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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(82)「奄美想いて」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

イシ(岩本多代)とケンカした喜八郎(小島慶四郎)が戻ってくるが、相変わらず2人は口をきこうとしない。イシは、町子(藤山直美)に、大事なことを忘れてしまう喜八郎への愚痴をこぼす。そして健次郎(國村隼)と晴子の兄妹の間に、生後3か月で亡くなった娘がいたことを打ち明ける。50年前の奄美で、急に高熱をだした娘を抱えてイシは病院を訪ねるが、往診で医者はおらず、待合室で医者の帰りを待っていたのだが…。

茶の間

喜八郎が入ってきて、イシと目が合う。

純子「お父さん、お昼は?」

喜八郎「ええわ」また出ていってしまう。

 

昨夜、戻ってきた喜八郎はイシとは、まだ口をきこうとしませんでした。

 

健次郎「どないなってんの?」

イシ「さあ…」

健次郎「『さあ』やないやろ?」

イシ「お祝いのこと、皆さんにおわびせんとね、ほんまに。ごちそうさまでした。新しいお茶、いれるね」

 

町子「あっ、お母さん、私が…」

純子「私」

町子「あっ、すいません」

イシは食べ終えた食器を台所に運ぶ。

 

町子「ねえ」

健次郎「うん?」

町子「ほっといていいの?」

健次郎「夫婦の間のことやからなあ…」

 

町子「実は、ゆうべね、たこ芳でお母さん…」

健次郎「え?」

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回想

イシ「何や、不安になってしもて…。泣いてる亜紀と2人きりでいてたら…」

町子「不安?」

イシ「あの時のことが…」

回想ここまで

 

健次郎「『あの時のこと』?」

町子「うん。何のことか分かれへんねんけれども…。健次郎さんからいっぺん、お母さんに話、聞いてあげたら…」

 

イシが戻ってきたので慌ててうどんをすする町子。純子がお茶をいれる。

 

カクニは町子の文学学校時代の仲間、加代子の家に行くことになりました。

 

玄関前

カクニを抱いた登と両脇に清志と隆。向かい合うように加代子と町子、健次郎。

町子「ごめんなさいね、結局、来てもろて…」

加代子「ううん、かまへんよ。忙しいのは知ってるもん。(子供たちに)おばちゃんとこな、柴犬のクッキーいうの、昔からいてんのよ。この子のこともかわいがるから、また遊びに来てあげてな」

登「カクニ…」

加代子「うん?」

 

登「カクニいうねん、この子」

加代子「いや~、変わった名前やな!」

登「かわいがってな」

加代子「かわいがるから心配せんかてええからな!」

 

町子「ほな、登君」

登が抱いていたカクニを加代子に渡す。

加代子「はい、おいで」

健次郎「すいませんね、無理言うて」

加代子「いいえ。ほな、カクニちゃん、みんなにバイバイしようか。ほら、バイバイ、バイバイ!」

登「カクニ!」

 

登の肩を抱く町子。「お願い」

加代子「うん。よしよしよし、はいはい」

 

走り出し、家の中に入っていく登と後に続く隆。

清志「しゃあないわ…。な、おばちゃん。そのうち、僕、2人連れて見に行ってくるわ」

 

玄関を入った健次郎と町子。

健次郎「ついこないだまであいつがヒヨコ連れてきたり、猫拾てきたりしとったのにな」

町子「え?」

健次郎「ヒヨコを連れてきた時にな、あんまりプルプルプルプルしてるから、『寒そうや。かわいそうや』言うて、あいつ包帯でグルグル巻きにしよったんや」

町子「へえ~」

 

健次郎「慌ててほどいたけど、もうヒヨコは危篤状態や。ヒヨコの心臓マッサージしたのは後にも先にもあの時だけや」

町子「寒うてかわいそうやと思たんや」

健次郎「うん。そんなやったのにな…」

町子「清志君、お兄ちゃんの顔やったね、今」

健次郎「うん。今やこの家で大人やないのは、うちのおやじだけや」

 

部屋で新聞紙を敷いて爪切りをしている喜八郎。イシがくると、爪切りをやめて新聞紙を持って部屋を出ていった。

 

そして喜八郎は、まだイシと口をきかないまま、また1日が過ぎました。

 

徳永醫院

診察室

健次郎「特に悪いとこはないね。熱もないし。体がだるい?」

患者「はい」

健次郎「疲れかな…。一応ビタミン剤出しときます」

 

患者「あの…腰もちょっと痛いんですけど」

健次郎「あ~、そう。ほなちょっとあっち向いて。はい」

後ろを向いた患者役の女性がちょっとニヤついているから、え? この演技でいいの?とこの時は思ってしまった。

健次郎「この辺り?」

患者「ええ、その辺です」

 

患者にいぶかしげな視線を送る鯛子。

健次郎「ここは?」

患者「そこも痛いです」

 

診察後

健次郎「最近『何かだるい』いう女の人多いな。不定愁訴いうやつやな。今日も何人おった? 熱もないし、これといった症状もない。まあ、早めに病院に来てくれんのは、ええことやけど医者とか薬にすぐ頼んのは、どやろなあ」

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鯛子「私、原因知ってます」

健次郎「え? 何?」

鯛子「先生です!」

健次郎「えっ!?」

 

鯛子「週刊誌。町子先生の連載見て、カモカのおっちゃんに会いに来てるファンですよ!」

健次郎「はあ?」

鯛子「『カモカのおっちゃんに診察してもろた』て、うれしそうに帰っていくおばちゃんがいてはりました」

健次郎、ため息。だから、おばちゃんニヤついてたのね。

 

その夜のことです。

 

時計は8時17分。夕食の片づけをしているイシ。

健次郎「講演、終わったんかな?」

イシ「もう終わってますやろ。町子さんに迷惑かけてへんかったらええのやけど…」

 

戸が開く音

イシ「帰ってきた」

 

喜八郎「もうそんなこと気にせんと!」

純子「先生!」

 

異変を察するイシと健次郎。

 

階段下の廊下

喜八郎「もうそない気にせんと! いやいや、あんたは悪ないんや。悪いのは向こうやから」

町子「私、お父さんの顔、潰してしもたんです。申し訳ございませんでした」

喜八郎「いやいや、いやいや、違うんやて!」

 

仕事部屋に入っていく町子。

喜八郎「町子さん!」

純子「先生!」

 

茶の間

健次郎「けんかした? 講演会のお客さんと? 何で? 理由は?」

純子「あの…」

 

イシは台所で片付け中。

 

町子が入ってくる。「この度はいろいろお騒がせをし、申し訳ございませんでした。私が大人げなかったんです」

喜八郎「いやいや、いやいや、違うねん。何を言うてなはんねんな」

町子「違うんです。私がみんな悪いんです」

喜八郎「向こうが悪い」

 

健次郎「原因は何やな?」

喜八郎「お前や」

健次郎「僕!?」

喜八郎「ああ。あの講演が終わってな、ほんで、本、サインしてたら男が1人来よって、ほんで『旦那は、うまいことやりよったな。稼ぎのいい嫁はんもろて、宝くじ当てたようなもんや』て」

 

純子「いや、それだけじゃないんですよ。『週刊誌に自分の名前まで出させて病院もうけようとして、ちゃっかりした商売人や』って。先生、お怒りになんの当たり前ですよ。で、『私のことだけやったらええけど、健次郎さんの中傷は許されへんから謝ってください』って」

喜八郎「その男な、ちょっと酒が入っとったんで、みんな迷惑してたんや。そやからなにも、あんたは悪いことあれへんねん」

 

イシ「お父さんが悪いんですよ」

喜八郎「何やて?」

イシ「酔っ払いが来るようなとこで話、させるやなんて、町子さんかわいそうでしょ!」

町子「いや、お母さん、違うんです! これ、たまたまの話なんです」

イシ「人の気持ちが分からへんのよ!」茶の間を出ていく。

 

喜八郎「なんちゅう態度や!」

健次郎「まだもめてんの?」

喜八郎「ワシのせいやあれへんがな。見てくるわ」茶の間を出ていく。

 

健次郎「ほんまにどいつもこいつも…。(町子に)アホか!」

純子「大先生! そういうおっしゃり方、あんまりです」

健次郎「『謝れ』と言うこと自体が間違うとる」

町子「何で?」

 

健次郎「そんなもんほっといたらええねん」

町子「ほっとけませんよ! ほっといたら認めたことになるでしょ! 商売のために私に書かせてるなんて思われるの、私、嫌ですもん!」

健次郎「しょうがないやろ! いちいちいちいち訂正して回るんか?」

町子「そやけどね」

 

健次郎「あのな、読者の半分、味方がおったらええ方や。みんながみんな面白いと思てると思うか?」

町子「!」

健次郎「自分らのこと書いて、世間の目にさらしとんのや。そら、いろんなこと言われるて。最初からそれぐらいの腹くくりをしとき」

健次郎が茶の間を出ていき、町子はため息。

 

夜、外では拍子木の音が鳴る。

 

一人茶の間にいる町子。「あ…」

イシ「やあ、1人? 珍しいわね」

町子「健次郎さんとあのあとちょっと…。あっ、お母さんもどうです?」

イシ「ありがとう。もらおうかしら」

町子「はい」

 

町子は台所へ行き、イシは座る。

イシ「あの子もカッとなるタイプやからねえ。もう、頑固やし…。苦労するわ、町子さんも」

町子「どうぞ」

イシ「ありがとう」

 

町子「お父さんもやっぱり頑固ですか?」ビールを注ぐ。

イシ「あの人はええ加減。大事なこともポ~ンと忘れてしまうの。忘れてほしないことまでポ~ンと。(ビールを飲んで)あ~、おいしい!」

 

町子「あの…お母さん」

イシ「うん?」

町子「こないだ言わはった『あの時も』て私、ものすごく気になってるんですけど…」

イシ「え? 言うた? そんなこと、私」

町子「はい」

 

イシ「いや…嫌やね、もう。いや~、年取ると、つい気持ちが口から漏れてしまうわ。娘がいてたのよ、健次郎と晴子の間にもう一人」

町子「え…!?」

イシ「病気で亡くしたの。生後三月足らずでね…。正子ていうの。ある日、急に高熱出して…。あの日はお父さん、九州へ行ってて留守の日でね。薬のませても熱下がれへんし…。お医者さん行ったら往診で出かけてはって…。村には1人しかお医者さんいてはらへんかったから。待合室で泣いてる正子抱えて1人で待ってたら…何やもう心細うて心細うて…。だんだんにね、おとなしなって…」

話を聞きながら目が潤んでいる町子。

 

イシ「やっとお医者さん帰ってきはったけど、その時はもう…。けど、幸いに次に産まれた晴子は丈夫に育って…。でも正子のこと忘れたわけやあれへん。あの子の分もと思て昭一と健次郎と晴子を一生懸命大きして、あれからもう随分、時もたつのに、そやのに…。あの日、痛がって泣く亜紀を抱いて1人で待ってたら急に思い出した。そしたら、不安で不安で…。もう帰ってけえへん、お父さん憎らしなってしもてね」

町子、何度もうなずく。

 

イシ「男の子が続いたあとの女の子でもう産まれた時、そりゃほんまうれしいてね。あの、お父さんが真っ白い半紙に書いた『命名 正子』ていう黒々とした字が、今でも目の前に…」泣いてしまう。「おかしいね。もう40年もたってんのに…」

 

町子「時間なんか関係ありません。大事な人を亡くした…痛さや怖さはどんなに時がたっても、また前と同じように戻ってくることがあるのと違いますやろか?」

イシ「町子さん…」

町子「誰かてそう思いますよ。大事な大事な人を亡くした人やったら、これは誰かてそう思いますよ!」

 

イシが背負う悲しみを初めて知った町子でした。

 

ミニ予告

喜八郎「あれはないしょ」

健次郎「ないしょ?」

 

うわぁ~ん、泣いた、泣いた。ヒロインの町子がもう少し若い女優さんなら当然姑もそれに見合った女優さんになるだろう。そうすると今回みたいなのは見られなかったんだよな。岩本多代さんのお芝居はもちろん、それを受ける藤山直美さんの演技がすばらしいからより泣けた。

 

カクニも加代子に引き取ってもらえてよかった。クッキーちゃんとカクニちゃん。なかよくやってくれたらいいな。

 

news.allabout.co.jp

小説や漫画でネタにされた家族というと、今ならこちらを思い出す。西原理恵子さんの漫画は読んだことないけど。私の場合、漫画は、あくまできれいな絵でファンタジーな世界が好きなせいか、元々、インスタやツイッターの家族ネタもちょっと苦手で読んだことなかった。

 

そういう漫画や小説は読まないけど、朝ドラだと実在のモデルがいた方が好きな私としては少し気になる。いくらよく書いてあったもどの家族にもやっぱりいろいろあったんだろうな…。