TBS 1970年10月13日
あらすじ
直也(大出俊)と和枝(尾崎奈々)は、正式に双方の親から結婚の許しをもらい、結婚できる日を心待ちにしていた。福松(進藤英太郎)と常子(山岡久乃)は、そんなわが子の姿を喜びつつも、親としての寂しさを味わっていた。
2023.12.21 BS松竹東急録画。
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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。
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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)
井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)
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中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。
三浦葉子:范文雀…直也の見合い相手。
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中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。
野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。
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石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。
中川ます:山田桂子…トシ子とアヤ子の母。
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看護師:坂田多恵子
看護師:小峰陽子
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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。
菊久月
桃子が店番。福松は和枝や常子だと和服で接客するよう言うけど、桃子は正三と同じような白い作業服?だったり、今回みたいな普通の洋服でも許されてる。
ますが来店。なんでもいいから15ばかり詰めてほしいと言う。桃子はのし紙をつけるか聞くが、おめでたいわけでもないし、仏前でもない、普通でいいと答えた。今日は正弘が谷口家に来ることを知っていて、うらやましがる。中川家にはトシ子のことでキクが来る。
桃子「トシちゃん、どうかしたんですか?」
ます「いずれ分かることだけど、縁談断ることになったの」
桃子「あら、とうとう?」
そこに常子が顔を出し、桃子にあとはやるからご飯を食べてくるように言う。まだ11時だが、今日はせわしない。桃子がトシ子の婚約解消を常子に伝えた。
ます「恥ずかしくて、もう近所も歩けやしない」
常子「もうはっきり決まったんですか?」
ます「そのお菓子持って、おキクさんと仲人のとこ頭下げに行くんですよ」
常子「それで先方はご承知になるかしら」
ます「さあ…」
桃子がお菓子を詰めて渡した。計600円。
常子「承知してもらってくださいな」
ます「えっ?」
常子「いえ…いえね、トシちゃんがイヤと言うのなら、やっぱりね」
ます「あの子、言いだしたら聞かんとよ。今まで素直に結婚する気になってたくせに。どうして急に嫌気が差したのか」
常子「いえ、そりゃね、あの…」
奥から福松が出てきた。「いや、トシちゃんが破談になったって?」
常子「これから破談にするんですよ」
ます「気が重くってね」
福松「なあに、あんた、結婚の前の日に中止したって話も聞く世の中だもん」
ます「親はイヤですよ、こんな思いすんの」
常子「ご苦労さまです」頭を下げる。
ます「まあ、やだ、奥さん、ハハハ…」
福松「災い転じて福だよ。おめでたい、おめでたい」
常子「お父さん」
ます「どうも」釈然としない表情で店を出ていった。
常子はおめでたいを連呼した福松を責めた。
福松「修一の身になって言ったんですよ。これでトシちゃんの気持ちもはっきりしたじゃないか。なあ、正三」と茶の間に移動。正三がご飯を食べている。
正三「昔から修ちゃんのこと好きだったからね。こっちはあんまりおめでたい気持ちはしないけど」
常子「そうですよ。今、修一がトシちゃんに結婚を申し込みしたのが原因だと分かったら、それこそ先方が意地になって承知しないわ」
福松「そうかな」
常子「そうですよ。意地悪されたら慰謝料とかなんとか難しくなるのよ」
茶の間全体が映ると桃子が正三の向かいでお茶を入れていた。
正三「当分は知らんぷりしてることだね。ねっ? 旦那」
福松「うん」
常子「今日はうちにはおめでたいけど、お隣はイヤな気持ちね」
お見合いってそういうめんどくささもあったのね。だから、自由になる=婚約解消が先決だったのね。
桃子が和枝がどこに行ったか聞く。
福松「美容院に決まってるじゃないか。近頃は何かというと美容院だ」
常子「好きな人がいるんだもの。無理ないわよ」
福松「お前さんが甘いから、すぐ嫁に行く気になっちゃうんだ。5~6年つきあってみなきゃ危ないぞ、あの2人は」
常子「トシちゃんと修一みたいに土壇場に来て騒ぎを起こされるより、早く結婚してもらったほうがいいわよ」
福松「うん。正三には気の毒したな」
正三「もういいよ、旦那。哀れっぽいこと言われると、また飛び出したくなるから」
福松「諦めな、諦めな」
正三「諦めましたよ。フン、こっちは儚くて床屋に行く気もしやしない」
和枝が帰ってきた。常子は2時の約束だから、早くご飯を食べて着替えるように言う。
和枝「とてもご飯なんて…」と2階へ。
常子「ああ、私も胸がいっぱいだわ」
福松「私は腹が減ってますよ。ご飯!」茶碗を差し出す。
常子「まあ!」
和枝の部屋
着物を取り出し、鏡台で髪型チェック。
野口家
正弘「うちを1時半に出ればいいかな?」
直也「いや、1時15分にしましょうよ」
正弘「そうだな。遅れるといかんからな」
キクは3時に待ち合わせなので、一足あとに出発。直也は自室へ。
正弘「キクさんのほうはイヤな話の付き添いだ。気乗りせんだろ? ハハハッ」
キク「ええ。でも長年の友達ですから、しかたがありませんよ。それにトシちゃんのためにはいいような気がして」
正弘も茶の間を出ていく。
勉「ハッ、第一、キクさんはそういうことが好きなんだよ。どっちかっていうと、まとめるよりぶっ壊すほうが向いてるよ」
キク「勉さんのときもぶっ壊してあげますよ」
勉「とんでもない。恋愛したらね、キクさんなんかにめったに会わせませんからね」
キク「憎らしいわね。さっさと食べてくださいよ。片づけて私も支度するんだから」
自室でネクタイを選ぶ直也。そこに勉が入ってきた。
直也「おい、これじゃ地味すぎるだろ?」
勉「うん。面白みがないな」
直也「うん。いや、これにするか」
勉「兄さんもネクタイに気を遣う年頃になったかね」
直也「バカ」
勉「和枝さん、和服の趣味はいいけど、洋服のほうはどうなの?」
直也「いや、センスいいぞ。海へ行ったとき、あの人の洋服姿、初めて見た。彼女、あんなだけどミニも似合うんだ」
勉「恋は…っていうからな」←おそらく「恋は盲目」なんだろうけど、そこ消す?
直也は和枝のミニスカ姿を思い出してぼんやり。むしろ、和服よりミニだよ、和枝は。昭和のスタイルとは思えないくらい脚が細く長い。
勉「チェッ…あ~あ、恋愛でもするかな」
直也「お前、桃子さんとはどういう程度のつきあいなんだ?」
勉「うん、彼女好きなんだよ、僕が」
直也「フフッ、お前は?」
勉「うん。悪くないね。将来に対してかなりしっかりした目を持ってるからな。成長株ってとこだな」
直也「恋人とかそういう感情はないんだな?」
勉「うん。まだね」
直也「兄弟で同じうちの娘に惚れるってのは照れくさいからやめろよ」
勉「へえ、兄さんってのは割かし古いね」
直也「和枝さんだけでいいよ」
勉「飽きれた」←字幕のまま書いたけど、この字でいいの?
直也「だけど、よく見るとあの子も美人だな」
勉「よく見なくたって美人だよ」
直也「姉さんほどじゃないけどな」
勉「そうでしょうとも。分かる分かる」
谷口家客間
和枝は美容院へ行ったときはオレンジの着物→ピンクの着物へ。常子は山吹色みたいな着物から水色の着物に着替えている。福松も和服。正弘、直也はスーツ。
正弘「私も来年は定年ですし、勉もまだ大学が1年あります。私のほうはやっと再就職の目鼻がつきましたが、生活は楽でないでしょう。こんな家庭に大切なお嬢さんを頂戴したいというのは厚かましい気もして申し訳なく思いますが、和枝さんはあくまで直也に頂くという気持ちでお願いに伺いました」
福松「そんなあなた…私はこんな気の強い娘をよくまあもらってくださると思って、ありがたくて涙が…」目頭を押さえる。
常子「あたくしどもには異存はございませんわ。どうぞ幾久しくお願いいたします」
正弘「ありがとうございます。こちらこそ末永くよろしくお願い申し上げます」
桃子がお茶を運んできた。
常子「桃ちゃん、お姉さんね、直也さんにもらっていただくように決まったのよ」
桃子「ほんと? じゃ、改めておめでとうございます」
直也「ありがとう」
正弘「これで肩の荷が下りました。家内が生きていたら、やっぱり泣いて喜ぶでしょう」
福松「そうでしょうとも。あっ、和枝、お前、今から直也さんのお母さんのお墓参りに連れてってもらいなさい」
和枝「でも…」
直也「君さえよかったら。ねっ? お父さん」
正弘「うん。ぜひ、お願いしたいね。こんなきれいなお嬢さんを連れていくと、お母さん、びっくりするぞ。ハハハハッ」
「3人家族」の雄一の母、「兄弟」の紀子の母も亡くなってたけど、そういうエピソードが今まで出てこなかったので新鮮だな。それにしても早くに亡くなる母率高いね。
常子「では、あの…桜湯を一口飲んで」
直也「はあ、いただきます」
1階に降りて来た桃子。
正三「どうだった? 2階」
桃子「おめでとうさんです」
正三「ああ、やっぱり」
桃子「当たり前じゃないの。今から直也さんと姉さん、お墓参りだって」
正三は手にお札を持ってたけど、店番してたのね。店にキクが顔を出した。
正三「あっ、おばちゃん」
キク「旦那様、お話の最中ね?」
正三「ええ。2階はもうおめでたでね」
キク「私はこれからご出陣よ。イヤな気持ち」
正三「しっかり頼みますよ。やっぱりなんとなく修ちゃんに味方しちゃうんだな」
キク「あら、やっぱり修一さんが?」
正三「内緒ですよ。こんがらがっちゃうとまずいから」
キク「OK、OK。あんたも私もお人よしだから、いつも苦労ばっかりしちゃって」
桃子が奥からあいさつすると、キクはそれじゃあねと隣へ。店番は桃子に代わり、正三は作業場へ。
作業場
手を洗った正三がまんじゅう?にあんこを詰めると隣から声が聞こえる。
中川家裏口
ます「さあさあ、イヤなことは早く行って早く片づけなきゃ」
キク「何がなんでもぶっ壊せばいいんだから、まとめるよりは楽かもね」
ます「独り者(もん)はいいわね。ほんと、あんたが羨ましいわ」
ますが和服、キクがスーツで路地を歩いていくのを裏口から出て見ていた正三。
トシ子も空の牛乳瓶を手に裏口から出てきて、正三に頭を下げた。正三はそのまま作業場に戻ろうとしたが、「うまく断れるといいね」と話しかけた。「俺、あんたと修ちゃんならきっと幸せになれると思ってるんだ」
トシ子「正三さん、知ってたの?」
正三「分かるさ。毎日、あんたのこと気にしてたから。長野の兄貴から嫁さんの話が来てるんですよ。今まで何度も断ってたんだけど、そのうち一度会ってみようかと思って」
トシ子「ありがとう。いろいろと」
正三「男にはこういう生き方もあるんだよね」
画面上は路地の正三とトシ子が映り、奥から声だけ聞こえる。
⚟正弘「では、お邪魔いたしました」
⚟福松「いやいや」
⚟常子「なんのお構いもいたしませんで」
⚟和枝「じゃ、いってきます」
⚟常子「気をつけてね」
⚟福松「お願いしますよ」
正三「じゃ、頑張ってくださいよ」
トシ子「ええ」
作業場に戻った正三「和枝さん、直也さんと墓参りですってね」
福松「ああ、亡くなったお母さんに報告に行ったんだ」
正三「へえ、今でもそんなことするんだね」
福松「当たり前だ。お前だって嫁さんが決まったら長野に墓参りに行ってきな」
正三「その前に見合いだ」
福松「見合い? そんな話があったのか?」
正三「そりゃ、いろいろありますよ。こっちが乗らなかっただけでね」
福松「あっ、そうか。そりゃよかった」
正三「今ね、お隣の奥さんがおキクさんと出かけましたよ。決死隊みたいな顔しちゃってさ。仲人にガミガミ言われるだろうね」
福松「修一のヤツも気が気じゃないだろう」
正三「ねえ、旦那。修ちゃんの一生のことだよ。結婚だけじゃなく、仕事のほうも考えてあげればいいのに」
女性客が訪れたが、桃子が不在らしく正三が店へ。福松は作業場から茶の間へ移動。常子は2階からお茶を片付けてきた。
福松「おい、修一の店、何時に閉めるんだ?」
常子「さあ? 12時ごろかしら」
福松「そんなに遅いのか?」
常子「あの商売も大変なんですよ」
福松「一度、食べに行ってやるかな」タバコを口にする。
長男の修一も同席しないんだなと思ったけど、店やってたから?
野口家之墓
直也と和枝が墓参りしていた。
和枝「お母様ってどんな方でした?」
直也「なんでもできたね。それに優しかった」
和枝「じゃ、びっくりしてらっしゃるわね」
直也「どうして?」
和枝「じゃじゃ馬だから」
直也「そうでもないだろ。個性のない人間は嫌いだって言ってたから」
和枝「あなたもそう?」
直也「ああ。だから君に惚れたんだ」
和枝「まあ…(照)」
じゃじゃ馬と言い出したのは直也じゃなかったっけ!?
直也「早く結婚したいな」
和枝「せっかちね」
直也「男は欲しいとなると一日も早く手に入れたいんだ」
和枝「そんな…お墓の前で困ります」
直也「じゃあ、歩こうか」
和枝「ええ」
お墓の撮影は真夏だったのか、草ボーボー。
歩き出した直也と和枝。ふいに直也が笑う。
和枝「やあね。何笑ってらっしゃるの?」
直也「勉がね、僕が君のほっぺたにキスしたと思ってさ」
和枝「イヤだわ」
直也「キスじゃなくてひっぱたいたんだって言っといたけど」
和枝「当たり前よ。痛かったわよ」
直也「やっぱりキスしとけばよかった」
和枝「まあ!」直也の左二の腕をつねり、二人は笑う。
野口家
仏壇に手を合わせる正弘。勉はお茶を入れていて、正弘が茶の間に来ると「お疲れさま」と湯飲みを差し出した。
正弘「これで直也と和枝さんのことは決まった。あの2人なら仲のいい夫婦になるだろう」←あんまり和枝の暴力性は見たことないからなあ。
勉「兄貴、結構和枝さんにのぼせてるから」
正弘「それでいいんだよ。先方でも喜んで嫁に下さると言ってくれたし安心したよ」
勉「結婚式はいつ? 仲人さんは決まったの?」
仲人は直也がお世話になっている内科部長にお願いする。式はまだ具体的に決めなかったという正弘に勉は式は早いほうがいい、春にはなんとかさせたらどうかと言う。
まず住む所から考えなくちゃいけない。新婚夫婦を迎えるとなると野口家は狭い。正弘は退職金で一間建て増しをしようと提案するが、勉は退職金はまとめて取っておいた方がいいと返した。ビフォーアフターの再放送をよく見るけど、無茶な建て増しはしないほうがいいと思う。
正弘「なあに、働けるだけ働くつもりだからなんとかなるよ」
勉「あっ、それよりさ、僕と兄さんの部屋を改造して使ったらどう?」←やっぱりあの部屋、2人部屋だったのね。
勉はどっちみちうちを出るつもりだからアパートに住む。勤めさえ決まれば自分で生活できる。だけど、大学卒業まであと1年あるからねえ。正弘はキクさんの意見もあるだろうし、みんなで一度相談しようと言う。家政婦のキクさんの意見も聞こうとするなんて優しい。正弘は今日はうちにいるから、勉が出かけたいのなら出かければいいと言う。う~ん、ほんと、優しい。
どさん子
店は客でいっぱい。勉も働いてる。そこに桃子が来店。「日曜なのにご精が出ますこと」
勉「ああ、生活力があるからね」
客がいっぱいだと思ったら、どんどん帰っていなくなった。
修一「おい、お前、学校どうだった?」
桃子「うん。すごく面白そう。お菓子を作るってことも学校教育の時代になったんだなって感じだった」
勉「ああ、今月から学校行ってんのか」
桃子「そうよ。いよいよ実業家の第一歩を踏み出したわけよ」
勉「本気なの? ケーキの店を開業するって」
桃子「イヤね。あんたのことも真面目に考えてるのに」
修一は伝票みたいなのをメモしてる? カウンターにお金を置く形式だけど、それを計算してるのかな。「おい、お前たち、約束でもしてんのか?」
桃子「うん、まあね」
勉「約束ったって仕事のですよ」
修一「ああ、そうか。ハハッ、そうだろうな」
桃子「兄さん、気になるわね」
勉「うちの兄貴も気にしてたよ。よく見ると桃子さんも美人だって」
修一「よく見るとってとこがいいな」
桃子「フン、ざっと見たって…やあね。変な目つきよ、あんた」
勉「怖いんだぞ、こういう目は。女殺しってんだ」
桃子「まあ!」膨れっ面になる。
修一と勉が笑う。
店にはキクとアヤ子。キクは疲れた様子でますも倒れそうになってヨロヨロして帰ってきたとアヤ子が話す。
桃子「婚約解消って楽じゃないわね」
勉「恋愛結婚なら大したことないんだよ」
アヤ子「姉さんもあれで度胸あんのね。亭主を尻に敷くタイプよ、きっと」
修一「なあに。トシちゃんみたいのは教育しだいさ。惚れた男には命懸けで尽くすタイプだよ」←嫌だね~、教育とか。
アヤ子「まあ、自分が惚れられてると思って」
キク「アヤちゃん、あんた…」
アヤ子「いいのよ、おばさん。姉さん口には出さないけど分かってんだ」
桃子「アヤちゃんも大人になったわね」
アヤ子「何言ってんの? あんたより3つも上よ。ボヤボヤしちゃいらんないわ」
アヤ子と和枝は同じ歳(1970年に21歳)と思ってたのに、いつの間に22歳になったのよ。なぜか途中から谷口家の子供達より年上になる中川家の子供達。
キク「そうよ。男なんて町にウヨウヨしてるわよ。より取り見取りよ。誰でなきゃなんて言って、苦労しょい込むことないわよ」
勉「キクさん、大丈夫か? なんかすごいこと言っちゃって」
修一はカウンターを出てキクたちにビールを勧める。キクは旦那様が一人で留守番していて、話し相手もなしでかわいそうだと帰ろうとしたが、修一は一杯ぐらい、いいだろうと勧め、キクは座り直した。
桃子「アヤちゃん、あしたがあるってこと」
アヤ子「ええ。恋なんていつどこで始まるか分かりゃしないんだから」
勉「あしたからの恋のために飲みますか」
タイトル回収。今回26話で当初の予定なら最終回だったんだろうな。
すっかり暗くなった菊久月に和枝と直也が帰ってきた。
店の前
直也「よく働くお母さんだね」
和枝「でものんびりしてるように見えるでしょう?」
直也「君がお嫁に行っちゃうと店も困るんじゃない?」
和枝「兄が戻ってきて結婚するわよ」
直也「近いから、それまで手伝いに来てもいいよ」
常子「あら、帰ってたの?」
和枝「ただいま」と店の中へ。
直也「和枝さんを一日連れ出しちゃって」
常子「いいんですよ。今日はそのつもりでいたんですから」
直也は皆さんお疲れのようだからと家には上がらずに帰ろうとするが、和枝が駅まで送ると言い、また出ていった。風呂に入っていた福松も店に出てきた。「何をしてんだ、あの2人は。行ったり来たり」
常子「別れたくないんですよ」
福松「まあ、うるさいから早く嫁にやっちゃえ」
常子「すぐ涙ぐむくせに」
福松「いや、それは…なんとなくもったいなくてな」
常子「親がいくらもったいながっても娘のほうは、もう直也さんのことだけよ」
福松「そうですか」
外を見るとまた戻ってきた直也と和枝。
常子「あしたから思いやられるわね」
福松「うん」
朝、路地を出てきたアヤ子と桃子。
アヤ子「ねえ、和枝、どうしてる?」
桃子「うん、ご機嫌よ」
アヤ子「そうでしょうね」
桃子「トシちゃんは?」
アヤ子「静かな情熱っていう感じね」
桃子「胸に秘めた恋ね」
アヤ子「そうなのよ。結局年なんて関係ないのよね。フフッ」
恋愛脳の若い美人女性たちは今まで婚期を逃したと見下していたトシ子を見直したって感じかな。初期の桃子はトシ子のことをおとなしくて嫌いだと言ってたもんね。
アヤ子と桃子は「本日休業」の札が下がる菊久月前を歩いていった。月曜日ってことね。日曜日は仕事だけど、月曜日に休むって、いいね。
虫眼鏡で本を見ている福松。「ヴァイ…アンス・ヴァイン・ザーネ・クレーム」
↑微妙に名前が違うけど、こんな感じのを見てたのかな? ドイツのお菓子。
常子「なあに? お父さん」
福松「ハッ、これでも菓子の名前か。桃子のヤツ、とうとうこんなものに取りつかれちまって」
常子「でも若い人がどんどんヨーロッパにまで旅行する世の中だもの。和菓子もケーキもありませんよ。おいしいお菓子ならいいじゃないの」
福松「修一のヤツ、このうち改造して何をやるつもりだ?」
常子「1階はこのままでしょ。2階は喫茶にして、ケーキも出す。3階は住まいかしら」
福松「1階はこのままだな?」
常子「そりゃ格好は変わるわよ。でも修一も和菓子の菊久月は大切に思ってますからね」
ドラマの中では改造するという話になってるけど、モデルになったらしい喜久月は今でも当時のたたずまいなのがすごい。向かいは高層ビルが建ってるけど、喜久月の並びは2階建てくらいの家が並んでいる。和菓子の他におかきやあられもあり。
ベロっと唾つけてページをめくる昭和しぐさ。電話が鳴ったので、福松が出た。「ああ、ハハッ、直也さん、おはよう」とニッコニコ。すぐ後ろに和枝が立っていたので驚きつつ、電話を代わる。
出勤前に電話している直也。帰りに迎えに行くと言い、何時ごろになるか分からないから昼にもう一度電話すると言う。キクもお昼に電話するんですか?とツッコミ。慌てて出勤した直也は盛大にコケる(声だけ)。
どさん子
のれんを出している修一。「おっ、どうしたの? 2人そろっちゃって」
福松と常子が店に入ってきた。
福松「一度、お前さんのそば、食ってみようかと思ってな」
修一「ああ、どうぞどうぞ」
福松「うん」
常子「ねえ、修一」
修一「うん?」
常子「このお店、このまま売れたら売って、お前、菊久月へ帰らない?」
修一「急にそんな…」
福松「和菓子一本の菊久月だが、2階、3階はどう使ってもいいと思ってんだ」
修一「えっ? ビルにしてもいいの?」
常子「お前の腕が欲しいってことなのよ」
修一「みっちり年季が入ってるからね。こういう職人はなかなかいないぞ」
福松「バカ。すぐつけあがって。わしがたたき込んでやったんですよ」
常子「承知してますよ、ねえ?」
修一「父さん」
福松「えっ?」
修一「ありがとう」
福松「な…なにもそんなお前。あっ、それより、お前の一番うまいやつを食べさせてみなさい。ええ? さあ、とっととやんなさい」
修一「ああ。そば屋もいいよ」
常子「そうね。お前がやめると不便ね」
福松「何を言ってんです。菓子屋の息子が菓子屋を継ぐのは当たり前ですよ」
ナースステーション
時刻は5時27分くらい。ちょうどこのドラマも5時からの再放送でリアルタイムもこのくらいの時間でした。電話をかける直也。看護師たちは背後でくすくす笑い、和枝と電話する直也をからかった。
電話を切った直也。「女って恋をすると素直で優しくなるね」
看護師「あら、そうですか?」
直也「うん」
しかし、ナースステーションに葉子が姿を見せた。(つづく)
26話を最終回のつもりで作ってきたのに、好評で話を引き延ばすために葉子を出したのかな。まあ、今日が最終回でそれぞれ希望がいっぱいだけど、私としては菊久月の店番をするトシ子が見たいなあ! 絶対似合う。でも、延長してもそこまでいかないか。
岡崎友紀さん主演の「おくさまは18歳」は9月の終わりに始まったばかりで、范文雀さん出演の「サインはV」は8月に終わったばかり。山岡久乃さん出演の「ありがとう」の第1シリーズも10月半ばで最終回を迎える。うま~く調整しながらやってたんだろうね。