公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
花岡家の隣にあったカフェに勤める女給・鶴子(大路恵美)の娘・朝子(植野瑚子)との思い出を健次郎(國村隼)に語っている町子(藤山直美)。朝子と仲たがいした遠い日の後悔が町子の胸をざわつかせていた。一方、徳島に出張に出た茂(西川忠志)や、仕事に行く途中で火事に遭遇した浦田(にわつとむ)に不運が続き、予定していた撮影に間に合わないことに。常太郎(岸部一徳)の予感どおり花岡写真館の危機を招く…。
振り返り
空き地で遊んでいた町子。「1つ2つ3つ4つ5つ6つ7…」
目隠しをしてカウントしながら指の隙間から覗き見ていると、朝子が立っているのが見えた。町子はもう一度ギュッと目隠しをしてカウントを続けた。「7つ8つ9つ10!」
徳永家茶の間
町子「何であんなかわいそうなことしてしもたんやろ」
健次郎「子供っちゅうのは時々残酷なことするもんや」
振り返りここまで。
隣のカフェに勤める鶴子の娘・朝子との思い出を語っている町子です。
孝子「お姉ちゃん、先、行くよ!」ポパイの散歩。
町子「待って~!」
イト「町子」
捨てたはずの口紅を町子の手のひらに乗せた。
町子「何で?」
イト「カフェの子にもろたんやな?」
町子「違う…」
イト「子供同士でこんな高いもんやり取りしてたらあかん! 返してきなはれ」
町子「違う。これは…」
カフェローズの前に立つ町子が思い切って扉を開ける。「ご…めんください」
物音
佐代子「ふざけんといてや!」
という声に、町子が言われたと思い、「ごめんなさい!」と店を飛び出した。
店の裏手から大きい物音
鶴子「ちょっと待ってえな。佐代子さんのお客さんやて知らんかったの。ねっ」
佐代子「とぼけんのもええ加減にしいよ!」
ハイヒールを投げて、塀に当たる音
鶴子「何すんのよ!?」
佐代子「怖い女や! 人の客盗って平気な顔して!」
鶴子「たまたま佐代子さん、お休みの日に来はったの」
町子は更に近い所に隠れる。
佐代子「それで盗ったん? 何やの、その態度は!?」
鶴子の吸いかけたたばこを地面に投げつける佐代子。たばこは町子のすぐそばに落ちる。
竹子「ちょっとあんたらこんなとこで何してんの?」
佐代子「ママ。この性悪女、うちのお客横取りしたんやから!」
鶴子「誤解です」
佐代子「ごまかしてもあかんわ!」
竹子「はいはいはい! 店で話聞こうな。はいはい。あんたもちょっと来て」
鶴子「はあ…」
たばこの吸い殻を必死で消そうとしている子供の左足を見つけた鶴子。「誰?」
町子が姿を現した。
鶴子「いや~、マコちゃんやんか。どないしたん?」
町子「これ…やっぱりもらえません」
鶴子「いや、何で? 気に入らんかった?」
町子は首を横に振る。
鶴子「朝子と仲ようしてくれるから、おばちゃんうれしいねん。そやから」
町子「ごめんなさい!」口紅を押し返し、逃げた。
空き地の大きな木でぼんやりしている町子。傍らには孝子とポパイ。
朝子「♪あんたがたどこさ」とまりつきしながら登場。町子に気付くと笑顔で近付いてきた。「マコちゃん」
町子「ああ…」
朝子「マコちゃん、お人形さん、見せて」
町子「ん…」
朝子「見てるだけ。触らへんから」
町子「また今度な…」
朝子「いつ? 来週? なあ!」
町子「いつかまた今度。今度は今度…。帰ろか。宿題せな」ポパイを引っ張って帰っていき、孝子も続く。朝子ちゃんがかわいいだけに余計かわいそうに見える。
夜、自室でお人形を抱いている町子。
和代が部屋に入ってきた。「町子」
町子「何?」
和代「朝子ちゃんに何でイケズしたん?」
町子「孝子が言うたん?」
和代「そんなこと誰でもよろしい。おばあちゃんが何か言うたんか?」
町子は首を横に振る。
和代「こないだ、お人形さんのことで何かけんかしたんか?」
町子「してへん…」
和代「ほんなら…。町子…。町子」
写場
茂「あさっての夜の便で徳島の港出たら朝一番には和歌山に着けるわ」
徳一「すぐ電車乗るんやで。小学校の方は浦田君が先行って用意してるから。僕は女学校の卒業式や。お父ちゃん予約入ってるからここから動かれへんし」
茂「分かってるて! ちゃんと9時前には学校に着けるわ」
浦田「はい」
和代「ちょっとよろしいか?」
徳一「うん?」
浦田「ええ仏像の写真、撮ってきてくださいね」
茂「当たり前やろ! お前も寄り道せんとまっすぐ学校行くんやで」
浦田「任しといてくださいよ!」
カフェローズ前
竹子「社長さんのお話、ほんま面白いわ!」
鶴子「はいどうぞ!」客にカバンを手渡す。
客「そやけど今度はお話だけでは済まんかもしれんで!」
竹子「いや、怖いわ! こんなおぼこ相手にな!」
町子の部屋
鶴子が客にキスをする姿や朝子が人形にキスをする姿を思い出す町子の目から涙が流れた。「あんなことしやるからや…」←昨日のミニ予告。
朝、写場
徳一「よっしゃ!」カバンを肩に担ぐ。
浦田「よし!」ハンチング帽をかぶる。
常太郎「茂も昨日の晩、ちゃんと船には乗った。今頃は和歌山の駅から大阪へ向こてる。学校の場所は分かってるな?」
浦田「あ、分かってます」
徳一「頼んだで」
浦田「はい!」
徳一「行ってくるわ」
常太郎「うん」
浦田「行ってきます」
常太郎「頼んだで」
台所
イト「さっちゃん、これ水屋へなおして」
お手伝いさん「はい。これ、お願いします」
和代「はい、置いといて」
写場
常太郎「10時に宮原さんご一家。11時半に佐々木さん。11時半に上原先生のご一家。これ、もう一つ11時半。これ、塚本さんのお見合い写真。これは今日はちょっと無理やろ。1人では難しい。どうするかな? いや~、困ったな~。いつもこういうことやってるけど今日は難しいなあ…」
歩いて小学校に向かっていた浦田。
女「火事や~! 火事や! 誰か! 火事や! 火事、火事や! 火事や!」
その声に浦田は現場へ向かう!?
花岡家の電話が鳴る。
町子「お母ちゃん!」和代がいないので、町子が電話に出る。
町子「はい、花岡です。もしもし?」
茂「もしもし?」
町子「もしもし」
茂「もしもし?」
町子「もしもし!」
茂「もしもし!」
町子「そやからもしもし!」
写場
常太郎「そうですか。お姉ちゃん、今度、小学校やの。かわいい妹さん生まれてよかったねえ。お姉ちゃんやねえ。大阪一の…いやいや、日本一の幸せもんや。こりゃうらやましい!」
家族写真の撮影。カラフルだね~。
イトが何か言いたげに来るが、撮影を続ける。
常太郎「いや~、ええ顔してはる! これを逃がすわけにはいきません! じゃ撮りますから。お嬢ちゃん、ちょっとじっとしててちょうだいね。はい、いきま~す!」
和室
常太郎「茂、どう言うた?」
町子「あの…『踏切で事故があって途中で電車が止まってしもうた』て」
常太郎「途中? 途中ってどの辺や?」
町子「『紀ノ川過ぎたとこ』て」
常太郎「それだけやったか?」
町子「『おじいちゃん呼ぼか』て言うたんやけど『時間あらへんからそれだけ言うといて』て、すぐ切れた…」
和代「間に合いますのやろか…」
常太郎「そやから言わんこっちゃないねん」
イト「小学校の方、1人でどうにかなりまへんのか?」
常太郎「式場と記念写真、1人では無理やから、いつも2人でやってんねやろが!」
イト「すんません…」
またしても電話が鳴る。
常太郎「もしもし…ああ、浦田君か。え? 何? よう聞こえへん…。何やて!?」
火事場
浦田「はい、はい、あの…そうなんですよ! あっ、はい、すいません! あの、そうなんですよ。夢中でシャッターを…。気ぃ付いたら…すんません!」
花岡家
常太郎「残りはまだあるんやろ? とにかく学校へ向かい。始まるまではちょっとある。それはこっちで考えるから。ええからはよ行け!」
イト「浦田君、何ぞありましたん?」
常太郎「火事の現場にぶつかって夢中で写真撮ったらしい。1~2枚のつもりがフィルムようけ使てしもたんやて。何にも考えもせんと…。はあ…しゃあないなあ…急いで車呼んでんか」
イト「え? 行かはるんだすか!?」
常太郎「あの学校はな、10年以上も毎年うちに頼んでくれてはる大事なお客さんなんや。信用なんて長いことかかって築いてきてもなくす時は一瞬や。ちょっとした気の緩みが店、傾かせんね…」
イト「このあとのお客さん…?」
常太郎「お断りしといてくれ! 徳一にも連絡してくれるか?」
イト「はい」
和代「お母さん。徳一さんには私が」
イト「あ~、そう。頼むわな!」
和代「はい、はい」
台所
皿を拭いていた和代とお茶をお盆に乗せて運ぼうとしていたイトがぶつかり、和代が皿を何枚か割ってしまった。
和代・イト「あっ!」
和代「すんません!」
イト「気ぃ付けなはれや」
和代「すんません…」
お手伝いさん「大丈夫ですか?」
このドラマ、面白いんだけど、晴子がびっくりして茶わん落とすとか町子が亀田のサイダーを手で振り払って落として割ってしまうとか、物が壊れる描写が続くのが、ちょっと苦手だと気付く。
町子「お母ちゃん、お母ちゃん!」
和代「何?」
町子「ポパイのエサ、まだ、やってへん」
和代「ああ、忘れてた! どないしよう。え~と…」
お手伝いさん「気を付けてください」
和代「あっ…」
写場
イト「せっかくお越しいただいたのにほんまに申し訳ございません!」
鶴子「そうですか。残念やけどしょうないもんねえ。(朝子に)今日ね、あかんねんて。ほな、行こか。どうも。また来ような」
イト「えらいすんませんでした! はあ…」
鶴子はいつもの派手な着物ではなく、朝子もおめかししてお人形みたい。イトは隣の女給だと気付いてないのかな? 気付いてたとしても頭は下げないといけないけど。
花岡寫眞館の前
町子「写真館が潰れたらどないしよう…」とうなだれる。
写真館から出てきた鶴子。「あら、マコちゃん、こんにちは」
町子「こんにちは」
鶴子「ほな、朝子、マコちゃんと遊んどくか? お母ちゃん、仕事行ってくるから」
朝子「うん」
鶴子「うん。ほな、頼むね!」
朝子「マコちゃん、遊ぼ」
町子「あかんねん」
朝子「遊ぼ…。うち、お人形見たい。見せてえなあ!」
町子「それどころやあらへんねん。今日はあかん!」
朝子「何で? なあ何で? 何でやの? 何で何で何で何で?」
町子「あ~、もうしつこいなあ! あかんもんはあかんの! 私、朝子ちゃんとはもう遊びとないねん! 帰って!」
町子はハッとするが、朝子は走っていってしまった。
町子「朝ちゃん!」
夕方になり、まだ店先に座っている町子。カフェローズにも客が来始めていた。
徳永家茶の間
町子「心配で心配で…お父ちゃん帰ってくるまで、ず~っと待ってた。うちの写真館なくなるかも分からへんて、そればっかり頭から離れへんのやもん」
健次郎「そない簡単に潰れるもんやないて子供には分からんからな。お母ちゃんに聞くわけにもいかんし」
町子「『えらいことになってしもた』て一人で気ぃもんでね…。子供てつくづく単純なもんやね」
健次郎「気ぃ付きすぎる子いうのもかわいそうなもんやな。僕なんか家のことち~っとも考えへんかったで。『どないかなるわ』て」
町子「私ね、自分のこと楽天的なんですよ」
健次郎「そうか。お父ちゃんのこと、家のことやから気になったんや」
町子「気になって心配でね…お父ちゃんの顔見るまで家入る気せえへんかった」
時計は午前4時29分。
ミニ予告は町子が「はあ~」と笑顔になってるところ。
座って思い出話を話す。あの時はこうだったけど…となるのが回想方式のいい所。