徒然好きなもの

ドラマの感想など

【連続テレビ小説】芋たこなんきん(113)「ここに花咲く」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

自分の進路に悩む由利子(邑野みあ)。晴子(田畑智子)は医者を継がせようと健次郎(國村隼)に相談するが…。一方、関東煮を食べたいとエディ・スペンサー(チャド・マレーン)に頼まれて、佐和子(瀬戸カトリーヌ)とタエ(桂あやめ)が、りん(イーデス・ハンソン)の「たこ芳」に連れてくる。俊平(櫻木健一)と貞男(荒谷清水)も加わり、エディに酒を勧めるが、かなり酔ったエディが割れたグラスで手を切ってしまう…。

廊下

由利子「ただいま」

純子「お帰りなさい」

由利子「矢木沢さん、そのジャケットすてき」

純子「あっ、そう?」

 

由利子「ちょっと見せてください」

純子「あっ、由利子ちゃん、洋服に興味あるの?」

由利子「はい、好きです」

 

純子「じゃ、将来はそういう会社に?」

由利子「あ、そんなんまだです」

純子「じゃ、大学は商学部とか経営」

由利子「そんなとこまでまだです」

純子「へえ~」

 

茶の間

健次郎「明日?」

町子「うん、そやの。東子さんとの対談をね、東子さんのバレエの発表会のあとに収録することになったの」

健次郎「へえ~」

 

清志「えっ、おばちゃん、テレビ出んの?」

町子「うん」

清志「見たいなあ」

町子「けどね、夜の遅い番組やから、ちょっと無理かなと思うよ」

登「すごいなあ、おばちゃん。有名人や。なあ、お姉ちゃん」

由利子「なあ、すごいな」

 

健次郎「アホ。有名人やからすごいん違うやろ。一生懸命仕事してることがすごいねや」

由利子「そやけど、やっぱり才能があるてすごいわ。誰かて小説家になれるわけ違うもん。ほんまに」

町子「ありがとう。けどね、由利子ちゃん、好きなことやからこれだけ続けられるんやなあと思うの」

由利子「好きなこと…」

健次郎と顔を見合わせる町子。

 

このところ、自分の進路を考える時期に来ている由利子です。そして、一方…

 

佐和子「大丈夫。ファンの女の子、いてへん」

タエ「諦めて帰ったんやろか」

 

たこ芳前

タエ「ほんまに関東煮きでかまへんの?」

エディー「はい。食べたいんですわ」

佐和子「たこ芳のがええて聞いたんやて」

タエ「おらへん、おらへん。行こ行こ」

 

りん「いらっしゃい」

佐和子「こんばんは」

りん「こんばんは。いや、タエさんも」

タエ「こんばんは」

 

りん「こんばんは。あら?」

佐和子「外国からのお客さん。関東煮き食べたいねんて」

りん「いや~、うれしいこと。まあ、どうぞどうぞ」

タエ「あっ、こちらどうぞ」

 

佐和子「こちら、エディー・スペンサーさん」

りん「ようこそ」

佐和子「映画俳優さんなんやよ。オーストラリア生まれで、今、ハリウッドで売り出し中」

タエ「もう、すっごい人気出てきてるんですよ。あの『荒野の二人』の…」

 

りん「あっ、昨日、みんなが言うてはった人?」

佐和子「そうそうそう!」

りん「いや~!」

エディー「こんばんは。ええお店ですね」キャップをとる。

りん「えっ!?」

 

佐和子「大阪弁しゃべりはんね」

りん「ああ、びっくりした!」

タエ「でしょ? ビール、OK?」

エディー「はい」

タエ「ほな、ビールと…あの何か適当に見繕うてもらえます?」

 

りん「あ…え~っと苦手なものあります?」

タエ「あっ、あの、エディーはピーナツが苦手。アレルギーなんです。そのほかは好き嫌いは、なし」

りん「すっごい。さすがファンやね」

佐和子「関東煮きにピーナツが出るかいな」

りん「ほんまや」

 

お皿には厚揚げとちくわ。

りん「はい、どうぞ」

佐和子「あっ、そう、エディー小さい時、大阪に遊びに来たことあんねんて」

りん「へえ~、そうやの」

エディー「はい」

 

タエ「いや、遊びに来たどころか住んでたことあんねんね、赤ちゃんの時に」

エディー「はい」

佐和子「お父さんが関西弁しゃべりはるから、エディーもしゃべれんねんて」

タエ「上手やもんなあ」

エディーにビールを注ぎながら首をかしげるりん。

 

戸が開く。

俊平「おっ、いてた、いてた!」

りん「あ、いらっしゃい」

貞男「おっ、どない? 大丈夫? おいしいやろ?」

エディー「こんなおいしいもん久しぶりですわ」

 

俊平「うわ~、気に入ってもらえてうれしいわ。あっ、ビール。それとさえずりとコンニャク」

貞男「俺は熱かん」

俊平「はいはい…」

貞男「おっ、何やビールかいな。関東煮きは日本酒やで、エディー」

 

タエ「ちょっとあんたなれなれしいな。大スターさんやで」

貞男「年下やて、かまへんがな。なあ」

りん「はい、どうぞ」

貞男「まあまあ、まあまあ、一杯いこう、一杯いこう。よいしょ」

エディー「おおきに」熱かんを貞男に注いでもらう。

 

俊平「えらいかたいなあ。緊張? 緊張?」

佐和子「ちょっとやめてえな、あんた!」

タエ「そらあんたな、初めての店来て、初めてのもんばっかり食べてんねんもん。もうしゃあないやん」

エディー「これ、メチャメチャうまいですわ」

 

タエ「ほんま? 今度、私つぐ」

佐和子「ちょっとちょっとビールもあんで」

俊平「そない飲ましたらあかんて!」

 

茶の間

一人で飲んでる健次郎。

由利子「あれ? おばちゃんは?」

健次郎「うん。仕事ある言うて早めに切り上げた」

由利子「まだ原稿書いてんの?」

健次郎「なかなか出てけえへんかったアイデアがようよう見えてきたから今晩中に形にしとくんやて。はたから見とっても、もの作るいうのはつくづく大変な仕事や」

 

晴子「ただいま」

健次郎「あ~、お帰り」

由利子「お帰り」

晴子「あれ? 相棒は?」

由利子「お仕事やて」

晴子「ふ~ん」

 

由利子「ほな、おやすみなさい」

健次郎「うん。おやすみ」

晴子「あ、ちょっと、由利子」

由利子「おやすみなさい」

晴子「おやすみ」逃げるように去っていく由利子をほほえましく見ている。

 

晴子「ほな、私が相手したげよかな」

健次郎「ハハッ。兄貴につがすな」

晴子「あっ、やめとこ。私、明日、朝からオペやったわ」

健次郎「一杯ぐらい大丈夫や」

晴子「ううん、やめとく」

 

健次郎「お前はほんまに真面目ちゅうか、かたいちゅうかなあ。あんまりかたいとな潤いいうもんがなくなるで」

晴子「ほっといてください」

健次郎「忙しいんか?」

晴子「うん。それより由利子、私の行ってる大学の医学部に絞る? それとも京都の医大にええ先生がいてはるから…」

 

健次郎「お前、もうそんなことまで考えてんの?」

晴子「当たり前やん。由利子は長女やねんよ。徳永医院継いでもらわんと」

健次郎「子供に継いでもらおうなんて考えてないよ」

晴子「えっ!?」

 

健次郎「そないびっくりせんかて」

晴子「私はここ継がれへんよ」

健次郎「分かってるよ」

晴子「由利子は成績もええんやから医者にしたらええやないの」

健次郎「まあな。あいつが『なりたい』て相談してきたら考えてもええな」

  

晴子「けど、親としてアドバイスぐらいしたらどないやの? お兄ちゃんかて、お父ちゃんに『医者になれ』て言われたからなったんでしょ?」

健次郎「言われたから違うで。結果、そうなったけども…。僕は一人でじっくり考えて最終的に医専を受けようと決めた時に初めておやじに『医者になろうと思う』て言うたんや。お前かてそやろ?」

晴子「うん?」

 

健次郎「家族にひと言も言わんと自分でさっさと医大の願書取り寄せとったがな」

晴子「そやったかな」

健次郎「そや。おまけに初め、おやじが『女は医者なんかならんでもええ』言うて反対しとったのに聞く耳持たへんかったんは誰や?」

晴子「そやったね」

 

健次郎「親が『ああせい、こうせい』言うて子供の進路に口出したらあかん。親が一生面倒見てやれるわけやないねやから…。社会へ出てしもたら自分で責任とらないかん。一歩踏み出そうとしてる。それが今や。自分で決めたことやないと自分で責任なんかとられへん」

晴子「そうか…」

健次郎「町子に聞いても同じこと言うわ」

 

仕事部屋

原稿を書いている町子。

 

たこ芳

佐和子「あ~、今日は楽しいなあ!」

俊平「お前が楽しんでどないすんね!」

エディーも酒を飲んでいる。

 

佐和子「久しぶりにいろんな映画の話もできたし」

俊平「映画の話やったらいつでも俺としてるがな」

佐和子「違うねん! 現場の話ていうか…」

 

貞男「プロの話いうことか?」

佐和子「そこまで言うたら厚かましいけど、エディーさんとではレベルが違うから。けど、楽しかった。仕事続けてたら、私、どないなってたんやろか…」

俊平「何や辞めたん悔やんでるみたいな言い方やな」

佐和子「そんなことあらへんけど…」

俊平「そやで。『結婚したから辞めた』なんてな、俺、責められてるみたいやもんな」

佐和子「責めてへんでしょ!」

 

タエ「ちょっとちょっと…」

俊平「責めてるがな」

佐和子「被害妄想やわ、あんた、いっつも!」

貞男「コラコラ…やめときて! やめとき! なっ!」間に割って入る。

 

エディー泣きだす。

タエ「エディー君?」

貞男「エディー、どないしたん?」

エディー「すいません…。皆さんに親切にしてもろてて…うれしいんです」

 

俊平「えらい泣き上戸やな」

タエ「あの、もうボチボチ帰りましょか? ねっ。ホテル、タクシーで送っていきますわ」

佐和子「そやね。あんまり遅なってもね

貞男「うん、行こ行こ。なっ」

 

立ち上がったエディーがふらつき、グラスが落ちた。

エディー「あ~っ!」

タエ「ああっ! あっ、あ~! 血出てる!」

貞男「エディー、大丈夫か?」

タエ「どないしよう…」

苦しそうなエディーの顔がちょっと棒!?

 

茶の間

晴子「ほな、お先に。おやすみなさい」

健次郎「おやすみ」

 

俊平「徳永先生、こんばんは」

健次郎が徳永医院の戸を開けた。「何や?」

俊平「すんまへんな、遅がけに…」

健次郎「あ…いや、とりあえず中へ」

 

診察台にエディーを寝かせる。

健次郎「今、晴子が来るから」

俊平「いや、お酒飲んでるからようけ血出て…」

晴子「すいません」白衣に着替えている。

 

健次郎「あっ、悪いな。僕、酒、飲んでしもたから」

晴子「私、よう飲まへんかったことやわ。ちょっと見ますね」

だから、苦しそうな顔とかちょっと棒だなって…。

貞男「『荒野の二人』でチャールズ・ウェストウッドの相手役してんねんで」

健次郎「そのスターさんがこの商店街で何してたん?」

 

待合室

貞男「『ローマの休日』ならぬ『天満の休日』いうとこかな」

タエ、舌打ち。

貞男「すんません…」

peachredrum.hateblo.jp

タエ「一人でね、プライベート楽しみたい言うよって、たこ芳、案内しましてん」

健次郎「何でまた、たこ芳に?」

タエ「本人が関東煮き食べたい言うて」

 

俊平「ケガなんかさしてしもて…関係者に何言われるや分からへんなあ」

貞男「お前がグイグイ飲ますからやろ!」

タエ「日本酒すすめたん、あんたやろ!」

健次郎「まあまあまあ。今日、もう遅いから帰り。なっ。治療もうちょっと時間かかるから。なっ」

 

貞男「そやな。健さんに任せよか?」

俊平「そないしよか。なっ。ほな、すんませんけど、頼みますわ」

健次郎「大丈夫。任しといて」

 

アムールの前を歩く俊平と佐和子。

佐和子「ごめん」

俊平「うん?」

佐和子「私、通訳やなんて言われて調子に乗って余計なことして、けがさして…」

俊平「なにも俺らが無理やり連れ出したわけやあれへんねから…。お酒飲んでああなったんも本人の不注意やて言うたらそやろがな。お前は何にも心配するな。相手さんが何か言うてきはったら、俺がきちっと謝る」

佐和子「私、何かはしゃいでしもてたね…」涙ぐむ。

 

俊平「一度は夢を見た世界やもんな」

佐和子「え?」

俊平「映写機のこっち側やのうて、ひょっとしたら、お前は今でもスクリーンに出てる人生やったかも分からんなあ」

佐和子「そんなことあらへんて。どうせ無理やったし…」

佐和子の手を取る俊平。佐和子ニッコリ。

 

診察室

エディーの手に包帯を巻く晴子。「はい、終わりましたよ」

エディー「ありがとうございました」

 

健次郎「どや?」

晴子「うん。だいぶ飲んでるみたいやから、3号、点滴する?」

健次郎「そやな」

 

晴子が席を立ち、健次郎がエディーのそばへ。「大丈夫か?」

エディー「大丈夫です」

 

晴子「お兄ちゃんも点滴する?」

健次郎「え? もうさめてきた。(エディーに)もうちょっとこう横になっといてな」診察台の下に財布が落ちていて、拾い上げると中から写真が落ちた。古いセピア色の写真は、りんさんの若かりし頃!?「これ…」

晴子「どないしたん?」

健次郎「いや…。(エディーに)落としてたよ」

写真を見られたことに気付かれ、ハッとするエディー。

晴子「誰?」

 

突然の深夜の訪問者が新たな騒動の引き金となることにまだ気づいていない町子たちでした。

 

仕事部屋

机に突っ伏して寝ている町子。

 

ミニ予告

深刻な顔のエディーと由利子(別々の場面だろうけど)。

 

進路の話はなんだかグサグサくるなあ~。医者の家計や先生の家計とか親族一同が同じ職業に就くって、しかも誰しもなれる職業じゃないのにすごいことだなあと改めて思う。