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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(22)「しゃべる、しゃべる」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

子どものころの思い出を夢中で健次郎(國村隼)に話す町子(藤山直美)。当時、花岡写真館の隣にあったカフェの女給・鶴子(大路恵美)の子ども・朝子(植野瑚子)と仲よくなった町子(山崎奈々)だったが、町子の大切な人形にキスをする不快な行動に、朝子と仲たがいする…。一方、ほかの撮影の予約が入っているなかで、茂(西川忠志)を徳島に出張に出すのを渋る常太郎(岸部一徳)だったが、徳一(城島茂)に説得されて…。

徳永家の茶の間を外から見たアングル

 

時間がたつのも忘れ、子供の頃の話をしている町子。話は写真館の隣の小さなカフェのことに移っていました。

 

町子「そうや。カフェのことでまたもう一つ話、思い出したわ」

 

カフェローズ

 

昭和14年3月

 

おお、回想内でも時が流れてる。

 

町子は自室の窓を開け、カフェローズの女給たちが男性客を送り出すのを見ていた。酔っ払って女給にしつこくからむ客。

 

和代「まあまあ、みんな春やからな、浮かれてはること。おうちで飲んでも外で飲んでも同じお酒やのに、よそは楽しいんかしらねえ」

 

まだ外を見ている町子。「あれが千鳥足ていうんやなあ。あっ、コケはった」

和代「あんまりジロジロ見なさんな」

 

町子「あっ!」

和代「何?」

町子「女の子が!」

和代「カフェで子供がウロウロしてるはずないでしょ。はい。はよ、寝なさいな。おやすみ」

町子「おやすみ」

和代に閉められた窓をもう一度開けるが、そこに人の姿はなかった。

 

写場

茂「なあ、あかんかなあ…」

常太郎「その日は卒業式が重なる日やて知ってんねやろ?」

茂「徳島の港、夜に出たらちゃんと次の日の朝には着くやんか!」

常太郎「何で徳島のお寺さんがわざわざ大阪の写真屋に頼まなあかんのや」

茂「そやから…」

 

徳一「仏像、作りはった人がたまたまコンクールで雑誌に載った茂の写真、見はったんやて。なあ、行かしたろうや」

常太郎「気持ちは分からんことはない」

徳一「分かってるで。その日は予約もぎょうさん入ってるから、ここにはお父ちゃんがいてなあかん。僕は女学校の方、行かなあかんし、小学校は浦田君一人では無理やて」

常太郎「無理やろなあ」

茂「間に合うように帰ってきますから」

 

徳一「毎年決まった仕事もそら大事やけど若いねから面白い経験もさしたらなあ…」

常太郎「面白い?」

徳一「卒業式の写真が面白ないて言うてるんやのうて、新しいこともやっていったらいうことや。先のことも考えたら…」

常太郎「先のことはワシがちゃんと考えてる」

徳一「いずれ茂も独立するこっちゃし自分の仕事の幅、広げる用意もしとかなあかんの違うか?」

 

茂「兄ちゃん、もうええ…」

常太郎「間に合えへんかったら、どないすんね? 毎年頼んでくれはる学校や。浦田一人では現場は無理なんやで」

徳一「間に合うて」

…それにしても徳一のセリフなのに”茂”と書きそうになる。

 

鼻歌を歌う徳一。

和代「タオル、新しいのです」

徳一「ありがとう」テニスラケットの手入れをしている。

和代「今日は試合ですか?」

徳一「うん。神戸のテニスクラブのチームが甲子園まで来んねん。強い相手なんやけどな今日は負ける気がせえへんのや。何や?」

和代「あ…『何や』て。昨日はご機嫌斜めやったのに今日は何や楽しそうやなあ思て」

徳一「いつもと一緒やで。ほんまようお父ちゃん『うん』言うたわ」

 

鼻歌を歌いながらカメラの手入れをする茂。

浦田「♪切ないあたしの この」

月に告ぐ(月光価千金)

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茂も浦田も歌っているのは昨日も歌ってたこれね。

 

浦田「よかったですね、徳島」

茂「兄ちゃん、言うてくれたから」

浦田「コンクールの時の京都のお寺のええ写真でしたよ」

茂「おおきに。浦田君はやっぱり故郷(くに)に帰って写真屋さんを継ぐんか?」

浦田「やってみたいこといろいろあるんですよ」

茂「へえ~、写真で?」

 

浦田「はい。報道写真とか…」

茂「報道写真か」

浦田「はい」

茂「はあ~」

浦田「まあでもあれこれ考えとっても多分、そのうち…」

 

浦田が手に取ったのは軍服を着た男の写真。

茂「それ言うたら僕かて同じや。これのぞいてる間は考えとないなあ」

浦田「ですね」

 

町子「♪熊本さ 熊本どこさ せんばさ せんば山には 狸がおってさ」

まりをつきながら家の前を歩いていると、目の前に女の子。

 

鶴子「朝子! 朝子、飛び出したらあかんでしょ! ここはすぐ表通りなんやから。まりつきすんのやったら裏でし! なっ」

鶴子が町子に気付く。「やあ、お隣の…。こんにちは」

町子「こんにちは」

 

鶴子「お嬢ちゃん、年なんぼ? 名前は?」

町子「10歳です。花岡町子」

鶴子「町子ちゃんか~。朝子より2つお姉ちゃんやわ。ほら、挨拶し」

 

鶴子は大路恵美さん。「あぐり」では淳之介の初恋相手。

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朝子「こんにちは」

町子「こんにちは」

鶴子「あのね、私ら最近、2筋ほど向こうに越してきたとこで、この子、友達がいてへんのよ。ねえ、マコちゃん、よかったら一緒に遊んだげてくれへんかなあ」

町子「え?」

 

鶴子「あっ、私、ここで仕事してんの」

町子「ああ…」

鶴子「そや、これあげよ。舶来品。いっぺんしか使てへんから」口紅を渡す。

町子「こんなんもろたら…」

鶴子「べっぴんさんからよう似合うわ。うん。暗くなったら家に帰るんやで。こないだみたいにここに来たらあかんよ」

朝子「分かった」

鶴子「うん。うん、ほな」

 

朝子「マコちゃん、何して遊ぶ?」

町子「え?」

 

ポパイの小屋の前

町子・朝子「♪あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ せんばさ」2人でまりつき。

町子「上手やなあ、朝ちゃん」

朝子「すぐできるで」

 

花岡家

和代「お姉ちゃんは?」

孝子「表で知らん子と遊んでる」

和代「知らん子?」

 

夕食

浦田「たけのこ頂きます!」

徳一「バアバアばあちゃんは?」

イト「文代と昌江連れてお芝居や」

徳一「ハハハハ、元気やなあ。おなごの好きなもんは『芋 たこ なんきん 芝居』て言うもんな」

 

茂「ごちそうさんでした」

イト「何やもうええのかいな?」

茂「ちょっとやりかけの仕事が」

イト「へえ。春やよってか、えらい張り切ってますな」

常太郎うなずく。

 

和代「町子、新しいお友達できたんやて?」

町子「うん。朝子ちゃんいうねん。お母さん、隣のローズで働いてはる」

和代「そう」

イト「カフェの?」

町子「まりつきしただけ」

イト「そうか。カフェの…」

 

カフェローズ前

鶴子「ねえねえ、ねえねえ、お願い。ええでしょ?」

客「まあ、そんな高いもんやないし、ええか」

鶴子「ほんまに!? いや~、うれしい! 約束やで、もう」

客「あっ!」

鶴子、客のほっぺにキス。「いや、口紅ついてしもた。奥さんに怒られてしまうわ~」

 

町子は慌てて窓を閉める。しかし、鶴子からもらった口紅が気になり、鏡を見ながらつけようとした。

孝子「お姉ちゃん!」

口紅を隠す町子。

孝子「コリントゲームしよう」

町子「後でな」

孝子「何、隠した?」

町子「何でもあらへん」

 

孝子「うそ! 隠した!」

町子「隠してない」

孝子「隠した!」

町子「隠してない!」

 

孝子「うそ!」

町子「コリントゲームしときってば!」

孝子「うそや!」

 

花岡家の裏玄関

町子「♪またも負けたか八連隊 それでは勲章 くれんたい」

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和代「町子」

町子「はい」

和代「おいしいカステラがあるさかい、一緒にお上がり」

町子「カステラやて! 朝ちゃん、行こう!」

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マー姉ちゃん」では桐の箱に入った大きなカステラを菊池寛先生から頂いた。昭和17年くらいからな。すぐはるさんが切り分けてご近所に配りました。

 

和代「どう、おいしい?」

徳一「お客さんか。いらっしゃい」

和代「カステラ食べはる?」

徳一「うん」

 

町子「お父ちゃん、写真屋さんやねん」

朝子「一緒のおうちに住んでんの?」

町子「え?」

 

和代「町子。朝子ちゃんにお部屋のお人形さん見せてあげたら?」

朝子「お人形さん? 見たい!」

町子「行こう!」

部屋を出ていく町子と朝子。

 

徳一「あの子か? ローズの女給さんの子て」

和代「お父さん、いてはらへんみたいやね。女手一つで大変やわ。お給金ええんかしらね?」

徳一「女給さんは無給や」

和代「えっ?」

徳一「お客さんのくれはるチップが収入源なんや」

 

和代「ほな、お客さんあれへんかったら、お給金もあらへんのですか?」

徳一「うん、そういうこっちゃな…」

和代「はあ…私には無理やわ」

徳一「ハハハ。何を考えてんのかと思たら」

和代「ハハハ、嫌やわ。今さらできへんのに」

 

イトがせき払いをしてダイニングに入ってきた。「今、そこで会うたけど、あの子か? 隣の女給さんの子て」

和代「はい、そうです」

イト「ふん…」部屋を出ていく。

 

徳一「ええやないか。子供同士なんやからしょうもないこと気にせんかて」

和代もうなずく。

 

町子の部屋

朝子「たくさんあってええなあ」

町子「着物はお母ちゃんが縫うてくれたんやで」

朝子「これ、かわいらしいなあ。うちも欲しいなあ」

町子「あんまりきつうしたら壊れるやん」

 

朝子「なあ、マコちゃん。キッスてどないするか知ってる?」

町子「え?」

朝子「うち、知ってるで。教えたろか。こないすんねんで」と持っていたお人形にキスをする。「なあ、ほら、見て、こう」何度もキスをする朝子に、客にキスする鶴子の姿を重ねる町子。何度も何度も人形に口をつける朝子。

 

町子「やめて! あかん! そんなことせんといて! そんなことするんやったら、もう人形貸せん!」

朝子「ごめん…堪忍」と言って泣きだしてしまった。

 

和代「町子、どないしたん? 泣いてはるやないの」

町子「何でもあらへん。なあ、朝ちゃん。なっ、もう泣かんとトランプしよう」

和代「どないしたん?」

町子が差し出したトランプを振り払って出ていった。

和代「朝子ちゃん!」

 

外に出た町子はポパイの小屋のそばの草むらに何かを捨てた。そのすぐ後に家を出てきたイトは町子が捨てた口紅を拾う。

 

空き地

子供たち「インジャン ホイ!」

「みんな隠れろ!」

町子「1つ2つ3つ4つ5つ6つ7…」

目隠しをしてカウントしながら指の隙間から覗き見ていると、朝子が立っているのが見えた。町子はもう一度ギュッと目隠しをしてカウントを続けた。「7つ8つ9つ10!」

 

徳永家茶の間

町子「何であんなかわいそうなことしてしもたんやろ」

健次郎「子供っちゅうのは時々残酷なことするもんや」

町子「私、朝子ちゃんが人形にしたこと、お母ちゃんには言わんかった。口紅のこともよう言わんかった」

健次郎「うん」

町子「今やったら言葉でちゃんと説明できることやけど、できへんかったんやね、子供ん時は」

 

喜八郎「え…さっきまで笑てたと思たら。オシッコ」

 

町子「かわいそうなことしてしもたな…」

 

遠い日の後悔が町子の胸をざわつかせていました。

 

時計は午前2時57分!

 

ミニ予告は泣いてる町子。「あんなことしやるからや…」

 

まあ、人形にあんなことされたら嫌かも…。しかし、カフェの女給がチップ代だけが報酬とは知らなかったな。