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【連続テレビ小説】あぐり (95)「別れの曲」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

世津子(草笛光子)に「我が夫・エイスケ論」の原稿を依頼されたあぐりは、夕方戻ってきては和子を入浴させ、またどこかへ行く夫を観察する。そこへ突然森潤(森本レオ)があぐりの家を訪れ、すき焼きをやろうと言う。エイスケ(野村萬斎)がバルコニーで佇んでいると、森が横に来て、お前はのらりくらりと書き続けろ、と言う。翌朝、世津子の店と、あぐりの家に、特高警察が森を逮捕しにやって来るが、森はどこかへ消えていた。

「婦人現代」の原稿「我が夫 望月エイスケ論」の執筆に頭を痛めるあぐりの毎日が続いていました。

 

「女房の私がまず驚くのはよくもまああれだけ遊べたものと、その遊ぶ勢力の偉大なることです」とあぐりがメモ帳に書き記しながら店の外にいると、午後6時。ピンクのたすきをかけたエイスケが急ぎ足で来た。

 

「なぜか夫は毎夕6時にどこからとなく帰ってきて、長女・和子をお風呂に入れ、それが終わると、疾風のようにどこかに去っていくのです」と書く。

 

どうして和子の時はマメなのか? 淳の時はお風呂に入れてくれなかったとあぐりが聞くと、エイスケは「そうだっけ?」。あぐりは「この男…難しすぎる~!」と頭を抱えた。

 

もうすぐ7時。今日も辰子たちはエイスケを見ている。いつも急ぎ足のエイスケが今日は店の前で立ち止まり、ピンクのたすきを外していつものように歩いて行った。こういう着物の所作が自然なのがいいのよ~。

 

カフェ・セ・ラ・ヴィに行ったエイスケは「世津ちゃん、ビール。ビール頂戴」と明るく声をかけた。世津子は先月の小説を読んだと言い「あなたは今、幸せの頂点にいるから、その「今」を大切にする事ね」と感想を述べた。

 

ふと脇を見ると、カウンターに座る川原が座っていた。「いや~川原君じゃないですか。警察に連行されたって聞いて心配してましたよ」と声をかけるがぼんやりしてエイスケの方を向こうともしない。

 

世津子の話によると、釈放されてからひと言もしゃべらず、無気力で何も自分で出来なくなっていた。体中に拷問の痕があり、医者の話だと「多分警察で相当な拷問を受けてそのショックでこうなったんだろう」という。厳しい表情になるエイスケ。

 

小林多喜二の死因は警察による虐殺である」と訴え続けた川原が権力による報復を受けた。二度と筆を持つことはない。権力は川原のみずみずしい文才まで押し殺してしまった。あふれ出てくる彼の創造を全て暴力で押し殺してしまったと世津子は語る。燐太郎が自動車を呼んでいて、世津子が静岡の実家まで送ることになっていた。

 

文壇の中ではその考え方が相反する川原でしたが、あまりにも変わり果てた姿を見て、さすがのエイスケもショックを隠せませんでした。

 

そのころ、あぐりの家に一人の客が訪ねてきていたのです。

 

森が鍋持参ですき焼きをやろうと来た。あぐりはとめと沢子に肉とネギと卵を買ってくるように言った。とめと沢子が買い物を終えて帰ってくると、2階バルコニーで渋い顔のエイスケがいた。いつもと違う様子に戸惑う二人は声もかけずに通り過ぎた。

 

2階バルコニーにいるエイスケに森が声をかけた。川原甚八の話題になる。

森「作家がその筆を持てないように彼の指を叩き折る…。人間が人間として生きられない…。そんなタチの悪い場所になっちまったのかね? この国は。そんな国ならいっぺん消えちまった方がいいかもしんねえな。しょせん国家なんてやつは幻想でしかねえんだから」

 

いつもの明るい森ではなく、シリアストーンの声はやっぱりかっこいい。この時代は朴訥な役でドラマにもよく出ていたな。吉行あぐりさんを取り上げた「知ってるつもり?!」でもゲストは田中美里さんと森本レオさんだった。

 

森「なあお前どうする?」

エイスケ「『どうする』って?」

森「この暗闇をどう生きる?」

エイスケ「さあ…」

森「そうだな…。お前はやっぱり…書き続ける事だ」

エイスケ「『書き続ける』?」

森「うん。のら~りくらりとな。この暗闇をあざけ笑いながら書き続ける。そうだな。それがいい。うん。そうしろ! な!」

エイスケ「森さんは?」

森「あ?」

エイスケ「どう生きるんです?」

森「『どう』って俺はそうだな…。アハハ、国家ってやつと一緒に消えちまうか!」

エイスケ「『消えちまう』?」

森「うん…。鍋の中の肉や豆腐みたくな」

 

森ははしゃいで淳之介を抱っこして踊り、とめや沢子とも踊る。酒をあおるエイスケはあぐりにも酒をすすめる。あぐりもエイスケもテーブルでぐったり寝ていると、いつの間にか森は帽子とサングラスを置いて姿を消していた。

 

世津子のもとやあぐりの家にも森を逮捕するため、警察が来ていた。「婦人現代」の編集部は荒らされ、エイスケがカフェ・セ・ラ・ヴィに駆け付けると燐太郎が森の文章を見せた。「国家幻想論」というタイトルで燐太郎の下宿に放り込んであった。あ、やっぱり燐太郎は下宿だったのか!

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「国家幻想論」ではないですが、森潤のモデルの辻潤の文章は意外と読みやすいと思った。エイスケさんみたいに小説じゃなく、エッセイとか評論を書く人なのかな。

 

あぐり美容院の2階バルコニー。エイスケは森の帽子をかぶりサングラスをかけ、街を見ながら、昨夜の森の会話を思い出していた。あぐりがエイスケの隣に立ち「森さん、私たちにお別れ言うつもりで来てたのね」というと、「お別れじゃないさ。またいつか…会えるさ。そういう時代が…必ず…来る」。夜空に浮かぶ森の幻。エイスケはそっとあぐりを抱き寄せる。

 

ん~シリアスな展開になってきた…けどやっぱり今週は和子の入浴シーンしか記憶にない。そもそも川原甚八が記憶にないんだもんねえ。シリアスすぎて忘れてしまいたかったのか? 「婦人現代」創刊当時のメンバーというけど、鈴音ちゃんを最近見かけない。鈴音ちゃんはずっと出ていた印象だったんだけどね。

 

それと、昨日、名取裕子さんと吉行和子さんが一瞬共演してたけど、「3年B組金八先生」かー。名取さんは美術の先生で吉行さんは家庭科の先生だよねー。