公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
女子専門学校の1年生となった町子(尾高杏奈)は、相変わらず、教会のある幼稚園に友人と通う。そんなとき、和代(鈴木杏樹)の体調が悪くなる。だが、町子や孝子(中村愛)以外の家族はあまり気にかけない。不思議に思う町子と孝子だが、和代が妊娠していることを知らされる。徳一(城島茂)が、花岡写真館で写真教室を開く。少年たちがカメラの操作を徳一に教わる中、カンジ(森田直幸)がやってきて…。
昨日の振り返り
町子「はあ~、暑…」
孝子「お母ちゃん! お姉ちゃん!」
町子「どないしたん!?」
孝子「お母ちゃんが! お母ちゃんが!」
町子が家に入っていくと、台所で和代が座り込んでいた。
町子「お母ちゃん、どないかしたん?」
孝子「今な、クラクラッて倒れてん!」
町子「お母ちゃん…」
和代「大丈夫や…」
孝子「そうかて顔色悪いやんか! なあ、お姉ちゃん、どないしよ? どないしよ?」
振り返りここまで。
和代「何でもあらへん。ちょっとフラ~ッとしただけや」
イト「どないしましたんや?」
和代「あ~、何でもあらしません」
イト「おじいちゃんの初盆のことな、徳一と話、しとかんとな」
和代「あっ、呼んできます」
イト「あ~、よろし、よろし。部屋行きまひょ」
和代「あ~、すんません。心配せんかてええで。あんた、はよ行き。大丈夫やから。なっ」
孝子「お母ちゃん、この暑さ疲れやろか?」
町子「うん…」
神のこひつじ幼稚園
一同「♪みねのさくらか 谷のゆりか」
町子、梅原、キク、そして前にも来ていた親子と賛美歌を歌っている。
大人町子「卒業し、進路はバラバラになった私たちでしたが、この神のこひつじ幼稚園で週に1度は会い、相変わらず女学生時代の延長気分を楽しんでいました。梅原さんは私とは別の女子専門学校へ。キクちゃんはミナミにある紡績関係の会社に勤めています」
♪うつし世にたぐいもなし
走って帰ってきた町子が空き地でぼんやりする孝子を見つける。
町子「あれ? 何してんの? 何ちゅう顔してんの?」
孝子「そうかて、またお母ちゃん、具合悪い言うて部屋で寝てんのにな、お父ちゃんニコニコ笑てるだけやねんもん」
町子「ニコニコ?」
町子、ピンとくる。「ああ!」
孝子「薄情だわ、お父ちゃん」
町子「孝子、心配せんかてええわ」
孝子「え? 何で? 何でやのん? お母ちゃん、青い顔してんねんで」
町子「うん、ええから。まっ、そのうちな」
孝子「何が? 何が『そのうち』? 自分だけずるいわ! なあって! あっ、そや、またお客さんやで」
町子「え?」
花岡家の軒下に葉っぱが干されているのを見ているカンジ。
町子「何か用?」
カンジ「よう! ちょっと面白い本、持ってきたったで」
ダイニング
和代「はい、どうぞ」ホットケーキを出す。
カンジ「いただきます」
町子「これが目当てか…」
和代「たくさん食べてね」
町子「お母ちゃん、寝とかんかてええの?」
和代「大丈夫」
和代が台所へ行ったあと
カンジ「おめでとうさん。おめでたなんやな?」
町子「え?」
孝子「ええ~っ!?」
町子「何で!?」
カンジ「いや、違うかったら堪忍。勘違いやわ」
孝子「お姉ちゃん?」
町子「何であんたが知ってんの?」
カンジ「いや…その…」
和代「暑いから麦茶がええわね。どないかしたん?」
孝子「お母ちゃん、おめでたやの?」
和代「え? あんた、誰から聞いたん?」
孝子「ほんまやの?」
和代「いや…今晩でも話さなと思てたんやけどね」
孝子「ほな、何でこのおにいちゃんが知ってんの?」
和代「えっ?」
カンジ「いや~、困ったな。その…庭にドクダミ干してあったやろ。うちのお母ちゃんも弟できた時、そやってん。それ煎じてのんで胎毒出すて。それに何やさっきおばさんがそ~っと歩いてたような気したさかい、そやからてっきりもう…。すいません、いらんこと言うて」
和代「男の子やのにいろんなこと知ってはるんやねえ。それに何でもよう見てはる。面白いお友達やこと! さあ、あんたも座り。なっ。さあささ、食べて食べて」
カンジ「はい…」
面白くなさそうな町子とおいしそうにホットケーキを頬張るカンジ。ふと思い出したけど、今の町子くらいの年齢で、あぐりは出産したということだもんね。そう考えるとすごいな。
夜、ダイニング
徳一「そうか。せっかく今夜お父ちゃんが発表して、びっくりさせたろ思てたのになあ!」
和代「もう十分びっくりしてしもて」
イト「きょうだいができるんやで。またにぎやかになってよろしな!」
町子「うん!」
徳一「孝子もお姉ちゃんやで」
孝子「お姉ちゃん!? お姉ちゃん?」
徳一「さあ、お父ちゃんももっと張り切らなな! 男の子やったら花岡写真館の大事な後継ぎや!」
イト「まあまあ、気の早いこと!」
実際の田辺聖子さんは、2つ下に弟、3つ下に妹がいるそうです。
詳しい人生年表なので、今後のネタバレになってしまうかな!? ただ、同居のきっかけが義父の死去とあるので色々変えてるんだね。
徳一「あっ、そや。ちょっと新しいこと考えたんや。ほれ!」
當寫眞館デ
寫眞ノ基礎
敎ヘマス
和代「『写真の基礎』?」
徳一「写真教室や。将来はな、きっと普通の人でもカメラを持つ時代が来るはずや。写真に興味を持つ人もどんどん増えると思うね」
イト「素人さんが来はるんやろか?」
徳一「来る。絶対、来はるて。そや、町子」
町子「何?」
徳一「その友達にも声かけてあげたらどや?」
町子「え?」
孝子「いや、それええやん! なっ」
和代「そやな。それ、ええわ!」
町子「そやけど、あの子が好きなんは写真やのうて…」
徳一「そんだけものをよう見てる子や。写真に向いてるかも分からへんで。話、してみ」
町子「はい」
イト「そやけど、あんたは相変わらず字、下手やな!」
孝子「ほんまや、ほんまや!」
イト「何、この字?」
徳一「読めたらええねん」
孝子「もう~、私の方がよっぽどきれいやわ」
大人町子「そして、初めての教室の日がやって来ました」
台所
イト「生徒さん、来はんねやろかな?」
和代「若い人が戦争にとられて、技師さんも思うように集められへんご時世ですから、先のこともちゃんと考えてはるんと違いますやろか、あの人なりに」
イト「お礼はなんぼぐらいもらうつもりなんやろ?」
和代「さあ、それは…」
イト「どうせあの子のことや。『お小遣いの範囲で』なんて言うたりして」
和代「まさか、なんぼなんでも…。そこもちゃんと考えてはりますでしょ」
イト「そやな。もう立派な当主なんやさかいな」
和代「ええ」
写場
徳一「う~ん。初心者には、まずこれやな」一台のカメラを取り出す。「いらっしゃい! 写真教室?」
少年「はい」
徳一「お~、入って入って!」
少年「あの…月謝って高いんですか?」
徳一「あっ、そうか。まだ決めてへんかったな。うん。お小遣いの範囲でええさかい。ねっ」
少年「はい」
徳一「入って入って」
数人の少年が集まっている。
徳一「これが絞りいうてな、猫の目と同じで明るい所ではこうやって狭めて、で、暗い所ではこうやって広げて光の量を調節するんや」←この辺がミニ予告。
町子がカンジを連れてくる。カンジ、帽子を取ってあいさつ。
徳一「遠慮せんと入って入って。そこ座って。今な、絞りの説明してたとこや。カンジ君いうたな?」
カンジ「はい」
徳一「絞りて分かるか?」
カンジ「はい」
徳一「お~、そうかそうか。ほな続けんで。この光の量が肝心でな、写真は光の芸術というてな…」
台所
ホットケーキを焼く和代と米つきをしているイト。町子が入ってくる。
和代「あ~、どない?」
町子「うん。何かお父ちゃん楽しそう」
和代「そう! あっ、町子お皿出して」
町子「は~い。どないすんの?」
和代「来てくれはった人に」
町子「え? 上に?」
和代「うん。あんた持ってってあげて」
気前よくホットケーキを振る舞おうとする和代の背後ではイライラして米つきの手が激しくなるイト。夫婦そろって商売下手なのかもねえ。
写場
「うまいな!」
「おいしい!」
「久しぶりやな!」
徳一「食べてる間にこれ回して見てな。はい」しかし少年たちは食べるのに夢中。「まあ、食べ終わってからでええわ。うん。ゆっくり食べや」
写真集を見ながらホットケーキを食べているカンジ。
徳一「どや? それ面白いやろ?」
カンジ「人間の顔て面白いですね」
徳一「本人も気ぃ付いてへん表情を一瞬に切り取るから面白いねん」
カンジ「何考えてるかまで見えるみたいやわ。ほんまのとこ」
徳一「ほんまのとこなあ」
カンジ「すいません。あれ…」
徳一「うん。あっちのも見るか?」
カンジ「いや。お代わりいいですか?」
徳一「ああ…。はい」
カンジ「いただきます」
「僕もお代わり」
徳一「アハハハ…食べや」
夜、ダイニング
徳一「いや~、結構集まったもんやなあ」
イト「束脩はちゃんともらいましたんか?」
徳一「え? ああ、月謝な」
イト「おやつまで出してな。お父ちゃんが生きてはったらどない言いはったやろ」
申し訳なさそうな和代。
徳一「町子。あの子、なかなか見どころあんで」
町子「あの子が?」
徳一「ああ。あれ、どこの子や?」
町子「さあ…」
徳一「友達なんやろ?」
和代「キクちゃんの工場で働いてやったんやて。お父さんが病気しはったから。今はもう治りはったんよね?」
町子「どんなふうに見どころあんの?」
徳一「何て言うんやろな、人に興味あるみたいやからな」
町子「人?」
徳一「人間にや」
町子「人間に?」
徳一「まあ、もっとも今日はホットケーキに一番興味あったみたいやけどな」
一同の笑い声
大人町子「そして、2回目の写真教室の日には…」
写場
徳一「そこ座ってな」
子供たちの数が増えている。
町子「えらい増えたね」
徳一「うん。ほんまやな」
少年「あの~、ここですか? 教室」
徳一「そうですよ」
少年「『写真機の説明、おとなしい聞いてたら、ホットケーキ食べられる』てほんまですか?」
徳一と町子、顔を見合わせる。
空のお皿を片づける町子。「写真になんか興味あれへんやんか、みんな。ホットケーキ目当てや」
カンジ「このご時世、よそでは食べられへんよってな」
町子「そうかて…」
カンジ「自分とこがよそより恵まれてること気ぃ付いてるか?」
町子「それとこれとは話が別。お菓子振る舞うために教室始めたんやないねんから」
徳一「ええねん。どんなきっかけにしてもあん中の一人でも本気で興味持ってくれたら」
カンジ「あんたかてそうやろ?」
町子「え?」
カンジ「『聖書 』やら賛美歌の言葉の響きが気に入って教会に行ってんねやろ? ほんまのとこ」
町子「私らには信仰心があるんです! あんたもいっぺん読んでみたら? 詩が好きなんやから、きっと気に入ると思うよ」
カンジ「その神さんがみんなにホットケーキおなかいっぱい食べさしてくれたら、どんだけええやろなあ」
神のこひつじ幼稚園
梅原「えっ!? あの子がマコちゃんとこの写真館に?」
町子「うん。キクちゃんに言うた方がええやろか?」
梅原「う~ん…」
大人町子「1年ほど前、私がカンジ君と親しくなったことで、カンジ君にほのかに恋心を抱いていたキクちゃんと小さないさかいがあったのでした」
セリフのない回想シーン。キクちゃんが町子の家までカンジの本を渡しに来て、ケンカになった。
町子「また怒らしてしまえへんやろか? なあ、梅原さん、キクちゃんにそれとなく聞いてくれへん? 今、まだあの子のこと…」
梅原「嫌や。自分で言い」
町子「え?」
梅原「イケズで言うてんのん違うで。キクちゃんのこと、大事な友達やと思うねやったら、マコちゃんが自分でちゃんと話、した方がええと思う」
町子「けど、またけんかになったら…」
梅原「正直に話、したらキクちゃんは怒れへんわ。それでも怒ったら私は話、してあげる。なっ」
町子「うん」
キク「遅なった!」
梅原「まだ始まってへんよ。竹山先生、今、裏で草摘んではる」
キク「ああそう」
町子「あのな、キクちゃん」
キク「うん?」
町子「話、あんねん」
キク「何?」
ミニ予告
カンジと町子が話してる。
梅原さんていいよね。どっちかにつくとまたそれも怒りの理由になるしね。