徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】 あしたからの恋 #31

TBS 1970年11月17日

 

あらすじ

直也(大出俊)と和枝(尾崎奈々)の結婚は、仲人が決まるまでに話が進み、常子(山岡久乃)は自分のことのように喜ぶ。そして直也が父・正弘(野々村潔)とともに、結納の品の婚約指輪を持って谷口家を訪れる。

2023.12.28 BS松竹東急録画。

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谷口福松:進藤英太郎…和菓子屋「菊久月(きくづき)」主人。

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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)

野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。

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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)

井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。

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谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)

中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。

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野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。

石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。

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中川ます:山田桂子…トシ子の母。

トメ子:丘ゆり子…やぶ清の店員。

*

谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。

 

久月

和枝が開店準備をする。

 

作業場

福松「子供たちはみんな勝手なことしちゃって、近頃は家族そろって飯も食えやしない」

正三「そのうち和枝さんもお嫁に行っちゃうし旦那も寂しくなるね」

福松「平気ですよ。こっちは忙しくてそれどころじゃないんだ」

正三「ヘッヘッ、無理しちゃって」

福松「何?」

 

台所

朝食の後片付けをしている常子。「そうだわ。1日だってグズグズしちゃいられないんだわ」と前掛けで手を拭きながら作業場へ行き、今夜、野口家にまだ具体的に何も決まってない和枝と直也のことを相談に行くと福松に話した。

福松「決まったようなもんだ。嫁にやるって決まったんだから」

常子「そんな簡単なもんじゃないのよ。ねっ? 正三さん」

正三「そうですよ。旦那はどうでもいいと思ってたって直也さんのつきあいだってあるし、第一まだ結納だってもらっちゃいないんでしょ?」

常子「そうよ。私、デパートで様子聞いてくるわ」

福松「結納は向こうが持ってくるもんですよ」

常子「でも修一のこともあるし」

福松「あっ、そうだ。トシちゃんのほうどうなっちまったか。お隣の奥さんもケロッとして。で、もういいんだろ? お前のほうは」

 

常子と福松が話している中、正三は手に持った紙を見つめていたが、福松に話しかけられて慌てて紙をしまう。「えっ? 何が?」

常子「トシちゃんのこと」

正三「ああ、トシちゃんね。ええ、もういいんです。さっぱりと男らしく」

福松「当たり前だ。なんだ、それくらいのこと偉そうに」

常子「もう気がせくわ。私、お隣にもちょっと行ってこようかしら。でも、その前に野口さんの都合聞かなきゃ。和枝! 和枝!」と奥へ。

 

福松「フン。まるで自分が嫁に行くような騒ぎだ」

正三「旦那。実はですね」

福松「うん?」

正三「新子から手紙が来て、新子のヤツ、ボヤっとしてるくせになかなか達筆でさ、写真も送ってきたんですよ」手には写真付きの手紙。

福松「それ見なさい。ボヤボヤしてんのはお前だ。こっちが尻をたたく前は、ああだこうだとケチばっかりつけたくせに」

正三「そりゃ男には男のやり方があるもの」

福松「で、新子さんがどうしたっていうの?」

正三「正月に休みが取れたら、ぜひ長野へ来てくれっていうんですよ。新子のヤツ」

 

福松「バカ。結婚したわけでもないのに新子、新子って言うもんじゃありませんよ。親の身にもなってみなさい。面白くもない」

正三「田舎者(もん)だけど、もらって教育してみようかと思ってさ」

福松「お前が教育を? 聞いてあきれますよ」

正三「だってさ、女房は亭主が育てるもんなんでしょ? ここの奥さんだって今みたいになるまでは大変だったって旦那言ってたじゃないですか」

福松「うん。まあ、いろいろと苦労もしたよ」

正三「ふ~ん」

福松「いや、とにかく利口だろ? あの人は」

正三「新子…さんですか?」

福松「うちの奥さんだよ」

正三「なんだい」

 

呼び捨て、田舎者をもらって教育…腹立つわぁ。ただこういう場面で福松が「そうだ、女房は亭主が育てるもんだ」と言わないのがこのドラマのいいところ。

 

ますが裏口から入ってきた。福松は常子を呼ぶ。

ます「朝っぱらからすみませんけど、大事な話で」

福松「まあ、茶の間へ上がってください」

ます「トシ子の仲人さんから今、電話があってね。まあ、これまでのことを水に流してくださると、ご返事がありましてね」

福松「そりゃあ、よかった」と再び常子を呼ぶ。

 

ます「あの…実はトシ子と修一さんのことで…」正三に視線を送る。

福松「あっ、正三のことなら気にしないでください。こいつも良縁がありましてね」

ます「まあ、そうだったの? ああ~、ホッとしたわ。おめでとう」

正三「どうも心配かけちゃって」振り向いて頭ポリポリ

 

常子が作業場に来た。ますに気付いて茶の間へ案内する。そういえば、ますさんは家族やキクさんには九州訛りだけど、標準語も普通にしゃべってることに今になって気付いた。

 

どさん子

仕込みをしている修一の元を常子が訪れた。

修一「なんだよ、朝からニヤニヤしちゃって」

常子「あのね、今日の午後にトシちゃんが大阪から戻るそうよ」

修一「戻る? じゃあ…」

常子「そうなのよ。お隣の奥さんが話しに見えたの。やっと婚約解消できたんだって」

修一「そうか。そりゃまあよかった」

常子「お前だってニヤニヤしてますよ、だ」

 

修一「何言ってんだよ。これからが苦労だと思ってんのに」

常子「お隣さんもそう考えてるの。私たちが本気でトシちゃんをお前のお嫁さんにもらう気があるのかって、それが心配で聞きにみえたんだから」

修一「母さん、きっぱり返事してくれた?」

常子「ええ。トシちゃんと修一の気持ちが第一だけど、お父さんも私も大賛成ですって」

修一「そう」

常子「よかったねえ」

修一「うん」常子のよそ行きの和服姿にどこか行くの?と聞く。

 

常子はデパートを2つ3つ見て、夕方野口家に行く。和枝と直也も後から来る。

修一「あの2人、のべつ一緒じゃないか。今に飽きるぞ」

常子「このごろケンカもしないのよ。なんだか寂しくて」

修一「ほらほら。母さんも相当やじ馬だね」

常子「そうなのよ」と2人で笑いだす。

 

常子は山岡久乃さんの実年齢より年上の役なので、林隆三さんの母役としてはやっぱり若いね。

 

野口家前

直也「秋だなんてそんなむちゃだよ」

和枝「だって、式場が空いてないんだもの。しかたがないでしょう?」

直也「じゃ、式なんかどうでもいいだろ」

和枝「イヤよ、そんなこと」

 

直也が野口家のチャイムを鳴らす。「なにもそんなすごい顔してにらむことないだろう? 気は心なんだから、2人で神社でも協会でも行ってお参りしとけば」

和枝「そんな安直な」

直也「女は虚栄心ばっかり強くって」

和枝「まあ、あきれた。そんなふうに見てたんですか?」

直也「結婚式なんてものは単なる形式だよ。あったって、なくたって…」

和枝「イヤです」

 

玄関が開き、キクが出迎えた。「はい、いらっしゃい」

二人はムスッとしていてキクが「どうしたんです?」と聞くが、直也は「どうもしないよ。この人はいつもこういう顔なんだよ」とぶっきらぼうに答えて家の中へ。

和枝「いい気になって何さ。ごめんくださいませ」続けて家の中へ。

玄関の戸を閉めながら肩をすくめるキク。

 

谷口家の裏口からますとトシ子が頭を下げながら出てきた。

ます「ああ…なんとなくこれで落ち着いたね。まあまあよかった」

トシ子「私、ちょっとどさん子へ行ってきたいんだけど」

ます「うん。修ちゃんとこ行っても今頃は混んでるかもしれないよ」

トシ子「目立たないように気をつけるわ」

ます「そうだね。あんまり右から左に変わったように見えても近所でびっくりするから」

トシ子「ええ、じゃあ」スーツ姿みたいなの珍しい。

 

どさん子

修一は作業中で客の顔も見ず戸が開いたので「いらっしゃい」と声をかけた。トシ子と分かると「奥へどうぞ」とカウンターの端に座らせた。

トシ子「しばらく」

修一「おかえり」

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26話以来出演してなかったのでリアルタイムだと1カ月ぶりのトシちゃん!

 

トシ子「ご心配かけました」

修一は冷蔵庫から瓶ビールを取り出す。「まず1杯飲むだろう?」

トシ子「でも…」

修一「まあ、いいから飲めよ」

 

瓶ビールのふたを栓抜きでカンカンたたくのってなんの意味があるんだろう? 修一はコップ2つにビールを注ぐ。

トシ子「ありがとう」

修一が最初にコップ半分ほど飲み、トシ子は修一のコップにビールをつぎ足す。

 

以前見つけたプレミアムモルツのCMで笑顔のトシちゃんの1ショットはここのシーンだった。ビール飲んでないけどね。そしてビール瓶は赤い星のサッポロビールだよね?

 

いやあ、いい。まあ今の時代だと営業中に飲むなってなっちゃうんだろうけど。

 

野口家台所

勉「兄貴たち、またケンカしたんだって?」

キク「そうに決まってるわよ。まったくやんなっちゃうわね」

勉「焦ってんだよ、兄貴も」

キク「結婚なんて焦ることないわよ。どうせ2~3年たちゃ飽きるんだから」

勉「兄貴にとっちゃバラ色なんだろ?」

キク「先行きは灰色ですよ」

勉「よしなよ。みっともないよ、やたらひがむの」

 

キク「どうせ私はばあやですからね。直也さんの結婚に口出しをするつもりはないわよ。でもね、旦那様だってよ、おキクさん、ちょっとここへ座ってくれ。まあ、相談に乗ってくれって、ねえ? そう言ってくだすったっていいじゃないのよ」

勉「うん、まあね」

キク「それを何よ。菊久月の奥さんの話ばっかり聞いちゃってさ。この話、邪魔してやろうかしら」

勉「むちゃなこと言うなよ。一生のことだよ。兄貴と和枝さんに一生恨まれるぞ」

キク「直也さんや和枝さんに恨まれたって大したことないけどさ。でもね…旦那様に泣かれるのは私は一番弱いからねえ」

勉「ふ~ん、そうですか」

 

勉はキクが輪切りにしたレモンを紅茶に乗っけて飲んでたのかな? 勉はキクが若い娘に嫉妬してると思ってるだろうけど、キクはどっちかというと正弘が常子に優しいのが気に入らないんだよね。

 

客間

正弘「母親のいないうちは何をどう進めていいかさっぱりでしてな」

常子「あたくしのほうも何しろ初めてのことで。でも、今日でパートを回って驚きました。結納の品がそれはもう派手に並んで」

正弘「ほう、やはり昔のようにあのゴテゴテしたものをお届けするんですか?」

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↑こういう感じのヤツ?

 

常子「無駄ですわねえ」

正弘「いやしかし、お宅様のご意向もおありでしょうし」

常子「いいえ。あたくしのほうもそんな大げさなこと考えていませんわ。ねえ? 和枝」

和枝「ええ」

 

直也「僕は自分の給料で買える程度の指輪を結納として贈らせていただくつもりですが」

常子「まあ、ありがとうございます。かえってお高いもの頂くことになりますわね?」

直也「いや、それが直也の給料といいますと…」

 

キク「安いんですよ、奥さん」お茶を出す。

直也「しかたないじゃないか。どっちみちその安い給料で生活していくんだから」

和枝「覚悟してますわよ」

キク「ほんとに大変なんですよ。給料の中から本ばっかり買うでしょ。医学書ってのはまたバカみたいに高いんですから」

常子「はあ」

正弘「和枝さんのように苦労知らずに育ったお嬢さんにはお気の毒ですが」

常子「いいえ。和枝は痩せてますけど、よく食べて丈夫ですし気性も頑固で少々のことでは悲鳴を上げませんから」

正弘も直也も笑顔を浮かべる。

 

和枝「お母さん、そんなこと言わなくてもいいわよ」

キク「ぴったりですわ、直也さんには」

直也「冗談じゃない。こっちはヒーヒー言ってますよ」

和枝「まあ…」

常子「和枝」

 

正弘「まず、お仲人さんにお願いするところから始めますか」〆(._.) メモメモ

常子「そうですわね。式の日も決めないと」

正弘「春というともう間もないことだし」

常子「春はどこでもいっぱいで、今日もあちこち聞いてみたんですけど…」

キク「再来年の春なら空いてますわよ。気長に待ったら?」と出ていく。

常子「まあ、おキクさんったら」

正弘「時々、その…変に投げやりになるんで困るんですよ」

 

直也「おかあさん、僕はなにも晴れがましい場所でなくてもかまわないと思うんですがね」

常子「ええ。こちら様のご都合であたくしどもは…」

正弘「いや、しかし、おいでくださる方のことも考えて、そうお手軽でもいけないんじゃないかな」

和枝「一生に一度のことですもの。きちんとしたいと思いますわ」

正弘「そうですよ。そう思うのが当然ですよ」

 

常子「よろしいんですよ。式なんかどうでも」

直也「やっぱりおかあさんの考え方は新しいな」

常子「あら、そうですか?」

和枝「お母さん」

常子「主人はもう和枝を出すのが寂しくって、なんだかんだ式を遅らせたがってるんですよ。でもね、私はもう決まったら、さっさとお嫁にやるほうがお互いのためだと思って」

直也「おかあさんってすばらしい。賛成だな。ユニークで若々しくて」

常子「まあ、うれしい! アハハ…」和枝がつねった?「あっ、痛い! 痛い、お父さん…」

メモしていた正弘が顔を上げる。「えっ? どうしました?」

和枝は気まずそうに下を向き、直也は笑いをこらえる。

 

とにかく早く結婚したい、させたい直也と常子と式はちゃんと挙げたい和枝。

 

久月前まで送ってきた直也は家に寄ったらという常子の言葉に修一の店でそばでも食べて帰ると別れた。

直也「なんだ、君、来ないの?」

和枝「えっ?」

直也「痩せてるけど腹っぺらしなんだろ?」

和枝「まあ…」ツンと横を向く。

常子は行っておいでと笑顔で送り出す。

 

谷口家茶の間

常子「和枝ったらバカ力があんのよ。痛かったわ」

福松「お前さんが調子のいいこと言ってるからですよ。でも、結構あの2人お似合いだわね」

福松「今更、何を言ってんだ。こっちはお似合いと思うから諦めてんだ」

 

常子「直也さんの給料、いくらぐらいだと思います? 安いらしいわ」

福松「一人前の医者だ。あれだけ学問して、あれだけ責任のある仕事だ。そりゃ10万やそこら…」

常子「5万ぐらいですって?」

福松「冗談じゃありませんよ。あれだけ時間外勤務までして」

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和菓子職人歴13年の正三が手取り8万円。

 

どさん子

テーブル席の直也と一緒にビールを飲む修一。もう閉店後かな? ほかの客はいない。

修一「婚約指輪か。やっぱり女は欲しいんだろうな」

和枝「もちろんよ。考えただけで胸がキュンとするわ」

直也「そうだろう? 僕も早く君にはめさせたいと思ってるんだ」

修一「直さんはいつ買いに行くの?」

直也「土曜日に行くよ。1人じゃ照れくさいから勉のヤツ、一緒に連れてね」←なんで和枝じゃないんだろう?

 

修一も俺も行こうと言い出すが、和枝が男の人ばっかり集まっておかしいと反対。お父さんに知れたら大変という和枝の言葉に直也も君んとこの親父さんを怒らせるのはまずいと遠慮し、修一は諦めた。和枝も一緒にビール飲んでるのね。

 

修一「こっちはこっちのペースでやるしかないんだから」

直也「しかし、よかったね。トシ子さんなら菊久月のお嫁さんとしてぴったりだ」

和枝「そうなの。お客扱いも慣れてるし」

修一「まあ、安心して嫁行ってくれ。そのうちあの店をビルに建て直してジャンジャン儲けてやるから」

和枝「お父さんたちに苦労だけはさせないでね」

修一「分かってるって。お前のためにも一財産作ってやるよ」

和枝「お願いいたします」

 

直也「なにも君がいつまでも菊久月を当てにすることはないだろう?」

和枝「あら。だって菊久月の何分の一かは私にも権利があるのよ」

直也「イヤだよ、いつまでもそんなつもりでいられるのは」

和枝「だって…ねえ? 兄さん」

修一「直さん。俺たちきょうだいにしてみれば親からもらうものは平等にもらってガッチリ生活を守るのが当然でしょ?」

直也「いや、そりゃ分かるんだが、ただ今日、僕の安月給の話が出たあとだからね」

和枝「それとこれとは別ですわ」

直也「まあいいさ。何百万でも何千万でも君がもらう権利のあるものならばもらえばいいさ」

 

修一「ただし、失敗したら借金が残るぞ」

和枝「兄さんの腕に賭けるってわけね。面白いじゃない」

直也「君って案外度胸があるんだね」

和枝「そりゃあ菊久月の娘はじゃじゃ馬でございますから」

3人で笑う。

 

野口家茶の間

朝食中

直也「あっ、お父さん。今日、病院の帰りに銀座へ出て指輪を買いますから」

正弘「うん、それでお金は?」

直也「5万円用意しました」

正弘「実は私にも出さしてもらうつもりで5万円別にしてあるから」

勉「へえ、お父さん、5万円も出すの?」

正弘「10万ぐらいのを買ったほうがいいだろう」立ち上がって部屋から出る。

直也「いや、困りますよ、そんな…」

 

キク「直也さん、10万ったってね、かわいらしいダイヤよ」

勉「やけに高いからな。宝石ってやつは」

茶の間に戻ってきた正弘。「10万でも見栄えはしないだろうけど結納としたらそれぐらいが平均だというから」

直也「いや、いいですよ。5万以内で探すから」

勉「真珠がいいじゃないか」

キク「真珠は和枝さんも持ってますよ。やっぱり小粒でもダイヤのほうが婚約指輪らしくていいわよ」

直也「誤解されるよ。高すぎるものは」

正弘「そう言わずにこの金を足してくれ。お母さんの気持ちも入っていると思って素直に使ってもらいたいんだ」

 

キク「まあ、旦那様ったら泣かせることおっしゃって」

勉「すぐ感動しちゃうんだから、あきれますよ」

キク「直也さん。素直にお受けなさいよ、ねっ?」

直也「じゃ、頂きます」

正弘「そうしておくれ。私も気が済むから」封筒を手渡す。

 

キク「ハァ…直也さんが婚約指輪を買いに行く年になったんですね」

直也「おかげさまで」

キク「奥様が生きていらしたらと思いますよ。ねえ? 旦那様」

正弘「キクさんには感謝してもしきれないよ。まあ、結婚も間近いことだし、忙しくて大変だが頼むよ。相談に乗ってくださいよ」

キク「旦那様…そんなもったいないことおっしゃって…」涙ぐみ、部屋を出ていった。

 

この家は息子2人だからキクの正弘への想いに気付いてないけど、娘が1人でもいたら早々に辞めさせられていたんじゃないかとも思える。

 

どさん子

修一はあくびしながら新聞を読んでいると、トメ子が岡持ちを持って店に入ってきた。

 

修一「なんだ、お前。仁王さんみたいに突っ立って。またクビになったのか? やぶ清は」

 

トメ子は近づいてくると、修一が読んでいた新聞を破いた。「聞きたいことがあんのよ」

修一「なんだよ、朝っぱらから」

トメ子「あんたとトシちゃんは一体どうなの?」

修一「トシちゃんはお前に関係ない」

トメ子「大ありよ。私、あんたに惚れてんのよ」

修一「悪女の深情けか。まっぴらごめんだよ」

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前もトメ子が言ってたけどスルーしていた。悪女って見た目が悪い女性という意味なのね。

 

トメ子「まあ、女心が分かんないの? 私がこんなに惚れてやってんのに」

修一「俺はね、好き嫌いがはっきりしてんだよ。お前は嫌い!」

トメ子「まあ、悔しい~!」と修一に飛びかかるも突き飛ばされて転んだ。痛い~と泣いてるところを起こそうとした修一にイヤ!と拒絶し、泣きながら、ベー!と出ていった。トメちゃん、ミニスカで思い切り転ぶのでドキドキする。

 

路地を掃いているトシ子に正三の歌声が聞こえる。

 

♪流れ流れて 東京は

夜の新宿 花園で

やっと開いた…

命預けます

命預けます

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藤圭子「命預けます」1970年7月25日発売

 

トメ子「トシちゃん」腰をさすりながら登場。

トシ子「どうしたの? トメちゃん」

トメ子「修ちゃんにやられちゃった」

トシ子「修一さんに? どうして?」

トメ子「あんたのこと聞きに行ったらさ、あいついきなり突き飛ばすんだもん」←とんでもない冤罪!

 

トシ子「まあ、大丈夫?」←その割に落ち着いてる。

トメ子「大丈夫でもないけどさ。しかたがないしね。私じゃいくら気張ったって、あいつ屁とも思わないんだから」

トシ子「トメちゃん、私のこと何か聞いたのね?」

トメ子「想像どおりになるってこと。つまりさ、あんたと修ちゃんならお似合いだしね」

トシ子「ほんとにそう思ってくれるの?」

トメ子「ほら、正三が今、歌ってるあの歌。私の気持ちにぴったしだと思ったんだけどさ。修一のヤツ、好き嫌いがいやにはっきりしちゃってて、どうしてもダメだっていうのよ。バカバカしくってもうやめた」

 

正三「♪命預けます」

 

去り際、トメ子はトシ子に笑顔を向けると歩き出し、谷口家の裏口を開けた。「正三のバカ! 頭きちゃうよ。のべつ変な声出しちゃって。お宅の旦那に言っといてよ。トメちゃんが恨んでるぞって。アーだ! バカ、フン」と戸を閉めて出ていった。

 

和枝「どうしたの? 正三さん」

正三「えっ?」

 

正三なにも悪くない!

 

久月

常子は商品棚を磨く。福松は5時ごろ直也と正弘が来るので散髪に行って不在。私もセットしてこようかしらってしょっちゅう美容院に行ってないか、和枝。

常子「そうよ。今日はお前が主役なのよ。あしたはお仲人さんの所にもご挨拶に行くんだし。今日はなんにもしなくていいから」

和枝は常子に着物も揃えておきなさいと言われ、ウキウキと2階へ。常子も「三百六十五歩のマーチ」を口ずさむ。

三百六十五歩のマーチ

三百六十五歩のマーチ

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山岡久乃さんは同時期、「ありがとう」で水前寺清子さんと親子役だったのでこの歌を口ずさんだのかも?

 

ますが来店。

常子「お互いにこの春から娘のことで苦労したわね」

ます「もう一息気を休めんと頑張りましょ」

 

常子はますがお菓子を買いに来たのだと思ったのだが、ますはトシ子のことでお世話になった正弘にあしたにでもトシ子を連れて挨拶に行きたいので、常子に都合を聞いといてもらいたいと言う。キクだとはっきりしない、時々ぼんやりしてると2人で笑う。

 

常子「あの…和枝とうまくいくかしら」

ます「先の先まで苦労しきれないわよ。私だってね、娘がすぐ隣へ嫁に来て、この店の番をするかと思うともう心配で心配で」

常子「近すぎるわね」

ます「お宅の旦那がどなったら私、飛んできますよ」

 

野口家

ボヘーッとテレビを見ているキク。私もこんな顔してるんだろうなあ(笑)。チャイムが鳴り、勉が帰ってきた。

 

キク「ああ、勉さんか。開いてるわよ」

勉が茶の間へ入ってきた。

キク「おかえり」

勉「戸ぐらい立ってきて開けなさいよ」

キク「勉さんだと思ったら立つ気がしなくなっちゃって」

勉「楽隠居。ボケるぞ」

 

キク「あっ、ねえ。ダイヤの指輪、いいのが買えた?」

勉「ズラッと並んでるとさ、どうしてもおっきいほうへ目が行っちゃうんだよ。親父さんも貯金下ろして出直そうかなんて言いだしちゃってさ」

キク「やっぱり旦那様、目が高いから」

勉「兄貴も迷いに迷って、とうとう13万。気張ったよな」

キク「たったの13万?」

勉「バカ。予算を3万円もオーバーしてんだぞ。おかげでみんなが財布はたいてやっとだ。ああ、腹減った」

 

直也と正弘は菊久月へ。しゃくだというキクに悪い癖が出たと指摘する勉。

キク「だってさ、同じ女に生まれてよ、やっぱり寂しいわよ」

勉「フフッ。あっ、田舎の土地売ってさ、100万円ぐらいのダイヤ買うんだよ。バーンと、ねっ? イカすぜ、セニョリータ」

キクにどつかれて、食べていたせんべいが飛び出す勉。

 

谷口家茶の間

正弘「こういう場合にどうご挨拶してよいものか、さっぱり分かりませんが、どうかこの品を結納としてお納めください。お願いいたします」

福松「ありがたく頂戴いたします。和枝、さっそくはめさせていただいたらどうだ?」

和枝「はい」

 

正弘、直也はスーツ。谷口家は全員和服。

 

のしのついた箱の中に指輪ケースが入っていて、その中にダイヤの指輪。

和枝「まあ…」

常子「まあ、まあ」

福松「こりゃ立派だ」

 

直也「僕にはめさせてもらえる?」

笑顔でうなずく和枝。和枝の左手薬指に指輪がはめられた。(つづく)

 

婚約指輪10万円に和枝と同世代の母は驚いていたな。都会と田舎の格差は今より大きかったのかな。

 

今回は見てないけど、BS11の「心」の再放送の昨日の回は21話で大出俊さん初登場回だったみたい。再放送が始まると分かったときは、また見てみようかと思ったけど、友にむかつくだろうと思ってやめといた。常子さんと違い、糸ちゃん怖いし。

 

やっぱり4Kいいなあ。「たけしくんハイ!」は数年前、再放送で見たとはいえ、その時は続編のほうはやらなかった。「國語元年」には山岡久乃さん、「たけしくんハイ!」は林隆三さんが出演。4Kテレビが欲しい。