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ドラマの感想など

【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #61

TBS  1969年9月16日

 

あらすじ

 

鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。

2023.10.4 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。

peachredrum.hateblo.jp

鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。

妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。

*

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。

妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。

*

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。

次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。

*

正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。59歳。

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お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。

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黒田:小坂一也…運転手。

*

寿司屋:玉川長太(声)

 

今日は子供たちの中では敬四郎のみ出演。

 

風鈴の音

待子は茶の間の掃除をしながら風鈴を外すんじゃないですか?と愛子に言うが、愛子はせっかく鳴ってるのにかわいそうだからお彼岸が過ぎるまではいいでしょと言う。

 

東京は9月半ばでもまだこんな夏の感じなんだね。まだ愛子さんも待子さんも夏の装いで、扇風機、簾戸だし。私の地元はこのごろの夏は別にしても昭和の終わりだとお盆過ぎるとだいぶ涼しかったような気がする。

 

風鈴は外してしまったら来年の夏までは鳴れない。この風鈴は三郎が中学3年のとき、修学旅行で京都へ行って買ってきてくれたもの。最近はさっぱり姿を見せないという待子に芝居の稽古をしてるとおばちゃんから聞いた愛子。

 

高円寺のおばちゃんも歯医者と鼻の医者へ通っていて忙しくて最近来ていない。鼻が詰まるとにおいがしないが大したことはない。愛子はあの年でかば焼きは毒だからにおわないほうがいいという。

 

おお! 手紙を読んでいた愛子が封筒の切手を切り取っている。黒田の切手収集に協力してるのかな。セリフで一切説明されないところで細かいな。

 

待子が正子のことをいつもおきれいになさっててお元気だと話すと、愛子は昔っからおしゃれで子供がいないから楽しみがないと言う。まあ、子供いないとこういうこと言われがちなのは今も昔も変わらんね。

 

また三郎の話題へ。

愛子「あの子が一番世話が焼けるんですよ。大学へ入るときだって2度も落っこっちゃって、やっと来年卒業できるのかと思ったら、それだってよく聞いてみると危ないんですって。ガッカリですよ。就職どころじゃないんですからね。同じ2度落っこちても敬四郎のほうがよっぽどはっきりしてますよ」

 

黒田帰宅。待子はブザーが鳴らないので裏門が開いてるのかしら?と驚くが、愛子は飛び越えて入ってきちゃうと平然と言ってるけど、怖いな! 

 

茶の間に顔を出し、お敏さんはどうしたのかと聞く黒田。風邪をひいて寝ていると愛子に聞くと、「へえ、あのがらっぱちがですか」と早速毒舌。どんな顔して寝てるんだろうと見に行こうとする。愛子はあんまりひどいこと言っちゃダメよとくぎを刺す。

 

すぐに別宅へ向かう黒田。お敏の部屋は別宅なんだよね。愛子はお敏と黒田を犬と猿に例える。

 

電話が鳴り、愛子が出た。電話は亀次郎から。幸子の就職先として食料品の輸出をやってる会社がいいんじゃないかという話。会社は大きい小さいじゃない、堅いかどうかが大事。

 

愛子「その会社なら入れてくれるんですか?」

亀次郎「入れてくれるかどうかはこれから決まるんですよ。本人を見てもいないのに決まるわけありませんよ」

愛子「じゃあ、これから試験があるんですか」

亀次郎「試験なんかとっくに済んでますよ」

愛子「じゃあ、裏から入るんですか?」

亀次郎「裏じゃありませんよ。大威張りで表ですよ」

愛子「じゃあ、結構な話じゃありませんか」

亀次郎「そうさ。だから電話したんですよ」

愛子「つまり特別なんですね」

 

亀次郎「補欠ですよ。入社が決まった女の子が素行が悪くてダメになったんですよ」

愛子「じゃあ、運がいいじゃありませんか、幸子は」

亀次郎「運がいいか悪いかはこれからですよ。幸子の素行は大丈夫なんだろうな」

愛子「当たり前ですよ」

亀次郎「それが心配で電話したんですよ」

愛子「そんな変なこと心配しなくたっていいんですよ。なんですか、お父さんが」

亀次郎「だって幸子だってゴタゴタしてましたよ」

愛子「多少のゴタゴタは誰にだってありますよ、若いときは」

 

亀次郎「それがいけませんよ、それが。大体お前はだらしがないですよ。子供たちに。おい、愛子! もしもし!」

愛子「まだ何か言うことがあるんですか?」

亀次郎「ありますよ。大体、お前はですよ…」

愛子「よっぽど暇なんですか、会社は。つまり幸子が帰ってきたら、そう言えばいいんでしょ? 素行がよくって頭がよければ入れますって。はい、分かりました」と受話器を置く。

 

待子に「お父さんの言い方ったら、なんでもない話でも話しているうちに変になっちゃうんですからね」とこぼす愛子。亀次郎に素行は大丈夫ですか?と聞かれたのに腹が立ったんだね。まあ、幸子は全学連の友達がいるし、幸子自身も!?

 

また電話。今度は待子が出た。「あっ、待子さんか」と表情が明るくなる亀次郎。「ちょっとお母さんを呼びなさい」と替わらせる。意地になっていると電話を替わった愛子に三郎のことについて聞く亀次郎。家があるのに家へは帰ってこない。来年卒業のはずが一体どうなっているのか。妹のほうは就職するというのに兄貴のほうは2年もスベってまたどうなるか分かりゃしない。ついうっかり就職のことを忘れて遊ばしておく親がありますかと怒鳴る。

 

愛子「はい。ちゃんと聞いてますよ」

亀次郎「聞いてたらなんとか言いなさい。黙ってないで」

愛子「いいえ。一言(いちごん)もありませんよ。お父さんの言い分は正しいんですからね。本当に立派ですよ。感心しますよ」

亀次郎「冗談事で言ってるじゃありませんよ」

愛子「じゃあ、切りますから。はい、さようなら」受話器を置き、すぐ待子においしいお茶でも入れて飲みましょうかねと台所へ。

 

心配する待子にこっちから切らないとお父さんのほうも切るきっかけがなくて困るのだと愛子が言う。再び電話が鳴るが、出なくていいと止める。

 

たまたま、家に入ってきた黒田が電話に出た。返答の仕方から亀次郎ではないと判断。電話は魚一からで旬のサンマが入ってきたけど残しておきますかという内容で、10匹頼んだ。愛子は黒田もお茶に誘う。お敏は熱もないし、ちょっと寝てれば治るという黒田の見立て。

 

お敏は朝食を食べていなかったので、お昼は何がいいか聞くと言って出ていった待子。ちょうど呼び鈴も鳴った。

 

愛子「しょっちゅう誰かが来るし、開けっぱなしにもできないし台所にいる人は大変ですよ」

黒田「お敏さんは1人でよくやりますね」

愛子「そうよ。そう思ったらケンカしないでちょうだいよ」

黒田「それがついなんか言いたくなっちゃうんだな」

愛子「かわいそうよ。もう50を過ぎてんのよ」

黒田「それを言うと怒るんですよ。年のこと言うと」

 

敬四郎帰宅。「あっ、お母さん」と愛子の顔を見るなり甘えた声を出す。

愛子「なんですか、その情けない顔は」

 

とにかく聞いてくださいよと愛子の手を引っ張って台所へ。黒田が立ち上がり「おかえりなさい」とあいさつ。茶の間じゃなくていいと台所の椅子に掛ける敬四郎。黒田は敬四郎の部屋の掃除をすると言って出ていった。

 

愛子に手を洗ってきなさいと言われると「いいですよ、一服してからで」というとしぶしぶ席を立つ。どこかに洗面所があるんだよね~。玄関出て茶の間のほうに行ったからやっぱりあっちのほうに風呂場と洗面所があるのかなと。

 

敬四郎「だけどあれですね。台所にいるお母さんっていいですね」

愛子「お敏さんが寝ちゃったからしかたがないんですよ」

 

敬四郎ちゃん、天性の甘えっ子って感じだな。

 

お敏の部屋

寝巻き姿のお敏と待子が話している。長生きはできないというお敏に励ましのつもりか100まで生きられますよと言う待子。

お敏「まあやだ。真っ平ですよ。100まで生きるなんて」

待子「あら、どうして?」

お敏「働いて怒鳴られて早起きして、ゾッとしますよ」

待子「だってそのうちにいいことだってあるんじゃないの」

お敏「あるもんですか。私なんかに」

 

寿司金の若い衆から勧められたお見合いは、年はお敏より若いものの、若いときからケチで評判の人で、なんでも一応は値切ってみないと気が済まない人で洗濯屋のツケまで値切る人だということがだんだん分かってきた。おふくろが何人も亭主をかえたもんだからその報いが私に来たんですよ。←お敏さん全く悪くないのにね。

 

働きもんだからきっといいことがあると待子はお敏を布団に寝かせる。熱はないのに、黒田が心配して洗面器に氷を持ってきていた。黒田の印象が変わったお敏。

 

愛子は寿司金に上寿司を2人前を注文。今日はちゃんと声だけの出演でもキャストクレジットに名前がある寿司金の若い衆。

・上寿司2人前…きゅうり巻きと光り物はいらない。一緒盛り。

・もう1人前はお敏用。寿司屋は並でいいですねと言うが、愛子はおいしいほうがいいとこちらも上寿司。

 

台所

ホテルで働きたいと敬四郎が言いだしたものの、料理を習いたいのにやっているのはポーター。1日だって2日だって嫌だと退職を示唆する?

 

敬四郎「そりゃいいお客さんだっていますよ。だって変な連れ込みみたいなお客にチップを出されてごらんなさい。僕はいらないって言うのに、ゆうべのお客なんて恥をかかせたって目の色変えて怒るんですからね。それだってまだいいほうですよ。ひどいのなんて人を呼んどいて、どうぞって言うからドア開けたら…」

愛子「もういいですよ、そんな汚らしい話は」

敬四郎「ほら、お母さんだってそう思うでしょ。僕が辞めたいって言うのは当たり前ですよ」

 

辞めてどうするの?と愛子に聞かれると、寿司屋がいい、いい寿司屋になると値段なんてあってないようなもんでお客のほうが気取って、いくら取っても文句を言わないと目を輝かせるが、お寿司でも食べてゆっくり考えるのねと真剣に取り合わない。

 

まだ台所にいたんですか?とやってきた待子はそんな椅子では疲れませんか?と敬四郎に聞く。

敬四郎「ホテルでは立ちん坊ですよ。勤務中は腰掛けられませんからね」

待子「まあ、掛けちゃいけないんですか?」

敬四郎「突っ張らかって棒立ちですよ」

待子「じゃあ、少し横になって考えなさい。どんな世界にだって嫌なこともいいこともあるんです」

敬四郎「嫌なことだって限度がありますよ。僕にはできることとできないことがありますからね。それだってお母さんの子供だからですよ。もっと下等なうちの生まれならなんだって平気ですよ」と階段を上る。

 

踊り場で掃除機を持った黒田とすれ違い「掃除しときました」と言われ、ありがとうとお礼を言う敬四郎。

 

台所に残った愛子と待子は敬四郎の話からお敏の話へ。台所の前を通りかかった黒田が立ち聞き。待子が黒田さんが洗面器を持ってきて頭を冷やしてあげたのがよっぽどうれしかったんじゃないでしょうかと言っていて、黒田はちょっとだけ顔をほころばさせる。愛子は犬と猿じゃなかったのねと安心。待子は黒田を根は親切な人だと言う。待子さんは誰の陰口も全然言わない人。

 

敬四郎が寿司を食べたいというのでお敏の分のお寿司を頼んだと愛子が言うと、待子もうな重を頼んだと言った。待子は「お敏さんは遠慮したんです。でもあたくしが無理に勧めて」と気遣いも忘れない。

 

愛子はお寿司は3人前頼んだから黒田さんにあげてもいいから、待子さんも少しつまむといいわと勧める。

 

呼び鈴が鳴る。うなぎが配達されたと思いきや、来たのは高円寺のおばちゃん。愛子は広間へ行き、黒田の掃除を手伝っていた。高円寺のおば様がお見えになりましたと待子が広間へ来ると、うなぎじゃなかったの?と驚く。

 

愛子はちょうどうなぎが来るんですよと正子に言い、そのままソファに掛けたので掃除も終わり。自動車の運転のほか、お掃除もしている黒田にもっと月給を上げなくちゃいけないという愛子。

 

正子「あらいいわね、黒田さん」

黒田「ダメですよ。偏屈だから割引ですよ」

愛子「そうでもないのよ、黒田さん。お敏さんも気を変えたらしいわよ」

黒田「あの人じゃ代わり映えがしませんね。もともと女は秋の空ですからね。どうぞごゆっくり」と広間を出ていった。

 

正子「変な人。もうちょっと愛嬌のある言い方したっていいじゃないの」

愛子「あれでいいんですよ。あれが黒田さんのいいとこかもしれないんですよ」

正子「おや、そうかしら」

愛子「心にもない口先だけの人が多すぎますよ。わざわざ憎まれ口をたたく人なんて正直なんですよ」

正子「そりゃまあ、そう言ってもらったほうが世話をしたほうはうれしいけど」

愛子「それに水道のお水の使い方だってガスの使い方だってお敏さんとケンカするほど気がつくんですからね」

正子「おや、そうなの?」

愛子「今どき、勤め先の経済まで切り詰めてくれる使用人なんていませんよ」

正子「そうそう、それはそう」

 

うな重が来たんですけど、どうなさいますか?と待子が愛子に聞く。愛子は正子に勧めるが、誰かが食べるんじゃないの?と気にする。お寿司も来るからどっちか1つ余っちゃうと愛子に言われると、「まあ、いいところに来たわね」と素直に喜ぶ。

 

愛子「やっぱりうなぎのほうがいいんでしょ?」

正子「そりゃまあ、かば焼きのにおいはたまらないわよ」

待子「じゃあ、もう鼻のほうは治ったんですか?」

正子「いいえ、まだ通ってるの。だけど、かば焼きのにおいは特別よ。思っただけでもプーンとにおってくるわ」

愛子「まあ、おばちゃんったらなんて重宝な鼻かしら」

正子「間がいいのよ、私って」

 

待子が今、お持ちしますと広間を出ていこうとしたが、あとでいいから先にお敏さんにあげてちょうだいと譲る。寝てる人のほうが先、あとのほうが楽しみでいいと言う。

 

しかし単純に風邪で寝てるときにあまり重いものは食べたくないよな~。

 

広間に敬四郎が入ってきた。今日は夕方からの仕事。敬四郎がホテルを辞めたい、次はお寿司屋さんだと言っていたと正子に話す愛子。

 

敬四郎「分からないのは日本中、分からないんですよ。ちゃんと分かることがどこにあるんですか? 国会だって民主主義だって、みんなめちゃめちゃじゃありませんか」

愛子「そんな大げさなことじゃありませんよ。あんた一人の問題ですよ」

敬四郎「その一人一人の認識が問題なんですよ。一人一人の人間が幸せにならなきゃ、その国の政治はどっかおかしいんですよ」

正子「まあまあ、待ちなさいよ。お寿司屋さんの話をしてたら、急に政治の話になってしまって」

敬四郎「だからそれが関係してるんですよ」

愛子「あんたが偉そうに言うことじゃありませんよ。大体勉強が足りなかったんですよ」

敬四郎は咳払いし、お寿司まだ来ないの?と広間を出ていった。

 

愛子「おばちゃんは子供がなくて幸せですよ」

正子「そりゃまあ、のんきなことはのんきだけど」

愛子「いずれは遠くへ行っちゃうんですからね。親の手の届かない遠くへ」

 

正子はそれで思い出したと三郎はどういうことになってんですかと聞いてきた。正子はこの1週間というもの顔を見たことがない。お芝居が好きならお芝居をするのもいいが、どこで何をしてるか分からないんじゃとても監督のしようがない。亀次郎に怒鳴られたって責任が持てないと言う。

 

愛子も三郎のことでお父さんから怒られたと言う。好きな道を進ませるしかない。お父さんのあとを継いだ武男さんだって、あれで一番よかったとは思っていない。素直っていえば素直、親孝行っていえば親孝行。だけどがむしゃらに生きてきた私たちとはどっか違う。無難な道ばかり歩いてきたんではない。

 

セピア色の回想シーン。愛子は姉さんかぶり、モンペ姿で同じ格好の女性たちとヨイトマケをしている。後ろにちらっとブロック塀が映るとちょっと新しく感じるな。昼休み、かごに入れた赤ちゃん(恐らく武男)を眺めながら弁当を食べる。まだこういう時代を知ってる人のほうが多い時代のせいか記録映像みたいにリアルな感じ。

 

いくら先生をしていたといっても赤ちゃんを抱えていたのでは、なかなか教職に就くのは難しかったのかな。結婚退職してたとか。

 

茶の間のテーブルの上の上寿司とうな重が真上から映る。正子、愛子が席につき、待子もお茶を運んでくる。

 

愛子「さあさあ、おいしくいただきましょうかね」

正子「まあ、お寿司もおいしそうね」

愛子「どうぞつまんでちょうだい」

正子「昔のことを考えたらもったいなくて手が出ないわね」

愛子「そんなふうに思うのはお互いに年なんですよ。今の若い人たちはもったいないなんてこと知らないんですもの」

正子「だから消費時代って言うんですよ。とにかく古新聞や空き瓶なんか、くず屋さんだって嫌な顔するんですからね」

愛子「物を粗末にしたほうがいい時代なんですよ」

正子「今にきっとバチが当たるわよ。お米だって昔は1粒だってこぼしたら大変だったわ。それがどう、このごろはわざとたくさん作りすぎちゃって家畜の餌ですからね」

 

うな重のふたを開けた正子は喜ぶ。

 

ブザーが鳴る。

愛子「表門でしょ。今のブザーは」

 

待子が出ると亀次郎だった。愛子、正子が玄関へ。別宅から敬四郎とお敏も来た。うな重を食べたお敏はすっかり元気を回復していた。

 

なかなか家に入ってこない亀次郎。タクシーの運転手さんとケンカしていると待子が駆け込み、愛子が外へ、敬四郎が黒田を呼びに行く。おつりが足りなかったから呼び止めると、鼻で笑って変なことを言ったと待子が話す。

 

それくらいチップでよこせよ的なことを言われたのかな。

 

亀次郎は「ああいうタチの悪い運転手には言うだけ言ってやらなきゃ分からないんだ!」と怒鳴りながら家に入ってきた。みっともないですよ、門の前でと愛子が注意するが、あんなめちゃくちゃな走り方をして、わしは乗っている間じゅう、ずっと我慢をしてたんだと怒りが収まらない。

 

それと、愛子の電話の切り方が気に入らずに家に帰ってきた。昼飯のついでだとうなぎでも取りなさいという。

正子「やっぱりにおいだけだったわ」とガッカリ。

 

敬四郎と黒田が「どうしたの」と表玄関から入ってきた。

 

亀次郎は「おばちゃん!」と乱暴に茶の間から呼びつけ、早く来てうなぎでもお寿司でも好きなほうを食べなさいと手招きする。正子は遠慮してお寿司。黒田や敬四郎も呼ばれて茶の間へ。一瞬躊躇する黒田を行かないと怒られるわよと正子が背中を押す。

 

お敏は「ああ~おいしいうなぎだった」とルンルン♪ 正子に「黒田さんのお茶と取り皿をね」と命じられても「はい!」と元気よく返事をして表玄関の戸を閉め、台所へ。(つづく)

 

面白い、面白いんだけど子供たちのその後が知りたいよぉ~。洋二兄さんどうしてるかなあ?