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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(16)「かぜひき」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

風邪で寝込んだ健次郎(國村隼)と義母・イシ(岩本多代)や子どもたちの食事を作る町子(藤山直美)。健次郎の妹・晴子(田畑智子)が温泉旅行に出かけていて、家族の看病のほか、家事まで引き受ける。結局この日、町子は徳永家に泊まり込むことになり、子どもたちは大はしゃぎ。翌日、晴子が戻ってくるが、松葉づえをついている。温泉旅行でケガをしたという。思いがけず、もう一晩泊まることになる町子であった。

徳永家の台所

料理をする町子と冷蔵庫を見ている喜八郎。

 

風邪で寝込んだ健次郎や子供たちの食事を作っている町子です。

 

喜八郎「すまんね、町子さん」

町子「え? いえ」

喜八郎「道具の場所やらどこにあるや分かりまへんやろ?」

町子「ええ…」

 

喜八郎「何や、これ、もう散らかしたままで、もう」

町子「あっ、それ、お鍋、今、出したとこなんです! 私が出したとこなんです!」

喜八郎「え? あ~、そうですか」

町子「私が…はい。あの先に病人さんたちのオカイさん作りまして、それから、あの皆さんのごはんをこしらえさせていただきますのでね」

 

喜八郎「あ~、さよか、さよか。おおきに、おおきに。さあ、これこれこれ…」

フライパンを持って町子に近づいてくる。

町子「このフライパンは何にも使わない。何にも使わないんです、今。使わないんです」

喜八郎「あの、健次郎はな、昔からすぐ風邪ひきよりまんねんな。医者になっても、ちょっとも変わらん。アホでんな」

町子「いや~、そんな…」

喜八郎「ハハハハ!」

 

登・隆「うわ~!」

喜八郎「あ~、これこれこれ、ここでほたえたらあかん! これ!」

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兵庫というか関西の方言らしい。

 

登「おばちゃん、ここで一緒に食べんの?」

町子「うん」

登「やった~!」

 

町子が振り向くと、喜八郎が流しで何かしていた。

町子「あっ、ちょっと、それ、今、私がとっただし汁です! それ!」

喜八郎「え!?」ボウルを傾けて中身を流していた。

町子「とっただし…あ~、手を動かした…いや! だし汁、とったとこやのに! あ~、私が…だし…。ああああ…」

 

健次郎の部屋

健次郎は布団から起き上がっている。

町子「熱いから気ぃ付けてね」

健次郎「あ…うん」

町子「はい、どうぞ」

健次郎「はい。晴子もこんな時に温泉やて、ほんまに」

町子「もっとはよ電話くれたらよかったのに」

 

おかゆを口にする。

健次郎「アツッ!」

町子「そやから、ゆっくり食べてって」

 

清志が亜紀を連れてきた。「お父ちゃん、亜紀の頭、熱いで」

健次郎「え? お前にもうつってもうたんか」

亜紀「うん」

町子「そらそら早う布団敷かんと。はい!」

健次郎に湯飲みを手渡す。「あ~、アツ、アツ、アツ…! アツッ!」

 

夜、徳永醫院

町子は受付の棚から薬を探す。「え~と、せき止めの薬でしょ。せき止め…」

 

結局、この日、町子は徳永家に泊まりこむことになったのでした。

 

健次郎の隣に亜紀も寝かされている。おでこに氷嚢、頭には氷枕。

 

町子は台所で氷を砕いていた。

 

由利子の部屋に町子が入っていく。

町子「どない?」

由利子「しんどい」

町子は氷枕を交換する。「まだ熱があるから…。朝になったらマシになるわ。ゆっくり寝てなさい」

 

由利子「おばちゃん」

町子「はい?」

由利子「あのな…」

町子「何?」

しばらく間があって…

由利子「おやすみ」

 

翌朝、リビングのテーブルで原稿を書きながら寝ている町子。登と隆がのぞき込み、隆が笑い、登がシーッ! 

 

2人は、ふくらませた紙袋を持っていた。「せ~の!」町子の頭の近くで紙袋を破裂させる。

町子「うわっ!」

2人「やった~!」

町子「何? ちょっと! どないしたん? ちょっと、これ! どこ、ここ…。ああ、そうか…」大あくび。

 

清志「おなかすいた」

町子「おなかすいた? ほな、朝ごはんにしよか。なっ。よいしょ」

 

朝食後、食器を片づけている町子。

健次郎「あ~…。ああ…」

町子「あ、おはようさん」

健次郎「おはよう。よう寝たわ」

町子「のぞいたら健次郎さん、よう寝てはったもん。それから、お母さんとね、由利子ちゃんにはオカイさん持っていっときました」

 

健次郎「あっ、ありがとう」

町子「亜紀ちゃんは熱の具合、どない?」

健次郎「あ~、もう下がった。僕も下がった」

町子「あ~、それはよかった」

健次郎「ゆうべ、どこで寝たん?」

 

町子「あ~、ここで」

健次郎「ここ?」

町子「仕事してる間に」

 

健次郎の朝食も終わり…「はい、ごっつぉさんでした」

町子「はい」お茶を出す。

健次郎「あ~、ありがとう」

町子、笑う。

健次郎「何?」

 

町子「昨日のおとなしい健次郎さん、かわいらしかったあ」

健次郎「『かわいらしい』て何やねんな。『色っぽい』て言うてほしいな。昔から言うやろ? 『目病み女に風邪ひき男』」大きなくしゃみ。

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町子「鼻水垂らしといて色気ですか?」

健次郎「『水も滴るええ男』や」

町子「それは意味が違うと思うけどね。明日からお仕事始められるんです?」

健次郎「あ~、そら、そうやな。病気の人、行くとこあらへんがな」

町子「よう言うわ。人には『休め、休め』言うといて」

 

健次郎「そらあんた、こっちはたちまち相手が困る仕事やがな」

町子「こっちも相手が困る仕事やもん。待ってくれてる人もいてるし」

健次郎「小説読まんでも死にはせんやろ」

町子「心が死にます」

健次郎「そんな大層な…」せき込む。

 

町子「風邪で弱ってるから、今日はこのぐらいにしといてあげよか」

健次郎「あっ、おやじは?」

町子「ねえ、お父さんてマメな人やねえ」

健次郎「おやじ、昔からな、要所要所でおふくろに優しいことしよんねん。ふだんほったらかしのくせにな」

町子「そら、モテる男はんやわ」

イシの枕元で慣れた手つきでリンゴをむく喜八郎。その息子が昭一。そら、モテるわ。あ、健次郎もかな。

 

健次郎「もうちょっと寝るわ」

町子「うん」

健次郎「よいしょ。あっ、そや、晴子、夕方には帰ってくるから、もうこっちは大丈夫やで。あんた、仕事あんのやろ?」

町子「ええ、まあ」

 

健次郎「おってくれたら、うれしいけど…」立ち去ろうとしながらボソッ。

町子「え?」

健次郎「え? いや、何でもないよ」立ち去る。

町子「ちゃんと聞こえてたも~んや」

かわいい! 昨日のミニ予告はここかな?

 

由利子は布団にうつぶせになって本を読んでいたが、町子が部屋に入ってくると慌てて隠した。

町子「由利子ちゃん。どない? もうしんどない?」

由利子「大丈夫」

町子「これ、替えとくね」水差しの交換。

 

由利子「おばちゃん」

町子「はい?」

由利子「(布団から体を起こして)おばちゃん、あのな」

町子「うん」

 

由利子「こないだから言お思ててんけど…」

町子「うん。言いたいことがあるんやったら何でも言いなさい」

由利子「あのな…私、読んでん、お母ちゃんの本」

町子「!」

由利子「読んだことなかってん。初めてやってん」

町子「そう…面白かったでしょ?」

由利子、うなずく。

 

町子「本の話は元気になってからゆっくりしようね」部屋を出ようとするが…

由利子「ちゃうねん」

町子「え?」

由利子「それでな…」

町子の篤田川賞受賞作品「花草子」を見せた。

 

第五十回 篤田川賞受賞 

陽気な大阪弁が紡ぎだす恋愛ニヒリズム

 

町子「それ…」

由利子「おばちゃんの本も読んでん。面白かった! 難しいて分からへんとこもいっぱいあったけどな最後まで読んでん。それだけ」

布団をかぶった由利子を布団越しになでなでする町子。いいなあ。

 

夕方

徳永家台所

登「おばちゃん、トランプしよう」

町子「もうちょっと待ってね~」

隆「見て! ウルトラマン、出来た!」

登「こんな色、ちゃうわ!」

隆「ほな、兄ちゃん描いてみてみ!」

 

町子「♪『来たぞ われらのウルトラマン』や」

台所で作業していた町子が「!!!」

町子「何してくれてんのよ!?」落書きしていた紙を取り上げる。「これはおばちゃんの大切なお仕事の紙なんです。そやからこっち側。これに描いてちょうだい、これに。これに。分かりました?」

登・隆「は~い!」

 

町子「そやけど上手に描いてあるやん。ウルトラマン? あ~、ほんでこっちがオバQか~」

隆「それ、おばちゃん!」

町子「えっ? これ、おばちゃん?」

登「由利子姉ちゃんらのごはん、作ってんの?」

町子「そうや」

隆「今日も一緒に食べていくねやろ?」

 

町子「今日はね、晴子さんが帰ってきはったら、おばちゃんは帰るの」

登・隆「え~!」

隆「嫌や!」

登「何で?」

町子「『嫌や』て…」

 

清志「うわっ! どないしたん!?」

 

玄関に晴子がいた。

町子「晴子さん、どないしたんです?」

清志「温泉でこけてんて」

左足に包帯。

町子「折れたんですか?」

晴子「足首、ヒビ入って…」

町子「わ~…」

 

リビング

晴子「私はお湯につかってたのに、せっけんが向こうてきてん」

健次郎「…んなアホな、お前!」

喜八郎「内科が風邪ひきで外科医が骨折りか」

晴子「折れてません」

 

亜紀が起きてきた。

健次郎「どないした? 亜紀。オシッコか?」

亜紀「(首を横に振り)ジュース!」

町子「ちょっと待っててね」

 

晴子「お母ちゃん、まだ寝てんの? イタタ…アイタタタ…」立ち上がろうとする。

健次郎「どこ行くねんな?」

晴子「お手洗い」

健次郎「おい、清志。ちょっと」

晴子「ごめんな。よいしょ…。ありがとう」

健次郎「病人だらけやな」

 

町子「はい。今度はリンゴすってあげましょね」

亜紀「うん!」

キラキラした目で町子を見る亜紀。町子も優しい表情…を見ていた登。

町子「うん…」

登「お父ちゃん、僕もなんかしんどい」

町子「え?」

 

町子が登の肩に手を置き、廊下を歩く。

晴子「うわっ!」

町子「晴子さん?」

 

トイレ前に行った町子と登。

町子「晴子さん?」

健次郎「どないしたんや?」

 

トイレで後ろ向きに倒れている晴子。「イテテ…」

健次郎「晴子?」

晴子「イテテ…」

町子「中でひっくり返ったんやわ。あの足やもん」

健次郎「おい。(ドアに手をかける)あっ、開かへん。起き上がれるか?」

 

晴子「え…。い~…」

健次郎「ああ…。しゃがんだまま後ろに倒れて段差にはまっとんな」

町子「救急車呼びましょうか?」

健次郎「そんな大層な」

町子「消防車呼びましょうか? ね?」

健次郎「あんた、何がしたいねん。おい! なんとか鍵に手ぇ届かへんか?」

 

晴子「え…あ…もうちょっとでなんとか…」

健次郎「ああ、鍵さえ開いたら」

町子「頑張って!」

喜八郎「気張れ!」

 

晴子「あっ、届いた! あっ、開いた~」懐かしい鍵。

健次郎「よっしゃ!」

晴子「あかん!」

健次郎「何で?」

晴子「鍵開いたけど、戸開けたらあかん」

健次郎「何やそれ? どっちやねん?」

 

町子「当たり前やないの」

健次郎「ああ…そうか。ほな、一人で起き上がれるか?」

晴子「あ…。う~ん…あ…。あ…イテッ。あかん、あかん、あかん…」

町子「無理みたい」

健次郎「ほな、開けるで」

 

晴子「嫌や!」

健次郎「一生そこにおんのか?」

晴子「それも嫌や」

健次郎「ほな、しゃあないやろ」

晴子「もう…もう男子、向こう、みんな行って!」

健次郎「分かった。ほな、町子に開けてもらうから。ほかはみんな向こう行くからな。行こう。さあ、行こう」健次郎、喜八郎、登は廊下を歩いていく。

町子「晴子さん、開けますよ」

 

夜、徳永醫院。

診察室にいる晴子。背後には自分の足のレントゲン? 

 

徳永家茶の間

町子「私…もう一晩泊まりますわ」

健次郎「え? ええんか?」

町子「大変やん。晴子さんもあんなんやし…」

健次郎「うん、そら助かるわ。あいつ、ごはん食べたか?」

町子「食べたないって。二次災害のショックやと思う」

 

健次郎「ほっといたらええ」

町子「うん…」

 

思いがけない出来事でもう一晩、泊まることになった町子でした。

 

ミニ予告 町子の背後に健次郎。台所かな?

 

当時、朝ドラ視聴の習慣をなくしていた時期だったけど、当時見ても面白かったと思う。私は「あぐり」も「マー姉ちゃん」も楽しく見ましたが、元々、演技未経験の新人俳優よりは安定している人の方が好み。正直言うと、「澪つくし」みたいな相手役まで新人というのはちょっとね…。