TBS 1970年9月29日
あらすじ
桃子(岡崎友紀)の言葉を真に受け結婚を破談にするとわめく和枝(尾崎奈々)に平手打ちする直也(大出俊)。和枝は改めて直也の強い愛を知ることになる。一方、修一(林隆三)は結婚が決まったトシ子(磯村みどり)の言葉に……。
2023.12.19 BS松竹東急録画。
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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。
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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)
井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)
中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。
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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。
おお! 今日は少ないね。桃子、修一、トシ子と3人名前が並ぶのも珍しい。
菊久月はまだ開いておらず、直也は裏口に回る。茶の間では福松が新聞を読み、常子がお茶をいれようとしていた。
裏口をたたく音と「おはようございます」と叫ぶ声がし、2階から和枝も下りてきた。常子が裏口を開けると直也がいて、和枝は再び2階へ行ってしまう。
再び映る印象的なオリンピック記念塔。
まだ店も開かない早い時間なのに、なぜか駒沢オリンピック公園を歩く勉と桃子。
勉「そりゃ確かに僕は君に言ったよ。和枝さんはプロポーズされんのを待ってるって。兄貴がそう自信ありげに言ったからね」
桃子「あら。申し込みさえすれば君んとこの姉さん飛びついてくるって言ったじゃない」
勉「うん」
桃子「はっきりしなさいよ。女は強そうな顔してるけど内心は焦りに焦ってるとも言ったわよ」
勉「うん」
桃子「自分でまいた種よ」
勉「しかしね、君。それは兄貴が言ったとは言わなかったぞ。あれはつまりさ、僕の主観だよ。僕が言ったことで兄貴が和枝さんにどなられる理由はないんだからね」
桃子「どっちにしても失言よ。姉さんがもう結婚したくないって言うのも無理ないわよ。男のくせに軽薄よ」
勉「君はどうなの?」
桃子「どうって?」
勉「君、和枝さんになんて言ったんだ? 僕は今更クドクド女を責めたってしかたがないと思うから黙ってたけど、僕は君に一度だって兄貴が申し込みさえすれば君の姉さんが飛びついてくるとかしがみつくとか、そんな下劣なこと言った覚えはないよ」
桃子のションボリした表情を見て勉「ごめん、やっぱり言ったってしょうがなかった。どっちにしろ僕が悪かったと思ってるんだから」
桃子「勉さん。私、あんたが好きみたい」
勉「冗談じゃないよ」
桃子「いろいろ考えてみたのよ。そしたらあんたが好きだから生意気なこと言われて、だんだん腹が立ってエスカレートしちゃって」
勉「いや、そりゃ好きでもいいよ。僕だって嫌いじゃないけどさ。今は兄貴と和枝さんのことで手いっぱいだろ?」
桃子「そうね。なんとかしなきゃ」
勉「うん」
桃子~、勉より先に姉さんに謝った方がいいんじゃないの!? どさくさ紛れに告白までしちゃって。それより、1話から「おやじ太鼓」「兄弟」などに比べて随分シュッとした印象だったあおい輝彦さんが元に戻りつつあるように見える。髪型?
中川家の裏口から出てきたトシ子。今日も和服がホントによく似合う。表通りから路地に入ってきた修一と鉢合わせ。「どこ行くんだ?」
トシ子「お習字よ」
修一「なんだ、まだ行ってんのか」
トシ子「修ちゃんは?」
修一「なんだかつまんなくってさ。気が向いたらそのうちまた始めるよ」
トシ子「和枝さん、結婚の話、決まったんでしょ?」
修一「うん。トシちゃんらしくもない。耳が早いじゃないか」
トシ子「桃ちゃんからこの間聞いたから。おめでとう」
修一「なんだかまだモタモタしてるよ。トシちゃんみたいにすんなりいかなくってさ」
トシ子「ひどいわ」
修一「ひどい?」
トシ子「修ちゃんにそんな言い方されるなんてつらいわ。私がまるで喜んで結婚するみたい」
修一「トシちゃん。だって、それじゃ、つまり…つまり…まずいよ。まずいよ。こういう話になると」
トシ子「いいのよ、もう。気が弾まなくたって結婚はできるわ。案外、幸せになれるかもしれないしね。結婚なんて一種の賭けよね。勝負。今、そんな気持ちなの」
修一「勝負?」
うなずくトシ子。「いってきます」と去っていった。
路地に残された修一はトシ子の言葉を考えるようにゆっくり歩いて谷口家へ。それにしても今日は修一のもみあげがすごいな!
作業場
正三「やあ」
修一「おう。どうだい? 店のほうは」
正三「店は売れてますよ。栗蒸しの出が良くってね」
修一「もう10月だからな」
正三「こっちはたそがれの季節だ。わびしいね、お互い」
修一「そうか」
正三「えっ?」
修一「和枝は?」
正三「2階ですよ。旦那や奥さんが何言ったって、てんで受けつけねえんだから」
修一「直さん、来ないのか?」
正三「電話は毎日かかってくるし、二度ばかり病院の帰りに寄りましたよ。ああ、今朝も早く来たって奥さん言ってたな」
修一「へえ」
正三「だけどさ、和枝さん会いたくないの一点張りなんだから、まったく女は度胸だね」
修一「あいつも子供んときから一度へそ曲げっとテコでも動かなかったからな」
正三「あれで嫁に行けんのかね?」
外から入ってきて手も洗わず、正三が焼いていたどら焼きの皮に自らあんこを乗せて食べてる修一。このドラマ、手のアップは差し替えだろうけど、進藤英太郎さんも小坂一也さんも林隆三さんも修業したんだろうな。
それにしても桃子は桃ちゃん、トシ子だってトシちゃんと呼ばれることが多いのに、年上のトシ子や正三にも”和枝さん”と呼ばれてるんだな~。なぜだ?
2階から下りてきた福松。「おう、どさん子休みか?」←木曜日かな?
修一「うん」
福松と一緒に2階から下りてきた常子は「お前、来てくれたの?」と声をかけ、福松とともに茶の間へ。「なんだかくたびれたわね」
福松「だからあの2人は初めから相性が悪いと言ってるんです。結婚の申し込みをされたら親に相談なしで承知していいなんて、お前さんが言うからこういうことになるんですよ」
常子「あれはあれでよかったの。お父さんもくどいわね」
福松「当たり前ですよ。和枝と直也さんときたら、もうケンカするために会ってるようなもんだ。たまりませんよ、こっちが」
茶の間に一瞬顔をのぞかせた修一は2階へ。
常子「一番悪いのは桃子よ。話さなくてもいいことをペラペラ和枝に言うもんだから」
福松「親が聞いたって腹が立ちますよ。もう焦りに焦ってるとか一声かけたら飛びついてくるとか。バカにしてますよ、あの男も」
常子「直也さんがそんなこと言うはずないでしょ」
福松「言うはずがないことがどうして出てくるんです?」
常子「だから、桃子が悪いの」
福松「とにかく2人を会わさなきゃどうにもなりませんよ」
常子「だから頭を痛くしてるんですよ。うるさいわね、お父さんも」
福松「お前…」と、何か言いたそうにしつつお茶を飲む。
2階
手すりに座る修一。
和枝「とにかく私もう、あの人には会いたくないの」
修一「ふ~ん」
和枝「バカにしてますよ、女を」
修一「ふ~ん」
和枝「直也さんだけが男じゃなし」
修一「ふ~ん」
和枝「兄さん」
修一「なんだ?」
和枝「ふ~ん、ふ~んって何よ? 冷たいわね」
修一「ハハッ、そうかな」と窓辺に移動。
和枝「兄さんにも責任はあるのよ。直也さんなら幸せにしてくれるとかなんとか」
修一「幸せにしてくれんだろ?」
和枝「分かるもんですか」
修一「じゃあ、よせよ。簡単だろ? キッパリ会わないことにして、話もしない。顔も見ない。直也さんがどこのどんな女と結婚したって、お前の知ったこっちゃないよ。結婚なんてお互いによっぽど惚れ合わなきゃできるもんじゃなさそうだ。そりゃ桃子や勉君が何を言ったか知らないが、当の直也さんの話も聞かないで、お前は諦めるっていうなら、それだけの惚れ方だったんだろ」←正論。
修一「今、路地でトシちゃんに会ったんだ。結婚なんて賭けみたいなもんだって言ってた」
和枝「そんな…兄さん、止めなくていいの?」
和枝をじろりとにらむ修一。
和枝「トシちゃん、ほんとは兄さんを好きなのよ」←みんなにバレバレ。
修一「俺がバカなのか、あいつがバカなのか分かんねえや。気が乗らなきゃ結婚なんかしなきゃいいんだ。女なんて見栄っ張りの大バカだ」
国立東京第二病院の外観。架空の病院名じゃなく本当の病院の看板をそのまま出すってすごいね。
前も出てきたけど、ここが駒沢オリンピック公園の近くの現・国立病院機構東京医療センターだとようやく気付く。だからロケ地に選ばれたのか。
病院の敷地内を歩く直也と勉。プロフィール170cm問題を引きずると、並ぶと直也のほうがやや大きい。でも、秋野太作さんとあおい輝彦さんだと秋野さんのほうが明確に大きく見えてた。
直也「これはもう俺と和枝さんの問題だ。お前が謝りに行くことはないよ」
勉「だけどさ、あんまりエスカレートしちゃって申し訳なくってね。桃子さんとも話したんだけど、結局、僕と彼女がですね…」
直也「おっちょこちょいなんだ。よく分かってる」
勉「ハァ…そう先に言われると抵抗感じるけどね」
直也「バカ。これでも譲歩してやってるんだ」
勉「桃子さんもおふくろさんに絞られてね。ガックリしてたよ」
直也「今日、もう一度、菊久月へ寄ってみるよ」
勉「和枝さん、会わないんだろ? 女ってのはすざまじいよね。兄さんがどんなおいしいこと言ったか知らないけどね。ちょっとこだわりすぎだよ。かわいげがないよ、あれじゃ。いっそ、ひと月ぐらいほっといたら? じゃじゃ馬にはそのほうがこたえると思うよ」
直也「お前がじゃじゃ馬ってことはないだろ」
勉「うん、まあね」
直也「さあ、もう帰れ。まだ忙しいんだ」
勉「うん。とにかく僕と桃子さんにできることあったら手伝うよ。それから彼女、姉さんに事情を話したらしいけど」
直也「気を回さなくていいから自分のことをやれよ。俺も自分のことは自分でなんとかする」
勉「うん、じゃ」
和枝と勉は多分同学年なのに、勉は全然和枝に興味ないどころかあまり好感すら持ってないんだな。その辛辣な勉の主観が直也の考えだと桃子には伝わってしまった。それを和枝に言っちゃう桃子が悪いんだけどね。
どさん子
明かりはついているが、カーテンが引かれ、「本日は休ませて戴きます」の札が下がる。店の前に来たトシ子の前でいきなり戸が開く。
修一「あっ…なんだ、トシちゃんか」
トシ子「驚くじゃない、いきなり」
修一「それはこっちの言うことだよ」
トシ子「今からお出かけ?」
修一「今から入んなよ」
トシ子「どうして?」
修一「話があんだ」
トシ子「話なんて…」
修一「とにかく入れ」
トシ子「このお店へ来たの久しぶりだわ。秋になるとまた忙しいわね」
修一「俺、この商売、やめようかと思ってんだ」
トシ子「えっ?」
修一「結構儲けもある。だけど、もう一つ、俺にはぴったりこない。やっぱり菓子を作るほうが好きなんだな。だからさ、菊久月に戻ろうかと思ってんだ」
そこまで好きじゃなくても成功するって商才あるんだね。
トシ子「おじさんに話したの?」
修一「いや」
トシ子「おばさんには相談したんでしょ?」
修一「いや」
トシ子「まあ…そんな大切なことを」
修一「トシちゃん、どう思う?」
トシ子「どうって…あなたのことじゃない。私の出る幕じゃないわ」
修一「どう思う?って聞いてたんだ。今更、菊久月に戻ることはない。一生、この商売続けたらいいっていうんなら、それでもいい。トシちゃんのいいほうに決めるよ」
トシ子「何言ってんの? 修一さん」
修一「つまり…俺と結婚してくれって言ってんだ」
トシ子「えっ?」
修一「返事をしてくれよ、今、はっきり」
トシ子「そんな…遅いわ、もう」
修一「遅いもんか。男が決心したんだ、遅いも早いもない」
トシ子「まあ…むちゃ言わないでよ」と店を出ていこうとする。
修一「返事は?」
トシ子「菊久月へ戻るべきですよ。それくらいのこと私に聞かなくたって分かってるでしょ」
修一「よし。それじゃ結婚のほうも承知してくれるんだな?」
トシ子「何言ってるの。そんなこと知りません」
修一「申し込んだんだ。そっちも返事しろよ」
トシ子「返事ができるわけないでしょ」
修一「どうして?」
トシ子「私の立場も考えてちょうだい」と店を出ていった。
きゃー! 急展開!
茶の間
山本のご隠居さんと電話をしている常子。また和枝へ養子の話だが、付き合い上、はっきり断れない。電話を聞いていた和枝は断ってくれればいいのにと言う。
台所
常子「直也さんのこともご破算になったし。残念だけど、お前のほうからお断りした形だからしかたがないわね。諦めますよ。ほんとにあんなに優しくて男らしい男はめったにいないと思ってたんだけど、お前が声も聞きたくない、顔も見たくないじゃどうしようもないわ」
和枝「声も聞きたくないだなんて…」
桃子「電話に出ないってことはそういうことね」
和枝「黙って店番してらっしゃい」
桃子「チャンスは何度も来ないわよ、姉さん」
常子「そうね。チャンスは逃すなっていうわね」
和枝「女には女の意地がありますよ」
常子「桃子から聞いたぐらいのことでカーッとして女の意地だなんてバカバカしい」
今日は直也からの電話がないことを気にする常子に口でばっかりうまいこと言ってと反論する和枝。
ここまで和枝がかたくななのもわけ分からないし、常子の直也評が高すぎるし、桃子はケロケロしすぎ! なんでそんな平然としてられるんだ。
電話が鳴り、和枝は病院からだと思い、2階へ。常子が出ると修一からだった。「俺、トシちゃんに結婚の申し込みをしたんだ」
常子「えっ? なんですって? 結婚の申し込み?」
修一「うん。ようやく気持ちが決まった。まだトシちゃんの返事は聞いてないが、こうなったら粘るよ」
常子「そんな急なこと言ったって…とにかくこっちへいらっしゃい。ええ、そりゃ結婚はお前自身のことだけど、いろいろ込み入ってるんですからね」
電話口で聞いていた桃子が常子にしつこく聞くが、客が来たので桃子が店へ。常子は作業場へ。「お父さん、大変なの」
福松「分かってますよ。和枝は赤ん坊のときから並の女の子じゃなかったんだから」
常子「いいえ。修一が結婚の申し込みをしたって言うんですよ」
福松「誰に?」
常子「誰にって…」
正三「トシちゃんにですか?」
福松「まさか、そんな」
正三「奥さん、そうなんでしょ? 修ちゃんが今になって結婚の申し込みするならトシちゃんに決まってら」
福松「落ち着きなさい。トシちゃんはもう婚約しちゃった。来年の3月、結婚するんだ。今更…」
正三「いや、トシちゃんだ。修ちゃんが決心したならトシちゃんに決まってら。俺、もう働いてなんかいられないよ」前掛けを外してたたきつけ、外へ。
福松「正三! おい、おい、おい。あいつときたらどうして、ああ…。おい、正三!」
常子「ハァ…無理もないわ。ほんとにどうしたらいいんだろう。今頃になって」
正三を追って、路地に出た福松だが、作業場へ戻ってきた。「やっぱりトシちゃんか?」
うなずく常子。
福松「冗談じゃありませんよ! ぼんやりしてないで修一を呼んできなさい」
常子「来るように言ってあります」
福松「言っただけで来るもんですか!」
常子「どならないでくださいよ。胸がドキドキしちゃってるのに」
福松「こっちだってぶっ倒れそうですよ」
桃子が店で直也が待ってると報告に来た。「今夜はどうしても姉さんに会って話をするって。会わないうちは帰らないって」
常子「どうしよう」
福松「どうもこうもありますか。会いたきゃさっさと会えばいいんだ」
常子「お父さん!」
直也「会わしていただきます。和枝さん、どこですか?」←店から作業場へ入ってきた。
福松「さっさと上がってとっ捕まえてもらいたいね」
直也「失礼します」
常子「あの子まだ怒ってるんですけども」
福松「かまわないよ! 勝手にしやがれだ」
常子「まあ!」
2階
和枝「失礼じゃありませんか。いきなり女の部屋に飛び込んできて」
直也「ご両親のお許しを得て来たんだ。お座りなさいとかなんとか言ったらどうです?」
和枝「そんな義理はございません」
直也「義理? 君、僕と結婚の約束をした女だよ。それがなんだ電話一本で勝手に断ってきて理由もはっきりしない。義理を欠いてるのは君のほうじゃないか」
和枝「理由は申し上げました。あたくし、うぬぼれ屋は大嫌いなんです」
直也「僕も大嫌いだね。男が女に惚れるのはどこだか知ってるの? ええ? 顔と姿だけじゃないんだよ」
和枝「当たり前じゃありませんか」
直也「今の君を見てると他に惚れる要素はないね。皆無だ」
和枝「まあ…」と直也に手を振り上げるが、止められ、座らされる。「離してよ、乱暴ね、イヤよ。何すんのよ、薄情者!」
直也からのビンタ。「失敬。すみませんでした。今まで僕は誰にも手を上げたことはなかったんだ。こんな形で爆発させてしまって…和枝さん。海で僕が一生に一度、命懸けで女に惚れたって言ったこと真面目に受け止めて結婚の約束をしてくれたんじゃなかったのか? はっきり返事をしてください。もしかしたらこれっきり会わない覚悟なんだ」
和枝「これっきり会わない?」
直也「君が望んだことでしょ?」
和枝「でもそれは…そんなのひどい」
直也「ひどい? 何を言ってるんだ? 君は」
和枝「だって…なにもそんな怖い顔して怒らなくたって」
直也「怒りますよ。僕にとっては一生の問題を勉や桃子さんの言ったことくらいで動揺して破棄する女を怒らないで済ますわけにはいかないね」
和枝「でも…」
直也「でも、なんです? 大体、結婚の約束までした男を信頼してないことになるじゃないか。この先、結婚までの間、それから結婚して2人で築き上げていく生活。その間にどんなことが起きても君は絶対僕を信じる。僕だって君を信じる。お互いにその信頼がなくてどうして一緒に暮らせるんだ? ええ? それくらいの道理はいくら悪い頭でも分かるだろ」
和枝「分かりますわ」
直也「じゃ、改めて返事をしてくれ。僕と結婚する気がある?」
和枝、直也の目を見てうなずく。
直也「そう。じゃ、将来どんなときにも信頼してついてくるんだね?」
和枝「ええ」
思わず暴力を振るってしまい、自分自身にショックを受ける直也はまあいいとして、人に頭悪いと言っちゃうようなところが好きになれない。
茶の間
福松「トシちゃんに結婚の申し込みをした? フン、冗談じゃありませんよ。笑いもんだよ、大笑いだ。ハハハハ!」←この笑いが棒読み?で面白かった~。
常子「お父さん、何も無理に笑うことないでしょ」
福松「自然に笑ったんですよ。バカバカしくて笑わずにいられますか」
常子「まあ、憎らしい」
修一「父さん。俺も気持ちを決めたからこそトシちゃんに話したんだ。なんて返事が来るか分からないけど、頼む。正式に話持ってってくれ」
常子「そりゃ、お前がそのつもりなら」
福松「そんなバカな。わしにはとてもそんな…どんな顔で隣へ行けると思ってんだ?」
修一「だからさ、無理は承知だって言ってんじゃないか」
常子「せめてひと月前だったらね」
修一「いや、結婚式が済んだわけじゃないんだ。トシちゃんにもきっと承知させてみせるから」
福松「正三はどうなる? アヤちゃんのことだってある。お前みたいに簡単に考えて済む問題ですか、みっともない」
常子「でもね、お父さん。修一の一生のことだもの。世間体は二の次よ。笑われるのはいっときだわ。トシちゃんがもし婚約を解消しても修一と結婚してくれる気持ちだったら私たち何をしたっていいじゃないの、ねえ?」
桃子「トシちゃん、紙問屋の息子のこと、乗り気じゃなかったの?」
福松「いや、そうだよ。修一なんぞより向こうの男のほうがお似合いなんだ。幸せそうにしてるものを誰が今更、向こうを断って…」
修一「トシちゃんはその男に惚れてないんだよ」
常子「あら、お前にそう言ったの?」
修一「いや、分かんだ。トシちゃんの気持ちが。だから俺も決心がついたんだ」
常子「そう」
桃子「姉さんだけかと思ったら兄さんのほうもややこしくなっちゃって」←お前が言うか。
常子は2階の和枝たちを気にする。
福松「ほっときゃいいんですよ。どうせあの2人は顔さえ見りゃケンカするように出来てんだから」
常子「静かすぎますよ」と桃子に様子を見に行かせる。
修一「あっ、そういえば正ちゃんどこ行ったんだ? さっきから見えないけど」
福松「飛び出していったっきりですよ。お前がトシちゃんに申し込みなんぞするから」
修一「そうか」
常子「ハァ…どうしたらいいのかしらね。正ちゃんはかわいそうだし、トシちゃんだって動揺してるわね」
修一「私の立場も考えてみろって言われたよ」
福松「当たり前ですよ。結婚の日取りまで決まってる女に承知のうえで無理を言う男があるもんか。そういうときにはおとなしく諦めるもんだ」
常子「そりゃ昔よ。戦争前の話ですよ」
桃子「昔はロマンチックに出来てたのね」
福松「隣の奥さんがどなり込んできたらどうする? あしたにでもやって来るぞ」
修一「そのときはそんときさ。なんとかなる」
桃子「兄さんもやけに度胸据わったわね」
客が来て、常子が店へ。
福松「ハァ…仕事が半端になっちまった」
修一「父さん」
福松「うん?」
修一「俺、菊久月に戻ってもいいかい?」
福松「戻る?」
修一「ああ」
福松「この店、まだお前の勝手にはさせませんよ」
修一「俺の方針だって、この店のためを考えてんだよ」
福松「その話はまたにしてくれ」と立ち上がって作業場へ。
桃子「ハァ…なんとなく嵐の前みたいね。上も下もガタガタだわ」と桃子はお茶と羊羹をお盆に載せて2階へ。
和枝と直也は仲良く並んで外を見ている。
直也「早く結婚しちまうことだね。気の変わらないうちに」
和枝「気なんか変わりませんわ」
仲人を誰に頼むかの相談までしている2人に「おめでとうございま~す」と声をかける桃子。下も下で大変なのよ、みたいな終始傍観者目線なのがどうもムカつく。
作業場
修一「菊久月の和菓子の伝統を守ればいいんだろ? つまり味を落とさなきゃいいんだ」
福松「それには和菓子一本です」
修一「これだけの店構えてて和菓子一本で生活してける時代じゃないよ」
福松「フン、立派に生活してる。お前みたいにな、なんでもかんでも並べて商売する気はないんです」
修一「あってもなくても時代の流れってものは父さんみたいな商売、許さない」
福松「うるさい!」
修一「分からず屋だな、まったく」
福松「どさん子へ帰れ。なんだ、少し甘い顔するとすぐつけあがって」
修一「ゆっくり話も聞かないで頭ごなしに反対されちゃたまんないよ」
常子は少し早いけど店を閉めたと作業場へ入ってきた。
福松「これじゃ商売になりませんよ」
修一「こんなやり方じゃ、どっちみちお先真っ暗だ」
常子「修ちゃん、今夜はもうやめましょう。おなかはすくし、頭はガンガンするし。あしたはあしたのことにしてなんか食べなきゃ」
福松「ああ、そうだ。夕飯まだだな。どうも変だと思ったよ」
修一「腹が減ると年寄りはすぐ怒りっぽくなるんだな」
福松「当たり前だ。お前みたいに休みでフラフラしてんのとは違うんだから」
常子「分かりましたよ、もう」
福松「なんだ、お前さんまでうるさそうに」
桃子が作業場へ来て、和枝と直也が仲人の心配してると聞き、安心する常子。
福松「フン。あの2人の仲人なんかうっかり頼めますか」
直也が吸おうとしたタバコに火をつける和枝。笑顔で夜の街を見つめる2人。(つづく)
修一とトシ子が進展したぁ~! 修ちゃん頑張れ!
「あしたからの恋」24話放送の2時間前、TBS19時から岡崎友紀主演「おくさまは18歳」スタート。さすがにこの時代のドラマって再放送ですら見たことないなあ。懐かしドラマ特集でちょっと見たことあるかもしれない。秋山ゆりさんも出てたんだ。
↑DVD化されてるんだから人気あったんだね。
和枝→映画撮影でドラマ上は北海道旅行という理由で抜ける。
勉→4月から主演ドラマ。
修一→7月から主演ドラマ。
常子→「ありがとう」出演。
直也、キク→「蒼いけものたち」出演。
他の出演者も掛け持ち多いね~。それにしても1970年のドラマ、みんな面白そう。