公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
日本の敗戦という経験したことない事態に市民は混乱に陥った。翌日、マリ子(熊谷真実)の周りでは、博多湾から敵が押し寄せてくるというデマが飛び交う。トミ子(村田みゆき)や仙造(福田信昭)、牛尾(三国一朗)たちが一緒に逃げようと説得するが、注意深いはる(藤田弓子)は頑として動かない。逃げ出して誰もいなくなった町で、畑仕事に精を出したマリ子たちは大量の野菜を収穫する。そこへ、片言の日本語が聞こえて…。
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昭和20年8月15日の正午。日本はそれまでの歴史を変えましたが、一夜明けて飛び交ったデマは大変なものでした。
トミ子の夫・仙造がリヤカーを引っ張り、トミ子が磯野家を訪ねてきた。磯野家の茶の間。
トミ子「ほんなことですよ! デマではなかとです!」
はる「でも、博多湾から敵が押し寄せてくるなんて」
軍平「いや~、私もですな、とりあえず今朝、役所へ行きましたばってん、町ん中、大騒ぎでそこでこうして引き返してきましたですたい」
加津子「はい。攻めてくると陸軍が迎え撃つらしかです」
トミ子「さあ、マリ子さんもおば様と早う支度ばして逃げんと。博多は戦場になるとですよ!」
はる「まさか。戦争はもう終わったと天皇様がラジオでご放送あそばしたではありませんか」
軍平「ばってん、やつら勝ち戦ですけん。かさにかかっとりますけんな!」
はる「信じられませんわね。一度終わった戦争をまた始めようなんてバカがどこにいるんでしょう」
加津子「し~! そげんことが誰かの耳に入ったらどげんすっとですか!?」
はる「誰かって誰ですか?」
軍平「アメリカたい」
はる「まさか」
仙造が庭先に顔を見せた。
仙造「トミ子!」
トミ子「ああ、お父ちゃん! 今、一生懸命説明ばしとるんやけど」
はる「まあ、先日は失礼いたしました。さあ、どうぞ、お上がりあそばして」
仙造「いえ…そげん悠長なことば言うとる場合やなかけん! お誘いに寄ったとです。子供も表に待たせとりますけん。さあ、マリ子さん、ヨウ子さんの支度ばしてつかあっせ」
マリ子「あ、はい…」
仙造「大丈夫。唐津へ行く途中の山の中に知り合いの炭焼きがおるとです。今度は私の恩返しの番たい。ヨウ子さんは私が力の限り、リヤカーば引いてお連れしますけん」
はる「でも…」
千代「奥様、この際、ヨウ子お嬢ちゃまだけでもお願いしたら…」
軍平「何ば言っとるとね。こん家はおなごばかりじゃなかか!」
はる「ええ、それは」
軍平「何せやつらはまず狙うてくるのは、おなごですたいね!」
はる「でも陸軍が迎え撃つんではなかったんですか?」
仙造「いや、そんことでもう城の連隊から逃げ出し始めとる兵隊が何ぼでもおるっちゅうもっぱらの話ですたい」
はる「まさか」
軍平「いや、やつらはですな、まず博多に上陸ばしますと、この何里四方かば占領して、そん中のおなご、占領地域のおなごはみんな手込めにするとですよ!」
千代「そげんことになったら、うちは舌かみ切って死んでやるばい!」
はる「お千代」
仙造「しかし、はよ逃げんと!」
軍平「そんことばかりじゃありまっしぇん! やつらまた日本の男にはですな男のしるしばねじ切って子供ができんようにして我が民族、根絶やしをすると言うとるとですよ!」
トミ子「そやけん、ねっ、マリ子さん、おば様!」
はる「分かりました。それではどうぞお先に出発してください」
仙造「いや、奥さん!」
はる「本当に…もし本当にそんなことになったら大変ですから、私たち家族でよう話し合います」
トミ子「そげんことばしとる場合じゃなかでっしょうが! もう博多は在(ざい)の方へ逃げ出す人たちでごった返しとっとですよ!」
仙造「若か娘は髪ば短う切って男んごと見えるごとせいっち言うとったと聞かっしゃらんだったですか?」
はる「さあ、一向に。ねえ」
娘たちははるの言葉にうなずく。
軍平「ああ~、はがいかね~。ああ…戸田さん、こうなったらあんた、とにかくもう連れ出して道でよう言い聞かせてつかあっせ」
仙造「はい、それはもう」
はる「いえ、さあ、どうぞお先にいらしてください」
トミ子「おば様!」
はる「私たちなら大丈夫です。身を寄せる当てもございますし、お子たちが心配していらっしゃいますよ。それに私たちは支度もございますので。ねっ、マリ子」
マリ子「そうよ、そうしてちょうだい。教えていただけただけでもありがたいわ」
千代「うちもついとりますけん。あの、無事に逃げさせますから、どうぞお子さんたちのためにもお先に」
マリ子「是非そうしてください。お願いします」
仙造「いや、しかし…のう?」
マリ子「でも大砲の音も聞こえないし、飛行機の音だって…」
軍平「そういえばそうたいね」
トミ子「そんなら、必ず逃げてつかあっせ」
はる「大丈夫ですよ。さあ、お子たちが心配していらっしゃいますよ」
仙造、トミ子は渋々納得して席を立つ。
軍平「そんなら、わしらも荷物ばまとめに」
はる「はい」
昨夜、あかあかと電灯をともして終戦を喜んだ磯野家でしたが、誰もが経験したことのない敗戦で、しかも無条件降伏だったと知るや市民はたちまち大混乱に陥り、再び灯火管制令が敷かれました。
真っ暗な家々と見回りの男たちが外を歩いていた。警防団長?
また覆いがされた明かりの下で夕食をとる磯野家。
千代「ほんなこつ大丈夫でしょうかね?」
はる「何がです?」
千代「何がって物音一つ聞こえんじゃなかですか」
はる「そうね。皆さん、夕方までにはバタバタと疎開していってしまわれたようだし」
マチ子「でも、お隣のおじいちゃまとおじ様は残っていらっしゃるわ」
千代「お気の毒に。男のこけんに関わるとおっしゃって」
マリ子「男のこけん?」
千代「はい。うちのこのおなご衆が残っとるのに自分たちだけが逃げ出すわけにはいかんと、さっきそうご隠居様が言いござったですよ」
はる「まあ。私たちは私たちの方針で行くのに、そんなお気兼ねなどなさらなくてもよろしいのにね」
マチ子「でも本当に大丈夫なのかしら?」
はる「まあ、マチ子までが何でしょう。そのために辞表を出した新聞社へのこのこ顔を出しに行ったんでしょう?」
マチ子「でもそれはつまり、本当の情報を知りに」
はる「『デマに迷うな』。そういうふうに市の説得派の人たちが駅で叫んどったんでしょう?」
マチ子「はい」
はる「だったら何にも迷うことはありませんよ」
マリ子「いえ、マチ子はまさかの折にヨウ子だけでもって言ってるんです」
ヨウ子「いいえ、私ならみんなと一緒よ。みんなが逃げるなら一緒に逃げるし、みんながとどまるなら私だって」
はる「そうですよ。それが一番いいのです」
千代「ばってん…」
はる「それに第一、逃げると言うても私たちには行く所なんかないじゃありませんか」
千代「いや、うちの実家があります!」
はる「お千代、『謀をするなら汝らにあれど決むるは神にあり』と御言葉もあるのよ。ですからどんな所へ逃げても駄目なものは駄目なの。誇りを持って慎重に。西部日本の編集長さんもそうおっしゃったんでしょう? だからジタバタと慌てるのはやめましょう」
マチ子「でも…」
はる「いいえ。それでももし心配だったら女学校の時の歴史の本をもう一度読み返してごらんなさい。どこにその国の民族を根絶やしにするような戦争がありましたか?」
マチ子「でも、インカ帝国は…」
はる「時代が違うのよ。国際赤十字というものだってあるんだし、そんな野蛮なことを世界の文明人が許すわけがありません」
マチ子「はい…」
はる「いいですね? こういう時だからこそ神の御心のままにと祈っておればいいんですよ。分かりましたね?」
マリ子「はい、お母様のおっしゃるとおりにいたします」
はる「結構ですね」
台所で片付けをしているマリ子たち
マリ子「とは言うもののお千代ねえやは別よ」
千代「うちだけ別ってどういうことですか?」
マチ子「お母様がおっしゃる以上、私たちは動くわけにはいかないけど…」
千代「それならうちも一緒たい」
マリ子「でも、お千代ねえやにはお里があることなんだし…」
千代「死ぬも生きるもお嬢様方と一緒です。もしアメ公が来たら命懸けでこのお千代ねえやがお守りしますけんね」
マリ子「お千代ねえや…」
千代「いやいや残っとるのとは違うとですよ。もしかしたらここの奥様がおっしゃるとおり、ここにいるのが一番かなとそう思うとるとです。昔から何でんかんでん分かち合うて、ここの奥様ほど神様ば信じていらっしゃる方、おらんとですよ」
マチ子「うん」
千代「たとえ天と地がひっくり返っても、もし神様という方がおらっしゃるとなら、ここの奥様だけは助けてくださるような気がして、それならばおそばにいた方が…」
マチ子「私たちも助かる率が多いってわけよね」
マリ子「マチ子ったら!」2人で笑う。
マチ子「でもみんな考えてることって同じね」
千代「あら、マチ子お嬢様も?」
マチ子「多分、マー姉ちゃんもそうだと思うのよ」
マリ子「ばれたか」
マチ子「そうよ。すぐに『お母様のおっしゃるとおりにします』なんてもっともらしいこと言ってたけど」
マリ子「嫌ね~」みんなで笑う。
マチ子「し~! 灯火管制中よ」
マリ子「バカね。漏らしちゃいけないのは光だけで誰も息まで止めろなんて言われてないわよ」
マチ子「そうか、そうよね!」
千代「そうですとも。煮るなと焼くなと御心のままにと神様の前に投げ出してしもうたとですから気ぃは軽かもんですよ」
マチ子「本当だ!」
マリ子「本当、本当!」
たとえどんな時でも度胸を決めてしまった人間ほど強いものはありません。
翌朝、はるは玄関前を掃き掃除し、マリ子、マチ子、千代は畑へ。
一平「おはようはよかけん、その格好へどこへ?」
千代「畑へ行ってまいります」
一平「アメリカが来たらどげんすっとね?」
千代「そん時はくわでぶちのめしてやりますたい!」
マチ子「それでもかなわない時にはいちもくさんにお母様の所へ逃げていきますから」
一平「大丈夫かな~?」
マリ子「大丈夫です、おじいちゃま」
一平「ばってん…」
マリ子「戦争があっても終わっても人間、食べていかなくちゃなりませんでしょう。だったら畑を相手に食料戦争をしてきます! それでは!」
マリ子たちが去って行くのを見送った一平「みんな逃げてしもうて、この町には、おなごん衆の影も見えんっちゅうのに…。ほんなこつ…」
夏の日差しの中、野菜を収穫するマリ子たち。
マリ子「本日の戦果は大本営発表でも掛値なしの大戦果ね」
しかし、5人家族でも食べ切れないほどの野菜。はるが分かち合いに出かけても町の人は誰もおらず、もらってくれる人もいない。
千代「それだったら、こんお千代ねえやにお任せつかあっせ」
マリ子「名案があるの?」
千代「はい。トマトはこれは煮て、キュウリは塩漬けにしたら冬までもちます」
マリ子「さすがお千代ねえや、頭がいいわ」
千代「いいえ、頭がいいんじゃなくて所帯持ちがいいとおっしゃってつかあっせ」
晴耕雨読と言えばかっこいいのですが、デマに惑わされた人々が逃げ出したこの町ではほかにすることがなく原始人に戻ったかのように畑と取り組む数日が過ぎた頃でした。
磯野家の縁側。
はる「はあ…これだけの食べ物をただ腐らせてしまうなんてもったいないことね」
千代「一年中、毎日食べても有り余るほどの漬物は出来てしもうたとですね」
はる「本当にもったいないこと」
マリ子「かといってもらってくださる方は誰もいないし」
千代「何ばしよるとですかね、アメリカは」
マチ子「何ばって?」
千代「上陸どころか姿も見えんじゃなかですか」
マリ子「やっぱりデマよ。早くみんな帰ってくればいいのに」
マチ子「そうよ。米軍なんか来たらば来た時のこと。びくつくことなんかなかったのよ」
しかし「ゴメンクダサイ」という片言の日本語が聞こえ、みんなビビる。
「コンニチハ、コンニチハ」
千代「アメリカですよ、あげな言葉使うとは」
意を決してマチ子が玄関へ。
玄関にいたのはオネスト神父だった。マチ子ははるを呼ぶ。
オネスト「また、会えましたね。皆さん」
はる「神父様…! オネスト様!」
手を取り合うはるとオネスト。不信感いっぱいの千代。
昭和20年8月15日を描いた他の朝ドラの次の回はどうだったろうと確認してみると、「おしん」の場合は217回が8月15日、竜三がいなくなったのでその顛末が描かれ、220回が8月の末でした。「澪つくし」は翌日の回で昭和21年2月にとんでて、「あぐり」も終戦が土曜日回、翌週月曜日は終戦から1年後に飛んでました。
今日から「純ちゃんの応援歌」も再開だ~!と思ったのに、国会中継でガッカリ。この枠だけは本当にどうにかしてほしい。NHKプラスでの配信はありがたいので、NHK総合での再放送枠は、このまま存在してほしいけどせめて時間帯を変えてほしい。
私は朝4時半~の30分でやって欲しいなと前から思ってるけど賛同者は少ないだろう。以前は朝のニュースは4時半からやってたけど、ここ数年で朝のニュースは5時からになった。4時代は再放送枠なんだから、ドラマやったっていいじゃんね。録画や配信で見ることができる世の中なんだから。