徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】 あしたからの恋 #25

TBS 1970年10月6日

 

あらすじ

お互いに仕事を持ち、会う時間が限られている直也(大出俊)と和枝(尾崎奈々)。朝の出勤前や、昼休みのわずかな時間に電話をかけたり、「菊久月」に飛び込んできたりする直也に家族は呆れる。

2023.12.20 BS松竹東急録画。

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谷口福松:進藤英太郎…和菓子屋「菊久月(きくづき)」主人。

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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)

野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。

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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)

井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。

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谷口桃子岡崎友紀…福松の次女。高校を卒業し浪人。

谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)

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中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。

野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。

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石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。

中川ます:山田桂子…トシ子、アヤ子の母。

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トメ子:丘ゆり子…修一の店のアルバイト店員。

女性客:戸川美子

男性客:山村圭二

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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。

 

朝、茶の間でご飯を食べている福松、常子。和枝は直也と電話している。

福松「フン、お邪魔さま」と和枝に言っちゃう。

 

直也「あのね、ほら、昨日のとこ痛くない?」

和枝「ええ」

直也「悪かったよ。本当に失敬しちゃった。大丈夫か心配なんだ。つい、手が動いちゃって」

 

勉が起きてきて直也の後ろで会話を聞いている。

 

和枝「大丈夫。でも驚いたわ。いきなりぶつなんて。ひどい人」

直也「ハハッ。いや、あとで腫れることがあるんだ。うちに帰ってから気になって寝られなかった」

和枝「まあ、ほんと?」

直也「うん。君のほっぺたはやわらかいから。うるさい、あっち行ってろ!」近づいてニヤニヤしている勉を突き飛ばした。

 

茶の間

キク「あら、どうしたの?」

勉「この電話、怪しいんだよ」

直也「うるさい、向こう行けよ!」勉を蹴ろうとした足先が映る。

勉「兄さん、和枝さんのほっぺたにキスしたな?」

キク「まあ、もうそんなこと?」

直也「冗談じゃない。ひっぱたいたんだよ」

 

正弘「何?」

勉「へえ~。兄さんもとうとうやったの」

 

野口家の電話は茶の間から見える台所脇の廊下にあるのかな。

 

キク「ウソですよ。またひっぱたかれたんでしょ?」

直也「うるさいな。まだ話の途中なんだ。黙ってろよ」

キク「ご飯も食べないであきれましたね」立ち上がり、突き飛ばされて座ったままの勉を避ける。「病院、遅刻しますよ」

直也「分かってるよ。じゃあ、またあとで電話するよ。そうね、病院から暇を見て。じゃ、さよなら」

勉「ヘヘッ、兄さんも結局ただの男だね」

直也「当たり前だ。キクさん、飯!」←偉そうに言うな! 

 

でも、昭和のドラマにつきもののビンタであとのことまで気にする人を初めて見たな。

 

受話器を置いた和枝はうっとりした表情をしている。

福松「おい、しっかりしなきゃダメですよ。男にほっぺたなんかひっぱたかれて女のくせにだらしがない」

常子「お父さんったら何言うの? 結構じゃありませんか。私はホッとしたわ」

和枝「いい朝ね。なんだか爽やかで。秋っていいわね」と2階へ。

 

福松「何がいい朝だ。こっちは修一とトシちゃんのことで頭がガンガンしてるんだ」

常子「正三さん、遅いわね」

福松「またふて寝だよ。お前さん、アパートへ行って引っ張ってきなさい」

常子「泣いてるんじゃないかしら。かわいそうに。どうしてあげることもできないけど」

福松「何もかも修一が悪いんです。結婚の決まった女にずうずうしい。あいつはどっかピントが狂ってんだ」

常子「トシちゃんがどんな返事をくださるか」

福松「お断りに決まってますよ。今更、向こうをやめて修一の所へ嫁に来るなんて言いだしたら事じゃないか」

 

常子「でもね…」

福松「いや、お前さんがそんな曖昧な気持ちだから修一のヤツがだんだんずうずうしくなるんだ」

常子「一生のことですもの。お互いに我慢はできないわ。でも、まさかお父さんと2人で正式にお隣へ申し込みには行かれませんわね」

福松「当たり前ですよ。冗談じゃない」

常子「あ~あ」

 

桃子が2階から下りてきた。「それじゃ、本日から通学いたします。どうぞよろしく」

常子「あら、今日からなの?」

桃子「うん」

福松「何が今日からだ?」

常子「ケーキを作る学校ですよ」

福松「あっ? お前、いつそれ決めた?」

常子「しかたがないでしょ。とにかくやらせてみるより」

桃子「そうよ。人間、自分の選んだ人生には責任を持ちますからね」

 

福松「ケーキなんか作ったって誰も食ってやらんぞ」

常子「私、食べるわ」

福松「なんです? 亭主に逆らって」

桃子「まあ後ほどごゆっくり。いってまいります」

常子「いってらっしゃい。気をつけて」

 

桃子の製菓学校入学は1970年10月1日(木)かな?

 

福松「どいつもこいつも…」

常子「親に逆らうぐらいでなきゃダメよ。子供は親を乗り越して大人になるんだもん」

福松「フン、踏み台にされて大迷惑だ」

 

2階へ行った常子はそろそろ店を開ける時間だと和枝に声をかけた。今度の日曜日、正弘が結婚の申し込みに谷口家に来ると話すと常子はこういうことは早い方がいいと喜ぶ。

 

福松は常子に早く正三を呼んでくるように茶の間から怒鳴っていた。

 

作業場

常子「いってきます」

福松「ああ、グズグズ言ったらひっぱたいてやれ。なんだ、男のくせに」

常子「そうね。男はつらいこと」

 

常子はお寿司屋さんの前を通ってどさん子へ。扉は閉まっていて開かない。次に正三のアパートまで走る。近いのかな? 正三のアパートも不在。

 

作業場

和枝「お父さん、もう10時過ぎてんのよ」

福松「分かってますよ。1人じゃこれ以上手が回るもんか」

和枝「正三さん、どうしちゃったのかしら」

福松「修一が悪いんだ。正三がやっと諦めたころになって、いきなり隣のトシちゃんに結婚を申し込むバカがありますか」

和枝「兄さんは偉いわよ。自分に正直なのよ」

福松「なんだ。みんなで修一ばっかり褒めちゃって」

 

和枝「でも考えてみると罪よね。トシちゃんだって迷うわ」

福松「迷うぐらいで済めばまだいいよ。隣の奥さんの立場も考えてみろ。そのうち、血相変えて飛び込んでくるかもしれん。もう下駄の音がするたんびにこっちは生きた心地がしませんよ」

和枝「でも、お父さんは丈夫だからいいけど」

福松「ああ、丈夫ですよ。おかげさまで職人の分まで働かしてもらって」

和枝「私がお嫁に行っちゃうと店番にも困るわね」

福松「そう思ったらやめなさい。なにも直也さんでなきゃってこともないんだろう」

和枝「直也さんのこと、お父さん反対だったの?」

福松「こうなると迷うんですよ」

和枝「薄情ね」

 

福松「バカを言いなさい。こっちはどんなに気をもんだか。いや、第一お前はあの男とうまくやれんのかね?」

和枝「大丈夫です。私たち相性がいいんだもん」

福松「そうは見えないが。まあ、2~3年つきあってるうちにはっきりするだろ」

和枝「2~3年? イヤよ、そんなに」

福松「医学博士にでもなってからにしなさい」

和枝「博士なんぞどうでもいいの」

福松「ああ、そうですか」

和枝「まあ、意地悪」プイッと作業場から出ていく。

 

福松「なんだ、急にベタベタしちゃって」

 

和枝と福松がここまで話すシーンあったかな? 珍しく感じた。

 

大□カトリック幼稚園と書かれた看板前を走る常子。字を隠してあるけど多分、大船だと思います。手には”御親方さま”と宛名の書かれた封筒を持っている。そこからまた、どさん子へ。やっぱり扉は閉まっている。

 

そこにトメ子登場。昨日、トメ子ってあれで終わり?と書いたばかりだった。

トメ子「何してんのよ? 奥さん」

常子「別にちょっとね」

トメ子「修ちゃん、ここ2~3日、様子が変だったからね」

常子「あら、そんなことありませんよ」

トメ子「ゆうべもね、遅くまで正ちゃんと飲んでさ」

常子「えっ? 修一と正ちゃんが?」とっさに封筒を見て、トメ子に見られ、隠す。

 

トメ子「ねえねえねえ、ギャーギャー騒いでたわよ。私ね、出前の行き帰りにのぞいてやったらさ、11時ごろにお店閉めちゃって、また失恋でもしたんじゃないかしら。正ちゃんってモテないからね」

常子「とにかくあんたはもう気にしないでちょうだい」

トメ子「あら、気になるわよ。何べんでも言いますけどね、私は修ちゃんにベタ惚れなんですから」

常子「まあ…」

トメ子「お母様、お母様~って大事にしますわよ。ねえ、お母様~」とべたべた引っ付く。

常子「いやらしいわ、もう」と走り去る。

 

久月

男性「これだけ?」

和枝「はあ。今日はちょっと遅れて…」

男性「ほら、栗の入った蒸し羊羹、あれもまだ?」

和枝「申し訳ございません」

 

多分、今日のキャストクレジットにある山村圭二さんは後ろ姿しか映ってないこの男性客かな?

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2話では新しい中華どんぶりを運んできた瀬戸物屋さんでもある。

 

作業場

常子「トメちゃんってほんとに嫌みな子ね」

福松「トメ子なんかどうでもいいよ。で、正三のヤツ、どうしたんだ?」

 

常子はアパートの奥さんから預かったという書き置きを広げて見せた。

福松「まさか正三が」

常子「さすらいの旅に出るなんて書いてあるのよ。どういう気かしらね?」

 

福松「どうって…えっ? 『親方、ご迷惑をおかけしますが僕はとても寂しくてこの寂しさに耐えられません。だから、今からさすらいの旅に出ます。旅に出て、愛する人の幸せのために泣きます。親方は丈夫だから1人で大丈夫でしょう。頑張れ、ご健康を祈りつつ。悲しき正三より。御親方様』」途中から涙声になる。

常子「変な手紙ですよね」

福松「バカ! 正三の身にもなってみなさい。かわいそうに」

常子「でもね、トメちゃんの話だとゆうべ遅くまで修一と飲んでたそうよ」

福松「いや、それは危ないぞ」

常子「危ないって?」

福松「正三のヤツ、修一に一服盛って自分も死ぬ気かも」

常子「まあ! なんてことを!」裏口から飛び出す。

福松「おい、おい、常子! 待ちなさい! 冗談ですよ」

 

路地

常子「だって修一の店、まだ閉まってるんだもの」

福松「えっ!?」

常子「たたいても全然返事がないのよ」

 

中川文房具店前を通って、どさん子に走る。

 

どさん子

店内はどんぶりなどもそのまま散らかったまま。正三と修一は奥で並んで寝ていた。

 

福松と常子が戸をたたく。

正三「もうおちおち寝てられやしねえや」と起き上がる。

 

外で戸をたたく福松と常子。常子が110番に電話しようと走りだそうとしたところ、通行人に「どうかしたの?」と声をかけられ、鍵をなくしたとごまかす。

 

福松「おい、いるのかいないのか!」

 

正三「はいはい。今、開けますよ」←店を飛び出していったままの格好なのね。「あっ、旦那、どうしたんです?」

福松「早く開けろ!」

 

正三「修ちゃん」

常子「正三さん!」

福松「なんだ、このバカ。何が悲しき正三だ。さすらいの旅に出る? フン、聞いてあきれるよ」←二日酔いに響きそうな大声(;^_^A

 

修一「何をワイワイ言ってんだよ。こっちは二日酔いだっていうのに」と起きる。

常子「だって、お前…心配したのよ、もう」

正三「奥さん、そんな…泣かないでくださいよ、ねえ」

福松「腹が立って、こっちは泣きたくても泣けんよ。恋愛だ、失恋だのって、もうなんでもいいから、お前たちだけで勝手にやってくれ!」と店を飛び出す。

常子「お父さん! もう…修一!」

 

谷口家茶の間

常子が正三に二日酔いの薬?を飲ませる。

正三「ああ…苦い」

常子「苦いから頭がはっきりするのよ」

正三「コーヒーがいいんじゃないんですか?」

常子「じゃあ、コーヒーにする?」

正三「それより、みそ汁のほうがいいかな」

 

福松「おい、どうだ? 様子は」

常子「いや、コーヒーにしようか、みそ汁にしようかって迷ってるのよ」

福松「何言ってんだ。お茶でたくさんですよ」

正三「いきなり起こされて頭がさえねえな」

福松「こっちは栗蒸しを作りかけて飛んでいったんだ。さすらいの旅に出るんじゃなかったのか? お前は」

常子「もういいわよ、お父さん」

正三「いや、そう思ってたんですよ。お別れに修ちゃんに恨みの一つも言おうと思って寄ったら、ついね」

 

和枝「お父さん、何時になったら栗蒸しが店に出るんですよ」

福松「今、切るところだ。あっちもこっちもガタガタして、これでいい菓子が作れますか」と立ち上がり、作業場へ。

 

正三「奥さん、トシちゃんと修ちゃん、一緒にさしてあげてください。もう俺は諦めがついたから」

常子「イヤな思いばっかりさせてごめんなさいね」

正三「人生なんて皮肉に出来てるらしいからね」

常子「そうね。修一だってもう遅かったんじゃないかしら。トシちゃんの立場もあるし、期待はできないわ」

 

作業場

栗蒸し羊羹に包丁を入れる福松。

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栗蒸し羊羹は秋限定で日持ちがしない。ふ~ん。

 

正三「旦那、俺がやるよ」

福松「ああ」

正三「やけにまた遅れちゃって。腕のいいのがもう一人いると菊久月も安泰なんだがね」

福松「分かってる」

正三「意地張ってないで迎えるべきですよ」

正三をじろりとにらむ福松。

 

どさん子

男性「まだやってないの?」

修一「すいません、仕込み遅れちゃって」

男性「しょうがないな」

修一「すいません、またどうぞ」

 

こっちの男性客は顔も映ってたし、セリフもあったし、こっちが山村圭二さんかも?

 

仕込みをしていて下を向いている修一の耳に戸が開く音が聞こえた。「すいません、きょう開店3時で…」入ってきたのはトシ子だった。「あっ、なんだ、トシちゃんか」

トシ子「昨日、正三さんと飲んだんだって?」

修一「ああ…正ちゃんに分かっちゃってね」

トシ子「悪いことしたわね」

修一「しかたないさ。お互いに一生のことだ。ここまで来て遠慮してはいられない。正ちゃんもさっぱり了解してくれたよ。あとはトシちゃんの気持ちだけだ。返事に来たんだろ? 言えよ、はっきり」

 

トシ子「冷静に聞いてね」

修一「うん」

トシ子「私もあんたが好き」

修一「友達としてでなくだね?」

トシ子「(うなずく)はっきりしてたの。以前から」

修一「そうか。そんならもう問題ないってわけだ」

トシ子「そんな簡単に済むことじゃないでしょ」

修一「どうして? ああ、紙問屋の息子のほうか。俺が断りに行ってやってもいいよ」

 

トシ子「バカね。まるで世間知らずだわ」

修一「えっ?」

トシ子「お願いだから、あなたの気持ち、どこまでもあなたの胸の中に隠しといてちょうだい」

修一「おやじたちも承知してんだぞ」

トシ子「おじさんたちは誰にも言いやしませんよ」

修一「うん」

トシ子「とにかくそのことはしっかり覚えといてちょうだいね。私のことなんか知らんぷりで押し通してね」

 

修一「トシちゃん。それで俺たち一体どうなるんだ?」

トシ子「今、そんなことより私が自由になることが一番肝心でしょ?」

修一「まあな」

トシ子「相手のメンツも立てなければ申し訳ないもの」

修一「うん」

トシ子「何年も待っててくれるの? 修一さん」

修一「ああ、待つよ」

トシ子「ありがとう」と店を出ていこうとする。

 

修一「トシちゃん。なるべく早くしてくれよな」

うなずくトシ子。

 

こっちのカップルは普通に会話が成り立つからいいんだよ~。

 

久月

和枝「7合入り30でございますね?」

女性「上書きが内祝い。婚約祝いなんておかしいですもんね」

和枝「お嬢さん、婚約なさったんですか」

女性「はあ、やっと」

和枝「おめでとうございます」

女性「あなたもそのうちでしょ?」

和枝「いいえ」

 

などと会話していると店に直也が現れた。「昼休みにちょっと顔を見に」

女性「まあ…」

和枝「何おっしゃるの」

女性「じゃあ、間違いなくお願いいたしますよ」

和枝「はい。かしこまりました。ありがとうございました」

 

多分、後ろ姿しか映らないこの女性客が戸川美子さんかな?

 

女性客を送り出した後、今日も遅くなりそうだから抜けてきちゃったとすぐ直也に話しかけられたけど、和枝、メモも取ってなくて今の注文、大丈夫!?

 

顔を見に来ただけだという直也を送っていきたい和枝は奥にいる常子に声をかけた。

 

久月に来た勉は学校は午後はなく、キクに頼まれて菓子を買いに来た。ケチケチ買うという勉にお金を渡す直也。常子と和枝が店に出てきて、勉が練り切りをほんの少し…と言った。

 

直也「いや、十ばかりやってください。勉、お前、きちんと払えよ」

勉「分かってるよ」

 

直也と和枝は店を出ていった。

 

勉「兄さんも案外マメだな」

常子「ほんとにね」

勉「朝は電話でしょ。昼にちょっと来て、また帰りに寄るっていうんですからね。お宅も災難でしょ?」

常子「とんでもない。あれでケンカさえしなきゃ安心なんですけど」

勉「うちでもそう言ってますよ」

常子と笑い合う勉。店から福松は出てこないね~。

 

野口家

急いでお茶の用意をするキク。

勉「お茶は上等にしてくれよ。高い菓子なんだから」

キク「了解、了解」

勉「ハハッ。よしなよ、いい年をして」

 

キクはいいご商売のおうちとご縁が出来てよかったと喜ぶ。

勉「さもしいこと言うんじゃありませんよ。なんだい、たかが菓子ぐらいで」

キク「あら、タダで頂いてきたくせに」

勉「ああ、あの奥さんね、どうしてもお金取らないんだよ。困ったよ、まったく」

キク「どうせそんなことだろうと思ったの。旦那は自分が作って苦労してるからケチるかもしれないけど、奥さんのほうはお嬢さん育ちでおっとりしてるから」と旦那がお店へ出てきたら買うんじゃありませんよと勉に注意する。

 

キクが「和枝さんがお嫁に来たら、このうち狭くなるし、旦那様、どう思ってんのかしら」と言いながら、電話に出ると、ますからで泣いていた。キクは野口家へ招待するが、ますはガックリ来て歩けないといい、キクが家に行くというと家では話せないというので、キクは留守番もいるから、どさん子で会おうと約束する。野口家から1時間くらいの距離なのね。

 

どさん子

カウンターでラーメンを食べるキクとます。トシ子の結婚が決まり一安心と思っていたら、今日になって断ってくれと言われ、死にたくなった。

 

キク「修一さん、あんたも親身になって聞いてあげてよ。幼友達なんだからね」

修一「聞いてますよ」

ます「理由はただもう婚約は間違っていた。好きでもない人となんの希望もなく結婚するなんて相手にも申し訳ない。今のうちに解消するほうがお互いのためだ」

キク「そういえば、そうね」

ます「冗談じゃないわよ。仲人さんにどの顔でそんなことが言えると思う? 先方はもうホテルの予約も取ったし、新婚旅行はハワイがいいか、ヨーロッパがいいかなんて」

キク「あら、豪勢だ。羨ましくなっちゃう」

 

ます「そうなんよ。アヤ子なんかもう目の色変えて自分がお嫁に行こうかなんて言ってるもん」

キク「アヤちゃんも浮気ね」

ます「和枝さんのほうが決まりそうだから、あの子も多少、焦ってるとよ」

キク「まだ22じゃないの」←二十歳じゃないの? 21歳になる年だと思ってた。

ます「トシ子は27よ。全然焦っとらんとよ。あの子のほうは」

キク「性格だからね」

ます「どうしようね。トシ子は言いだしたら頑として聞かんからね」

 

修一「それはやっぱり早く断ったほうがいいよ」

キク「もったいないわよ。ヨーロッパに行けるってのに」

修一「ヨーロッパぐらい俺だって連れてってやるよ」

キク「あら」

修一「嫁さんはやっぱり大事にしなくちゃな」

キク「まあ、トシちゃんのことかと思ったわ。(ますに)食べなさいよ」

 

店に客が来た。

 

キク「ねえ、2~3日様子を見て、どうしてもトシちゃんの気持ちが変わらないようだったら仲人さんとこ行きなさいよ。私も一緒に行ってあげるから」

うなずくます。「一生独りで終わんのかね、あの子」

修一「大丈夫だよ、おばさん」

キク「女は独りだって結構楽しく暮らせるんだもの、ねえ?」

修一「そうさ。先のことはまたそのときのことだ。絶対うまくいくよ」

キク「修一さん、いやに保証するじゃないの」

 

ごまかすように客に注文を聞く修一。キクは疑わしい目を向ける。

 

婚約解消してしばらくしたら、最近になって修一が好きになったと言いだすパターンかな?

 

作業場

正三「なんだかくたびれちゃったね」

福松「お前のせいだ。本当なら夜なべですよ」

正三「やっぱりさすらいの旅に出るべきだったな」

福松「ガラにもないこと言うんじゃない。人間、女に振られたぐらいで仕事をほっぽり出すようじゃダメですよ」

正三「小説のようなわけにはいかないもんね」

 

お風呂が沸いたと知らせに来た常子。

福松「今日は一日まごまごしたな」

常子「ええ、幸せなのは和枝だけね」

 

和枝は接客を終え、雨が降り出したことに気付く。時間は6時少し前。直也が来るので傘を用意して待っていた。オープニング曲のコーラスバージョンが流れる。(つづく)

 

修一とトシ子の話だけでいいよ。