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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (72)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

出征した新八郎(田中健)に写真を送るため、三郷(山口崇)に写真を撮ってもらうマリ子(熊谷真実)。三郷は再婚し、子供が生まれていた。そこへ、新八郎からすでに日本を発ったという知らせが届く。一方、田河(愛川欽也)を訪ねたマチ子(田中裕子)は、軍の言いなりになる前に、少女倶楽部の連載を辞めると言う。昭和16年12月、ついに、日本は米国・英国との戦争を始める。戦勝気分を盛り上げるニュースが続くが…。

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晴れ着のマリ子が玄関前に立ち、智正がカメラを構える。隣に立つトセは赤ちゃんをおんぶしている!?

 

マリ子「それにしてもうれしいわ! 三郷さんが再婚なすって、こんなかわいい赤ちゃんまでおできになったなんて、私、ちっとも知らなくって」

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三郷智正さんの離婚はちょうど1週間前のこと…とはいえ、この回は昭和14年秋以降くらいの話で、今日の回で昭和16年の10月頃かな。結局のところ、子供ができなかったというのも要因になったのかと思ってしまう。

 

智正「でもね、思いがけなくフィルムが手に入った時にマリ子さんのおめでたい話にぶつかるなんて本当うれしいですよ。だったらうんときれいにお撮りしなくちゃ」

 

トセ、マチ子、タマがそれぞれうるさい。

智正「でもね、皆さん、ちょっとこれ船頭さんが多すぎるんじゃありませんか」

タマ「大丈夫、大丈夫。よく撮れるまではね、金輪際、私たちは口を開けませんから」

智正「はい、お願いいたします」

 

そこにウラマド姉妹もやって来て、またわちゃわちゃ。

ウララ「まあ、本当になんておきれいなんでしょう」

マドカ「まるで目が洗われるようじゃございませんの」

ウララ「本当、もんぺはいけません。近頃絹物でお作りになる方もいらっしゃるけど、あれ、本当は労働着ですからね」

マドカ「すてきよ、マリ子さん」

 

タマも朝男宛に1枚写真をもらうつもり。そこにマリ子宛ての速達。いい写真も撮れて、撮影も終わり。

マチ子「あ~! 東郷さんから第一報来る!」

マリ子「本当!?」その場で封筒を開ける。「まあ、何かしら?」

 

しかし、手紙を読んだマリ子の顔色が変わる。

マリ子「あの人、もう日本にいないんです」

マチ子「そんな! 『マリ子殿へ 取り急ぎ お知らせ』…」

マチ子から手紙を取り返して、2階の自室の新八郎の写真を見る。

 

新八郎の手紙

「小生、明早朝、○○方面に向かいたちます。御身くれぐれもお大切に。皆様へよろしく。草々」

 

マリ子の心の声「お母様…これが試練というものなの? これが…これが神のご意思なのですか?」

 

田河邸に行ったマチ子。

水泡「そうかい、そんなに急かい」

マチ子「はい」

水泡「どうしたんだろうね。昔は入隊してもね、2か月や3か月は原隊で再訓練したり再教育をして、それから前線に引っ張られたもんだ」

マチ子「東郷さんが言っていましたが、それだけ日本の雲行きが怪しいっていうことなんでしょうか?」

水泡「さあ? まあ、軍人が内閣を取ってからね、近頃は新聞やラジオも威勢のいい演説ばっかりが増えてきたように思うけど」

 

順子「でも…お姉さん、さぞお力落としでしょうね」

マチ子「ええ。でもさすがに口をきかなかったのは一日だけで、あとはいつもどおり挿絵を描いております」

順子「つらいのを我慢していらっしゃるんだわ、きっと」

 

均「(立ち上がり)大丈夫ですよ。僕がついてますから」

順子「えっ?」

水泡「均ちゃん」

均「いや…天海君に頼まれたんです。マリ子さんのこと、それからご一家のことをね。だから男手がなきゃ片づかない話の時は、まあ、頼りにならない先輩だけども、どんな役にでも立つつもりだ。何でも僕に言ってきてくれ。なっ?」

 

マチ子「ありがとう大宗先輩」

水泡「よく言った、均ちゃん。それでこそ兄弟子だぞ」

順子「私からもお願いするわ、均ちゃん。これからはみんなが助け合っていかなくちゃならなくなるでしょうしね」

均「それが…マリ子さんの婚約に対してできる、僕の精いっぱいのお祝いだと思ってます」

水泡「うん」

 

マチ子「それで…今日はもう一つの報告があって伺ったんですが」

順子「いいお話? 悪いお話?」

マチ子「よく分かりません。でも私は自分に忠実に結論を出しました。『少女倶楽部』の連載をやめようと思います」

均「マチ子さん…」

マチ子「細谷さんをはじめ、編集部の何人かの方々が応援してくださっていますが、私みたいな者の漫画にもこれからはただ楽しいだけではいけないというお達しが陽談社をはじめ、各雑誌社に回っているそうです」

水泡「やっぱりね」

 

マチ子「作者が心にもないことを描いてお金を頂くというのは、第一、読者に対しての罪だと思いますし、自分自身の魂を売り渡すことだと言えば大げさのようですが、このままだときっといつかはそういうことになると思います」

水泡「そうだろうね、きっと」

 

事実、この年の暮れ、言論・出版・集会・結社等臨時取締法が公布、施行されました。

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磯野家を細谷がマチ子への仕事を持って訪れた。

細谷「きっぱりと仕事を断ったのはかっこいいけど、お姉さんのすねをかじっていくんじゃどうにもならないでしょう。まあ、子供だましみたいだけど、これだったらマッちゃんも別に魂を売り渡さなくても済むだろうし」

マチ子「細谷さん…」

細谷「そうだな…戦地の兵隊さんがうんと喜ぶようなそんな楽しい絵柄、考えてくれ。また寄るから」

 

細谷は帰っていった。早いな!

マチ子「どうもありがとう、細谷さん!」

マリ子「案外いい方なのね、細谷さんって」

マチ子「マー姉ちゃんもだんだん分かってくる口ね」

マリ子「えっ?」

マチ子「でも何となく後で分かるっていうのも切ないもんなのよね」

何となく意味深!?

 

そんなことがあってからひとつきほどしたある朝のことでした。時に昭和16年12月8日。

 

真珠湾攻撃の映像。

 

磯野家の朝の食卓。ヨウ子は風邪で今は喉がちょっと変なだけ。ヨウ子は気管支が弱いとマチ子が言う。風邪引きのヨウ子のために天気予報を気にするはる。

 

ラジオからチャイム音が聞こえてきた。

ラジオ「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部発表、12月8日午前6時、帝国陸海軍は本8日未明、西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり。帝国陸海軍は本8日未明…」

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戦争を扱う朝ドラには必ずと言っていいほど出てくる真珠湾攻撃の日は「あぐり」では出てこなかったんだねー。昭和15年で土曜日回が終わって、翌週は昭和18年から始まってました。

 

マリ子「戦争よ!」 

マチ子「とうとう始まってしまったんだわ。アメリカともイギリスとも」

マリ子「なんていうことを…」

 

はるはオネスト神父が心配になり、様子を見に行くと言って出かけた。外に出るとウラマド姉妹も出てきた。

ウララ「奥様!」

マドカ「とうとう戦争ですわよ! とうとう!」

 

今日からイギリス人のオネスト神父は敵国人だと言うマチ子。ウラマド姉妹は「まあ、恐ろしいこと」と嘆いた。

タマ「(日の丸の旗を振りながら)皆さん! 皆さん! ラジオのニュース、聞きましたか!?」

マドカ「ええ、私たちそれで今、ここにこうして…」

タマ「すごいですね~、日本も! こうなったらアメリカでもイギリスでもへなちょこどもを思いきりたたきのめしてやった方がいいんですよ!」

ウララ「ええ…」

磯野家やウラマド姉妹とは違い、テンションの高いタマ。

 

タマ「そのかわりね、ウラマドの奥さん、いいですか? ご近所のよしみでね私はできる限りかばいますけどね、今日からはあんまりめったなことはしゃべらない方がようござんすよ」

マドカ「めったなことって?」

タマ「ほら、外国のことですよ。それでなくてもね、口のうるさいやつは、やれ西洋かぶれがどうのこうのって言ってるんですからね! 気を付けてくださいよ。いいですね?」

ウララ「ええ…」

タマ「とにかくね、これでいいんですよ! あいつらは日本を取り囲んでね、やれ石油は売ってやらない、もう鉄もいけないなんてね、意地悪ばっかり言ってきたんだもの! 日本だって『堪忍袋の緒が切れる』ってのは当たり前ってもんですよ、本当に!」

 

彼女の言葉はアメリカ、イギリスに対して大々的に戦意をかきたてられていた多くの日本人の共通の感情といっていいでしょう。

 

当時の日本人のノーマルなところがタマさん。

 

はるからの電話。天海さんとこの電話が玄関に置かれたんだね。はるの話によると、オネスト神父は今朝早く、特高警察に連れていかれた。はるは教会関係の人たちと鎌田さんのお宅に集まっている。鎌田さん、話だけだとよく出てくる。

 

タマ「また新しいニュースですよ! 早く、早く、早く!」

 

はるの心配をよそに大本営からは景気のいいニュースが次々と発表され、全国の茶の間にワッと戦勝気分を盛り上げました。

 

ラジオ「一、帝国海軍は本8日未明、ハワイ方面の米国艦隊ならびに航空兵力に対し、決死的大空襲を敢行せり。

二、帝国海軍は本8日未明、上海においてイギリス砲艦ペトレルを撃沈せり」

磯野家で一緒にラジオを聞いていたタマは「やった~!」と手をたたく。

 

ラジオ「アメリカ砲艦ウェーキは同時刻、我に降伏せり。

三、帝国海軍は本8日未明、シンガポールを爆撃し、大なる戦果を収めたり」

タマ「なんてこったい!(喜)」

 

ラジオ「四、帝国海軍は本8日早朝、ダバオ、ウェーク、グアムの敵軍事施設を爆撃せり」

タマ「ご覧なさいよ! みんな海軍ですよ! きっとね朝男がやっつけたんですよ! 軍艦なんてね、クジラと一緒ですからね! 朝男が一発でドカ~ンとね、しとめたに決まってますよ!」

マチ子「そうね。きっと、そうね」

 

タマ「うれしいね~。そうだ、こうしちゃいられない! 私はね、ちょいとあの行ってきますからね!」

ヨウ子「おばさん」

タマ「あの~、神社ですよ、神社! 武運長久を祈ってきますからね! そうだ! ついでにあの東郷さんの分もね、祈ってきますからね!」

軍艦マーチを歌いながら出て行くタマ。

 

マチ子はラジオのスイッチを切る。

マリ子「まさか…。あんなに急いで出て行って…。まさか東郷さんもこの戦闘に参加してるわけじゃ…」泣き出してしまった。

 

タマさんも朝男さんを送り出している身だし、息子が勇ましく戦っていたらいいなと思ってるのかも。