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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (99)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

ウメたちの安否不明のまま迎えた梅雨。腰を痛めた一平(益田喜頓)に代わり、マリ子(熊谷真実)とマチ子(田中裕子)は畑で大量の野菜を収穫する。教会へ持っていく道中、はる(藤田弓子)は野菜で心も元気になったヨウ子(早川里美)について、かつて消極的だったが、病気によって成長したとマチ子に話す。その夜、福岡はB29の大軍隊により反復攻撃を受ける。防空壕で身を寄せ合う中、磯野家に焼夷弾が落ちたと聞き…。

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本当に便りのないのは無事な証拠なのでしょうか。ウメや大造の消息が分からないままに6月の梅雨の間のある晴れた日でした。

 

マリ子とマチ子は歌を歌いながらかごに入れた野菜を担いで帰ってくると、軍平に声をかけられた。

マチ子「おじいちゃまのお腰の痛みいかがですか?」

軍平「いや~、なんぼ張り切っとっても年ですたい。今朝も一緒に畑へ行くとくわ持ったとですが怒るがごとしてやめさせましたばい」

マリ子「それを伺ったものですから私たちがおじいちゃまの畑をお手入れしてきました」

軍平「いや、それはそれは」

 

マチ子「見てください、今朝の戦果をほら!」

軍平「いや~、これはお見事な…」

マリ子「あとで持って上がりますから」

軍平「あ~、それはどうもどうも」

軍平さんは出勤して行った。たしか役所勤めだったはず。peachredrum.hateblo.jp

はあ~、5話の段階で天海さん出てたか。天海朝男は数回出ていなくなってまた登場しての繰り返しだもんね。

 

野菜のアップ。青いトマトが目立つ。

 

いや~、全くお見事な戦利品です!

 

はる「まあ、雨で2~3日、畑に出られないと思ったら見事に育ったことね」

マリ子「もぎたてですもの。これがお魚だったらピンピンと跳ねてることでしょうね。だからヨウ子ちゃん、トマトでもナスでもたくさんせっせと食べてちょうだいね」

ヨウ子「はい!」

 

マチ子が出社の準備をするというと、はるはお隣のおじいちゃまの所に野菜を届けるように言う。それならマリ子が届けるというと、はる「それじゃあね、私はこれを教会の皆様にお届けしますからね。マチ子、一緒に行きましょうか」。

 

マチ子「えっ? あ…どういうことですか?」

はる「つまりね、リュックサックを2つで運べばそれだけ多く運べるでしょう。だからね」

マチ子「やっぱり…」

ヨウ子「頑張れ、頑張れ、マッちゃん姉ちゃま」

 

マチ子「よ~し、それじゃあ私たちが留守の間、マー姉ちゃん、ヨウ子をお願いね。もしも警報が鳴ったらば…」

マリ子「大丈夫。近頃では私の方がヨウ子ちゃんに追い立てられて防空壕に入るくらいなんですもの」

ヨウ子「それもみんな生きのいいお野菜のおかげです」

はる「そうですよ。そのように感謝する気持ちを忘れてはいけませんよ」

 

マチ子「あ~、分かった分かった」

はる「『分かった分かった』って一体何が分かったの?」

マチ子「えっ? いや、つまり、その…」

マリ子「だから出社に遅れてはいけませんから教会にお持ちするお野菜をより分けなさいっていうことね、マチ子」

マチ子「そう、そういうことです!」

 

はる「そうね、それじゃあなるべく身が入ってて形のいいもんにしましょうね。町場の方にお分けするのなら実質的に喜んでいただけた方がうれしいものね」

マチ子「本当にお母様のおっしゃるとおりでございます」

はる「だったら早くリュックサックを2つ持っていらっしゃいな」

マチ子「ほら、図に乗るとすぐこういうふうに追い打ちかけるんだから」

はる「えっ? 何ですか?」

マリ子「アハハッ、別に…」

kawanishikaban.com

リュックサックはドイツ語なので敵性語ではない。英語だとバックパック

 

大きなリュックサックを背負って玄関を出るマチ子。

マチ子「あ~あ、こんなつもりで畑を始めたんじゃなかったのにな~…」

はる「えっ? 何ですって?」

マチ子「いえいえ。でもやっぱり新鮮なものっていうのは大したもんなんですね。ヨウ子も東京にいる頃から比べると、ずっと元気になったと思ってるところです」

はる「そうですよ。体も元気になりましたけど、何よりもまずあの子の心が元気になりましたね」

 

マチ子「心が?」

はる「病気になる前は私がかばい過ぎたせいか少し消極的すぎるんじゃないかって私も内心反省していたんですけどね、病気があの子を成長させましたね。病気に負けまいとする心があの子の病気の進行を止めているんだと思うのよ」

マチ子「『全てのことを相働きて益となる』か」

www.fujimicho-kyokai.org

全てのことが、互いに作用し合って、万事良い結果となる。

 

はる「マチ子!」

マチ子「はい」

はる「そのとおりなのよ。なんてすばらしいことなんでしょう」

マチ子「はあ?」

はる「いいえ。ヨウ子のことではないのよ。あなたが御教えをそこまで理解できたなんて、お母様は感動です」

マチ子「どうもすいません」

 

はる「いいえ、さあ、はよ行ってこの喜びを分かち合いましょうよ」

マチ子「あの、分かち合うのはトマトやカボチャじゃなかったの?」

はる「おんなじことですよ。さあ、さあ」

マチ子「はあ」

はる、にっこにこ。

 

ヨウ子を見舞う一平。

一平「うむ、そんじゃあ2人そろうてかのう?」

マリ子「はい、とにかくトマトもナスも売るほど取れたんですもの」

売るほど取れても売らないで分かち合うのが磯野家だな~。

 

一平「いや~、ほんなこと面目ない。一致協力を誓うた仲じゃけんね。わしは今朝もやりが降ろうが何が降ろうがくわを担いで断固として出撃するつもりやったが、あ~、せがれと嫁のやつが…」

マリ子「人間たまには休養も必要でしょう」

一平「戦争には休みなぞなかけんね」

ヨウ子「だったら野戦病院に入ってるとお考えになってください、おじいちゃま」

一平「野戦病院?」

ヨウ子「はい、私もそうなんですもの」

一平「ハハッ、野戦病院か…これはよかことを考えたばい」

 

「始めよければ終わりよし」ということわざがありますが、朝から豊作に恵まれたもののこの晩ばかりは全く反対の事態になりました。

 

磯野家の夕食

マチ子「本当よ! 本当に真っ赤な夕焼けだったんだってば!」

マリ子「だからうそとは言ってないでしょう。でも夕焼けっていうのは昔から赤いのに決まっていて真っ青な夕焼けっていうのがよっぽど変じゃないの」

マチ子「そうか…そういえばそうだけど…」

マリ子「そうよ。それなのに血のように赤かったなんて大げさもいいところよ」

 

はる「しかたがないでしょう。マチ子はもともと漫画家なんですからね」

マチ子「あれ? それ、どういう意味ですか?」

はる「別に悪い意味ではないのよ。漫画家というのは対象の本質を的確につかみ出して、それをパッと一コマで表現するんでしょう?」

マチ子「へえ~、お母様がそんなふうに理解してくださったなんて」

はる「だからこそ自然と表現も大げさになるということなのよね」

 

マチ子「何だかやっぱり私の話が信じられてないみたい…」

ヨウ子「ううん、そんなことないわ。昔から博多湾の夕焼けはそれは美しいと多くの歌にも詠まれてるし」

マチ子「ところがね、今日のは特別なの。その美しさを少し通り過ぎているみたいなのよ」

マリ子「芸術家なのよ、マチ子は、やっぱり」

マチ子「ううん、何だか異様な感じさえした」

マリ子「異様?」

マチ子「いいのよ。どうせ信じてくれないんだから。さあ、早く片付けてしまいましょう。もし警報でも鳴ったらこんなおいしいカボチャを真っ暗闇の中で食べなくちゃならなくなるわ」

マリ子「本当、本当」

 

事実、この日の夕焼けは空一面、まるで鮮血をにじませたような赤さでした。昭和20年6月19日のことです。

 

空襲警報

マチ子「あっ。ほら、おいでなすった!」

はる「まあ全く『噂をすれば何とやら』って本当ね」

急いでご飯を書き込む面々。

マリ子「マチ子が変なこと言うからよ」

マチ子「私のせいにしないでよ!」

はる「そんなこと言ってないで早く済ませておしまいなさい」

マチ子「はい。あっ、私、片づけておくから、マー姉ちゃん、済み次第、お母様と一緒にヨウ子を壕に連れていって」

マリ子「うん、頼む」

 

時計は午後7時6分あたり。

 

マチ子と軍平は磯野家の前で空を見ている。軍平のほっぺにたかった蚊をはたいて殺すマチ子。マリ子たちは壕から出てきた。

マチ子「どうしたの? マー姉ちゃん

加津子「いえね、おじいちゃまが今日の警報は解除にするとば忘れとるとじゃなかろうかとおっしゃって」

軍平「そげな…」

 

一平「もうそろそろ10時ばい。3時間もあの壕の中へ入っておったらヨウ子ちゃんの体に障るけん、ちいとはうちの方で休ませた方がよかごと思うてな」

マリ子「靴のまま寝かせておけばすぐにでも飛び出せますから」

マチ子「そうよね。こんな晩に来たら敵機も丸見えですものね」

 

はる「まあ、きれいなお星様だこと」

ヨウ子「あっ、流れ星!」

加津子「あら、まあ! そげん時はすぐそのお星様に願い事ばかけるとよかことのあったとに」

ヨウ子「本当ですか? 損しちゃった…」一同笑う。

 

また空襲警報が鳴りだした。

一平「あっ、こりゃいかん!」

 

警防団員「空襲警報発令~!」

警防団員「退避~!」

警防団員「退避だ、退避!」

警防団員「空襲警報発令~!」

警防団員「退避~!」

 

防空壕に入っていて寝かされているヨウ子のアップ。

 

ところがまたまたしばらく何の音沙汰もなく1時間が過ぎようとしていた時…

 

マチ子「私、ちょっと様子を見てきます」

マリ子「駄目よ、また外をうろうろしてると警防団の団長さんに叱られるんだから」

マチ子「いいじゃないの。一人でも出た方がそれだけこの中の空気にも隙間が出来るし」

マリ子「マッちゃん」

 

一平「じゃあ、わしもちょっと出てくるか」

加津子「とんでもない! 何ばおっしゃるとですか、おじいちゃまは」

一平「バカ者。わしはラジオを聞いてくるんじゃ」

マチ子「そうなのよ。どこかまたフラフラ遊び回ってるんじゃないの? B29は」

 

はる「様子が分かり次第、すぐに戻ってくるんですよ」

マチ子「はい」

一平「うむ、うむ」

マチ子と一平は壕の外に出た。

 

ラジオ「西部軍管区情報、西部軍管区情報。南方洋上を北上せる敵数梯団の先頭は佐賀上空を東北進中であります。繰り返します」

軍平「佐賀上空ば東北進中ですと?」

ラジオ「敵数梯団の先頭は佐賀上空を」

kotobank.jp

アニマル梯団を思い出す。

 

早田「ん? 来たぞ。来たばい!」

警防団長「こりゃいかん。今夜の狙いは福岡かもしれんぞ」

爆発音

軍平「何かいな? ありゃあ」

マチ子「照明弾やなかとですか? あれは!」

 

軍平「マチ子さん! 何ばしとるとね、あんたたちは! さあ、はよ防空壕へ…!」

早田「落ちた! 落ちたばい、博多の方へ!」

マチ子「大変だ!」

軍平「マチ子さん!」

 

警防団長「空襲ばい! 年寄りおなごは壕から出たらいかんと言うとるのが分からんとか!」

マチ子「ばってん!」

一平「わしが悪かった」

一平が火はたきを持ったマチ子を壕の中へ連れていく。

 

焼夷弾が落とされたと警防団員は散り散りに走り出した。

 

防空壕の近辺にも焼夷弾が落ちた!? 防空壕にも衝撃が来た。

加津子「なんまんだ、なんまんだ。こげな空襲初めてたい!」

はる「この中にお入りあそばして!」布団をかぶっている。

加津子「おじいちゃまもどうぞ!」

一平「わしは男ばい!」

加津子「男でもお年寄りです!」

勢いよく布団を引っ張られマリ子とマチ子の顔があらわになる。

 

防空壕の中から外を見ていた警防団員「あっ、焼夷弾だ! 焼夷弾が磯野さん方へ落ちたぞ!」

マチ子「焼夷弾がうちへ!?」

警防団員「ああ~、火を噴いた!」

防空壕の入り口から炎が見え、爆発音がする。

 

マチ子「どいてください!」

マリ子「マチ子!」

マチ子は外に飛び出そうとするが、マリ子やはるが止める。

マリ子「焼けてもいいから行っちゃ駄目!」

マチ子「マー姉ちゃん! 離して!」

はる「出たらいけまっしぇん!」

マチ子「お母様!」

はる「焼けてもいいじゃないの! 今出たら!」

家を守ろうとするおしん…いや、マチ子でした。

 

19日午後11時10分ごろから翌20日にかけて約2時間にわたり、B29の大編隊は福岡市とその周辺地区に対して焼夷弾による一大反復攻撃を繰り返しました。

 

白黒の当時の映像。カラーで見たらもっとえぐいだろうな。

 

夜が明けて、防空壕の中の人はぐったり。サイレンが鳴り、外へ出る人々。

はる「うちがある!」

マチ子「えっ?」

マリ子「本当だ! うちがある!」

ヨウ子「どうして一体…!」

 

軍平「村田さんと一緒に消し止めたとですよ。お宅へ落ちた焼夷弾は!」

マリ子「それじゃあ…村田さんとおじ様が!?」

村田・軍平「はい!」

加津子「あんた~!」と軍平に抱きつく。

一平「ようやった! ようやったです…!」

 

マチ子「でも、町の方がまだあんなに真っ赤に」

サイレンが鳴り続ける。

マリ子「マッちゃん…あんた、手に何持ってんの?」

マチ子「何をって、私は非常袋を…」

マチ子の手には大きなカエル!

はる「ああ~っ!」

きゃあきゃあ騒いでる磯野家。

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最後に笑いを持って来たところ、ツイッターで感想見てたら、こういう回にこういうのいらないとか笑いにくいというのも見かけたけど、これぞ「マー姉ちゃん」の世界という感じで面白かったけどな。