公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
徳永家では、町子(藤山直美)の仕事部屋として物置部屋の改装工事が始まる。荷物の整理を楽しそうに手伝う健次郎(國村隼)の子どもたちだが、かえって足手まといに…。また、作家の仕事を理解できない大工と本棚の作製を巡ってトラブル発生…。さらに喜八郎(小島慶四郎)は、塗りたての壁に触ってしまい手形を残してしまう…。町子の新しい生活は、さてさて、いったいどうなることやら。波乱の予感に満ちた一日だった。
町子の仕事部屋を作るために工事が始まっていました。
大工さんたちが納屋の工事。町子は廊下で男の子たちと仕分け。
町子「ねえ、ちょっと、それからこのトランプ、どないすんの?」
清志「数がそろてへん」
登「要る。手品の練習すんねん。置いといて」
町子「置いとくの? ほなね、ちょっとこのミニカーどないすんの? あ…ミニカー、タイヤ全部取れてるからあかんわ。これ、捨てて…」
登「あっ、初めておじいちゃんに買うてもろたやつや。置いといて」
町子「置いとくの? ふ~ん。よいしょ。これ、もう、知~らないっと」
登「あかん! 置いといて!」
清志「そんなん言うてたら片づけへんやんか!」
登「お兄ちゃんかて自分の機関車、置いてるやん!」
清志「これはまだきれいやもん」
登「ほったらかしてたくせに!」
清志「何やて?」
町子「やめなさいて。ちょっとけんかしたらあかんて! やめなさいて! 清志君もやめなさいて! ちょっと…危ないから! ちょっとやめなさいて!」
健次郎「何を騒いでんのや? 何を~」
町子「けがするから、もう!」
清志と登のけんかは続いている。
健次郎「進んでるか?」
町子「ご覧のとおりやって! もう、これ…」
健次郎「コラ! お前ら! 邪魔すんねやったら、お前らのもん全部捨てるぞ! あれ? お前ら学校は?」
清志「創立記念日やて言うたやん。お父ちゃん、ちゃんと聞いてへんねんから」
健次郎「子供のスケジュールまでいちいち覚えてられるかいな。それやったら、もっとお前ら、ちゃんと手伝え。ええか? 捨てるもんはちゃっちゃと捨てる」
町子「これ何? これ? 潰れてんの? こんなん捨てましょか?」
健次郎「あ~、あかん、あかん!」
町子「いや、それ、何なんですか?」
健次郎「え? 釣りの道具や」
町子「釣…」
健次郎「これ、修理したらまだ使えんねん」
町子はため息とともにあきれ顔。
徳永醫院を訪れたスーツの男性。
受付
イシ「はい、お大事に。ありがとうございました」
勝本「あ…すんません」
イシ「はい」
勝本「あの…」
女性「痛い~! 痛い! 痛い! 助けて~! 痛い!」
左手が血のにじんだ包帯で受付に来た。
勝本「血や!」
鯛子「切ったんですか?」
女性「包丁、滑って…」
イシ「いや~、えらいわ!」
鯛子「先生! 先生!」
勝本「はあ…」声をかけそびれて待合室のベンチに座る。
納戸
富田「え? 何ですて!?」
町子「そやからですね、こっち側の方の天井までですね、作りつけの本棚が私は欲しいんです」
富田「天井まで!?」
町子「はい」
富田「そんな大きな棚、普通の家には要りまへん」
町子「いや、要るんです。私、ぎょうさん、本持ってるんですよ」
富田「それやったら早いこと古い本は売りなはれ」
町子「いや、売らないです。読んでも売らないんです。ほんでね、これ、また何べんも読んで、これまた忘れそうになったら読んで、覚えて、勉強して…」
富田「あ~、そ…そ…それはそれは、あきまへんがな、あんた」
町子「え?」
富田「読んだ本は覚えとかなあきまへんがな! ええ年してんのやさかいに」
町子「は?」
富田「それよりね、この場所に本棚てやめなはれ。もったいない。家具屋へ行って適当な本箱を買いなはれ」
町子「本箱ではどないしても足りひんのんです」
富田「そやから古い本は売りなはれ」
町子「いや、だから売らないんです。私のね、仕事ね、ちょっと待ってくださいね。見せますわ、こないなったらね。私ね、こんだけぎょうさん本があるんですよ」
段ボール箱を運んでくる町子。「これね、みんな重とうて分厚うてね、これがものすごいんです。ほんで、これはですね、この作り本棚の所にね、辞書とか百科事典とかいろいろあるんです。全集とか。これをこうやってダダダダダダダダ、ダダダダダ、ダダダダダダダて並べるんですよ」
富田「本をダダダダ並べるて、あんた、ほんなら、あの~、学校の先生か何かだっか?」
町子「いや、何で本やから学校の先生? はあ…私ね、あの、小説家なんですよ」
富田「小説家…?」
町子「小説を書いてるんですよ!」
富田「小説を書いてる!? 何のために?」
町子「金もうけ!」←昨日のミニ予告
壁一面の本棚は憧れたな~。今は本を処分したけどね。
台所
健次郎「ハハハハハハハ!」
町子「『何で小説を?』ていきなり本質をついた質問されたら困るよ。そういう質問はね、一生かかったかて答え出えへんねんから」
健次郎「『金もうけ』上等やがな」
町子「『売り言葉に買い言葉』で私、ペロッと出てしもたんや」
健次郎「ほんで…片づけは?」
町子「まあ、ボチボチかなあ…」
健次郎「え?」
遊んでいる男の子たち。
健次郎「コラ、お前ら! 遊んでんとちゃんと片づけ手伝わんかい!」
3人「は~い!」
健次郎「『は~い!』て返事はええな…。ほな」
町子「あっ、ちょっと待って!」
健次郎「うん?」
町子「何、つけてんの? ほれ…。フフフ!」と口についた食べ物?を取った。
待合室
座っている勝本は隣に座った女性の愚痴を聞かされていた。「ほんま、長いこと生きてても、格別、面白いことなんか何もあらしませんで~。まあ、この年まで働いて、やっと楽ができるかと思たやさき、連れ合いが病気や。息子も嫁も知らん顔やし、ほんま情けないこっちゃ」
勝本「大変ですね…」
廊下
要らなくなったものを段ボールに入れ、運ぶ町子。「よいしょ。はい、お願いします。大丈夫?」
清志「はい。よいしょ」
登「はい。はい」
隆「はい」
隆は家の中に入り、箱を置く。町子は知らずにまた箱を清志へ。「よいしょ」
町子「ぎょうさんあるな。なかなか減らへんな…」
作業していた左官屋さんも気付く!?
町子「はい」
清志「はい、よいしょ。はい」
登「はい」
元の場所に戻った町子は隆の後ろ姿を見かけて気付く。「あら!?」
隆が段ボールを持ってきたところを町子が見ていて話しかけた。「隆君、ご苦労さん。けど、ここに置いてたら一生終わらへんよね~」
納戸
作りつけの大きな本棚が出来ている。
町子「ありがとうございました」
宮田「きれいにしましたで。住み込みの看護婦さんでも住まわしはるんでっか? 繁盛してはってよろしなあ! ああ、1時間ほどは触ったらあきまへんで。乾いてないさかい」
町子「はい」
宮田「ほな」
町子「ご苦労さまでした」
喜八郎「どないなったやろな? どないなった…。あら、まあ! きれいになって…。ほんまにきれいにして…」
喜八郎と一緒にいた亜紀も壁に手を伸ばす。
町子「ああ~!」
喜八郎「え…えっ?」
町子「うわ~!」
喜八郎「え?」
亜紀も壁に手を当てたままニコニコ。定番だけど面白い。
夕方、徳永醫院の前の路地を由利子が帰ってきた。
納戸
由利子「ただいま」
町子「あっ、お帰りなさい」
由利子は部屋をまじまじ見て、机の上の人形を手に取った。
町子「それね、私が子供の時にお父ちゃんに買うてもろたお人形さんやねん」
由利子「ずっと持ってんの?」
町子「うん。空襲でも焼けへんかってん。頑張り屋さんの子やねん」
人形を机の上に置き直すと、花岡家の写真が目に入った。バアバアばあちゃんを中心にした家族写真。お人形も写ってる。
応接室になった部屋でソファからジャンプする男の子たち。
3人「せ~の!」
いつも食事してる部屋の隣なんだね。
イシ「ごはんやで~」
隆「やった~! おなかすいた!」
登「うわ~、ごちそう!」
町子「はい、お待ち遠さまでした! どうぞ!」
イシ「あの子もボチボチ終わる時間やから先、初めてましょ」
喜八郎「うん、そやね」
町子「いや、私はもうちょっと…」
喜八郎「いやいや、かまへんがな。待ってたらいつになるや分からへんさかい」
受付
鯛子「お大事に」
女性「ありがとうございました」
待合室には勝本が一人残っていた。
茶の間
町子「いや、もうちょっとだけ待ってます…」
喜八郎「かたいこと言わんと、もう!」
町子「いや、うれしいです…」
鯛子「あの~、奥さん!」
喜八郎「町子さんのために…」
喜八郎と話し込んでいる町子。
鯛子「奥さん!」
喜八郎「さあさあ」
町子「あっ、私、奥さん! はいはい、奥さん。あっ、私。はいはいはい!」
応接室
町子が勝本にコーヒーを出す。「失礼いたしました。取り次ぐのを忘れてたやなんて…」
勝本「僕も声かけるタイミング逃がしてしもて」
町子「ほんま、えらいすいませんでした。今度から直接こちらにお越しくださいね。あの、お電話では80枚と聞かせていただいてるんですけれども…」
勝本「あ、はい。あの女性作家特集を予定しておりまして」
町子「はい」
勝本「あっ、あのテーマはですね、『切ない恋』といった感じでいきたいんですけれども…」
町子「そうですか」
勝本「はい」
町子「そしたら、え~…」
納戸
手書きのスケジュール帳の予定を書き込む。
町子「80枚と…。80…。やっぱりもうちょっと明るいのに替えた方がええかな。これ」
裸電球一つじゃちょっと暗いね。
町子「80枚と」
健次郎「終わったか?」
町子「あ、なんとか…」
健次郎「きれいになったなあ。え~。何やあれ?」
壁の手形に気付く。
町子「お父さんや!」
健次郎「え~、しゃあないな! おやじはほんまに」
町子「うん?」
健次郎は町子のスケジュール帳をその手形の上に乗せる。「はい」
笑う2人。町子は立てかけた封筒?をよけるとそこには小さな手形。「はい」
健次郎「亜紀か!?」
町子「うん。私も記念にね、ペタッてつけといたらよかったわと思て」
健次郎「ほんまやな。おなかすいたやろ」
町子「もうガス欠…」
健次郎「行こう」
机の上に、由利子ら子供たちと赤ちゃんの亜紀を抱っこした女性の写真が飾られていたのを健次郎が見つけた。「これ…」
町子「日付見たら亡くなられるちょっと前やね。奥さん…藤木澄子さんとはたまに作家が集まるパーティーでお会いしたんですよ」
健次郎「う~ん」
町子「一生懸命、小説の話、してはった。誰かが子供さんのことで質問した時にね」
健次郎「うん…」
町子「『ちっちゃい子供がまといつきますから、おんぶして、お台所に立ったまんま小説を書くこともあるんですよ』て笑いながら言わはるんやもん。パワフルやなあと思て、私、お友達になりたいなと思たもん。そやからその写真はね、大切なお守りなんです」
健次郎「お守り?」
町子「うん。私とあの子たちとのね」
茶の間
喜八郎「あっ、やっと来た。お母さん!」
イシ「はい!」
喜八郎「さあさあ、さあさあ、さあ、お祝い、お祝い!」
イシ「はい、お疲れさまでした!」
町子「ありがとうござい…。うわ~」
健次郎「これな、鶏飯いうてな、うちの田舎でな、お祝いの時に食べるもん」
町子「お祝い…」
イシ「町子さん、結婚式のあと、食べてはれへんよって」
町子「鶏飯て奄美のお料理なんですか?」
喜八郎「うん。そうそうそうそう」
イシ「どうぞ」
町子「いただきます。ちょっと…うわ~、きれい、これ。おいしい! これ、私も作り方覚えなあきませんね」
イシ「そんなもん、簡単!」
喜八郎「晴子はなんぼ言うても覚えよらん」
健次郎「あいつは料理する気がないから」
晴子「お兄ちゃんより手先は器用やけどね。イタタ…。お兄ちゃん、傷の縫合、ものすごい下手やもんね」
町子「はいはい」と肩を貸す。
健次郎「ほっとけ」
晴子「あっ、すいません」
町子「あし、どないですか?」
晴子「明日やっとギプス取れる」
町子「それはよかった」
健次郎「何かあてないかな?」
町子「あ~、ほんならスルメでよろしいですか?」
健次郎「あっ、ええな!」
町子「はい」台所へ
晴子「明日から町子さんが?」
健次郎「ん? うん。『食事の支度はする』言うてるな。最初はまあ、お母ちゃんと2人で。まっ、それからボチボチやな」
晴子「大丈夫やろか…」手伝う気は全くなしなんだね。
電話が鳴る。
イシ「はい、徳永です。は? あっ、はいはい。お待ちください。町子さん」
健次郎「おい、電話」
町子「あっ、は~い!」
スルメを火にかけたまま、茶の間へ。
町子「えらいすいません。もしもし、お電話代わりました。花岡でございます。あっ、木村さんですか。どうもいつもすいません。はい。え? 短編特集号。はあ…」
喜八郎「こんな時間に仕事の用か?」
健次郎「急患いうとこ違うか?」
イシ「あっ!」
健次郎「スルメ!」
喜八郎「えっ? ああ!」
台所
健次郎「アツッ!」
町子「ちょっと待ってください! (受話器から離れて)ちょっと大丈夫? 大丈夫? ねえ」
晴子「大丈夫やろか…」
町子の新しい生活。さてさて、一体、どうなることやら…。
字幕には出てなかったけど、また健次郎に対して「大丈夫?」と呼びかけて、電話口でも「私、本当に大丈夫なんです」と言ってる町子が面白い。
ミニ予告
町子「おっ、フフフ!」
誰かお代わりを頼んだ!?
なんかいいねえ~。あ~、面白いのにうまいこと感想を書けないのがもどかしい。