1975年2月2日 TBS
あらすじ
曲はドヴォルザーク『新世界』。舞台は札幌市民会館大ホール。今まさにオーケストラの演奏が始まろうとしている。そのステージに、10年ぶりにシンバルを手にした男(フランキー堺)が、曲中に鳴る、ただ1回のシンバルのため、新世界への活路を懸けて座っている。青春の志ならず、音楽を捨てて十年、満たされぬ毎日を僻村(厚田)で送っていた一人の中年男の悲しさ、おかしさを素朴な村人と、愛すべき妻(南田)とのふれあいを通して描いた作品。その男の脳裏をよぎる想いは何か? 演奏会が終わって村に帰るマイクロバスのフロントガラスをせわしなくワイパーが雪を拭う。カーラジオが鳴っている。『石狩、空知、後志地方、今夜半から降り出した雪は明日も明後日も続くでしょう。』
前もフランキー堺さんと南田洋子さんの組み合わせを見たなと思ったら、こちらも倉本聰脚本でした。
札幌市民会館大ホールで東京音練フィルハーモニーの演奏が始まろうとしていた。シンバルを手にした五郎が愛する妻・洋子に心で語りかけ、観客に来ていた町長、実力者達には恨み言を言っていた。
音楽教師をしている洋子のため、電子オルガンを買いたいと言っても、理解のない田舎の男達。宴会芸に太鼓を叩かせたり、五郎にとっては屈辱的な日々を過ごしていたが、昔の仲間から演奏会に誘われた。シンバルの出番は1回だからと洋子が励ました。
フィルハーモニーの演奏会に参加することが決まり、取材されると、途端に周りが持ち上げ始めた。五郎が男達に囲まれてくすぐられてるのは、いじりというよりいじめみたいで不快。田舎のいやらしさがよく出ている。あらすじの“素朴な村人”とはよく言ったもんだ。「澪つくし」の漁師や広敷みたいな感じ。
10年ぶりに演奏会に参加するのは洋子にかなり強引に頼まれたからだと団員達がトイレで話しているのを聞いてしまった五郎。練習帰りの列車で眠ってしまった洋子の顔を見ていた五郎だが、目を覚ました洋子にあと4日あるから勘も戻る、えんび服を借りて来たと言われた。
町の人たちと飲んでいて、五郎が電子オルガンの話をすると、ちょっと新聞に載ったからって調子に乗りやがってと殴りかかられた。
それを見ていた洋子からあんなにペコペコすることないのに、と夕食時に言われ、演奏会に出ることを頼み込んだことを知っていると五郎は返した。言い争いになって洋子をビンタする五郎。演奏会に来るな、練習が終わったら札幌にそのまま泊まると出て行った。男達にはあんなにペコペコしてるくせに妻には強く出てさ、もー!
えんび服が用意できたと練習終わりの五郎を待っていた洋子と屋台のラーメンを食べた。15年前、対人関係に疲れ果て、北海道移住を決めたけど、人間らしい暮らしができてる?と問いかける洋子。どちらも北海道が田舎ってわけじゃないのか。そりゃ辛かろう。洋子もオーケストラの団員だったのに辞めてついて来た。
楽譜に赤丸がしてあった場面を…通り過ぎた!! 洋子は顔を覆った。演奏会が終わり、観客が出て行ったが、洋子と町の人だけが残り、舞台上に一人残った五郎がシンバルを叩いた。
バスに乗り込んだ町の人たちも洋子もお通夜ムード。町長は洋子の隣に座り、安い電子オルガンを買っておくよと伝え、五郎は別の席で涙を流していた。(終)
何にもうまくいかない主人公が結局うまくいかなかったという悲しすぎる話でどんよりしてしまった。北狩町は出た方がいいと思う。対人関係に悩むタイプは田舎はもっと辛いと思う。
僻村なんて失礼な、札幌からまあまあ近いところじゃないの。