TBS 1970年6月9日
あらすじ
福松(進藤英太郎)と常子(山岡久乃)は、修一(林隆三)のことで大ゲンカ、常子が家出をしてしまう。福松は子どもたちに八つ当たりするが、常子を心配する福松をよそに子どもたちは平気な顔をしていて……。
2023.11.27 BS松竹東急録画。
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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。20歳。
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井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。26歳。(字幕水色)
中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。
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石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。
トメ子:丘ゆり子…やぶ清の店員。
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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。
そういえば、wikiには直也と正三のみ全話出演みたいな事が書いてたけど、今日は直也さん出てないよ。
本日休業の札がかかる「菊久月」。
茶の間
福松は「どうも変だ変だと思ったんですよ。道で知り合いに会うといい息子さんがいるからこれからはのんびり旅行にも出られるとかなんとか言うんだから」
常子「いいじゃありませんか。結構なお話ですよ」
福松「フン、何が結構だ。留守の間に修一は何をやったんだ」
常子「何をしたって自分のうちです」
福松「あいつは分家しましたよ」
常子「私はそう思ってないんです」
福松「お前さんがどう思おうと現に向こうはラーメン屋だ」
常子「それでもあの子はうちの後継ぎですよ」
福松「お前さんがそんな甘いことを言うからつけあがるんだ」
常子「じゃああなた、このうちの将来どうするつもりなんですか?」
福松「和枝だって桃子だっていますよ」
常子「まあ、養子迎えて任せるんですか? 私はイヤですよ。せっかく立派な長男がいるのに」
福松「あいつは外で勝手をしてるんだ。昔ならとうに勘当ですよ。それをなんだ。親の留守に仕事場に入り込んで」
常子「入って悪いことでもしたっていうんですか? 菊久月ののれんに傷でもつけたっていうの? お父さん」
福松「うるさい!」
常子「留守中、ご苦労さま、大変だったね。どんなお菓子作った? 親ならそう言うもんですよ。それをガミガミどなってイヤ~な人」
福松「なんだ、その言い方。亭主が嫌いなら出てけ」
常子がさっきからしていた座布団カバーかけの手が止まる。「まあ…お父さん。昔の約束、忘れたんですか?」
福松「何が約束だ。知りませんよ、昔の約束なんか」
常子「忘れたとは言わせませんわ。じゃあ私、出させていただきます」
福松「おい…こら!」
福松「どこ行くんだ」
常子「勝手にさせていただきます。ごめんあそばせ」福松に前掛けを投げつけ裏口から出ていった。
福松「バカ野郎!」前掛けをたたきつける。
寂しげな音楽がかかり、福松は2階へ。和枝は繕い物をしていた。
福松「うん? 休みってのは静かすぎてダメだ」←2階の手すりに腰掛けてるのがなんか怖い。
和枝「大きな声出してたんじゃない、お母さんは?」
福松「修一の所だろ」
和枝「ああ、それでつまんないのね」
福松「大体、あの人はなんだかんだいって子供の世話を焼きすぎますよ」
和枝「それがお母さんの役目だもの」
福松「フン、亭主のことなんかどうでもいいんだから、あの人は」
「ケンカしたのね」と和枝に言われた福松は答えずに物干し場に出て「いい天気だ。もう初夏だからなあ」と外を眺めた。「豆大福にきんつばか。変なもの作りやがって」
和枝「お父さん、兄さんのことでお母さんを怒らせたのね。そうでしょ?」
福松「ああ、清々する」と体操を始め、和枝も誘う。
和枝「大丈夫よ。お母さんはすぐケロッとするほうだから」
福松「フン、気になんかしてませんよ」
和枝「年寄りの冷や水って言われるわよ、お父さん」
これぐらいのことと屈伸した福松は腰を押さえる。
和枝「兄さんだってラーメン作るよりお菓子を作るほうが楽しいのよ。中学生のときからお父さんの手伝いしてたじゃないの」
福松「あいつもあのころはかわいかったよ。わしが手を取って、あんの煮方から教えてやったんだ」
和枝「仲直りしたらどう? 兄さん若いんだもの。新しい経営を考えて当たり前よ」
福松「新しい経営? そんなことは真っ平だ。この店をめちゃめちゃにするだけですよ」
和枝「ほんとに古いわね、お父さん」
どさん子
店の入り口のガラス戸を拭く常子。それぐらいでいいと修一が言う。店は時間外れで暇。常子は続けて休んだせいでお客様を取られたんじゃない?と心配するが、修一が食べてうまけりゃ客はすぐ戻ると楽観視している。常子はおそば屋は一人では無理。出前を断っていたら儲けにならないと言う。
修一は勉がまだ来ないことを気にする。常子が勉のことを聞くと「感じのいい子でやな顔一つしないで働いてくれるし助かるよ」と答えた。
常子は直也がこの間のことで怒ってるだろうと言うが、修一は別に気にしてないようだと言う。和枝が福松に似て手が早いことを気にする。
修一「母さんも親父さんに殴られたことあんだろう?」
常子「ありませんよ。殴ったり出ていけなんて、もし言ったらほんとに出ていきますよって結婚前に約束してあんだから」
修一「へえ、昔っから強かったのか」
常子「まあね。昔の男は威張り散らしてたし職人かたぎで荒いもんだって世間も許してるところがあるから」
修一「19のお嬢さんにしては母さんもはっきりしてたほうだろうからな」
常子「呉服屋の一人娘でわがままに育ちましたからね。和菓子の味のことでお父さんと大ゲンカしたもんよ」
現在46歳の常子が19歳で福松と結婚。昭和18年、常子19歳。福松は昭和10年には店やってたんだから、何歳差くらいだろうね? 「おやじ太鼓」の亀次郎は役者年齢より10歳近く若い役だったから還暦過ぎくらいの年齢だろうか。恐らくトシ子は昭和19年4~12月生まれ、修一は昭和20年の1~3月生まれかな。
茶の間
ケーキや和菓子のカラー写真ふんだんの本を見ている福松。「そば遅いなあ、まだか」
和枝「出前混んでんでしょ。兄さんの店で食べてくればよかったのに」
福松「そばは日本のに限るんだ」
和枝「そば粉は外国のですよ」
福松「近頃はなんだってかんだって外国製だ。日本人は何を作ってるんだ。米ばっかり出来ちゃって。まったく考えると腹が立つよ」
休みの日に娘に作れというんじゃなく店屋物とってくれるなんてありがたいお父さん。
トメ子「毎度あり!」と元気にやって来た。
和枝「ご苦労様。ちょっと待っててね」
トメ子「サービス、サービス。持ってってやっから」と家に上がり込んできた。「あら、旦那。もう帰ってたの?」
福松「バカ。10日も前に帰りましたよ」
トメ子「もっとゆっくりしてくればよかったのにさ」
福松「温泉じゃあるまいし、半月も万博にいられますか」
トメ子「ああ、修ちゃんがいないとつまんないね」
福松「修一ならどさん子のほうだよ。大体、この店には…」
和枝「お父さん」
福松「いや、分かってるよ。落ち着いてないで早く帰んなさいよ」
トメ子「この間みたいに修ちゃんがお菓子作ってると1つや2つくれるのにね」
和枝「トメちゃん、何ブツブツ言ってんの。お店忙しいんでしょ?」
トメ子「関係ないわよ~」
福松「修一のヤツ、やっぱりわしの留守中に仕事してたんだな」
トメ子「そうよ、ラーメンのほうは閉めちゃってね。おかげでうちは売り上げが伸びたって」
福松「ああ、そうかよ」
鼻歌を歌ってまだくつろいでるトメ子に「なんだ、このそば。まるでうどんだ!」と文句を言う福松。
和枝も早くトメ子に帰ってもらおうと旦那に叱られると言うが、うちの旦那なんかペコペコしてんだからと動じない。
トメ子「私ね、時々、辞めるよ!ってどなってやんだ」
福松「黙れ!」←字幕には書いてるけど「バカ者!」に聞こえた。福松に怒鳴られ、びっくりしたトメ子は谷口家の裏口から出て行き、ドアを蹴った。いつも思うがトメ子の脚が細くてきれい。
ちょうど路地にやって来たキクは「あんた、何するの!」と注意したが、トメ子は「ヘッ」と去っていった。
茶の間
福松「えっ? トメ子のヤツ、うちのガラスを蹴っ飛ばしましたか」
キク「ええ、そりゃもうすごい勢いでしたよ。おそばを取るたんびにあれじゃうちがもちゃしない」
和枝「変わってるんですよ、トメちゃんって」
キク「いくら人手不足でも店員を甘えさせちゃいけないわね」
福松「そうですよ。若いヤツはまずビシビシしつけなきゃ。一人前にはならないんだ」
和枝「それができない時代なのよ」←昭和の半ばでこれ言ってる!
キク「でも、お宅の職人さん、やっぱり人間が出来てるわねえ。穏やかでどことなく愛嬌があってさ」
福松「ああ、正三ですか」
キク「うん」
福松「あいつは人もいいし、腕もいいんだが、どうも近頃ぼんやりしてね。もうそろそろ30になろうってヤツが、まあ心細いったら」
和枝「正三さんだって悩みがあるのよ。お父さん仕事のことしか話に乗らないから」
キク「そうそう、そのせいね。私に個人的に相談があるって言ってたから」
和枝「まあ、おばさんにですか?」
福松「あいつまた変なとこへベタベタしやがって」
キク「あら、私のこと?」
福松「いやね、もうあんたもなんとなく愛嬌があるから」
キク「そうかしら。まあとにかく相談に乗りますよ。そのかわりこっちもお願いします」
福松「いや、お願いしますってなんです?」
和枝「ほら、お写真預かってるでしょ」
キク「この年になってしみじみ寂しくってねえ」
福松「しかしあんた、結婚なんて若いときだからできるんで、今からじゃとても…」
和枝「あら、そんなことないわよ」
キク「ええ。ぐっと人生をかみしめて生活してきた女には味がありますからね」
福松「フッ…」と笑う。
福松だって当時の男性としては晩婚なのに、結婚は若いときだからできるは女性のみのこと言ってるのかな? 和枝は令和の人みたいな考え方だね。
どさん子
奥の掃除をする常子にいい加減やめてほしい修一。「映画でも特売所でもいいから行って来いよ」と言う。お財布を忘れてきたという常子はお小遣いやると言う修一に1000円貸してねとちゃっかり。しかし、修一が渡したのは数枚のお札でありがたく懐にしまった。
常子が青木写真館の娘さんとの見合いするのか聞くと、しかたないから会ってから断ると言う修一。「変な女だよ、あいつも」
常子「あら、女はみんなちょっと変なのよ」
修一「おふくろさんもか?」
常子「そうよ。だから女はかわいいのよ」
修一「へえ。さようでございますかね」
勉が出勤。
常子「大変ねえ。大学のお勉強と両方じゃ」
勉「なんだかアルバイトのほうが面白くなっちゃった」
常子「お願いします」
店には客が入り始めたが、修一からもういいと言われ、常子は店を出た。
谷口家を出たキクは隣の中川家に行き「おますさーん!」と声をかけるが、裏口は開いていない。さらに奥に行って呼びかけても不在。
キク「亭主の墓参りにでも行ったのかしら。おますさん! 生きてるうちにもっと大事にしとけばまだ5~6年はもったのにさ」
軽快に路地を歩き、表通りに出ようとしたキクに帰って来た常子が声をかけた。「あら、野口さんの」
キク「アハハハッ、キクです。今までお宅で旦那さんと話してたんですよ」
常子「ご機嫌悪かったでしょ? うちの人」
キク「いいえ。おそばかなんかバクバク食べちゃってご機嫌でしたよ」
常子「まあ、鈍感だから。お父さんは」
キク「いつもあんな顔なんでしょ?」
常子「えっ? ええ、まあ」
キク「お丈夫そうで結構ですよ」
常子「はあ」
キクは常子に案内してもらって正三のアパートへ。通路に洗濯物や布団が干されている。常子がノックしても正三は出てこない。「鍵はいつもここに置いてあるんだけど…不用心ねえ」と取り出してキクに見せる。
キク「ほんとにねえ。入ってくれってことですよねえ」
常子「近所に行くときだけいつもこうしてあるんですけど少し待ちますか?」
キク「中でお茶でも飲んで。相談に乗ってくれって言われて来たからには遠慮なんかしなくたって…開けてくださいな」
常子「いつもきちんと片づいてるからかまわないと思うんですけどね」と鍵を開けてドアを開けた。昭和、怖っ!
キク「まあ、これじゃ奥さんなんかいらないわねえ」
常子「6畳と3畳で1万5000円ですって」
キク「高いこと」
初任給が3万円台のころに家賃1万5000円の部屋に住む正三。10万はいかないけどそれに近いくらい給料はもらってるらしい。
キク「あっ、ついでにお布団入れといてあげよう」
常子「そうですね。日のあるうちにしまっとかなきゃ」
キク「ああ、フカフカしちゃって」
部屋側じゃなくて通路側のほうが日当たりがいいのかな? 通路の手すりに干してあった布団を数回叩いて部屋に運ぶ。
常子「直也さん、お元気ですか?」
キク「ええ、ええ。毎日帰りは9時10時ですよ」
常子「まあ、まあ」
キク「たまに早く帰ったと思うと近所の病院へ宿直行ったりね」
常子「お医者様も楽じゃありませんね」
キク「臨床を10年はやらないと一人前のうちには入らないとか言っちゃって。私なんかとってもつきあいきれやしないわ」
常子「結婚のお話はまだ?」
キク「全然ですよ。旦那様も来年は定年でしょ。勉さんはなんとなく頼りないし、内心、私もヤキモキしてるんだけど、もう病人病人って頭もハートもいっぱいらしいんですよ」
常子「まあ」
キク「若い人はパッと目が合ってビビビッとこなきゃダメなんですってよ」
常子「あなた、お若いわ」
キク「アハハハッ。会いたいですよね。そのビビビッて人に」
常子「まあ」
白いTシャツ姿でタオルで頭を拭きながら帰ってきた正三は部屋の中から笑い声がしているのに気付く。「奥さん」
常子「あっ、おかえり。お風呂だったの?」
正三「ええ」
キク「個人的な相談、聞きに来たのよ」
常子「ごめんなさい、勝手に入っちゃって」
キク「いいわよねえ」
正三「ええ。ちょいちょいじゃ困るけどね」部屋の中の布団に目をやる。「どうしたんです? これ」
キク「入れといてあげたのよ。気がつくでしょ?」
正三「冗談じゃない」
部屋の前に干してあったとはいえ、隣の奥さんが若いくせにずうずうしくてと話し、早く戻しとかないとギャーギャー騒ぐと布団を手にして外へ。キクは正三を止めると、「こんなものほっぽり出しときゃいいわよ。汚れて懲りりゃ自分の部屋の前に干しとくんだから」と部屋の前の通路にぶん投げた。「いいのよ、癖になるから」とぽいぽい廊下に置くのを正三が慌てて集めた。
夜、谷口家茶の間
和枝が夕食を運んできて、福松も和服に着替えて入ってきた。「あっ、もう7時だ。桃子は何をしてるんですよ」
桃子は常子を呼びにどさん子へ。
福松「呼びに行ったって帰るもんですか。強情なんだから、あの人は」
和枝「お父さんよ、呼びに行かせたのは」
福松「そろって飯にしなきゃ片づかないからですよ」
和枝「先に一本つけましょうか」
福松「お前が相手じゃ…」
和枝「あらそう、お気の毒さま」
どさん子
混み合う店内で勉が働く様子をじーっと見ている桃子。視線を感じた勉が桃子に笑顔を向けても桃子は真顔で見つめている。カウンターに戻った勉が再び桃子に目をやるとまだ見ている。
正三のアパート
常子「ごめんなさいね。10年もそばにいて、お父さんも私もぼんやりだから」
3人でお寿司を食べている。常子さんのおごりかな?
キク「そうよ、奥さん。こういうことはきっかけがないと、なかなか自分の口からは言いだせなくてね」
正三「困っちゃったなあ。やっぱり忘れてくださいよ。お願いします」
常子「いいえ。とにかくお父さんと相談してお隣に話しに行くわ」
正三「でもね、トシちゃんはもしかすると…ですね」←無音ではない。
キク「うん。もしかすると今頃大阪で話を決めちゃったのかもねえ」
正三「えっ?」
キク「人間、諦めが肝心だから言うのよ。おますさん、この前、私に話してくれたんだけど大阪の伯父さんの息子とトシちゃんを一緒にさせたいってね」
正三「そんなこと…ひどいよ」←お寿司を食べながらなので言葉に詰まってるだけ。
常子「まあ落ち着きなさいよ。決まったわけじゃないんだから」
キク「私は反対したわよ。いとこなんかやめたほうがいいんだから。でもね、そのいとこが優秀なのよ。一流銀行に勤めてて外国支店に勤務してるんだから」
常子「まあ、良さそうなお話ですわねえ」
正三「奥さん、ひどいよ。そっちの話に乗っちゃって」
常子「別に乗ってやしませんよ。うちにも娘が2人いるからつい考えるのよ」
キク「そうですよ。うちにだってご主人の息子だけど変わったのが2人いるからねえ。私だっておちおちしちゃいられないわよ」
正三「そんな…自分たちのことばっかり話しちゃって恨みますよ。もうこっちはせっぱ詰まってるんだから」
どさん子
客が引けていなくなった。
桃子「お父さん、心配してんのよ。家出したと思ってるらしいわ」
修一「たまには心配させてやれよ」
桃子「でも…ほんとに大丈夫なのね?」
修一「3000円渡したからのんびりしてんだろ」
今のうちに代わり合って飯にするかと修一が勉に言い、修一は奥へ。
勉はカウンターを拭きながら、「僕もさっきおばさんに会ったけどね、いつもと変わりなかったよ」と話した。
桃子「でもある日突然に蒸発する人間って多いのよ」
勉「そうね。その心理は僕にも理解できるな。自分の生活に疑問を感じる。やりきれなくなる。なんのために大学へ通ってるんだろうってね」
勉は「君、どうしてさっきみたいな目で僕を見んの?」と聞いた。
桃子「そんなに見てたかしら」
勉「女の子にあんな目で見つめられたことないんでね。言っとくけど、君、あんなふうだと誤解されるよ」
桃子「まあ、失礼ね」
勉「ならいいけど。惚れられたのかと思ってヒヤッとしたよ」
桃子「やあね。お宅は兄弟そろって、すぐいい気になるんだから」
勉「お宅はまたきょうだいそろってすぐ頭にくるね」
桃子「当たり前よ。憎らしいことばっかり言うんだから」
手も足も丈夫そうでおっかないと桃子をからかう勉。
そこへトシ子が大阪土産を持って来店。
修一「どうしたんだ? トシちゃん」
トシ子「事情があって帰ってきちゃった」
修一はお茶入れるから入んなよと誘う。
初対面の勉は「あれがおキクさんの推薦する女性か」と納得。兄貴にどうかとひところよく言っていたと桃子に教えた。
トシ子はいとこが秋に帰ってくることになって伯父さんも元気が出てきたので思い切って帰ってきた。万博へは行く暇なし。
トシ子は修一がお見合いするんだって?と聞き、いい娘さんなら結婚しちゃいなさいよと背中を押す。トシ子もお見合いしようかなと言いだすと、修一は「トシちゃんのことを好きなヤツがいるってこと知ってんだろ?」と切り出した。「すぐそばにさ」
トシ子「すぐそば…バカね。なんのこと?」
修一「正ちゃんだよ」
トシ子「ああ、正三さん」
修一「彼、長いことトシちゃん一点張りだよ。考えてやってくれよ」
トシ子「うん。分かってる」
何となく様子をうかがう勉と桃子。
茶の間(2階の部屋かも?)
キクがトシ子を直也にどうかと言っていたと和枝に伝える桃子。
和枝「年頃もいいしね」
桃子「年頃なら姉さんのほうがぴったりじゃない。もうすぐ21だし」
和枝「誰があんなペーペーのお医者さんなんぞ」
桃子「結婚の相手にはどんな男が最高かしらね」
和枝「生活力と優しさかな」
桃子「でもさ、女の横っ面の一つもはり倒すぐらいでなきゃ魅力ないな。おとなしく殴られたり蹴られたりしてるようじゃね」
和枝「だから直也さんってダメ」
桃子に野口さん→直也さんに呼び方が変わったことを指摘されドギマギ。
隣の部屋で寝ていた?福松がふすまを開けた。「なんだ、お前たちは! お母さんが家出したってのに直也さんだの直さんだのって、お母さんのこと心配にならないんですか」
和枝「心配してますよ。だけど映画見て外で食事でもしてたまにはいいでしょ」
桃子「お父さん、ウロウロしないで寝てらっしゃいよ。朝早いんだから」
福松「言われなくたって寝てますよ。修一のヤツ、3000円も母さんに渡すから、なかなか帰ってこないんですよ」とふすまを閉めた。
さすがに心配になる和枝。電話ぐらいかけてくればいいのにと桃子。
再びふすまが開いて、福松がしゃべりだす。「そうですよ。いや、大体46にもなって、ええ? まるで娘だ。人の言葉尻をつかまえて、はい、ごめんあそばせ。なんだ、バカバカしい!」と裏口から路地へ。
キクと常子が談笑しながら帰ってきて、慌てて物陰に隠れる福松。キクと別れると「常子!」と声をかけた。「今頃までどこをウロウロしてたんですか。こっちは死ぬほど心配してたんだ」
常子は正三の所で話し込んだと言うと「風呂が沸いてるよ」と一言。
寝巻きのままで外に出た福松を心配する常子。「時候が悪いんだから気をつけなきゃ」と言うと、「お前がいなきゃつまんないなあ、このうちも」と本音を漏らす。
常子「そうねえ」
福松「なんだ、すぐ本気にして」
常子「私、いつだってそう思ってるもの」
福松「ずうずうしい」
中川家の戸が開き、トシ子が空の牛乳瓶を牛乳入れに入れ、挨拶をした。
常子はそのうちお隣へ2人で頭を下げに行くことになりましたよと笑顔で言う。?な福松。(つづく)
何だかんだ奥さん大好きな福松かわいい。若者たちの恋模様より福松中心に描いてほしいものです。