徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】 あしたからの恋 #18

TBS 1970年8月18日

 

あらすじ

久しぶりに顔を合わせたのにケンカをしてしまった和枝(尾崎奈々)と直也(大出俊)。しかしふたりは、お互いに自分自身の態度を反省していた。ある日、直也の家に招待されていた修一(林隆三)は……。

2023.12.11 BS松竹東急録画。

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谷口福松:進藤英太郎…和菓子屋「菊久月(きくづき)」主人。

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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)

野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。

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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)

井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。

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谷口桃子岡崎友紀…福松の次女。高校を卒業し浪人。

谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)

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中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。20歳。

野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。

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石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。

松井:池田二三夫…アヤ子の同僚。

八百屋:みずの皓作

*

谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。

 

谷口家

常子はおにぎりを作り、福松と正三は作業場で赤飯を作っていた。

 

直也「ああ、お菓子屋さんも大変だな」となぜか見学している。

福松「何しろ人手不足ですからね。急に赤飯の注文が入ったら、もう朝生の手順が狂っちゃって、まあ、今夜は何時ごろまでかかるか」

正三「個人の店では無理するぐらいじゃないと儲けが薄くって」

福松「原料は上がる一方だし、菓子の値はなかなか…」

直也「でもよかった。電話の様子じゃ床に就いてるとばかり思ってましたよ」

 

あ、そっか。福松の調子が悪いと思ったから来たんだった。

 

福松「なんだってまた、おキクさんはそんな思い違いをしたんだ?」

正三「ぶっ倒れたって、やすやす死ぬような旦那じゃないのにね」

福松「菊久月の大黒柱がそう簡単にぶっ倒れてたまるか」

直也「いや、しかし、暑いときは注意してくださいよ。無理しすぎないように精神的なものがだいぶこたえますからね」

正三「そうですか、やっぱり」

福松「お前こそ早く気持ちをシャンとしてかからんと若いのにぶっ倒れるぞ」

正三「分かってますよ。嫌みばっかり言っちゃって」

福松「嫌みなのは、お前のほうだ。あっ、一度、血圧を先生に診てもらえ」

正三「ハハッ、大丈夫そうですね。2人とも」

 

作業場に常子が来て、直也を茶の間へ呼んだ。2階の和枝や桃子も呼ぶ。今日の正三は文句は言うけど、仕事は真面目にやってます。

 

2階

念入りに化粧している和枝とギターを持っている桃子。

和枝「あの人ったら、お母さんの顔見に来たって言うのよ。しゃくね、まったく」

桃子「案外そうかもしれないわよ」

和枝「桃ちゃん」

桃子「姉さんとは相性も悪いし、お互い、そう好きってわけでもなさそうだし、適当にあしらっとけば?」

和枝「あしらう?」

桃子「うん」

和枝「やなこと言うもんじゃないわよ」

桃子「あら、じゃあ好きなの? 姉さん」

和枝「別に好きだって言ってやしないわよ」

桃子「なんだかさっぱり分かりゃしない。私の目から見ると、一番のぼせてるのはお母さんね」

和枝「そうなのよ。やんなっちゃうわ」

桃子「面白くないわよね。娘より評判のいいおふくろなんて」

大いに同意する和枝。

 

茶の間

常子は直也にビールを注いでいた。ビールにおにぎり。しかし、直也は病院で夕飯を食べ損なっていてちょうどよかったと常子に言う。

 

2階から桃子と和枝も降りてきた。こんばんはとあいさつしあう桃子と直也。和枝はツン。

常子「直也さんね、お父さんが病気だって聞いて様子を見に寄ってくださったのよ」

和枝「ご心配をおかけしました。あのとおり元気でございますから」

常子「なあに? お前、ぶすっとしちゃって」

桃子「いつもこんな顔よ、ねっ?」

和枝「黙ってらっしゃい」

 

直也「お宅は不思議だな」

桃子「どうして?」

直也「お母さんが一番明朗ですね」

常子「皆さんがそうおっしゃるんですのよ。娘はお父さんに似て気難しくて、フフフッ」

桃子「お母さん。なにもそうケロケロすることないでしょ」

和枝「ほんとよ。娘はどんな顔していいんだか分かりゃしない」

直也「どうもこうもその顔しかないんだから」

和枝「ええ、どうせこの顔でございます」

 

常子「お父さんが甘やかしたもんですからね。いくつになっても子供みたいで」

桃子「冗談じゃない。お父さんなんていちいちうるさくて人並みにデートもできやしないわ」

直也「ああ、勉とちょいちょい会うんでしょ?」

桃子「相談相手に手ごろなんです」

常子「桃ちゃん、そんな言い方ありますか」

 

和枝「弟さん、素直でほんとにいい方ね。さっぱりして、かわいくて」

直也「どこのうちでも下のほうがかわいいな」

桃子「そういうこと」

常子「まあ、桃ちゃん。さあ、勉強なさいな、さあさあ」

桃子は両手におにぎりを持ち、直也も帰ろうとするが、直也にビールを勧める常子。

 

2階におにぎりを持ったまま上がっていく桃子を見た正三。「桃ちゃんが握り飯みんな食べちゃうよ」

福松「うちの奥さんがたくさん作ってますよ」

正三「一服するころに何もないなんてやだな。気になるな」

福松「失恋したくせになんですよ」

正三「腹が減るのはまた別ですよ。こんなに働かしてさ」

福松「うるさい。休みますよ。なんだ、握り飯の心配ばっかりして」

正三「奥さんの握り飯、好きなんだ。形がいいから」

 

福松「うちの奥さんは何やったってうまいもんだ。お前も女房もらうときには、うちの奥さんみたいな女を探しなさい」←こういうことサラッと言えちゃうって素敵。

正三「だからトシちゃんに目つけたんじゃないか」

福松「こら、正三。トシちゃんのことはもうやめなさい」

正三「フン、思い出させといて」

福松「なんだ、その態度は」

 

茶の間

常子「大変ですね。土曜日まで研究室にいらっしゃるんじゃ」

直也「はあ、ディスカッションが多いもんですから」

和枝「あら。受け持ちの患者さんが発作を起こしたんじゃございませんの?」

直也「ええ。おかげさまで君の留守中はみんな順調でね」

和枝「あっ、さようでございますか」

常子「結構ですわ。責任の重いお仕事ですもの」

直也「はあ。どうもごちそうさまでした」

 

常子はおにぎりを勧めるが、直也は断る。「久しぶりにおいしかった」

常子「お勧めしても、おにぎりじゃねえ」

直也「い…いや、なかなか近頃はこんな握り飯にお目にかかれないんですよ。僕は頭の悪い美人と形の悪い握り飯を見ると手が出ないんだ」

常子「まあ、オホホホ…」直也も笑う。

 

和枝「お母さん」と横目でにらむ。

直也「あっ、悪いこと言っちゃったな。失礼しました」

和枝「いいえ。あたくし美人じゃございませんから」

直也「いや、なかなか美人ですよ」

和枝「まあ、とんでもない」

 

常子「いいじゃないの、和枝。美人って言われるといい気持ちですよ、女は」

和枝「見え透いたこと言われたって…」

直也「そうだな。取り消します。僕はどうもお世辞が下手でダメだ」

和枝「まあ、お世辞だったんですか」と立ち上がる。

 

直也「あっ、和枝さん」

 

茶の間に入ってきた福松にぶつかった和枝は「ごめんなさい」と謝る。

 

どさん子

アヤ子はカウンターで男性と並んでラーメンを食べていた。「ねえ、どう? ここのおそば」

松井「うまいよ。会社の近くなら昼飯にいいね」

アヤ子「修ちゃん、松井さん食べ物(もん)にはうるさいほうなのよ」

修一「ふ~ん」

アヤ子「営業部は花形でしょ。女の子にモテちゃって」

松井「大したことないよ。アヤ子さんには振られてばっかしいるじゃないか」

アヤ子「どういたしまして。憧れてたのよ、ほんとは」

松井「なんだ、そうか。君、もう誰かいるんだと思ったのに」

アヤ子「とんでもない。私は慎重派よ」

 

アヤ子たちの他に客がいなくなり、修一は片づけてテーブル席に座り週刊誌を読み始めた。

 

アヤ子「(修一をチラ見しながら)イヤな噂、立てられんのは我慢できないからね」

松井「今年の夏はツイてるな」

アヤ子「お互いさまよ、フフフッ」

 

まったく関心なさげな修一にしびれを切らし「お客の前で週刊誌なんかやめなさいよ」と注意するアヤ子。

修一「どうして?」

アヤ子「失礼よ」

修一「いいだろ。そっちは適当にやってんだから」

アヤ子「やな人ね、感じ悪い」

修一「しょうがない、サービスするか」と立ち上がり、カウンターへ。

 

松井「どうしたの? 君。かまわないじゃないか、僕たちは別に」

アヤ子「わざわざこんなボロ屋に食べに来てやったっていうのに、ぶすっとしてちゃ面白くないわよ」

修一「さあ、どうぞ」とコップの水を差し出す。

アヤ子「バカにしないでよ、何よ、水なんか」

修一「よく冷えてんだぞ」

松井「どうも」

アヤ子「出ましょう、出ましょう、こんな店」

修一「どうもありがとうございました」松井がお金をカウンターに置く。

 

修一「またどうぞ!」

アヤ子「鈍感」と出て行き、松井はペコッと会釈して店を出て行った。

 

松井はこれまでの木下恵介アワーでは、あおい輝彦さんの友人として登場していた池田二三夫さん! 「おやじ太鼓」では浪人仲間の杉本、「兄弟」では大学生の三崎。今回は花形の営業部社員として登場。

 

アヤ子たちと入れ違いに直也が来店。直也はまた和枝を怒らせてしまったと嘆く。修一は和枝と桃子を怒らせてやろうと思ってもとってもダメだと逆に感心する。

直也「口が悪いんだよ、僕は。女性としんみりつきあうことがないせいかな」

修一「いや…」

直也「どうも和枝さんの前に出ると言わなくてもいい言葉を先に言っちゃって」

修一「直さん、不器用なんですよ」

直也「フフッ。ビールでももらおうか」

 

くわえたばこの修一が冷蔵庫から瓶ビールを取り出す。「明日、休みなんでしょ?」

 

修一「うちにいますか?」

直也「遊びに来る?」

修一「ええ、このとおり暇だから」

直也「キクさん、あれで料理うまいんだ。ごちそうするよ。いらっしゃい」

修一「そうだな。じゃあ、5時ごろ行こうか」

直也「うん。待ってるよ」

 

何だかんだいい友達になってる直也と修一。

 

茶の間

ボーっとしている常子、おにぎりを食べてる正三、タバコを吸ってる福松。「なにも直也さんと和枝がケンカしたからって、お前さんがションボリすることないじゃないか」

常子「ほんとにどうしてああなのかしら」

正三「いや、直也さんっていう人もお医者のくせに口が悪すぎますよ。嫌いなんだな、和枝さんが」

常子「そんなはずはないと思うけどね」

正三「好きな女にあんなこと言えるわけがないでしょ。奥さんがやきもきしたって、とてもじゃないけどまとまる縁じゃありませんね。ごちそうさま」と席を立つ。

 

常子「正三さんも自分のことがうまくいかないもんだから冷淡ね」

福松「菓子さえ売れりゃ他のことはどうでもいいんだ」

常子「自分の娘のことですよ。真剣に考えてくれなきゃ困ります」

福松「和枝だってあの男のこと大して考えてやしませんよ」

常子「さあ、どうかしら」

 

裏口の戸を開く音がして「こんばんは、和枝いますか?」とアヤ子が来た。

正三「2階にいるよ。ドンドン上がんなよ」

アヤ子「上がるわよ、何よツンツンして」

 

このシーン、アヤ子と正三の姿は映らず、茶の間にいる福松と常子が会話を聞いているという演出。

 

アヤ子「こんばんは。お邪魔します」と福松たちに声をかけ2階へ。ここでもアヤ子は声だけ。東山さんのスケジュールの都合でもつかなくて、あとで声だけつけたのか不自然といえば不自然なシーン。

 

⚟正三「旦那! もう10時だよ。さっさとしなきゃ間に合わないよ」

 

常子「ああ、おっかない声」

福松「こっちが追い回しだ。時代が変わったよ、まったく」

 

2階

アヤ子「修ちゃんってバカじゃないかしら。気を引こうと思って、デートの帰り、わざわざ寄ったのに、てんでポカーンとしてんだからね」

和枝「近頃の男はみんなボヤボヤしてんのよ。直也さんにしたって面と向かって殺風景なこと言うんだから。失礼しちゃうったらありゃしない」

アヤ子「一体、どんな女に魅力感じるの? お宅の修ちゃん」

和枝「兄さんなんかどうでもいいけど直也さんですよ、問題は」

アヤ子「あら、直也さんなんてどうでもいいわよ」

 

桃子「混線しちゃって」

和枝「寝なさいよ、桃ちゃん」

アヤ子「子供はお休み、お休み」

桃子「冗談じゃありませんよ。こっちのほうが進行状態はいいんだから」驚く和枝やアヤ子に「この近所でモテてるのは私だけかもね」

 

桃子は相手の名をはぐらかして電話をかけに行った。

アヤ子「ちょっと、ボヤボヤしてると、和枝、売れ残っちゃうわよ」

和枝「何よ、自分の心配しなさいよ」

アヤ子「明日という字は…♪明るい日とかくのね、か」

悲しみは駈け足でやってくる

悲しみは駈け足でやってくる

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アン真理子「悲しみは駈け足でやってくる」1969年7月5日発売

 

和枝「旅行してるとき一番あの人に会いたかったんだ、私」

アヤ子「直接、そう言ってみたら? 案外、グッとくんじゃない?」

和枝「向こうに言わせたいのよ。大体、女から好きだ好きだ、なんてムードがなさすぎますよ」

アヤ子「失敗しちゃったな、私」

和枝「そうよ。うちの兄さんって冷たくされるとカッとのぼせるところがあるんだから」

アヤ子「もう一度やってみるか」

和枝「ハァ…私なんか絶望的よ。ほんとあんな憎らしい男に会ったことないわ」

アヤ子「まったくね。2人とも結構いい線いってると思うけどな」

ため息をつく2人。

 

しかし、和枝も桃子も修一とトシ子については何も思わないんだろうか? 福松たちもだけどトシ子のほうが年上だから勝手にナシだと思ってる?

 

勉は電話で桃子と10時に会う約束をしていた。アルバイトは今日で終わり。

 

キクは電話を切った勉に桃子が何か言ってなかったか聞いた。直也が菊久月に寄ったと聞き、これであそこの奥さんに義理は済んだわとホッとしていた。

 

勉「いやだけどまた和枝さんとケンカしたらしいよ」

キク「あらやだ。よくよく相性が悪いのね」

勉「いや、兄貴は女の子にモテるはずないよ。いつも仏頂面してさ。俺みたいにすんなりいくもんか、あの顔で」

キク「でもねえ、直也さん仏頂面しても二枚目でしょ。そこへいくと勉さんなんかね…」

勉「なんだよ、しまいまで言いなよ。ちゃんと」

キク「変なのがモテる時代なのかもしれないわね」

勉「バカ! 何言ってんです」

 

ブザーが鳴り、キクは玄関へ。2人の会話を聞いていた正弘は直也が菊久月の娘さんが好きなのかと勉に聞く。勉ははっきりしない、兄貴はグズだと言うが、正弘はお前と違って慎重なんだとフォローする。

 

茶の間に顔を見せた直也は疲れた様子でお菓子のお土産を期待してたキクに「菓子屋へ寄ったからっていちいちお土産付きじゃないよ」と部屋へ。

勉「ご機嫌斜めだな、兄貴」

正弘「一日、病院で働いているんだ、疲れてるんだよ」

キク「甘いものが切れちゃって、口寂しいわねえ」

勉「買っときゃいいのに、ケチケチするから」

キク「あら。勉さんに食べさせるだけでも苦労してるんですよ」

勉「何言ってんだ。自分だってガッポリ食ってるくせに」

キクが肘で小突く。

 

正弘「なんでも高くなるばっかりだからキクさんも大変だな」

キク「いえ。家計のやりくりは慣れてますから大丈夫なんですよ。でもね、勉さん、男のくせに甘いものが好きだから」

勉「チェッ、なんだってこっちにおっかぶせちゃって」

キク「男の子はいつまでも言ってないの」

勉「へいへい、そうですか」

 

なかなか戻ってこない直也を気にする正弘。

キク「男と女の仲なんて親がいくら気をもんでみてもなるようにしかならないもんですね」

 

写真を預かってきたと言う正弘に縁談だと目を輝かせるキク。

正弘「今度はまともな話だぞ」

キク「ああ…でも私、もう諦めたんですよ。今更、結婚なんかして苦労すんのはバカバカしいような気もして…。あの…でも旦那様がいいお話だとおっしゃるなら」

 

しかし、正弘が持ってきたのは直也あてのものだった。あからさまにガッカリするキク。

正弘「キクさんのことも心がけてはいるんだがね」

キク「いえ、もうよろしいんです。私、一生こちら様にごやっかいになる覚悟を決めましたから」

正弘「いや、まだあんたも若いんだしさ」

キク「とんでもない。わたしなんかもうガタがきちゃって。身も心ももうボロボロなんですから。こうなったら『金色夜叉』みたいにお金でもうんとためて男をわんわん泣かしてやりますから」

正弘「そんな…いやとにかく私は感謝してるんだよ」

キク「まあ、旦那様をいじめる気持ちはございませんわ」

勉「よしなよ。すごいね、キクさんも」

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時々物の例えとして出てくる「金色夜叉」。貫一みたいにめちゃくちゃ働く人の例え?

 

部屋まで呼びに行った勉だったが、直也は寝ていた。お見合い写真を見る勉とキク。「あら、マーケットの八百屋の娘にそっくりだわ」と立ち上がって台所へ。

勉「女はあれだからね、ヘッ」と正弘と顔を見合わせる。

 

正弘は菊久月の娘さんに一度会ってみたいと勉に話す。勉は直也から明日の5時に修一が来るから夕飯頼むという伝言をキクに伝えた。キクはさっぱりしていて好きだと修一を歓迎する。

 

正弘は勉に和枝のことを聞く。勉曰く、ハキハキしている。美人。

 

パジャマに着替えて横になった直也だったが、眠れない。

 

朝。正三が赤飯を車に積み込んでいると修一が来た。徹夜明け?の福松は茶の間でタバコを吸いながら大あくび。そこへ修一がきた。

 

福松「店が暇だからですよ。日曜に主人が出歩いているようで客があるもんか」

修一「だいぶ参ってんじゃないか」

常子「そうなのよ。茶だんすに寄っかかってなきゃ座っていられないんだわ」

福松「バカ。そんな年ですか」と姿勢を正す。

 

和枝は洗濯物を干し、桃子は勉とデートに出かけた。福松は勉としょっちゅう会っている桃子を心配するが、常子は「昔と違って若い人たちはサバサバしてるんですから」と気にしていない。

 

修一は直也の家に行く約束をしていたが、やっぱりそうもいかないと和枝が行かないかな?と常子に話した。キクさんがごちそう作って待ってるって言ってるから、誰か行かなきゃ悪い。日曜だから向こうのお父さんもいるかもしれない。常子はその話を聞いて張り切るが、福松はまた大ゲンカして帰ってくるだけだと言う。修一は帰っていった。

 

1階に降りてきた和枝に直也の家に行ってほしいと言う常子。

 

福松「あんな毒のある医者はダメだ。口で殺されちまうよ。なあ? 和枝」

常子「じゃあ、やっぱり断る? 兄さんすっぽかしちゃ悪いって気にしてたけど」と受話器をあげるが、和枝が「いいわよ、お母さん」と承諾した。自分で行って断ると言い、常子もそれがいいと賛成する。

 

和枝「困るわね、兄さんには。じゃ、私、ちょっと美容院行ってこなきゃ」

福松「美容院?」

和枝「ボサボサしちゃって」

 

直也の部屋に入ってきたキクは、もうすぐ5時で、初めての人には分かりにくいから迎えに行くように言う。「荷物もあるかもしれないしね」

直也「どうして?」

キク「だって初めて来るんだもの。お土産ぐらい提げてますよ」

直也「当てにしないほうがいいよ。男なんてそこまで気を遣わないぞ」

キク「あの人は気がつくわ。そこに私は惚れてんだから」

直也「困るね、そういう惚れ方は」

キク「とにかく大きなもの提げてウロウロしてちゃかわいそうだから」

直也「持ってるもんか、なんにも。あっ、もし行き違いになったら頼むよ」

キク「ええ。ご心配なく」

 

部屋に来たついでに脱ぎっぱなしのシャツや靴下を拾ったキク。細かいね。

 

庭を眺めていた正弘に麦茶を持ってきたキク。正弘は昨日から「開業ガイド」を熱心に読んでいた。退職後の方針がまだ決まっていない。勤めもイヤになったし、遊んで食ってもいられないが、商売の難しさも感じていた。キクは何でも手伝う、田舎の土地を売ってもいいと言うが、正弘は気持ちだけはいただいておくよと感謝した。

 

キク「イヤですね。そんなしんみりしちゃって。明日のことはクヨクヨするなっていうでしょ。明日のことは明日考えりゃいいんですよ」

正弘「ハハハッ、キクさんは幸せだな」

キク「ええ、ええ。なんとなくご機嫌なんですよ、今日は」

 

つくづく不思議な関係だな~。夫婦じゃないからこその遠慮や配慮がある。

 

イカとお重?を抱えて汗をふきふき歩いている和枝を直也が発見した。直也を見かけた和枝も笑顔になる。急いで走ってきてサンダルが脱げる直也。無我さんみたいに下駄じゃないのね。

 

修一を迎えに来たと言う直也は和枝の持っていたスイカを持った。和枝は兄が来られなくなったと話し、すぐおいとまするというが、直也は来てくれて嬉しいと素直に言った…と思ったら「キクさんが待ってるから」と言い訳がましいことを言う。

 

ちょっと気まずくなりかけたが、直也はこの辺散歩したことある?と誘う。和枝は荷物があるので少し戸惑うが、直也が僕がみんな持つからとお重を持とうとするが、和枝は変に遠慮する。

 

通りかかった八百屋にスイカやお重を野口家へ運ぶよう頼んだ。

八百屋「ご結婚後もずっとごひいきによろしくお願いいたします」

和枝「まあ、そんな…」と言いながら笑顔。

直也「そうだよ。何も結婚するわけじゃないんだから」

八百屋「先生もいろいろあるからね。じゃ、どうぞごゆっくり」

 

八百屋さんもまた木下恵介アワーの常連。「おやじ太鼓」では水野皓作、「兄弟」ではみづの浩作、「おんなは一生懸命」では水森コウ太と見るたび芸名が違う、けど顔見ると分かる。

 

八百屋の言っていた「いろいろある」が引っかかっている和枝だが、とにかく歩こうと歩き出す直也。何だかんだ嬉しそうに並んで歩く和枝。最後は川を眺めている二人。女声コーラスバージョンの主題歌が流れる。(つづく)

 

木下恵介さんの妹でもある脚本の楠田芳子さんは自身に兄がいるせいか兄妹の描き方が自然だと感じる。ほかのドラマでありがちな妙に距離の近い兄妹じゃなく、あんまり関心なさそうなそっけない感じがリアル。林隆三さんが上手なのかな。アヤ子に対しても、和枝や桃子と同じように「妹」なんだろうね。

 

んあ!? 昨日から始まってたの? 私の一番好きな朝ドラ。この枠、字幕なくてCMも挟まってるんだっけ…と理由をつけて諦めることにする。でも見たことない方は絶対見てほしい名作です。「いちごとせんべい」も再放送してほしい。