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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(69)「おかあちゃん」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

町子(藤山直美)と健次郎(國村隼)は、澄子の法事を家で行わず、子どもたちを連れて墓参りをすることに決める。そんなとき、健次郎の子・清志(小椋悠聖)が、澄子が死ぬ前に家計簿に残したメモを町子に見せる。そこには、澄子自身が死を恐れていたことが記されていた。そして、そこに書かれた料理の献立など、生活の記録に町子は引き込まれる。やがて町子は、澄子を絶対忘れないために、家での法事を行うことを決心する。

朝、茶の間

イシ「そしたら家でお食事はせえへんのやね?」

健次郎「うん。墓参りだけにしよう。どっかでごはんでも食べよ」

登「レストラン?」

健次郎「うん?」

隆「僕、おすし屋さん!」

健次郎「お前はぜいたくばっかり言うな」

 

隆「お兄ちゃんもおすし屋さんやろ?」

清志「僕、行けへん」

町子「清志君…」

清志「お墓、怖い…。僕は行けへん!」

健次郎「お前まだそんなこと言うてんのか! ああ? 分かった! 来んでええ!」

 

席を立つ清志。

町子「そんなどならんといてよ」

町子は清志の後を追い、子供部屋へ。「清志君、開けるよ」

子供部屋で体育座りをしている清志。傍らに「楽天乙女」が置かれているのを見つける町子。「おばちゃんの本、読んでくれたん? たくさんの人が死んでしまうから怖かったんやね」

 

健次郎も部屋の入り口から見ている。

町子「おばちゃんもね、ものすごう怖かった。目の前で見てね、ほんまに怖かった…」

清志「僕もいつか死ぬんや」

町子「人間ね、生まれてきたからにはいつかは死ぬの。いつかは分からんけれども死ぬということだけは決まってるの。けど、怖がってもね、これだけはどうしょうもないことなんよ」

清志「それでも怖い! そうかてな…お母ちゃんかて書いてる!」

町子「え…」

清志「仏壇の下にあってん」と大きな家計簿を町子に見せる。「ここが最後のページやねん!」

 

表紙 サイズはA4くらい?

主婦俱楽部社

家計簿

昭和38年1月~ 澄子

 

細かく記載された最後のページ

備考

おさしみ、煮物、おみそしる

 

今週二度目の目眩。

病院に行くべきか。

重い病の宣告をおそれている。

死を怖れている。

 

支払合計

¥165-

 

町子「死を怖れている」

清志「お母ちゃんも『怖い』て書いてる」

 

部屋に入ってくる健次郎。「朝ごはん、食べておいで」

部屋を出て行った清志。

健次郎「こんなん残ってたて知らんかったな」

町子「日記はつけてはらへんかったんですか?」

健次郎「うん。そんな時間はなかったと思うよ。そやからこういう家計簿の隅に…。これ、病院に運ばれる前の日やな」

 

町子「ほな、これが最後の文章?」

涙を浮かべる町子。ほんと、藤山直美さんは涙が自由自在。

 

診察室

家計簿を見ている健次郎。

 

町子「失礼します」

健次郎「はい。何や?」

町子「それ、見せてほしいねんけど」

健次郎「え?」

町子「あかん? いや…いや、そりゃ、あかんよね」

健次郎「かまへんやろ」家計簿を手渡す。

町子「ありがとう」

 

仕事部屋

町子「『1月31日 すき焼き 肉 焼き豆腐 コンニャク。お父さんの友人 来る』」

 

澄子の残した生活の記録に町子は引き込まれていきました。

 

町子「『登 トイレの窓のガラス割り 明日 修理』。修理て…。『酒屋集金 新聞題集金 由利子 風邪で休み』。ほう…。『2月6日 鯨のテキ みそ汁』」

 

茶の間

ラジオから「帰って来たヨッパライ」が流れている。

純子「♪おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ 天国に行っただ 天国」←ここがミニ予告か~。掃除をしながら歌を歌っている。

純子・健次郎「♪よいとこ 一度はおいで 酒はうまいし ねえちゃんはきれいだ」 

台所に入って来た健次郎も一緒に歌い、純子がそれに気付き、慌ててラジオを止める。

 

純子「すいません、こんな時期に不謹慎な…。申し訳ございません!」

健次郎「あ、いえいえ、こんな時期もあんな時期も」

純子「あっ、お茶ですか?」

健次郎「あ~、いやいや大丈夫ですよ。ちょっと休憩にね。今日はね、朝から風邪ひきの患者さん、2人だけなんです。半年に1回あるんですよ、こんな日が」自らやかんでコップに麦茶を注いで飲んでいる。

 

純子「お父様、ご心配ですね」

健次郎「え?」

純子「売り上げ」

健次郎「あ…ほんまや。ハハハハハ! はあ~。よいしょ」茶の間に腰を下ろす。

 

純子「あの…大先生」

健次郎「はい」

純子「亡くなられた奥様のご法事、おうちでなさらないことになったんですね」

健次郎「ああ、そうなんですわ。何やね、酒屋も映画館も忙しいらしいし。それにね、別に特別に家にお客呼んで食事せんでも命日に故人しのぶことはできるからね」

純子「そうですか…」

 

健次郎「どないかしました?」

純子「いや、あのお子さんたち、もうすっかり町子先生になじんでらっしゃいますし、亡くなられた奥様のことあれこれ思い出すの、お子さんたちもつらいんじゃないかと。亜紀ちゃんもお母様のお顔、覚えてないみたいですし…」

健次郎「忘れてましたか。ハハッ。まあ、亜紀はしゃあないがな。乳離れするかせんかぐらいの時やったからね。まあ、けど、由利子も清志も登も隆もちゃんと覚えてるし。そら、法事やろうがやるまいが覚えとるからね。忘れることはないからね」

 

純子「でも、それってね、町子先生とっても複雑なんじゃないでしょうか?」

健次郎「何で?」

純子「え? いや、『何で』って?」

 

健次郎「ああ…。あのね…子供らにとって澄子は母親で町子は町子おばちゃんなんですわ」

純子「うん」

健次郎「で、町子おばちゃんは母親の代わりではないんですよ」

純子「はい」

健次郎「僕と町子は夫婦やからこの家で暮らしてる。で、僕が『かわいいな』と思てる子供らを町子も『いとおしいな』と思てくれてる。で、子供らは子供らで町子おばちゃんとして町子を慕ってるから一緒にこの家で暮らしとるんです」

 

純子「『お母様になりたい』って、町子先生は思ってらっしゃらないんですか?」

健次郎「うん。まあ、実際、母親ではないからね。それは町子もよう分かってるから。けど、何でやろね、みんなはそこんとこもうひとつ分かってくれへんねん。変わってるな。ハハッ」

純子「はあ~」

健次郎「うん?」

 

純子「フフッ。あの…こうやって大先生とお話してると、何か私の方が変わってるような気がしてきました」

健次郎「そやないんですか?」

純子「は? フフフ!」

健次郎「ハハハハハ!」

 

仕事部屋

町子「『清志の最後の乳歯 抜ける』。そうか…。『朝までに脱稿予定』。これ、何? これ」

 

家計簿

10日(火) 

あ-9 

し-3

という書き込みを発見。

 

町子「『あ-9』『し-3』て、これ、何の記号? え? 何? これ」

 

診察室の前

鯛子「お大事に!」

鯛子のすぐ後ろに立つ町子。

鯛子「うわ~!」

町子「終わりました?」

鯛子「はい…」

町子「休憩ですね」

鯛子「はい…」

 

診察室

町子「失礼いたします」

健次郎「何や?」

町子「健次郎さん、やりましょう。やらなければいけません。やるんです。やらなければ駄目なんです。やるんですよ。やらなあかんのんですって」

健次郎「ちょっと待って、待って。文法の何段活用かていうて…。国語はな、弱いねん、僕は」

 

町子「違います。絶対にやりましょう」

健次郎「何を?」

鯛子やイシも見ている。

 

町子「法事をこの家で」

健次郎「何でまた決めたこと今更そんな…」

町子「ちょっと健次郎さん、見て、この家計簿。ねえ、見て見てちゃんと。毎日毎日ず~っとこうやって数字が書いてあるんですよ」

健次郎「そのための家計簿やがな」

 

町子「書いてある値段の話と違うの。だからこれ見て。まずここに『あ-10』て書いてあるでしょ。ねっ。これは小説『赤い鼻緒のじょじょ』の原稿が10枚」

 

12月

1日(日)

あ-10

 

町子「この下の『し-3』。これは『春秋関西』のエッセーが3枚ということなの」

健次郎「そういや買いとったな」

町子「ず~っと途切れることなく毎日毎日続けてはったんよ。掃除して洗濯してごはん作って子供たち育てて書くことも一日も休まず。すごい人やね。小説家藤木澄子さんていうのはほんとにすごい人やわ。そやからね、このうちで澄子さんの思い出話するのよ。澄子さんのこと好きやった人みんなに集まってもらって、ごはん食べて飲んでもろて、みんなで澄子さんのこと、話、してもらうのよ。鯛子さんも言うてくれたやないの。『奥さんのこと大好きでした』て…」

鯛子とイシは顔を見合わせて笑顔。純子も見ている。

 

町子「こんなすごい人がいてたことをね、私は絶対に忘れたらあかんと思う。いいでしょ。ねっ、いいでしょ。え~、反対意見は?」

健次郎「ありません」

町子「よし。フフフフ。よし。すいません」鯛子たちに頭を下げて診察室から出ていく。

 

健次郎「何が『よし』や」

一同の笑い声

 

そして、その夜

 

ラジオで「ブルー・シャトウ」が流れる。

町子「♪ブルー ブルー ブルー ブルー ブルー ブルー・シャトウ」

晴子「ただいま」

町子「あっ、お帰りなさい。晴子さん、ごはんは?」

晴子「食べてきた」

町子「あ、そうですか」

 

健次郎「あっ、そや、あのな」

晴子「うん?」

健次郎「やっぱり日曜日、家で法事することにしたからな」

晴子「え?」

 

町子「ご近所さんにもね、たくさん集まっていただいて、このうちで。晴子さん、大丈夫ですか?」

晴子「私…私、日曜日仕事やねん」

町子はため息をついてテーブルを拭く。

 

ミニ予告

キリッとした清志と目を閉じている健次郎。

 

この町子や健次郎の考えがもっと広く分かってもらえたらいいんだけど、晴子にもちゃんと説明したら分かってくれるんじゃないかなあ。