徒然好きなもの

ドラマの感想など

【連続テレビ小説】芋たこなんきん(134)「出会い」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

大学病院で良性ポリープの切除手術を受けるよう健次郎(國村隼)に診断された大崎俊平(櫻木健一)は、妻の佐和子(瀬戸カトリーヌ)の急な優しい接し方にも違和感を覚え、ガンではないかと疑う…。一方、町子(藤山直美)と健次郎は、久しぶりに徳永家に帰ってきた昭一(火野正平)が、富田林に家を建てているという話を聞く。そして町子が長崎での講演に出たあと、昭一は健次郎に結婚しようと思う相手がいることを打ち明ける。

仕事部屋

町子「♪ああ 長崎は今日も雨だった

さがし さがし求めて ひとり」

長崎は今日も雨だった

長崎は今日も雨だった

  • 前川 清
  • 演歌
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

純子「先生。長崎の講演会の主催者の方からのお電話で『空港ロビーでお待ちしています』とのことです」

町子「ああ、そうですか。よう分かりました」

純子「ええ」

町子「ああ、長崎か~」

純子「(町子が読んでいたガイドブックを取り上げる)あの、今夜はパーティーですので、それまでには…」

町子「はい。ビシッ、完成仕上げます。はい。筆が進みます」

 

診察室

俊平「手術なあ…」

健次郎「うん…。まっ、良性のポリープやけど取っといた方が安心やな。入院も10日ぐらいや」

俊平「それ、なんとか5日ぐらいにまからんか?」

健次郎「値切ってどうすんねんな」

俊平「病院嫌いやねん…」

健次郎「大丈夫。知り合いの大学病院に紹介状書いたるから」

俊平「手術なあ…」

若子「男やねんから、はい、シャキッとする。お大事にね」

俊平「ほな、どうも」

健次郎「お大事に」

 

路地裏

貞男「良性なんやろ? よかったやないか」

俊平「うん?」

貞男「『取ってしもた方が安心や』て健さんが言うんやったら、そら、その方がええわ」

俊平「人のこっちゃ思て、気楽に言うてくれるわ。何ちゅうてもな、腹を切るなんての生まれて初めてなんやから」

貞男「情けないことを言うな、ええおっさんが」

俊平「そんなこと言うてもやな…」

 

佐和子「ここやったん?」

貞男「こんにちは」

佐和子「こんにちは。『病院の紹介状、できてるから取りに来てください』て、ヤブちゃんから電話があったの。なあ、大学病院、週明けにでも一緒に行こ」

俊平「1人で行けるわ」

佐和子「入院の手続きもせなあかんねんから一緒に行くわ」

俊平「入院なあ…」

 

佐和子「そや、今日は久しぶりに外で何かおいしいもんでも食べへん?」

俊平「おいしいもん?」

佐和子「何でもええ。あんたの好きなもん」

貞男「そら、ええわ。手術したらしばらくは酒も飲まれへんやろしな。なあ、ええな」

佐和子「ええでしょ」

 

診察室

何か書いていた健次郎がペンを机の上に落とす。自らの右手を見るが、すぐまた書き始める。不穏な音楽。

 

その夜です。

 

たこ芳

佐和子「たこ芳でよかったの? ほんまに」

俊平「ああ。おいしいもん言うたらここが一番や」

佐和子「そやね。ありがとう」

板前「どうぞ」

 

佐和子「はい」俊平のコップにビールを注ぐ。

俊平「はいはい。よしよしよし。はい」

佐和子「1杯だけね」

俊平「うん」佐和子のコップにビールを注ぐ。

佐和子「はい。ありがと。大根とごぼ天、お願いします」

板前「はい」

 

佐和子「なあ、好きやろ?」

俊平「うん」

佐和子「あ、そや。たこも言うとこか。ほな、たこと…私は大根に揚げにコンニャクお願いします」

板前「はい」

 

俊平「何や優しいて気持ち悪いな」

佐和子「病人さんやからね」

俊平「先生、何ぞ言うてはったんか?」

佐和子「うん。ちょうど取りに行った時、忙しそうにしてはった。『月曜日が担当の先生の日やから、その日に行きや』て」

俊平「お前、何ぞ俺に隠してへんか?」

佐和子「うん?」

 

俊平「いやいや、あの、先生、違うこと言いはったんと違うんか?」

佐和子「違うこと?」

俊平「かめへん。かめへんからな、はっきり言うてくれ」

佐和子「何、言うてんの?」

俊平「いや、俺な…」

 

町子「こんばんは! あら、こんばんは!」

りん「いらっしゃい」

池内「こんばんは」

俊平「あ、池内幸三先生も…」

池内「あっ、どうも」

佐和子「どうも」

 

小川「ああ、たこ芳、僕、久しぶりやなあ!」

町子「ええから座って座って。あんた、座って。かさ高いねやから座って。よいしょ」

小川「看板女将のおりんさん、お変わりございませんか?」

笑ってうなずくりん。

peachredrum.hateblo.jp

小川君は町子の結婚式以来!?

 

池内「徳永先生も呼ぼうや」

町子「いや、今日ね、あの人、出かけてるんやわ」

小川「お元気ですか?」

町子「ええ」

小川「毎晩、二人で飲んでしゃべってはりますの?」

町子「それがね、楽しみで一生懸命お仕事頑張ってるんです。あ、そう、ねえ、小川さん、今月号読ませてもらった。ものすごう面白かったよ」

小川「ほんまに? ありがとう。初めて褒めてもろた、花岡さんに」

池内「デビュー2作目で日本ミステリー大賞受賞やからね。海外作品の翻訳家としても引っ張りだこやしなあ」

小川「来月もね、アメリカに取材に行きますねんで。シカゴの歴史、調べに」

 

町子「しゃべれんの? 英語。英語しゃべってんの聞いたことないから、私、信じられへんねんわ。しゃべってみて、一回、そしたら。しゃべってえな」

小川「いやらしいな」

町子「いやらしいことあれへん。しゃべりいな、あんた。しゃべりいちゅうてんねやから、しゃべったらええがな。あっ、はい、ありがとう」小川には遠慮なくガンガン突っ込む。

 

隣の俊平たちの様子が気になった町子。「俊平さん、何か今日、元気ない」

俊平「うん?」

町子「あんまり飲んでへんの?」

俊平「あ、いやいやいや…」

佐和子「健次郎先生に紹介していただいた大学病院に週明けに行くことになりまして…」

 

町子「あ、決まったの?」

佐和子「はい。良性やいうんで安心しました」

町子「うわ~、そらよかった!」

俊平「すんまへん。ほな、ちょっとお先に」

佐和子「え? ちょっと。まだ残ってんのに」

 

俊平「お先にどうも」

池内「あ~、どうも」

町子「ねえ、何かあったの?」

佐和子「やっぱり手術いうのショックやったみたいで」

町子「そら、そうよね」

小川「ハハハハ…! 花岡…」

佐和子「すいません、お勘定お願いします」

小川「花岡さんて」

 

そのころ、徳永家では…

 

茶の間

和代「おいしい…」

昭一「2人とも留守ですか?」

和代「町子はもう帰ってくると思いますけど。このおミカン甘うておいしい」

昭一「そうでしょ。これね、和歌山でね、どっさりもらったんですわ。これ、上等なミカンに上等な梅干しにこれが上等な梅酒ですわ。お母さん、一杯いきましょ」

和代「少しだけ…」

昭一「少しだけね、はい。分かりました。少しだけ」

和代「あ、もう…」

昭一「あ~、これが少しなんです、はい」結構な量を注いでる。

 

アムール前の路地

俊平が持っていた缶ビールを取り上げる貞男。

俊平「ええねんて!」

貞男「あかん、あかん、あかん! 何を言うてんね!」

タエ「危ない、危ない! 危ない!」

路地に倒れ込む俊平。「返せ、俺のビール!」

貞男「手術控えた病人が何を言うてんねや!」

俊平「どうせもう終わりなんや! 好きなことさせたってくれ!」

貞男「何を言うてんね?」

佐和子「俊平さん」

俊平「俺、知ってんね。お前、俺に隠してるけどな、ほんとは…ほんとは…」

 

健次郎「どないしたんや?」

タエ「あ、先生!」

貞男「健さん

佐和子「先生、何とか言うたってください。この人、何や急にヤケみたいに飲みだして…」

健次郎「え? 何をすんね? それは」

俊平「先生、俺、分かってんね」

 

健次郎「何が?」

俊平「ポリープなんてうそや。がんなんやろ?」

健次郎「は!?」

佐和子「あんた…」

俊平「もうはっきり言うたってくれ。ほんまのことを聞いて、もう最後は好きなことをして死にたい!」

 

玄関

町子「ねえ、ちょっと入ってちょうだい。どうぞどうぞ。せっかく近くまで寄ったんやから、ちょっと上がってってって。ねえ。うち、健次郎さんも帰ってきはるから。ねえ、入って」

池内「よっしゃ。ほんだらちょっとお言葉に甘えてちょっとだけ」

町子「どうぞどうぞ」

小川「徳永先生とも久しぶりやしな」

町子「戸、閉めなさいよ。毛、立ってるよ」めちゃめちゃ冷静な言い方。

小川「え…え?」

 

茶の間

和代と昭一がいる。

町子「あら、お兄さん!」

昭一「お帰り!」

町子「来てはったんですか?」

昭一「元気?」

町子「おかげさんで」

 

池内「お邪魔します」

小川「こんばんは」

町子「あの、主人の兄です」

池内「え?」

小川「あ…」

 

池内「ほんなら結婚式の時に鶏置いていかはった…」

小川「さすらいの男や! なっ!」

池内「僕、一度、お会いしたかったんですわ!」

小川「僕もです。ちょっと握手してください。うわ~、会えた、会えた! 柔かい手や!」

 

路地

笑っている俊平。

貞男「ほんま、勘違いも甚だしいな」

俊平「そうかてな、佐和子が急に優しなるし…」

佐和子「やっぱり年季の入ったアホやったんやね」

貞男「消化器外科より、おっちょこちょい科で手術してもらえ。迷惑なやっちゃ」

俊平「よし、そうと決まったら乾杯いこう!」

貞男・佐和子・タエ「アホ!」

座ったままうなだれる俊平。

 

茶の間

池内「いや~、お兄さん、今度いっぺんちゃんとその波乱の人生、聞かしてください。小説のモデルにしたいですわ」

昭一「僕?」

町子「池内さん、そんなこと軽々しい言うたらいけません」

小川「あの、この人よりね、僕の方が若い人に人気がありますから、小説のモデルは是非、僕の方にお願いします」

池内「何を言うてくれてんね!」

小川「いや、僕の方が…この人の話は僕の方が向いてますよ」

 

健次郎「ただいま」

 

町子「お帰りなさい!」

健次郎「あら! いらっしゃいませ」

池内・小川「お邪魔してます」

健次郎「え?」

昭一「久しぶり」

健次郎「いや、久しぶりて…」

 

町子「あの、ほれ、健次郎さん、あのお土産でおいしい梅酒、お兄さんが、ねっ」

昭一「健、お前も飲むか?」

健次郎「うん」

町子「あ、そしたら…」

昭一「いえいえ、取ってきます、取ってきます」台所へ

町子「あ、すいません」

健次郎「今回は予告なしやな」

 

小川「お久しぶりです」

健次郎「あ、お久しぶりです」

スライディング正座で戻ってくる昭一。

池内「面白い人ですね。さっきからもう笑い通しですわ」

町子「あの、健次郎さん、お兄さんね、富田林辺りにおうち建てはるみたいやの」

健次郎「家?」

町子「うん」

 

昭一「あのな、ええ土地の出物があったからな、もう工事がかかってんのや。ここらで落ち着こ思てな」

健次郎「ふ~ん。何べん聞いたかな、そのセリフ」

昭一「今度はほんま。はい、乾杯」

健次郎「はい。まあ、おめでとうさん」

昭一「ありがとう」

小川「乾杯。乾杯、乾杯、乾杯。それで、その後の話、ちょっと聞かせてください」

昭一「富田林の土地は役2,000坪ほど…」

池内「いや、あの、富田林の土地の話じゃなく…」

 

朝、門を出たところ

町子「はあ~、長崎かあ…。純子さん、まずはちゃんぽん食べましょね」

純子「はい」

健次郎「何や仕事よりも食べもんかいな」

町子「私、食いしん坊やから」

健次郎「気ぃ付けて」

町子「行ってきま~す」

町子たちを見送った健次郎、自ら右肩をもむ。

 

茶の間

昭一がお茶を飲んでいる。

健次郎「よいしょ。あ~…」

昭一「実はな、身、かためよ思てな」

健次郎「身…。えっ、結婚?」

昭一「今度、連れてくるけどな、ええ子やで」

健次郎「へえ~。あ、そう。よかったがな」

昭一「おおきに」

 

健次郎「ハハハハ、結婚?」

昭一「うん」

健次郎「ふ~ん…。富田林に家て、また豪気なこっちゃな」

昭一「いや…ちいちゃな家やないか」

健次郎「いやいや、大したもんやで」

 

電話が鳴る。

健次郎「はい、もしもし徳永です。おう、隆。え? 今晩? おう、いてるで。いやいや、町子はおらへん。何やねん? え、来週にする? え? 婚約? うん。ああ、そう。そら、よかったがな。うん。ああ、そうか。ハハハハ。うん、分かった、分かった。うん、そない言うとくわ、ほんなら。はい。はい、ほな。はい」受話器を置く。

昭一「なあなあなあ、隆、婚約てか?」

健次郎「うん。ずっとつきおうとった女の子にな、プロポーズしたんやと」

昭一「おう。そら、めでたいがな」

健次郎「ああ。何やめでたいことは重なるもんやな」

 

徳永家前

すし屋「毎度! 徳永さん!」

 

茶の間

和代「まあ、お昼から豪勢な…」

昭一「あの、おめでたいことが続くんでね、パッといこうやないかと。あっ、お母さんも是非どうぞ」

和代「おおきに」

昭一「健! 何してんねや~? もう食べるぞ!」

 

廊下

洗面台のところで座り込んでいる健次郎。頭を押させて立ち上がれない。

 

茶の間

昭一「健! お~い、早く来い! 食べるぞ! お母さん、ついどきましょ」

和代「すいません。はい」

昭一「はい。健のもついどいたろ。お~い、健、食べてしまうぞ! 飲むぞ!」

 

廊下

頭を押さえている健次郎。

 

ミニ予告

昭一「健次郎…」

走る町子と純子。

 

月曜日からなんてこったい! 健次郎さん、無事でいて!