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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(94)「しもたっ!」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

二ノ宮留夫(マギー)の作品を読んだ町子(藤山直美)は、小説としての体(てい)をなしていないことを二ノ宮に告げる。そんなとき、二ノ宮の妻のかなえ(衣通真由美)が、壊した観音像とそっくりの像をもってきた。夫の才能を信じ、心から応援しているかなえは夫が作家に向いていないことを告げられ帰って行く。が、病院の前で倒れる。健次郎(國村隼)は、妻の病気にさえ気づかない留夫が小説を書けるはずがないと激怒する。

朝、徳永家茶の間

清志「おばちゃん、お代わり」

町子「あっ、はい」

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町子を台所に行かせるためのシーンだったから仕方ないのかもしれないけど、以前は「自分のことは自分でしなさい」と清志を注意したのにな~。それが定着してないのはちょっと寂しい。

 

電気釜の蓋が落ちる音

町子「痛っ!」

由利子「大丈夫?」

町子「バチ当たったんやろか…」

 

ギクッとなる健次郎、晴子、隆。

 

昨夜、町子の留守中のことでした。

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回想

隆「うわっ!」

晴子「ああっ!」

隆「しもた!」

 

健次郎「ああ…」千手観音の手が折れていて「あ…」

回想ここまで

 

3人とも最初から折れているとは知りません。

 

晴子「あっ、私、ちょっと洗濯物干してくるわ」

町子「はい、清志君」

清志の野郎、ありがとうも言わないし!

 

健次郎「町子」

町子「はい」

健次郎「話があんねけど」

町子「話?」

健次郎「うん」

 

隆「おばちゃん、僕も…」

健次郎・町子「え?」

健次郎「ほな、お前から言い」

隆「あ~、いや、お父ちゃんから言うて」

健次郎「かまへんから、お前が言い」

町子「何を言うてんの? 一体」

 

晴子「うわっ!」

 

町子「何やろ?」

 

いつの間にか小さなテーブルセットがある。二ノ宮が掃き掃除している。

晴子「毎朝、びっくりさせんといて! 昨日は靴磨きで今日は庭掃除。明日は象にでも乗ってくる気?」

二ノ宮「え? あっ、おはようございます!」

健次郎「おはようさん。象、乗れんの?」

町子「違うて…。二ノ宮さん、もうこういうことすんのだけやめてくださいね」

二ノ宮「あ~、もうおかまいなく。先生は執筆なさってください」

 

弟子志願の男・二ノ宮に手を焼いている町子ですが…。

しかし、町子は原稿の締め切りに追われ、二ノ宮ときちんと話す時間をつくれないままでした。

 

仕事部屋

資料を見ながら執筆している町子。電話がかかってくる。

町子「はい、もしもし、花岡…あっ、どうも」

 

茶の間に入ってきた町子。台所では二ノ宮が料理をしている。

純子「ちょっと、そういうこと困るんです」

二ノ宮「僕ね、中華料理屋でアルバイトしてたんですよ。得意なんです、焼きそば」

純子「いや、得意でも…」

 

町子「二ノ宮さん!」

純子「もう、先生! もう…」

二ノ宮「うまいですよ、僕の焼きそば」

 

玄関のブザーが鳴る。

 

町子「確かにええ匂いやけどね。ちょっとこんなことしてもらってもね、私、弟子は絶対とらないんですから」

二ノ宮「もうすぐ出来ますよ」

町子「ちょっとキャベツ飛ばさんといて!」

二ノ宮「ハハハ! すいません」

町子「笑い事やないでしょ、もう!」

 

純子「先生!」

町子「はい?」

純子が町子に耳打ち。

町子「え?」

 

玄関

町子「あ…」

かなえ「あ…。二ノ宮かなえと申します。主人が大変お世話になっております」

町子「すぐお呼びいたしますので」

かなえ「いいんです。今日はあの主人から言われた仏像のことで…。お探しの観音様てこんな感じでしょうか?」封筒から写真を取り出す。

 

町子「同じですわ」

かなえ「これでよかったんですね? 今、取り引きのあるお店に頼んでますので、すぐ手に入ると思います」

町子「ありがとうございます」

 

かなえ「花岡先生、主人のことどうぞよろしゅうお願いいたします。こんな立派な先生の弟子にしていただけるなんて、もうなんていう幸せ!」

町子「私、弟子はとらないんです」

かなえ「あの人、作家になるのが昔からの夢やったんです。かなえさせてやりたいんです。どうかよろしくお願いします!」

町子、ため息。

 

診察室

晴子「お兄ちゃん」

健次郎「うん?」

晴子「ちょっとええ?」

健次郎「おう。今日は夜勤か?」

晴子「うん。あのね…ちょっとゆうべ、その…町子さんの部屋でね…」

健次郎「うん」

 

鯛子が戸を開けた。「ああ!」

健次郎「何や? 患者さんか?」

鯛子「よろしですか?」

健次郎「うん。ええよ」

 

一真「おっ、晴ちゃん!」

健次郎「血圧ですか?」

一真「頼むわ。しかし、何やな、旅行ちゅうのは帰ってから疲れが出るもんやな。血圧がちょっと高なってるかも分からん」

健次郎「うん」

晴子、退室。

 

健次郎「あのな…あの観音さんやけどな」

一真「あっ、あれ、ええ観音さんやろ?」

健次郎「うん…そやな」

一真「うん。門徒のみんなに言うたらな『そら、ごえんさん、はよ拝ましてくれ』ちゅうてな、みんなほんまに楽しみに待ってんのや。そろそろ返してもらえんかな?」

 

茶の間

テーブルの上に二ノ宮の原稿を置く。

町子「では、正直に申し上げます」

二ノ宮「はい」

町子「二ノ宮さん、あなたの小説読ましていただきましたけれども、私には理解できないことがものすごく多すぎました」

二ノ宮「ああ、まあ、あの専門的な科学用語が多いですからね」

 

町子「専門的な科学用語とかそういうことじゃないんです。その小説としてですね、面白そう…興味をひく…面白みに欠けてるんですね、はい」

二ノ宮「まあ、あの笑かすいうねらいはないんですけどね」

純子「才能がないっていうことなんです!」

町子「純子さん!」

純子「先生、はっきり言わないと本人のためになりません!」

 

町子「あのですね…荒唐無稽すぎて…いや、荒唐無稽やったら、それはそれでいいんですけれどもね、何かそればっかり力が入ってるような気がするんですよ。やっぱし小説ちゅうのは登場人物がいますよね、登場人物が。主人公がいてて、ず~っと周りを囲む人がいてますよね。その人たちの人間としてのちゃんと一人一人の人物が描けてないんです。で、どうにもね感情移入できない。主人公にも無理だ、周りにも無理だいうとね、気持ちの行き場所がないんですよ、こっち読んでいて。ですからあの~、まとめて言いますと、え~、小説として体をなしてないっちゅうことなんです。ごめんなさい。それが私の感想です。正直言いまして本当にごめんなさい」手をついて謝る。

二ノ宮「ああ…」

 

町子「二ノ宮さん、これで分かっていただけましたでしょうか?」

二ノ宮「分かりました」

町子と純子、ホッと顔を見合わせる。

 

そして、その夕方

 

台所で料理をしている町子。

隆「ただいま!」

町子「お帰り!」

冷蔵庫で牛乳瓶を取り出す隆。

 

町子「おでこどないしたん?」

隆「こけてん」

町子「こけたて、どこで?」

隆「バチ当たったんかなあ」

町子「え?」

ちょうど帰ってきた晴子。

隆「な…何でもあれへん!」

晴子も気まずそう。

 

玄関のブザーが鳴る。

町子「は~い!」

 

仕事部屋

町子「うわ~」

同じ千手観音が並ぶ。

町子「全く同じですね。ありがとうございました。それでお代金はいかほどのもんなのでしょうね。何十万と言われましたら、ちょっと私も考えなあきませんので」

かなえ「いえ、そんなにはなれしません。なんとか安くなるよう私どもで交渉いたしますから」

 

町子「そうですか。すいません。それから旦那さん、どうしてはりますか? 私、ちょっと作品について厳しいこと言うてしまったもんですから」

かなえ「おかげさまで帰ってきて、すぐ部屋に閉じこもって、また張り切って書いてます」

町子「は?」

かなえ「先生に的確なご指導を頂いたとかで」

 

町子「ねえ、奥さん、ご主人仕事を辞めて小説家になるて言わはった時に反対されなかったんですか?」

かなえ「はい。生活やったら私が働いたらなんとかなりますし。私、公務員なんです。時間にはきっちり帰れますから家の仕事もできますし…。働くのは私、苦になりませんので。あの人の才能を開花させることができたら、それは私の才能の開花でもあるんです。先生、あの人、才能ありますよね?」

町子「大変申し上げにくいことなんですけれども、私、ご主人、小説家には向いてはれへんと思います」

かなえ「え?」

 

町子「いや、そりゃこれからね、多少技術は学べると思うんですよ。けど、小説というのは、それ以外の部分がものすごく大事なんですね。だから、勉強して何かを得るとかそういうものじゃなくて、それ以外の部分というか、その…この感情とか、その…。ごめんなさい。もう上手に私、あの説明できないんですけども…。奥さん、本当にあの、このとおりです。申し訳ございませんです」

かなえ、ため息をつく。

 

玄関を出て、振り返り徳永家を見ていたかなえ。

 

仕事部屋

町子は手の折れていない千手観音を白い布で包み、一真から借りた千手観音にオレンジの布をかけようとしていたが、健次郎に声をかけられ、慌てて背中に隠す。

健次郎「町子」

町子「はい。はい…はい、どうぞ。はい、どうぞ」

 

健次郎「もう、お客さん帰りはったん?」

町子「帰りはりました。何?」

健次郎「ああ…。あの…ちょっと話があるんやけどな。仏像のことなんや」

 

由利子「お父ちゃん、どこ?」

 

健次郎「えっ、ここや! 何や?」

由利子「女の人が病院の前でおなか押さえてて」

町子「え?」

 

診察室

診察台に寝かされているかなえ。

町子「大丈夫?」

健次郎「胃けいれんやな」

町子「あら? 気ぃ付かはった」

 

かなえ「ここ、どこ?」起き上がろうとする。

健次郎「あかん、あかん」

鯛子「病院ですよ。分かりますか?」

かなえ「病院?」

鯛子「奥さん、医院の前でしゃがみ込んではったんです。それでここに運びました」

 

かなえ「先生…」

町子「わあ、分かってはるわ。よかった!」

健次郎「かなり前からでしょ? 胃けいれんの発作。多分、胃に潰瘍ができてますよ」

かなえ、うなずく。

 

藪下「失礼します。こちらです」

二ノ宮「あっ、かなえ! 先生、どないしたんです? 何があったんですか?」

健次郎「胃けいれんですね。痛みはこれが初めてやないみたいですよ」

二ノ宮「え? そうなんか?」

かなえ、うなずく。

 

町子「知りはれへんかったんですか?」

二ノ宮「ええ。大丈夫か?」

町子、ため息。

 

待合室

町子「一緒に暮らしてて、ほんまに気ぃ付かはらへんかったんですか?」

二ノ宮「あいつ、何も言わへんかったんで」

町子「ひどくなったら命に関わる病気なんですよ!」

二ノ宮、うなずく。

 

町子「あら。ねえ、もう大丈夫なの?」

健次郎「うん。痛み止め、出しといた」

町子「ああ…」

健次郎「あのね、一回、大きな病院で精密検査受けはった方がええと思いますよ」

かなえ「はい」

 

二ノ宮「あの、どうもお世話になりました。また明日来た時に様子、報告させていただきますんで。ほな、行こか?」

かなえ、うなずく。

鯛子「お大事に」

 

町子「二ノ宮さん」

二ノ宮「はい」

町子「あなた、もう二度とここへ来たらあきません」

二ノ宮「え?」

 

町子「あなた、小説家には向いていません」

二ノ宮「先生、そんな冗談を…」

町子「冗談やないです。はっきりと言いますね。あなたの弟子入りお断りさせていただきます」

二ノ宮「えっ、先生…」

 

町子「ごめんなさい」

二ノ宮「僕、諦められません! そんな一作読んだぐらいで向いてるとか向いてへんなんて…」

健次郎「向いてへんわ! あんたな、何を見てたんや? 毎日毎日、顔を合わせてる奥さんがこんな病気抱えてんのに、それ知らんかったで済むか? 一番身近な人のことも何にも見えてへんのに、小説書きたいて、そんなできるわけないがな。人間、描けるわけないやろ。あんた、もう、ええ年や。子供さんもいてはる男やろ?」

二ノ宮「結婚して夢持ったらあかんてことですか?」

町子「それは違います! そしたら夢だけで生きていけますか? 夢持ってるだけですばらしい小説て書けるんですか? 小説というのはね、そんなに甘いもんやないんですよ!」

 

ミニ予告

千手観音に手を合わせる町子と純子。

 

千手観音問題は明日で解決かな? 楽しい週かと思いきや、ここでガツンと二ノ宮に言う。だからこのドラマは面白い。