野マチ子さん
雑誌のレイアウトは似た感じに作ってたけど、写真は全然違った感じだったな。多分、マチ子は制服っぽいし。
福岡の牛尾家? 加津子と千代とトミ子が集まって雑誌を見ていた。マチ子の方が先に名を上げたと言うと、すかさずトミ子がマリ子の方はもう福岡新聞で金賞を取ってるという。さすがトミ子さん。日暮里の兄も鼻が高いでしょうという加津子。大造の実の妹なら東京生まれですごいよね、地元へのなじみ度が。おじいちゃまは電報局に祝電を打ちに行ったり、本を10冊買いこんでお知り合いのうちに配り歩いていた。
田河邸。なぜか玄関先で鍋をかぶって箒を持って1本足で立っている大宗均。応接室で水泡と相対しているマリ子とマチ子。マリ子は母が風邪を引いて寝込んでいると言うと、「お赤飯どうしたの?」と聞かれた。マチ子もマリ子もキョトン。
普通は初めて雑誌に載った時にはお赤飯を炊いてお祝いすることになっていると水泡に教えてもらった。均ちゃんにのらくろのモデルをやらせっぱなしだったが、今度は赤飯づくりを命じた。順子は外出中。
家に帰って、マリ子になぜはるが風邪で寝込んでいるという嘘を言ったかマチ子が聞くと、母親が知らんぷりなのが申し訳なくて言ったのだという。自分で選んだ道を自分で歩きだしたら人を当てにしないで一人で歩きなさい、というはるの言葉は世間の母親とは違うのだと思うマチ子だった。
はる不在で三姉妹でメロンを食べる。そういえばマリ子が金賞を取った時も牛尾のおば様がお赤飯を炊いてくれたと思い出すマチ子。
「牛尾のおば様」と聞いて、牛尾のおばちゃま達から電報が来ていると思い出したヨウ子がマチ子に電報、マリ子に手紙を渡す。マチ子には、加津子、お千代ねえや、トミ子から祝電が届き、マリ子には茜からの手紙が来ていた。
茜「マリ子さん、本当にごめんなさい。私は信彦と東京を去ることにしました。何とかあの絵だけは一緒に完成を見たいと思いましたが、父との話がこじれたのです。私の中には触れるもの全てを壊す魔性が潜んでいるのでしょうか。私があなたに描いていただいた理由の一つはそれでした。あなたの全く素直な汚れのない目であるがままに私を描いてほしかったのです。そしてそれは私の青春があの絵の中に永遠にとどめられることにもなったでしょう。本当にごめんなさい。でもあなたならあなたの東京をまた別なもので表現なさる。そう私は確信しています。ご成功を祈ります。落ち着いたら連絡しますが、しばらくの間、さようなら」
これで茜も信彦も退場なんだろうか…。
一人で手紙を読んでいたマリ子は家を夕方までには帰ってくるとマチ子に伝えて家を飛び出していった。茜のアパートは既に荷物はなくなり、マリ子の絵だけが残されていた。
帰ってきたはるに封筒を差し出すマチ子。「少女倶楽部」に漫画が載って原稿料をもらった。ありがたくいただくはる。「ろくに学校にいけない子供たちのことを思ったら、こんなに幸せなことはありませんものね」。
マチ子は日暮里の伯父さんが一席持ちますと言ってきたと伝えた。
はる「いいことしたわね、あなたも。初めて」
ニッコリ笑顔で言うはるがちょっと怖かったな。
茜のアパートのベッドに座ってうなだれるマリ子。
マリ子にとって未完成に終わってしまった「私の東京」は、やって来たチャンスの神が引き返していってしまったようなそんな予感を感じさせたのです。
自分の絵を持って部屋を後にした。あれだけ描けてるんだから、あとちょっとだというツイッターのツッコミ?が無粋に感じた。そういう問題じゃないような。
夜、磯野家でぼんやりしていたマリ子をマチ子が迎えに来た。今日の宴席は酒田燃料店。茜がいなくなったと聞いて、マチ子は怒り、今度会ったらひどい目に遭わせてやるとかこんな絵捨てちゃいなさいという。
マチ子「マー姉ちゃんの東京だったらまだまだこれからいくらでも発見できるよ」と励まし「あんな変な人種より、マー姉ちゃんの好きなお江戸の人が待ってるよ。そろそろ植辰さんの『かっぽれ』と栄一さんのウグイスが聞こえる頃だ。ほら!」とマリ子を宴席へ連れ出した。
牛尾のおじいちゃまも麻布の伯父様も植辰さんも姿は見えずともみんなこうしているんだろうなと浮かんでくる。いつか茜や信彦も再登場しますように。