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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(58)「いのり」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

カンジ(森田直幸)が熱心に徳一(城島茂)に写真技術を教わる。そんなとき、女学生の町子(尾高杏奈)の友人、梅原(黒田純子)の父が校長を務める小学校で火事があり、天皇皇后両陛下のご真影や教育勅語を安置していた奉安殿が消失する。失火の原因は不明だったが、梅原の父は、責任をとって自殺してしまう。梅原の家族は大阪を離れることに…。大事な人がまた一人、町子のそばから去っていった。

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神のこひつじ幼稚園の集会所

キクと向き合って立っている町子。

 

大人町子「私はカンジ君のことをキクちゃんに話そうとしていました」

 

キク「何やのん?」

町子「カンジ君…。あの子とばったり会うてな。ほんで何やかんやで、今、お父ちゃんの写真教室に来てんねんけど…」

キク「それで?」

町子「それだけ。怒らへんの?」

キク「私が? 何で?」

町子「いや、何でて…」

 

キク「ああ、もうだいぶ前のことやんか、あの子のことちょっとええなと思たん。さっき名前言われて思い出すのに一生懸命やったわ。過ぎたこと、いちいち気にしてられへん。それどころやあれへん。仕事と家のことで大忙しや」

梅原「お母さん?」

キク「明日からまた入院。栄養が足らんへんよって、なかなかようなれへんみたいやわ」

 

竹山「おそろいですか? ああ、まだ3人だけですね」

梅原「また野草ですか?」

竹山「今日はこれ煮てみようと思って」

キク「おいしいんですか?」

 

竹山「ええ。アメリカに行った時に友人たちと野草を摘みに行って食べたんです」

町子「先生、アメリカに行きはったんですか?」

竹山「この戦争が始まる前にね。向こうの教会の牧師や信者の皆さんとキャンプをして…歌ったりしゃべったり楽しかったな。だから考えるんです。『もし戦地で出会ったりしたら僕は彼らに銃を向けることができるんだろうか』なんて…。あっ、すいません。何か急に思い出話なんて…。どうぞ掛けて待っていてください。もうそろそろ皆さんいらっしゃるでしょうから」

キク・梅原「はい」

 

キク「何かまた痩せはったね。食べてはんねやろか…」

梅原「うん、どうなんやろ…」

 

花岡家の豪華な食卓

ダイニング

イト「和代さん、しっかり食べなはれや。久しぶりのカシワなんやから」

和代「はい」

徳一「何せ2人分やからなあ。ヤヤコが生まれるいう話、したら、例のお父ちゃんの友達のお料理屋さんの大将が、またないしょで卵分けましょて」

イト「これ! 子供の前で。よそで言うたらあきまへんで」

 

徳一「2人とも分かってるがな。なあ」

孝子「うん」

徳一「そやけど、不自由な世の中なってしもてなあ…。どっちでもええから、はよ終わってほしいもんやな」

イト「よそで言うたらあきまへんで」

徳一「そやから2人とも分かってるがな」

イト「あんたに言うてるんです」

 

大人町子「その翌朝のことでした」

 

町子が寝ている部屋に和代が新聞を持って入ってきた。「町子。町子、起きなさい! 町子!」

町子「まだ眠たい…」

和代「町子、これ! これ!」

町子「奉安殿(ほうあんでん)?」

和代「えらいことやで! ここ…この小学校、梅原さんのお父さんが校長先生してはるとこやないの?」

町子、ガバッと起きて新聞を読む。

 

奉安殿炎上す 此花區私

             第二尋常

 御眞影・勅語謄本燒失 原因

 

八月七日大阪府大阪市此花區東島第二尋常小學校の奉安殿から炎が上がつてゐるのを同小学校宿直員が發見し、直ちに消火活動を行ひ鎮火した。同奉安殿はコンクリート造りであるため全燒を免れたが、内部に保管されてゐた御眞影・勅語謄本は燒失した。消火の際に奉安殿の御眞影・勅語謄本を取り出さうとした同小學校教諭中山定雄さん(四〇)が軽い火傷を負つた。

當日は四人の宿直員が交代で巡回してをり、火災は宿直の交代時に發生したものと思はれる。奉安殿内部は激しく燃えてをり、火災の詳しい原因は現在大阪府警察が調査中である。同奉安殿は學校火災の際×××

 

読める範囲で書き出してみました。意外と昔の朝ドラだと録画されること前提じゃないからタイトルだけそれっぽくて本文は全然違ってたりするんだけど、さすがに2006年はそんなことしないね。

 

大人町子「奉安殿というのは、天皇皇后両陛下のご真影や教育勅語を安置しておく施設で学校の敷地内に建てられていました」

 

ナレーションとともに実際の奉安殿が映し出されたけど、想像以上に大きかった。ちょっとした神社というか。もっと祠的なものを想像してました。

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読者からの戦争体験にも書かれてありました。

 

町子「『出火の原因は不明。当校の梅原校長は…』」

町子が和代の顔を見る。和代も心配そうな表情。

町子「梅原さん…」

 

いつもの土手

キク「大変やったね…」

梅原「お父ちゃん…。お父ちゃんのせいやあれへん」

町子「分かってる」

黙って川面を見ている3人。

 

写場

徳一「これが江戸時代に日本に渡来したダゲレオタイプの写真や。写真館には不向きやから、これはきっと技術の勉強のために撮られたもんなんやろな」

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カンジ「へえ。あっ、坂本龍馬やら土方歳三も新しいもん好きで競い合って写真撮ったそうですね」

徳一「けど、ただの新しいもん好きと違て、いつ死ぬか分からへん、我が身やったからこそ写真に残しときたかったんと違うかな。まあ、ゆっくり見ててええで」

カンジ「はい」

 

お盆を持って入ってきた町子に「一番熱心や」と徳一がささやき、写場から出ていく。

 

カンジ「よう! 今日なそこの暗幕写真機のぞかしてもろたんや。やっぱり面白いわ~、写真て」

町子「そう」

 

カンジ「そうかあ。あれ、友達のお父ちゃんなんか」

町子「うん。教育勅語やらご真影やらみんな焼けてしもたんやて」

カンジ「大変やなあ…。そやけど…写真だけ残して死んでしまうのと写真だけ焼けてしまうのと、どっちが大変なんやろか? ほんまのとこ」

町子「陛下のご真影やねんで! ただの写真とは話が違う! そんなことよそで言うたらあかんで!」

 

カンジ「うん…。まあ、そやな。もうすぐ夏休みやろ。今度、外の撮影連れてってくれるて」

町子「お父ちゃんが? 写真、面白いの?」

カンジ「よう分かったわ。写真は芸術や。文学は言葉の芸術やけど、写真は光の芸術や」

町子「芸術?」

カンジ「お父さんの受け売りやけどな」

 

町子「写真家になりたいの?」

カンジ「まだ考えてへん。そやけど、この年で何になりたいやなんてな、すぐ見つからへんわ。ほんまのとこ。よし。もう一回やるぞ」

町子「え~? まだやんの?」

カンジ「もうええから、はよ立って立って!」

町子はいつも写真撮影する背景の前に立ち、カンジは町子に暗幕写真機を構える。

 

カンジ「何かおもんないな。あっ、被写体があかんからや」

町子「何やて!? もっぺん言うてみ!」

カンジ「堪忍、堪忍!」

詰め寄る町子と逃げるカンジ。ミニ予告はここじゃなく先週末に見た予告か?

 

カンジは「純ちゃんの応援歌」の秀平と同じ歳かも? カンジは今後どうなるか知らないけど、カメラという共通点が。

 

夜、ダイニング

徳一「いや~、あの子は見どころあるわ。うん。写真の見方がほかの子とは違うわ。表現するいうことをよう考えてる。現像や焼き付けのことなんかもどんどん教えていってやろ思てな」

イト「おやつ出すのやめたらピタッとやめるいうようなことあらしませんやろな」

徳一「学校出て、やる気あったら技師で来てもろてもええな」

イト「まあまあ、気の早いこと」

 

徳一「跡継ぎにいらん苦労させんよう、ええ人ようさん集めとかんとな」

和代「気の早いこと。まだ男の子やと決まったわけやあらへんのに」

自らお代わりをするため、席を立つ。

 

イト「食が進むとこみると男の子かもなあ」

孝子「うん」

徳一「そや、男や。今度は男て決めてんねん」

孝子「お父ちゃんが決められんの?」

 

徳一「そうや。お父ちゃんの子や。お父ちゃんが決めんねん」

イト「おじいちゃんと一緒や。チャリ言うて」

一同の笑い声

 

キク「マコちゃん! マコちゃん!」

 

町子「キクちゃんや」

 

玄関に出るとまだ日が差してるから、夕方だったのか。

キク「マコちゃん、えらいことや!」

町子「キクちゃん、どないしたん?」

キク「梅原さんのお父さんが…お父さんが…亡くなりはったて…」

町子「えっ…」

 

キク「うちのお父ちゃんが梅原さんの家の前通ったら、警察の人がいっぱいいてて…」

町子「警察? 何で?」

キク「どないしよ…。なあ、どないしよ」

 

大人町子「梅原さんのお父さんが自殺なさったという知らせでした」

 

夜、台所

イト「町子は?」

和代「先に寝とくように言いました」

イト「そっか…。徳一もその校長先生と懇意やったんか?」

和代「学校の式の写真、ず~っと撮りに行ってましたから」

イト「何でまた自害やなんて…」

 

徳一「ただいま」

ツボを持って玄関に向かう和代。玄関に座り込む徳一。

和代「お帰りなさい」

徳一「ただいま」

 

塩の入ったツボを差し出すが、断られる。

徳一「いや…家には入れてもらわれへんかった。学校行って、ほかの先生の話、聞いただけや」

町子「お父ちゃん…」

 

茶の間

徳一「奉安殿、焼けた責任取るいう手紙あったそうや」

町子「梅原さんは? 梅原さんどないしてんの?」

徳一「分からへん。家には入れてもらわれへんかったから。事情が事情やから、お通夜もお葬式も家族だけでやりはるみたいや」

 

和代「町子…」

泣きだしそうになり、部屋から出ていく。

和代「町子!」

イト「子供さん残してな…。切ないこっちゃ…」

 

大人町子「その日から数日、梅原さんとは会えないままでした」

 

いつもの土手

町子「長崎?」

キク「長崎か…」

梅原「お母ちゃんのお兄さんがいてはんねん」

キク「遠いね…」

 

梅原「お母ちゃんがここにはもうようおらんて…」

町子「なあ、梅原さん、梅原さんだけでも大阪残られへんの? せっかく新しい学校入ったんやから、せめて卒業まで」

キク「そや。そやわ」

町子「私とこに住んだらええわ。結婚した昌江ねえちゃんらの部屋、空いてるし」

 

梅原「ありがとう。私もな…私も大阪離れんの嫌や。マコちゃんとキクちゃんと会われへんようになんの、嫌や…。寂しい…。そんなん寂しい。けどな…けどな…私までお母ちゃんのそば離れてしもたら、お父ちゃんおらへんようになって、お母ちゃん一人になったらかわいそうやろ? また会えるわ。思てるほど遠いとこあらへん、長崎なんて」

町子「そやな」

 

女子大生と思うと、別に一人こっちに残るというのもありなんだけど、すごく幼く見える3人なのよね。

 

町子「♪わたがましいの したいまつる イエス君のうるわしさよ」

 

町子とキクが歌う。

♪みねのさくらか 谷のゆりか

なにになぞらえてうたわん

 

なやめるときの わがなぐさめ

さびしき日のわがとも

きみは谷のゆり みねのさくら

うつし世にたぐいもなし

 

大人町子「大事な人がまた一人、私のそばから去っていきました」

 

川辺に立っている3人。

 

ミニ予告

孝子を追いかける町子。

 

梅原さん、いい子だったのに、何で!? 理不尽だなあ。