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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (29)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

マリ子(熊谷真実)たちが帰宅すると、アトリエが完成していた。はしゃぐ三姉妹だったが、マリ子にはさらに麻布の伯父から赤いハイヒールのプレゼントが。ハイヒールを履いて茜(島本須美)のアパートを訪ねると、その姿に喜んだ茜は、自分で描いた自画像を見せ、今のマリ子にも茜の姿を描いてほしいとお願いする。そして、記念にと口紅をマリ子に渡すのだった。マチ子(田中裕子)はその口紅をきっかけに自分の夢を口にして…。

三郷写真館に寄っていたヨウ子と一緒に帰ったマチ子は玄関先でマリ子と会う。教会に行っているだろうと思っていたはるが家にいた。

 

家に帰るとアトリエが出来ていた。マチ子いわく「えらく殺風景な小部屋」だが、マリ子は「だからこそそれを彩る名画をこのマー姉ちゃんが描くということ」と前向き。

 

はるから「おやつですよ」と声がかかり、茶の間に行くとイチゴのショートケーキがあった。昭和54年でさえ生クリームのショートケーキって珍しくない? 80年代は普通にバタークリームのケーキを食べてたような…。麻布の伯母様がお見えになってたと聞き、だから教会へ行けなかったんだと姉妹は納得。暇さえあれば教会に出かける訳ね。

 

はる「おてては?」

マチ子「かくあることもあらんと帰ってきた時、お言いつけを守って全員うがいと一緒に準備完了です!」

はる「それではおあがりなさい」

マチ子「う~ん、余は満足じゃ」

 

麻布の伯母様は、はるがただいまアトリエを造っておりますのでという手紙を書いたら訪ねてきて、伯父様からお祝いとして赤いハイヒールをプレゼントしてきた。アトリエができたのだから画塾へ通うのにお履きなさいと銀座の靴屋で注文してくださった。

 

マリ子「そういえばこの前、足は何文だって聞いてらしたわ」

 

マチ子にせがまれて、はるの許可も得て、そのまま畳の上でハイヒールを履いてみた。

マリ子「ハハハハハッ、何だか急にのっぽになったみたい」

ヨウ子「シンデレラみたい!」

 

はるは本当は反対で、ハイヒールは不自然な靴だと言う。

マチ子「不自然なところがいいんじゃないですか」

はる「あら? 何で不自然なところがいいのかしら?」

マチ子「つまり、その…この靴を履くことによってすらりと見えるとか」

はる「そんな見せかけのことにこだわることはありませんよ。人間はあるがままの姿が一番美しいのですからね」

マチ子「あっ、ああ~、ほら~、お母様がそんなことおっしゃるから。せっかく麻布の伯父様が贈ってくださったのに、マー姉ちゃん履くに履けないじゃないですか」

はる「私は何も履くなと命令してるわけではないのよ。ただあんまり感心しないわねと言うとるだけ」

 

さあ、困りましたね。マー姉ちゃん

 

マチ子「困ることないわよ! 女学校も卒業してもう一人前なんだもん! 明日さっそうと履いていったらいいのよ」

はるさんが娘たちがおしゃれ、というか女っぽくすることに反対するタイプとは思わなかったな。いつもきれいな服着てたしね。

 

マチ子「そうよ、相手の言うことを聞いとったら何しろ相手はヒトラーなんだから」

マリ子「ばってん、三ちゃんの『のらくろ』では大岡越前守の名さばきだったばい」

マチ子「あの辺がやりにくいのよね、あん人は」

 

かくて若者とはこけつまろびつ難儀をしながら伸びていくのです。殊に女性は生まれて初めてのハイヒールということで大人になった自覚または錯覚に感激はひとしおなのでしょう。

 

翌朝、ぎこちない足取りでマリ子はハイヒールを履いて画塾に出かけた。

 

クラシックな調度品のある部屋に招かれたマリ子。茜はギリシャ彫刻みたいな衣装…というか白い布をゆったり来てるような…片方の肩が出てます。

 

茜「ウフフッ、一日置きに掃除のおばさんが来てくれるんだけど嫌らしいのよ。親の監視役を引き受けてるんだから」

マリ子「はあ」

茜「何事も強制されるのが許せないの。縛られるのは我慢できないのよ。私の生き方もそうだけど洋服だってそうよ。ガードルにしろスーツにしろそういうの大っ嫌い! できれば素っ裸になって暮らすのが私の憧れなの」

マリ子「素っ裸で!?」

 

茜は自画像を見せてマリ子に感想を求めた。

茜「私は露出狂じゃないのよ。だから画塾の連中に見せようとは思わないけどあなただけには見てほしかったの」

マリ子「なぜですか?」

茜「あなたの絵を拝見したからよ。すばらしかったわ」

マリ子「そんな…」

茜「ええ、決してお上手だとは言ってないわ。でもすばらしかったのよ」

マリ子「からかわんでつかあっせ!」

茜「からかうだなんて…真剣なのよ、私は。あなたの裸婦には全く素直な情感があったわ。これでも私目は確かな方よ。あの日、すぐにでもあなたに見てほしかったの。でもあなたはまっすぐに帰る人だし、おうちにご心配かけたらいけないと我慢していたけど、あなたは今日ハイヒールでいらっしゃったから。ウフッ、あなたの中できっと何か革命が起こったのね」

マリ子「革命?」

茜「そうよ。だからその目で見てほしいのよ」

 

茜はマリ子に絵を描いてほしいと言ってきた。マリ子の見た通りの茜と自分の描いた自画像と比べてみたい。

茜「あなたの目と私の目とどこがどう違うのかそれを確かめてみたいの」

マリ子は茜の絵を描くことを了承すると、茜はハイヒール革命の記念にとフランス製の赤い口紅をプレゼントした。

 

家に帰り、マチ子とアトリエにこもって口紅を塗るマチ子とマリ子。しかし、はるに見つかり口紅を拭きとるよう怒られた。

マチ子「びっくりしたな~。いつの間に帰ってきたんだろう、あのヒトラー

 

はる「本当に情けない人たちですね。なにゆえ衣のことを思い煩うや。野のゆりがいかに育つかを思え。野のゆりは誰に誇ろうということなく咲いているからこそ汚れなく美しいのです。人もまた神がつくりたもうたままの自然のままが一番美しいのです。表を装う前にまず自分自身を磨きなさい。子供の身で二度とこんなことしたらその時は…」

マリ子「その時は?」

はる「物差しでお尻を50ずつ打ちます。いいですね? マチ子、あなたもですよ」

マチ子「はい」

マリ子「どうも申し訳ありませんでした」

はる「2人で今晩ひと晩よく反省しなさい」

 

独裁者はえてして冒険を試みようとする者の恨みを買うものです。

 

はるが部屋から出た後、うちには夢がないと言ったマチ子が「田河先生のお弟子さんになりたいな~…」とつぶやくと、はるが聞いていた。

 

はる「いいじゃありませんか。明日は日曜日だし、早速行ってお弟子さんにしてもらうようにお願いに行きなさい」

マチ子「行きなさいって…」

マリ子「水泡先生のお宅にですか?」

はる「当たり前でしょう」

マチ子「お母様!」

はる「『青年よ大志を抱け』。本当にお弟子さんになりたいのだったら早速行って自分から道を開きなさい」

 

マリ子も一緒に行くように言い、顔を見合わせるマリ子とマチ子だった。

 

女っぽく華美に装うのは駄目だけど、夢を実現させることには寛大なんだね。