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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (65)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

原稿なしでも挿絵を描けるようになったマリ子(熊谷真実)は、増田から絵に色気がないと言われ悩む。はる(藤田弓子)は増田の不倫小説を検閲し、即刻挿絵を辞めるように言う。大宗(渡辺篤史)からは、せっかく築いた成人向け挿絵家の道を捨てるなと説得されるが、新八郎(田中健)は紙の使用が制限されている情勢とは言え、児童物は最後まで残ると考え、児童物へ転向を進める。そんな中、新八郎は思いがけずマリ子に告白し…。

秋が来る頃には原稿なしの挿絵も描けるようになりましたが、マリ子にはまた新しい悩みが生まれておりました。

 

家に帰ってきたマリ子がぼんやり悩んでいる様子を見て心配するヨウ子。おやつはぺろりと食べたけど、マチ子だけは悩みの原因を知っているっぽい。

はる「あなたたち、なんということでしょう。それでもきょうだいなの?」

マチ子「えっ?」

はる「マリ子に悩みがあるのなら、どうしてその悩みを分かち合おうとしないんですか?」

マチ子「だけど、それは…」

はる「それはもこれはもありません。一家4人で力を合わせればどんな垣根だって乗り越えられないことはないんですよ」

 

マチ子は事情を説明しにくそうだったが、今、仕事をしている増田からマリ子の絵に色気がないと言われたとはるに説明。はるは増田雄作の小説を読んだ。

 

というわけで時ならぬ、はるの検閲チェックが開始されました。

 

勢いよく本を閉じたはる「こんな不潔な仕事はすぐにおやめなさい!」

マリ子「お母様…」

はる「何ですか。夫ある身で若い男に言い寄られたり、妻子ある男の影の女で甘んじようですって。そんな不倫が許されていいと思うとるの!?」

マリ子「でも、私は別に…」

はる「せっぷんはせっぷんです。それをどうしてこんなに長々と書かなければいけないんです。やれ唇の格好がどうのこうの。心臓の音が聞こえるようだ。心臓の音が聞こえなかったら人間おしまいでしょう! それに何ですか! そのせっぷんは甘い果実の味がした。冗談ではありませんよ。せっぷんというのは味わうものではありまっしぇん!」

マリ子「でも小説ですから」

はる「小説というのは人生を語るものである。菊池先生もちゃんとそうおっしゃいましたね。ところがこの男ときたら女の肌はすべすべしていて美しいのどうの大きなお世話ですよ。マリ子、あなた、こんな小説と関わっていたら自分が堕落するだけではなく純真な青少年に汚す害毒を流す、その片棒を担ぐことになるんですよ!」

 

すぐれた官能描写で自他ともに許す有名作家もこの人にあっては形なしです。

 

はるさんは吉行エイスケの小説も絶対ダメだろうな(^-^; 菊池寛の小説は官能描写はないのかな? 恥ずかしながら読んだ事ありません。

 

はる「そんなことは当たり前です。以後、明朗なる仕事をなさい! 自分に恥じぬ明朗なる仕事を!」

 

自室に戻った三姉妹。マチ子は今まで娘たちが描いたものに何の興味も示さなかったのに勝手すぎるとこぼす。

マチ子「何さ。自分だけが汚れを知らない人間みたいなこと言って」

マリ子「でもあそこまで言われたらやっぱり続けていくわけには…」

マチ子「まさか、マー姉ちゃん

マリ子「うん。連載物として引き受けたんだし、やっぱり途中でやめさせてもらうわけにはいかないと思うけど」

マチ子「けど、どうするつもりなの?」

マリ子「明朗なる仕事をするほかないんじゃない」

マチ子「冗談じゃないわよ! 三角関係やせっぷんもない小説なんて子供物しかないじゃないの」

マリ子「うん」

マチ子「マー姉ちゃん! どうしてあなたはそうお母様のおっしゃることには忠実なの?」

マリ子「それは私が長女だから」

ヨウ子「マー姉ちゃん…」

マリ子「あなたたちは思うように自分の思うところを伸ばしたらいいわ。でも私は磯野家の長女として、お母様のおっしゃることを無視できないのよ」

マチ子「そんな!」

マリ子「いいの。私はむしろそっちの方がむしろ気が楽なんだもん」

 

磯野家を大宗均が訪ねてきて、田河からそのうち油をやるようになるからと舶来の絵の具を持ってきた。マチ子に事情を聞いた均はマリ子と話をする。

均「あなたの一生のことなんです。よ~く考えてくださいよ」

マリ子「はい」

均「僕は反対です」

マリ子「大宗さん」

均「それは無理して官能描写が売り物の作品につきあうことはありません。でもね、かれこれ1年、あなたは着実に挿絵家として階段を上がってきたじゃありませんか」

マリ子「でも、私、別に挿絵をやめるわけじゃ…」

均「しかし、児童物に転向しようっていうんでしょう?」

マリ子「はい」

均「なぜですか? 成人物だって作品を選べばいいじゃありませんか」

マリ子「それはそうなんですけど…」

均「だったら悪いことは言いません。続けてくださいよ。自分で自分の才能を摘み取るバカがどこにいますか」

マリ子「私にそんな初めから才能なんか…」

均「いや、なければ今日まで一家を支えてこられないでしょう?」

マリ子「それはお金が欲しい一心で…」

均「お金なら僕だって欲しいですよ。人並みにね。名声だって欲しいんだ。だからこうやって田河家で万年書生と言われながら、その一心でいまだに修業を続けています。でも才能のない者はないんだよね」

マリ子「そんな…」

均「あなたはこのうちの長女でうちのことを考えざるをえない。そういうつらい気持ちはよく分かります。でも、マチ子さんがいるじゃありませんか。なぜ彼女と協力して今まで1年築いてきた地盤に踏みとどまろうとしないんですか? 何で自分の夢をそう簡単に捨てることができるんですか? そりゃあね、お母さんの反対を無視なさるのはとてもつらいことでしょう。でもそれもいっときの辛抱ですよ。初めはね、お母さんの意にそぐわない仕事でも、あなたが力をつけ、あなた自身の美の世界を作り出すことによっていくらでも解消できることなんです。僕はね、あなたにもっと自分を大事にしてもらって、この道、極めてもらいたいんだ。あなたにはそれだけの才能があるんだから」

マリ子「すいません、ご心配かけまして」

均「いやいや、僕だってあなたのためだったらどんな心配だってします。頑張ってくださいよ。しっかりとね」

マリ子「すみません」

 

帰りかけた均にお礼を言うマリ子。均は懐に入れていた田河からのプレゼントの絵の具を手渡し、いつか展覧会をするなら、受付は僕がやると言って帰った。

 

大宗均の真情あふれる説得に対して新八郎の反応はまた一風変わったものでした。

 

新八郎は児童物であろうと何であろうとマリ子が抵抗なく描ける仕事が一番いいと言う。最後には油をやりたいのなら、それに戻るためにも無駄な神経遣うことない。

 

マチ子「無駄な神経遣わずにお金の頂ける仕事なんかないんじゃないですか?」と反論したものの、今の情勢的に紙の統制がある。いくらいい腕を持っていても紙がなければ絵は描けない。非常時における紙不足で、新聞も用紙制限で地方紙は既に合併しているところもあるし、雑誌社も小さなところは全国で500くらいは廃刊している。

 

毎朝や陽談社がなくなることはないが、既にそういうのにぶつかっている絵描きや物書きはいっぱいいる。美術誌、外国文学趣味の色の濃いものから潰されていくが、子供のものは最後まで残るだろうという見通しを立てている新八郎。あまり気の向かない仕事をやるより、情勢的に見て児童物に切り替えた方が得。

 

新八郎「まあ、それに僕はだね、マリ子さんにあんまり官能描写が巧みな画家になってほしくないんだな。いや、これは全く僕の個人的な感情だけど」

マリ子「いいわ。私、辛抱する」

マチ子「マー姉ちゃん

マリ子「私、童話の挿絵を描く」

新八郎「マリ子さん」

 

マリ子「よく分からない世界を描くより、私はもともとお母様のおっしゃるとおり明朗なものの方が向いているのよ。どうせ辛抱するんだったら青少年に害毒を及ぼすことなく良心に恥じない仕事をした方がよっぽど気持ちいいもん」

マチ子「なんて欲がないのよ! それでもいいけどもあまり度が過ぎると世間知らずのおバカさんってことに…」

 

新八郎「いいじゃないか! 僕はそういうマリ子さんだからこそ首ったけなんだから…」

マリ子「えっ?」

マチ子「今、何て言ったの? 東郷さん」

新八郎「いや、僕はそういうマリ子さんだから大好きなんです。もう夜も日も明けないくらいに」

 

顔を見合わせるマリ子とマチ子

新八郎「いや、そういう不思議そうな顔することないんです。僕だって男ですし、素敵な女性にのぼせ上がっても無理ないんですよ」

マチ子「あ、あの…すてきな女性ってマー姉ちゃんのこと?」

新八郎「そうです。マリ子さんです」

マリ子「や~?」頬を手で押さえる。

新八郎「いや、マリ子さんが困ることないんです。これは僕の勝手なんですから」

マリ子「そうですよね」

新八郎「そうですよ」

 

マチ子の心の声「変な愛の告白。映画と全然違うじゃないの」

 

そこに帰ってきたはるとヨウ子。はるは新聞記事に喜多川茜の名前を見つけて新聞をマリ子に見せた。

 

東玄會洋書新入選

東京府(二十四名)

▲喜多川茜

 

本格的な絵を諦め、今またせっかく築き上げた成人向け挿絵家の道を惜しげもなく捨てようとした時、喜多川茜の美術展入選の知らせはマリ子の胸をどのように打ったことでしょうか。

 

新八郎の言うこともなるほどと思わされるけど、私は均ちゃん派だなあ。しかし、才能のある人は別のところに行ったってやっぱり活躍できるんだろうな。

 

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こういう裏話を聞けるのはうれしい。今後のネタバレ描写もない良記事。しかし、42年ぶりの再放送ってことはないらしい。NHKで昭和60年頃に夕方再放送してたという話もあるし、BS2で1996年にもやってたらしい。久々の再放送であることには変わりないけどね。