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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (64)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

電力供給制限の新聞記事が出回る頃、菊池(フランキー堺)の連載小説が終わり、マリ子(熊谷真実)も無事やり遂げる。菊池は、マリ子と塚田(日下武史)を労い、独り立ちするマリ子に向けて「合理的、且つ明快に生きよ」と、作家としての今後の姿勢を助言する。次の仕事はオール小説の増田雄作(大塚国夫)の挿絵。原稿があがらない増田からイメージだけを伝えられ、戸惑うマリ子。そこで新八郎(田中健)に相談するのだが…。

はるが新聞の「パーマネントは完全に廃止」という記事に驚いていた。

マチ子「今更何よ。パーマネントはやめましょうって、あんなにはやしたてたらそんなもの今頃かけてる人、誰もいないじゃないの」

はる「その分、電気を節約して工場の方へ回すって書いてあるわ」

 

パーマネント機の電力ぐらいでどうにかなるかよと思ってしまう。

peachredrum.hateblo.jp

あぐり」でパーマネント機を供出したのは昭和18年の秋。

 

マリ子「窮屈になるのはしかたないけど、命令で窮屈にされるのは本当に嫌」

はる「ばかなこと、おっしゃい。一家4人がこうしてそろってご飯を頂けているというのに。オネスト神父様のことを考えなさい。あの方の伝道は窮屈なんてもんではありません。それこそ命懸けのような気がするではありませんか」

 

今、オネスト神父は出征兵士のお留守で手が足りなくて困っていらっしゃる農家を回っている。笠をかぶり、田植えをするオネスト神父。

 

ヨウ子は三郷の若いおば様も心配する。しばらく姿を見せないとはるは心配するが、マチ子は便りのないのは無事の証拠といい、奥さんがお店やめたら、おば様もいろいろ楽になってかえって仲よくしてらっしゃるかもしれないと楽観的。おしんもまだこの頃は嫁姑の怖さを知らないからね~。

 

ヨウ子は学校へ。マチ子も菊池寛宅へ。はるは押入れの奥から唐津の夏茶わんが出てきたので、無事に一つの仕事をやり終えた記念に、その茶わんを持っていくように言う。

マチ子「でも頑張ったね、マー姉ちゃん!」

マリ子「考えてみれば半年、無我夢中だった」

 

そうです。マー姉ちゃんは無事、菊池作品の連載物の仕事をやり終えたところでした。

 

菊池寛宅。

菊池「ふ~ん、何ともいい地肌の色してるもんだね」

マリ子「ありがとうございます。母が申しますには別にお茶にお使いいただかなくても、ちょうど大きさがお茶漬けなどによろしいようですので、お夜食の時などお使いいただければと申しておりました」

菊池「ほう~、お茶漬けか」

塚田「物にはいろんな使いみちがあるもんですね」

菊池「うん。なかなかの思いつきだね。第一お茶漬けそのものが優雅になる。磯野君」

マリ子「はい」

 

菊池「あんたのお母さんという方はかなり独創的な考えの持ち主でいらっしゃるようだね」

マリ子「さあ、その点はどうなんでしょう?」

塚田「いや~、めんくらうことばっかりだよ」

マリ子「まあ、そうですか?」

塚田「ああ、そうですよ。大抵の場合、僕のような立場の者が行けば、もっと大げさにお迎えしてくれるはずなんだけどね」

マリ子「はい」

 

菊池「けんもほろろなのかい?」

塚田「いや、まあそういうのとはちょっと違うんですが、とにかく逃げられてしまうんですよ。さ~っと」

菊池「そりゃそうやろうな。あんまり人相のいい方とは限らんからな、君は」

塚田「あ…」

マリ子「いえ、そういうわけじゃないんです。ただとても恥ずかしがり屋なものですから」

塚田「だけどうちの細谷なんてのは結構手料理などごちそうになってるそうだぞ」

マリ子「あ…その、つまり…。ごちそうするとなると際限なくしてしまう方で、どうもすいません」

 

菊池「ハッハッハッハッ! すると塚田君はそのごちそうからあぶれた組だ」

塚田「そういうことのようです」

マリ子「本当に申し訳ございませんでした」

塚田「ハハハハハッ。何言ってんだい。僕はごちそうなんかしてもらうより君にいい絵を描いてもらうことのが大事でおつきあいしてんだから」

マリ子「はい」

塚田さんの笑顔が素敵です。

 

菊池「いや、よく頑張ってくれた。ご苦労さん」

マリ子「いえ、この半年、ここまでなんとかやってこられたのは菊池先生と塚田さんのおかげです。母も決してお二人の方には足を向けて寝てはいけないと申しておりますが、こちらの塚田さんのお宅が全く逆の方角なので母も本当に困っておりました」

菊池「アハハハハッ。やっぱり楽しいお母さんだ」

マリ子「いえ、一緒に住む身にもなるとそうは言ってられませんけど」

菊池「しかし、このあと、うちの『オール小説』からも話は行ってると思うが、まあよろしく頼むよ」

マリ子「はい、頑張ります」

 

菊池「これからますます一本立ちの挿絵家として扱われるだろうから、今日は一つ君にね合理的に生きろという言葉を贈ろう」

マリ子「合理的にですか?」

菊池「お母さんの独創性はもちろん結構だが、これからは作家というものは合理的にかつ明快に生きなければならない」

マリ子「はい」

 

菊池「僕は自分よりも裕福な人からは遠慮なく物ももらうしごちそうにもなるんだ。お互い物をやったり快くもらったりするということは人生、それだけで明るくするだろう。だから物をもらう時は快くもらい、やる時には快くやりたいね」

マリ子「はい」

菊池「それから悪いうわさとか評判を親切に伝えてくれる手合いとは仲よくせん方がよろしい。あんたがそれを知って応急手当ができるんだったら話は別だが、それ以外は『知らぬが仏』だ。無駄な心配をするよりも新しいことを考えた方がいい」

マリ子「はい」

塚田「なるほど」

 

菊池「好意を持ってくれてる人には好意を持ち返す。悪意を持つ人には断固として悪意を持ち返すべきだな」

マリ子「そうなんですか」

菊池「これはまあ僕の生活信条なんだが、あんたは少々お人よしなところがあるだろう。いやいや、それが悪いと言っとるんじゃない。それはいいんだが、世の中には塚田君のような編集者ばかりとは限らんからね」

マリ子「はい」

菊池「いや、まあ、今度の『女性の戦い』は成功だった」

塚田「はあ」

 

菊池「塚田君。君が磯野君起用で最初の話題を作り、彼女はそのあとよく食い下がった。2人とも本当にご苦労さん」

マリ子「ありがとうございます」

 

やはり菊池寛氏は大物でした。次のマリ子の大きな仕事は「オール小説」連載で官能描写に定評のある中堅作家・増田雄作氏の挿絵でした。

 

茶店で待ち合わせたマリ子。増田は原稿を持ってこず、マリ子が言われた締め切りはあさって。

・ヒロインの美奈子と先月号に出てきた吾郎の浜辺の場面

・美奈子の大きな顔(できるだけ悲しそうなやつ)

・断崖に立つ彼女の後ろ姿にダブらせて入院中の雅子の顔

の3点を書くように言う増田。大きさその他は加賀ちゃんに。

 

浜辺でプロポーズさせるので、吾郎の目はできるだけ情熱的に。悲しい顔は伯父に反対されたから。悲しいといっても美しくないと困る。雅子というのは美奈子のライバルで吾郎のいとこ。

 

マリ子の心の声「一体こんな打ち合わせってあるのかしら?」

 

新八郎とご飯を食べながら相談。新八郎はそんなことで腰抜かしてたら流行絵描きになれないと言う。マリ子は原稿も読まずに絵を描くことなんて…!と怒っていた。新八郎は作家と編集者と挿絵家の力関係があり、今度の場合、「オール小説」では増田作品が大将で、大将の都合を優先する。

 

マリ子「あら、大将一人で戦争ができるのかしら?」

新八郎「できないにしてもだ。できるように編集者が見せることはできる」

マリ子「一兵卒の犠牲のもとにね」

新八郎「でも犠牲になったと考えない考え方だってあるはずだよ」

マリ子「そんな手品みたいなことがどうして?」

 

しかたないと割り切る。食わなきゃならない人がいる。若いお嬢さんだから分からないという新八郎。

マリ子「いえ、お嬢さんなんかじゃありません。趣味でやってるんじゃないわ。そう食うためですもの」

 

去年の秋に破産したと話すと、新八郎は驚く。田舎からの家賃とマリ子とマチ子の画料で暮らしているけど、またいつ破産するか分からない。それならなおさら忙しい作家の挿絵をやめることはないと新八郎は言う。

 

しかし、原稿に忠実にしたいというマリ子と敵のイメージを敵の頭の中から聞き出せばいいという新八郎。挿絵が先行して、その絵に合わせて作家がどうしても書かざるをえないようにしてしまったら挿絵家の勝ち。

 

マリ子はそれでも情熱的な男の目という注文に戸惑っていた。

新八郎「だったら僕の目を見たらいいよ」

マリ子「はあ?」

新八郎「特に君を見る時の僕の目は絶対に情熱的であるとこの僕が保証する!」

 

一体この言葉、どのように取ったらいいのでしょう?

 

家ではヨウ子と朝男がモデルになっていた。朝男は情熱的な目が再現できてないし、マリ子たちもイマイチ分からない。マリ子は朝男にクジラを捕る時の目をやってもらおうとひらめく。

 

しかし、ポーズが違う。東郷新八郎の「僕の君を見る目は情熱的であると保証する」という言葉をマリ子から聞いた朝男は「とんでもねえ野郎だな」と怒る。その目がらんらんとしてるとマチ子に突っ込まれる朝男。

 

一人前の挿絵家になっていくのは本当に大変なことなのです。

 

は~、菊池寛先生のありがた~いお言葉。その他も内容が濃くて、面白い所も多くて、やっぱりいいなあ、このドラマ。オネスト神父も頑張れ!と今日は思った。