徒然好きなもの

ドラマの感想など

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(108)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

パーティが終わり同期生たちは再び散っていった。ひとり来られなかった悦子(渡辺佐和子)の姑が亡くなったと聞き、元子(原日出子)はお悔やみに訪れる。放送局の同期だった悦子は、相撲茶屋の女将を継ぐことになった。嫁姑の深い絆に、元子は松江の祖母を思い出す。雑誌社に依頼された随想を書き終えた元子に、巳代子(小柳英理子)が相談に来る。吉宗の向かいに4階建てのビルが建つのだが、そこに引っ越すのだという…。

今日も出演者多し。原日出子さんがトップで鹿賀丈史さんが2番目。ラスト前が上條恒彦さんでトメが津川雅彦さん。こういう順番も見ていくと面白い。

 

モンパリ

後片付けをしている絹子、洋三、ハヤカワ。ハヤカワは精神もアメリカ人なんだよね~。同じような境遇の「純ちゃんの応援歌」の秀平は見た目も精神も日本人で多少英語がしゃべれるだけ、みたいな感じだったな。全然手伝わねえ!

 

恭子「じゃあ、お先に」

洋三「あっ、どうも」

トモ子「明日、また会いましょうね」

元子「待ってるわ。うちの方にも来てちょうだいね」

光子「もちろんたい。せっかく東京へ出てきたんじゃけん。見たい所は、ようけあるし」←ツイッターで鹿児島弁がめちゃくちゃと言及してた人がいたけど、私は東北人だけど、私ですら適当方言であることは分かるよ。

 

トモ子「だけど、東京はもうガラッと変わってしまうんだもの。お上りさん、面食らってしまうわね」←やっぱりアップになると若いなって思う。

光子「そうねえ」

洋三「それもみんなオリンピックのせいですよ」

恭子「悪いですね。まだ片づいてもいないのに」

洋三「とんでもない」

のぼる「あなた、明日早いんですもの。しかたないわよ」

恭子「じゃ、よろしくお願いします」

絹子「おやすみなさい」

トモ子「お先に失礼します」

ハヤカワ「グッナイ」

のぼる「おやすみなさい」

トモ子「じゃあね」

元子「どうもありがとう」

恭子「おやすみなさい」

洋三「さようなら」

のぼる「気を付けてね」

この辺、ゴチャゴチャでセリフと名前合ってないかも。元子だけは色が違うから分かるけど。

 

洋三「ジョー、悪かったね。今日はすっかりお客様にしてもらっちゃって」

ハヤカワ「ノー、ノー。すばらしいパーティーだったでしょ」

洋三「うん」

元子「皆さん、どうもありがとうございました」

洋三「ああ、本当によかったね」

元子「はい」

絹子「ねえ、万年筆もう一度見せてよ」

元子「ええ」

洋三「あ~、そうそうそうそう、うん」

 

元子「はい」

洋三「ほい」

絹子「わぁ~、すてきだ」

洋三「ああ。これ、ジョーのお見立てなんでしょう?」

ハヤカワ「はい。ガンコさん気に入ってもらって…何よりでした」

 

昨日はブルースが、今日はハヤカワがカミカミ。この時代だから~というより朝ドラだからって気がするな。これより昔の連ドラとか見ていても、こういう素人が見ても明らかにかんだって思わないもん。朝ドラは撮影スケジュールがキツキツだからほかのドラマより余裕ないんじゃないのかな。

 

のぼる「『女性時代』の大作、これで書いてね」

元子「ええ。みんなの心のこもったプレゼントなんですもの。私、一生懸命いいもの書くわ」

洋三「本当だよ」万年筆を返す。

 

電話が鳴る。

絹子「あっ、大原さんかな?」

洋三「そうかな?」

 

絹子「はい、モンパリです。はい。えっ!? まあ、そうだったんですか…。ええ、あのみんな今帰ったとこなんですけど、まあ、それはご愁傷さまでした。はい、そのように申し伝えます。あの、若奥様にもくれぐれもお力落としのないようにお伝えくださいませ。ごめんくださいまし」受話器を置く。

 

絹子「お手伝いの方だったんだけど、30分ほど前にお亡くなりになったんですって」

のぼる「そうだったんですか…」

元子「誰? どなたがお亡くなりになったんですか?」

洋三「ガラちゃんのおしゅうとめさん」

元子「だって…」

のぼる「ごめんね。ガラのたっての希望でよんどころない用事だなんて言ったけど、今朝方からご病人は目が離せない状態だったらしいの」

元子「入院なさってるのは知ってたけど、まさか、そんな悪いなんて、私…」

のぼる「容体が変わったのは急だったんじゃないかしら」

元子「そんなこと言ったって…」

絹子「もっちゃん」

 

元子「30分前っていったら、私たち何にも知らないで騒いでる最中だったじゃありませんか」

のぼる「ごめんなさい。でもね、知ってたのは、おじ様とおば様と私たちの4人だけなの」

洋三「私たちにしたって、まさか亡くなるとは思ってないもの。それにガラちゃんからね、せっかくの集まりだから君には病院に詰めてることは絶対言わないでくれって言われてたんだよ」

元子「そうだったんですか…」

 

のぼる「で、お通夜とか告別式は?」

絹子「うん、追ってまたっておっしゃってたけど、お商売がお商売だからおつきあいも広いんだろうし、しきたりなんかも色々大変なんでしょうよ」

ハヤカワ「ちょうどと言ってはいけませんが、みんな同期生がそろったんです。みんなでガラ子さんのこと励ましてやるといいですね」

のぼる「そうね…本当にそうだわ」

元子「ええ…」

 

相撲茶屋、茜島家の葬儀は盛大に執り行われ、元子たち同期生は心からの哀悼の意をもって告別式に参列しましたが、元子は初七日を過ぎてから、改めてもう一度お悔やみに訪れました。

 

遺影のふくよかな女性のクレジットはなし。

 

悦子「わざわざご丁寧にありがとう存じました」

元子「悦子…」

悦子「さあ、どうぞ。ごめんなさいね。告別式ではちゃんと挨拶する暇もなくて」

元子「あんな時ですもの、無理よ」

悦子「でも、本当にうれしかったわ」

元子「おつきあいが広いんだなって改めて感じたけど大変だったわね、ガラ」

 

悦子「うん…私も改めて茜島の名前の重さと義母(はは)の偉さをしみじみとかみしめたわ」

元子「でも、本当よくやってた…」

悦子「しばらく前から心臓が悪かったのね。だから、本人も周りも気を付けていたし、夏が一番こたえるから、なんとかこの夏を乗り切ってほしいって祈ってたんだけど…。急に容体が変わってね、まだまだ早かったわ…」

 

⚟若い衆「おかみさん、ちょっとすいません」

 

悦子「あっ、はい」

 

若い衆「鈴木さんからお電話ありました」

悦子「分かりました。先方には昨日、私から電話をしておきましたから行ってくれれば分かるようになってます」

若い衆「はい」

悦子「それから、品物はお八重さんに用意させてあるから、ちょっとお勝手に寄ってちょうだい」

若い衆「はい」

悦子「くれぐれもよろしくってね」

若い衆「はい、そんなら行ってまいります」

悦子「あっ、ちょっと待って」

若い衆「はい」

悦子「はい、車で行ってらっしゃい」財布からお札を取り出し、握らせる。

若い衆「はい。では行ってまいります」

 

若い衆…青柳文太郎さん。長年、コジマのCMに出ていたせいか、コジマの社長だと思っていました。「はね駒」では郵便配達員役。

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悦子「ごめんなさいね、落ち着かなくて」

元子「ううん、なるべくお邪魔にならない時間に伺おうと思ってたんだけど」

悦子「いつもこんなよ。でも今が一番、息のつける時間だから心配しないで」

元子「もっとへこたれてると思ったんだけど、しっかりしてるんで安心したわ」

悦子「まだ気が張ってるから」

 

元子「けど、これからは大変よねえ。まさか、あのガラが相撲茶屋のおかみを継いでいくことになるなんて考えもしなかったけど」

悦子「それは私の方よ。本当は主人が継ぐんだったんだけど、何としても外国に行きたかったんで一人息子なのに大学出たら商社に入ってしまったでしょう。だから、私も初めはサラリーマンと結婚したつもりだったのよ」

元子「うん。だから私もね、もし外国へ行くなら、きっとガラが一番かなって、ちょっと羨ましかったんだ」

悦子「私だってそうよ。義母(はは)だって言ってくれたのよ。夫婦仲さえよければそれでいい。こんな面倒な商売は自分の代で終わってもいいんだって」

元子「まあ」

 

悦子「でも人間って不思議よねえ。そう言ってもらうと人生意気に感じちゃって、果たして私がこの商売に向いてるのかどうか、そしてやっていけるものなのかどうか、改めて義母(はは)に弟子入りしたってわけ」

元子「お義母(かあ)様、お喜びになったでしょうね」

悦子「そう思いたいんだけど、あくまでも息子の嫁なんだから息子との生活をないがしろにしないことって初めにピシリとくぎを打たれて…。でもね、全くの知らないところから嫁に来たんですもの、それこそ挨拶のしかたから教えてもらったわ」

元子「ええ…」

悦子「だからってね、まだまだ義母(はは)のおかみぶりには足元にも寄りつけない思いなんだけど…。私、一生かかってもいい。一歩でも近づいていきたいの」

 

すてきよ、ガラ子さん。NHKの秘書→アナウンサー→生活学院→商社の夫と結婚→相撲茶屋の女将と華麗なる人生。NHK入局前は恐らく大学とかも行ってただろうし。小山内さんは嫁姑を悪く書かない、書きたくない人なのかもね。おキンさんはガミガミいうけど。

 

夜、大原家

ダイニング

元子「けど、あの人(しと)の場合、嫁しゅうとめで暮らしたのは15年でしょう。女としての自覚を持ってからは実家のお母様より茜島のお義母様と暮らした方が長かったんですものね。煮物のお味も足袋の履き方もおしゅうとさんとおんなじになったって笑ってたけど」

正道「まあ、それだけ片身をもがれたようでさみしいんだろうな」

元子「けど、そんな寂しがってる暇もないみたいにね、もう、おかみとしての仕事があとからあとからあるみたいで私、感動しちゃったわ」

正道「立派だね」

元子「私はガラほど長くはなかったけど、松江で暮らした3年間、おばあ様やお義母様には実の娘のようにかわいがっていただいたし、いろいろなことを教えていただいたんですもの、ガラの気持ち、よく分かったし…。私もこれからはもっともっとしっかりしなくちゃって本当にそう思ったわ」

正道「まあ、お互いにそういう年になってきたっていうことなんだろうな」

元子「ええ…」

 

大介「僕はもう休みますから」

正道「おう、もう勉強終わったのか?」

大介「あと、歯を磨いて寝るだけ」

正道「うん、おやすみ」

元子「おやすみ。ねえ、道子、タオル掛け蹴飛ばしてないかどうかのぞいてやってちょうだいね」

大介「はい」

正道「あいつも今のところまずまず問題はなしと」

元子「ええ…」

 

茶の間

テーブルの上に置かれた原稿用紙

戦禍を越え来し←?

  我が道のり

   大原 元子

 

雑誌社から初めて依頼を受けた随想に元子は同期生のこと、人形町の母のこと、松江のこと、そして我が夫と子供たちのことを書きました。「週刊毎朝」の特選入選までの長い道のりを心を込めて書きつづったのです。

 

原稿をなで、手を合わせる元子。

 

⚟冬木「ごめんください。女性時代の冬木という者ですが」

 

元子「は~い、ただいま」

 

玄関

元子「どうも、わざわざ取りに来ていただいてありがとう存じました。どうぞお上がりになってくださいな」

冬木「いえ、ここで失礼しますから」

元子「あっ、そうですか。じゃあ、これ…一生懸命書いたんですけど、これでよろしかったでしょうか」

冬木「あっ、結構です。どうもありがとうございました」すぐかばんに入れる。

元子「あの…」

冬木「ええ、稿料の方は後ほど送らせていただきますので、中へ入ってる領収書にですね、名前と印鑑を押して送り返していただければ結構ですから、よろしくお願いします」

元子「はい、あの…お読みにならなくてよろしいんですか?」

冬木「ええ、結構です。何かありましたら、ご連絡しますから。それではどうも失礼しました」戸を閉める。

元子「ごめんくださいまし…」玄関から立ち去ろうとする。

 

⚟女「ごめんください」

 

元子「あっ、はい」

 

勝手口

巳代子「ごめんください。こんにちは」

元子「ああ、いらっしゃい」

巳代子「どうしたのよ、ボケッとした顔しちゃって」

元子「うん…あんなものなのかなあと思ってさ」

巳代子「何が?」

元子「ん? ううん、別に」

巳代子「分かった。買ったんでしょう、しわ取りクリーム」

元子「まさか」

巳代子「ハハハハ…冗談よ」

 

あんなもん→しわ取りクリームって面白いなあ、巳代子は。

 

元子「何の用だったのよ?」

巳代子「うん…ちょっと困ったことになっちゃったのよ」

元子「どうしたのよ、一体」

巳代子「ほら、人形町のうちの前に出来るビルのことなんだけどね」

元子「うん」

巳代子「それで近所の人と祐介さんがおかしなことになってきて」

元子「何よ、おかしなことって」

 

銀太郎

幸之助「全くよ。宗ちゃんとこの婿さんじゃなきゃ、俺、とっくの昔にぶっ飛ばしてるぞ」

友男「バカ野郎、宗ちゃんちの婿だからこそ、俺たちは勘弁できねえんじゃねえか。熱いぞ」カウンター側に入り込んで熱かんを作っている。

幸之助「おう」

宗俊「どっちにしたってよ、おめえ、もう銭払い込んじまってんだからどうしようもねえじゃねえか」

銀太郎「それにしたって河内山の旦那はしゅうとさんでしょ。ひと言ぐらいの相談があったっていいじゃないのさ」カウンターに戻り、友男を追い出す。

幸之助「おう、あのビルが出来ると吉宗の干し場ぁ、半分陰になるってんだろ」

銀太郎「そうなのよ。これがほかのことならまだしも、わざわざ親の仕事を邪魔するような相手のとこに行くなんて婿さんも婿さんだけど巳代子さんだってどうかしてるわよ」

 

宗俊「あ~、構うもんか。紺屋はな、どうせ俺の代限りで終わりなんだ。みんな好きなようにしてくれってんだよ」

友男「冗談言っちゃいけねえよ。善さんがいるじゃねえか、善さんがよ。なあ、銀太郎」

宗俊「まあ、いいってことよ。『歌は世につれ世は歌につれ』ってな」

幸之助「坊主じゃあるめえし、あんまり悟り開いたようなこと言うんじゃねえよ」

 

大原家ダイニング

元子「ということは巳代子たちはあのうちを出るってことなの?」

巳代子「早く言えば、そういうことなんだけど、だからっていって祐介さんも遠くに行く気になれないって言ってるし、それがちょうど吉宗の向かいにビルが出来ることになって、その3階と4階を今はやりのマンションにするっていうから、引っ越すといっても目の鼻の先だし、何たって、あの家作じゃ手狭だから万事好都合だろうと思ったのよ。そしたら、またまた変なとこで変なふうにこじれちゃったのよ」

元子「う~ん」

巳代子「ここんとこ、お義兄(にい)さんもお忙しそうだし、こんなこと頼むの本当、申し訳ないと思うんですけど」

元子「いいわ。早速、明日にでも祐介さんに会って話も聞いてもらった上で直接、お父さんの言い分も正道さんに聞いてもらえるように私から頼んでみるわよ」

巳代子「本当に…すいません」

元子「お礼なら正道さんに言ってちょうだい」

巳代子「分かりました。じゃ、よろしくお願いいたします」

元子「はいはい」

 

つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

モンパリ、茜島、銀太郎、大原家…盛りだくさんだったな~。正道さん、何かっつうといちいち調整役になってかわいそう…でも、思えばヒロインの夫で調整役のできる人ってあんまりいないから新鮮。朝ドラ一のよい夫だな、私にとっては。

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(107)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)の手記「私の八月十五日」は特選入賞となった。雑誌が発売されると続々と祝電が届けられ、別の雑誌からも執筆依頼が飛び込むなど大原家は大騒ぎに。元子は正道(鹿賀丈史)と相談し賞金を山分けすることにした。松江の祖母や子供たち、宗俊(津川雅彦)とトシ江(宮本信子)、吉宗の人たちに配ると、自分の手元には何も残らなかったが元子は満足だった。すると放送協会の同期が元子のためにパーティを開くという。

今日は出演者が多かったな~。

 

「週刊毎朝」の終戦記念特集号が発売された、その日のうちに続々と届けられたお祝いの電報はこのとおりです。

 

大原家 茶の間

テーブルには料理と祝電が乗っている。テーブルの脇には山と積まれた週刊毎朝。

正道「すごいな。これ一体、何通あるんだ?」

大介「今、僕が数えてるから」

藤井「とにかく電車の中にも、お義姉(ねえ)さんの名前がぶら下がってたんですから」

巳代子「やだわ、ぶら下がってるなんて、まるで首つりしてるみたいじゃないの」

元子「やあね」

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首つりと言えば「マー姉ちゃん」を思い出す。

 

藤井「揚げ足を取るんじゃありませんよ」

巳代子「だって、ねえ」

藤井「いやいやいや、とにかくね、『あの瞬間の放送員室』と出たんですから、桂木から大原に変わっても、お義姉さんがアナウンサーだったのを知っていた人は、みんな分かったろうしね」

元子「そうなのよ。女学校やね、専門学校の時のお友達もね、わざわざ旧姓を入れて打ってくれたり、松江でお世話になった方からも頂いたし、正道さんとこの作業員の方もね、電話だけでなく、こうしてわざわざ電報にしてくださったんですもの」

 

電話が鳴る。

大介「まただ」

正道「おい、そういう言い方はないだろ」

藤井「はい、大原でございます。あっ、おります。少々お待ちください。お義姉さん」

元子「はいはい」

 

茶の間にいる元子、正道、大介、巳代子、藤井。ダイニングテーブルでは弘美と道子が絵を描いていた。

 

元子「はい、大原でございます」

冬木「女性時代編集部の冬木と申しますが、大原元子さんでいらっしゃいますか?」

元子「はい、さようでございますが」

冬木「この度は『週刊毎朝』の特選、おめでとうございます。早速読ませていただきましたが、実はですね、え~、戦時下の放送員という大原さんの特異なご体験に私たちも大変感動いたしまして、私どもの雑誌にもお書きになられるまでのお気持ちや動機、そのほか、これまでのことを主婦向けに是非、ご執筆いただきたいのですが」

元子「あ…あの、ということは?」

冬木「はい、400字詰めの原稿用紙で20枚」

元子「20枚!?」

冬木「もしもし…あの、実話風に書いていただければよろしいんですが、早速、来月号には掲載したいもんですから、締め切りはですね…」

元子「あ…あの、ちょっ…ちょっとお待ちくださいませ。道子、紙! 紙、頂戴!」

道子「はい」

 

冬木…中平良夫さん。今日は声のみでしたが、たくさんドラマに出演されてる方なので、今後の重要キャラ?? 最近までいろんなドラマに出ている。

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あぐり」86、87話出演というのは警官かな~? 

 

藤井「お義姉さん」

元子「はい」

藤井「これ、使ってください」←ポケットからティッシュ

元子「違うわよ、メモ用紙よ。原稿の依頼があったんです」

正道「あ~…」

元子「もしもし、はい…はい…」

 

吉宗前の路地

向かいの建物が工事中。

元子「こんにちは!」←今日はお着物!

トシ江「おや、いらっしゃい」

元子「お向かい、始まったみたいねえ」

トシ江「ああ。四角いコンクリートの箱みたいなのが出来るんだって。あれが建てばね、この辺も変わるだろうね」

元子「何階になるの?」

トシ江「4階建てなんだって」

元子「え~」

トシ江「ねえ、あんた、あれから大変だったでしょ」

元子「うん、ちょっとね。お父さん、いる?」

トシ江「いるわよ。お上がりよ」

元子「うん。じゃ、ちょいと」

 

桂木家茶の間

元子が”お父さん 頒喜”と書かれた祝儀袋ともう一つ”頒喜”と書かれた祝儀袋を差し出す。

宗俊「え? そりゃ何のまねだ?」

元子「つまりこれは賞金の山分け」

宗俊「バカ野郎が。競馬の穴当てたあぶく銭じゃあるめえし妙なまねするんじゃねえやな」

キン「そうですよ。こりゃ何たって、お嬢がご褒美に頂いた大切な記念のもんなんですから」

善吉「黙ってろよ。大将がちゃんとそう言ってんだから」

キン「そんなこと言ったってさ」

トシ江「元子のね、そういう気持ちは、うれしいんだけど、お父さんもこういうふうに言ってるし、一応、それはそっちに収めちゃってちょうだいよ」

 

元子「でも、もう分けてしまったもの」

宗俊「てやんでぇ、調子に乗りやがって。俺ぁな、おとつい、おめえら夫婦がよ、そろって顔見してくれたろ。な。それで十分なんだよ」

元子「どうもすいません。けどね、賞金は金5万円なり。正道さんとも相談したんだけど、それを5つに分けて1万円は松江のおばあちゃまに、そして大介と道子に1万円ずつ定期預金にしてやって、これ残りの2万円なのよ。で、一つは、お父さんとお母さんに。もう一つは彦さんとおキンさんと善さん。ね。みんなでごはん食べに行くのもよし、温泉なんかに繰り出すのもよし」

トシ江「元子…」

 

元子「私ね、てれ隠しに特選はまぐれだなんて、みんなに挨拶してたけど、それ違うのよ。私、一生懸命書いたの」

彦造「そりゃ、そうでございましょうとも」

元子「けどね、書いてて、18年も前のことなのにまるで昨日のことのように思い出して、頭がカ~ッとなって何度立往生したか分かんないわ。でも、そんな時、しっかりしろって正大あんちゃんの声が聞こえたり、金太郎ねえさんが夢ん中へ出てきて頑張れって励ましてくれたり…。明治座で亡くなった先輩にも是非書いてもらいたいって、そう言われ続けたような気がするんです。そう思うとみんなが、あんちゃんや金太郎ねえさんのことしのんで有効に使ってくれるのが一番いいんじゃないかと思って」

 

元子のセリフ中、宗俊がトシ江に合図を送り、宗俊が話し中に薬を飲んでいる。聞き流していると見逃してしまうシーンだね。

 

宗俊「分かった。分かったけどよ、それじゃ、おめえの取り分がねえじゃねえか」

元子「ますますもって元気な体はあるし、正道さんはいい旦那様だし、子供たちはみんないい子だし、その子供に1万円ずつ貯金してやれたんですもの。もうそれで十分じゃありませんか」

キン「お嬢…」

元子「そのお嬢っていうのも、もうやめてもらわなくちゃ」

キン「だってさ…」

宗俊「あ~、おキンさんよ、なあ、元子が偉そうにあんなこと言ってやがんだから、まあ、ここはな、おとなしく元子の言うとおり、この金、ありがたく頂戴しようじゃねえか。なあ、彦さん」

彦造「へえ…」

トシ江「どうもありがとうね」

元子「嫌だわ、そんなご大層に」

宗俊「バカ野郎、俺はおめえ、おめえの顔立ててやってるんだぞ、この野郎」

善吉「『老いては子に従え』って、そう言いますからね」

宗俊「誰がよ、誰が一体(いってえ)老いたってんだい、え?」

善吉「いや、ちょっと弱っちゃったな…申し訳ございやせん…」

宗俊「この野郎、黙って聞いてたら、お前…」

もう一度、祝儀袋を宗俊に差し出す元子。

宗俊「そうかい…はい」

 

宗俊「おっと」立ち上がろうとしてよろける。

トシ江「あっ、おとうさん、大丈夫ですか」

宗俊「おい…てめえまで年寄り扱いするんじゃねえや」

仏壇に祝儀袋を供え、手を合わせる。

宗俊「あ~、もしもし、ご先祖さん、それから正大、元子がよ、小遣いくれやがったぜ。出どころはな毎朝新聞だとよ、え、へへ…だから安心してよ、みんなで…」

 

夜、モンパリ

扉には「本日貸切り」の紙。

 

友達とは本当にありがたいものです。忙しい仕事を抱えながら、のぼるがささやかなお祝い会を企画してくれたのです。

 

絹子叔母さんは着物、洋三叔父さんはTシャツってのが珍しい。

 

元子「こんばんは」

一同「いらっしゃい」

 

トモ子「お待ちしてました」

元子「ふれちゃん!?」

光子「ガンコ!」

元子「まあ、薩摩焼酎! あなたも!」

トモ子「驚いた?」

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青山光子さんは熊本出身なのですが…

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鹿児島支局に赴任され、あだ名が薩摩焼酎になりました。

 

元子「驚いたわよ! もう六根ったら相変わらずのいつものメンバーだなんて言うんだもの」

ハヤカワ「マジシャンは種明かし嫌いますよ」

元子「まあ、ハヤカワさんも!」

ハヤカワ「はい」

絹子「そのハヤカワさんがね、今日は私たちもお客さんだっていうんで、ご覧のとおり、モンパリは第16期生に乗っ取られましたの」

のぼる「だって、あの苦しい時、おじ様やおば様に私たちどれだけ助けられたか分かんないんですもの」

 

洋三「だからといってだよ、今やプレスクラブの大物にパーティーのセッティングまでしていただいちゃって恐縮してますよ」

ハヤカワ「ノー、ノー。今日はみんなのパーティーです。私ものぼると一緒に楽しませてもらいますから。さあ、皆さん、座って。座ってください」

カウンターに立つハヤカワと隣にいるのは恭子。

 

トモ子「では、ガンコの隣は、やっぱり遠くから来た者が独占させていただきます」

光子「そりゃもちろんたい」

元子「それじゃ、薩摩焼酎わざわざ鹿児島から?」

のぼる「そうよ。だからね、もっと早く集まろうと思ったんだけど、わざわざ今日までお祝い延ばしたんじゃない」

元子「ありがとう、六根」

恭子「涙はまだ早いわよ、ガンコ」

元子「そんなこと言ったって…」

 

それにしても、トモ子や光子の昭和30年代のご婦人の再現がうまいな~。みんな当時20代なんだろうけど、ちゃんと18年後の同窓会感がある。トモ子は黒縁の太い眼鏡で髪はアップ、光子はショートカットのパーマスタイルでハンカチが手放せない。

 

恭子「ガンコ、今日の特別なお客様よ」

元子「えっ?」

 

立花「いやぁ、ハハハハハ…。おめでとう」握手を求める。

元子「室長! ありがとうございます」

良男「おめでとう。頑張ったね、ガンコさん」

元子「もう三井さんには松江時代からいろいろとお世話になってしまって、本当にどうもありがとうございました」

 

恭子「さあさあ、お掛けになって」

良男「室長、どうぞ」

洋三「どうもようこそ」

 

元子「でも私、まさか室長にまでお目にかかれるなんて思ってもいませんでした。どうもありがとうございました」

立花「いや、私の方こそ庭いじりの毎日だが、いやぁ、みんな本当によく成長して活躍してくれて、おめでとう」

元子「活躍だなんて、私はそんな」

洋三「ほらほら、ガンコちゃん、また自分のことしか考えない。え? 今、ふれちゃん何なさってるか分かってる?」

 

元子「何って…何?」

トモ子「一応、有限会社だけれど、亭主が経営する店のこれでも専務さん。あっ、でも薩摩焼酎なんてもっとすごいのよ。『薩摩新報』っつう新聞の婦人部広報主任なんですって」

元子「本当! わぁ、みんなやってるのねえ」

 

ハヤカワ「さあ幹事さん、セレモニーを先にやってしまわないとプログラム進みませんよ」

のぼる「本当だわ。はい、皆さん、グラス取ってください」

絹子「はい…」

立花「あ~、どうもありがとう」

絹子「はい」

 

のぼる「じゃあ、乾杯の音頭は立花室長お願いします」

立花「えっ、私が? こりゃ光栄だな。それでは大原元子さんこと桂木ガンコさん、おめでとう」

一同「おめでとう!」

元子「どうもありがとう」

 

恭子「では、これは大事な急用が飛び込んだためにどうしても来られず、悔しくてひょっとしたら大切なお得意様をパーにしてるかもしれないガラこと…ガラこと茜島悦子夫人から」大きな花束を元子に渡す。本気でセリフに詰まってて、勝手に焦る。

元子「まあ、どうもありがとう」

拍手

元子「こんな大げさなことになってるなんて思わなかったわ」

 

のぼる「では、続きましてふれちゃんからおじ様とおば様へ」

絹子「えっ?」

洋三「うん?」

絹子「私たちに?」

トモ子「ええ。感謝を込めて、はい」花束を一つずつ渡す。

洋三「えっ、いや…だけど今日はガンコのお祝いとそれから16期生のその…同窓会じゃないの」

恭子「だから、なおのこと受け取ってください。私たち、あの時代、このモンパリでどんなに慰められたか分からないんですもの」

 

トモ子「室長、私のなまり、今でも直りませんけれども最後まで落後しないで頑張れたのは、ここに下宿させていただけたからなんです」

立花「あ~、そうそう、そうだったね」

良男「それから、おじさんの取っときのコーヒーも忘れられません。本当にありがとうございました」

絹子「まあ、あなたたちったら…」

拍手

洋三「ありがとう…」

 

のぼる「では、記念品贈呈に移ります」

元子「記念品!?」

のぼる「松江から長野、今は東京勤務の三井さんからお受け取りください」

良男「万年筆です。連絡の取れた我が同期生5名プラス僕たちがささやかなポケットマネー出し合ったものです。どうかこれからもいいものをどんどんと書いてください」

拍手

元子「どうもありがとう。夢のようだわ。みんなのおかげです。みんなと一緒に行き抜いた、そういう思いで、ただ、私、一生懸命、あの手記を…。本当にありがとう」

 

立花「私にも礼を言わせてくれないか。16期生は私にとっては忘れることのできない生徒だったが、いやぁ、みんな、それぞれに生き抜いてくれた」

元子「室長…」

立花「君たちのことを思い出す時、いつも頭によぎるのは、あの辞表をたたきつけられた時のことだ。あれはショックだった」

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のぼる「あれは室長」

立花「いや…まあ、ああいう状態の中で私は君たちのことを何とも不本意な別れ方をしたといつも気にしてたんだ。まあ、しかしこうやってみんなの顔を見ると、君たちはむしろそれをよりどころにして、それぞれがたくましく自分の道を探し出してくれた。老兵はただ消え去るのみというが、こういう会に出席できて私は本当にうれしい。どうもありがとう」

拍手

 

室長の老け方も自然だね。

 

洋三「それじゃあね、私からもちょっとプレゼントがあるんだけど。いや、私はね、二度と軍歌は口にすまいと思ってたんだ。だけどさ、今日やっぱりこうやって、みんなの顔を見たら本当に生きていてよかったと思う。だから、この平和の尊さと、それからガンコの新しい出発を祝ってね…」

 

洋三がアコーディオン、みんな肩を組んで「同期の桜」放送員バージョンの替え歌を歌う。

♪お前と俺とは同期の桜

同じ放送局の庭に咲く

咲いた花なら散るのは覚悟

見事散りましょ国のため

同期の桜

同期の桜

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つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

戦中に誰かが軍歌を歌うシーンは何度かあったけど、洋三叔父さんは伴奏はしても歌わなかったのに、今日は一緒になって歌ってたのに感動した。

出発の歌

出発の歌

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いい声♪

 

国井先生、服部先生のほか、カンカン(沢野)、伊東先生(正大)もいれば桜中学の職員室だね。放送局の芦田さんも先生じゃないけど、職員室によくいたね。

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立花室長も”生徒”と言ってるし、モンパリの同窓会は金八最終回の謝恩会を思い出す。誰かしらギターを持ってて歌い始めるしね~。

 

話には時々出ていたハヤカワや16期生のトモ子、光子だけじゃなく室長が出てきたのがうれしかったな~。

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(106)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

週刊誌の応募手記発表のためと写真を撮られた翌朝、落ち着かずに寝不足の元子(原日出子)は食欲もわかない。正道(鹿賀丈史)や子供たちが心配するが、動悸がして胸が苦しくて仕方がない。悦子(渡辺佐和子)が訪れると、元子は横になっていた。代わりにお茶をいれながら、悦子は週刊誌の記者が、元子が本当に放送協会にいたかどうかアリバイを確認しに来たという。カチンときた元子だが、その夜、ついに大原家の電話が鳴る…。

今回からまたオープニングのお人形が変わった。これで3回目かな。2回目は大介が生まれたタイミングか結婚したタイミングで変わったような気がする。今日のクレジット順は原日出子さんの次が赤塚真人さん、トメが鹿賀丈史さん。

 

大原家 階段が見える廊下

元子「道子、道子、早くしなさいよ」

道子「は~い」

 

週刊毎朝の記者が応募手記発表のための写真を撮っていった次の朝のことです。

 

ダイニング

正道「はい、ほら、ちゃんと早く座んなさい。はい、それじゃあ頂きます」

大介・道子「頂きま~す」

元子「頂きま~す…」

 

正道「おい、どうしたんだ?」

元子「ん? ええ…」

大介「どうかしたの?」

元子「ううん、別にどうもしないんだけど何だか食べたくなくて」

大介「ははあ、それは寝不足だよ」

正道「そういえば、ゆうべは、あんま寝てなかったな」

道子「どうして?」

大介「バカだなあ。お母さんの手記は特選入選なんだぞ」

 

元子「やめてよ。まだそうと決まったわけじゃないんだから」

大介「そんなこと言ったって、あの時間にわざわざ写真撮っていったんだもの。もう決まったようなもんなんでしょ、ねえ、お父さん」

正道「ん、いや…まだ決定っていうことじゃないからな。何となく落ち着かないもんだよ。な」

元子「そうなのよ」

大介「何だ、それで食欲がないの?」

元子「ないっていうわけじゃないけど、何となく欲しくないのよ」

大介「それじゃ、同じことじゃない」

正道「まあ、いいじゃないか。な。ゆうべから何かとバタバタしてたんだから後でゆっくり食べるといいよ。な」

元子「はい…」

 

ところが後になっても元子の食欲は一向に湧かず、おまけに激しいどうきで胸苦しさを覚えるようにさえなってまいりました。

 

窓ふきしていた雑巾をポイッと放り出し、茶の間のテーブルに広げた原稿も手につかない。

 

この状態を蛇の生殺しというのでしょうか。さしもの元子も決定を見ずして喜びの言葉は書けません。

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週刊毎朝の三宅に書いとけと言われた受賞の感想400字ね。

 

鉛筆を持ったまま、横になり目をつぶる元子。

 

⚟女「ごめんください」

 

元子「は~い」

 

⚟悦子「ごめんください。元子さん、いらっしゃる? 茜島です」

 

元子「ガラ子…」

 

縁側から顔をのぞかせる悦子。ガラ、ガラ子=旧姓五十嵐より。

元子「あ…あら、いらっしゃい」

悦子「ちょっとガンコ、どうしたの!?」

元子「ううん、別に…。ごめんなさいね、今すぐ」

悦子「ちょっと待ってよ、顔色が悪いわよ。具合でも悪いんじゃないの?」

元子「ううん、そういうわけじゃないんだけどね、動くとちょっとどうきがするのよ」

 

悦子「ちょっと待って、こんなもの私が片づけるから」

元子「あっ…すいません。じゃ、今、お茶いれるから。ね」

悦子「いいから、座ってなさいよ。大事な時なんだから」

元子「えっ?」

 

悦子「ガンコ、あなた、とうとうやったじゃないの」

元子「ええ…」

悦子「出がけにね、毎朝の三宅さんって記者の方が見えたのよ」

元子「三宅さんが? 何しに?」

悦子「そうね…さしずめガンコのアリバイを確かめに来たってとこかな」

元子「アリバイですって?」

悦子「そう。大原元子、旧姓、桂木元子さんは本当に放送協会にいたことがあるのかどうかっていう、あれよ」

 

元子「失礼だわ! 絶対に失礼よ!」

悦子「ガンコ」

元子「そうよ…だってあの人(しと)、特選の候補になったってそう言ってきたのに何よ、白々しい」

悦子「ちょっと落ち着きなさいよ。ガンコは『週刊毎朝』の応募手記にあの時のこと書いたんでしょう?」

元子「ええ」

悦子「けど、向こうとしては特選の発表をしたあとで、あの時、放送局にいた事実はないなんてことになると…」

元子「ないわけないでしょう。私はあの8月15日、放送員室にいたからこそ」

悦子「だから落ち着きなさいって言ってるでしょう」

元子「だってあんまりよ。人を疑ってかかるなんて」

悦子「しかたがないわよ。万全を期さなければならないのが三宅さんの仕事ですもの」

元子「そりゃ、そうだけど」

 

悦子「だから、私が昔、放送員だったってことを調べてガンコのこととあの日のことを聞きにきたってわけ」

元子「それで?」

悦子「おめでとう、ガンコ。私とガンコは、あのまま家庭に入ってしまったけど、私、ガンコはいつか世に出るってそう思っていたのよ」

元子「世に出るだなんて」

悦子「だって『週刊毎朝』の特選なのよ、特選」

元子「まだ決まったわけじゃないのよ」

悦子「バカね。もう写真も撮ったっていうじゃないの。決まったも同じようなもんだわ」

 

元子「そうはいかないのよ」

悦子「何が?」

元子「決まったのと、ようなものは大違いだわ」

悦子「しっかりしてよ、困った人ね」

元子「そうなのよ。体に力が入んなくて今朝から何にも手がつかないの」

悦子「何か食べたの?」

元子「ううん。朝も昼もね、ムカムカして何にも欲しくないのよ」

悦子「駄目よ、それじゃあ。お子さんたちにと思って持ってきたんだけど、はい、向島の桜餅。1つでもいいから、お上がんなさいな」

元子「ありがとう。(匂いを嗅いで)あっ…駄目だわ」

悦子「むかつくの?」

元子「うん」

 

悦子「まさか、ガンコ」

元子「えっ?」

悦子「おめでたじゃないんでしょうね?」

元子「そんな…うそ、やだ、変なこと言わないで」

悦子「どうしてよ。だっては手記は特選、子供も出来たとなれば二重のおめでたじゃないの」

元子「うそ、うそよ。子供だけは絶対当選していませんよ」

悦子「そう?」

 

元子「そうよ。だってね、現にゆうべまでは食欲モリモリだったんだもの」

悦子「だったら多分…神経性のものだわね」

元子「そうかしら」

悦子「そうよ。私だって覚えがあるもの。あの相撲茶屋のね、初めての本場所に茶屋の大事なお客様をお迎えした時なんか茜島の義母(はは)が仕切ってるのに、私、緊張しすぎてしまって食べ物が喉を通らなかったの」

元子「あら、やっぱり?」

悦子「そりゃ、そうですよ。あの大きな体の関取の中にだってね、初日の前にはそういう症状を見せる人がいるくらいなんだから」

元子「(桜餅を頬張りながら)ふ~ん」

 

悦子「『果報は寝て待て』。こうなったらデ~ンと構えることね」

元子「駄目よ、駄目。私ね、これでも心臓は弱い方なんだから」

悦子「何言ってんのよ。パクリと食べられたくせに」

元子「えっ? あら、やだ」

悦子「フッ…ハハハ…」

元子「まあ…もう、やだわ」

笑う2人。

 

元子「ありがとう。ガラが顔見せてくれたおかげだわ」

悦子「それじゃ、私、安心したところで帰るわよ」

元子「あら、もうちょっといてよ」

悦子「そうしたいんだけどね、このところ、ちょっと義母(はは)の具合が悪いのよ」

元子「知らなかったわ」

悦子「うん。今も病院で寄り合いの報告に行ってきた帰りなの」

元子「ごめんなさい。悪いことしたわね」

 

悦子「いいえ。でもね、この世界、いろいろとしきたりが多いから、まだまだ教わることが多くてね」

元子「けど、ガラ、よく頑張ってるわよ。私、本当に感心してるんだから」

悦子「ありがとう。じゃ、しっかりね」

元子「ええ」

悦子「絶対、間違いないけど改めていいニュース待ってるから」

元子「どうもありがとう。何だか元気が出てきたみたいだわ」

悦子「じゃあね」

元子「どうもありがとう。気ぃ付けて」

 

悦子のおかげで小康状態を見たものの残念ながら緊張からくる元子の神経性食欲不振は募る一方でした。

 

夜、ダイニングテーブルの上に寿司折。

正道「はあ~。とにかくだな、一つだけでも食べなきゃ駄目だよ」

元子「ええ…」

正道「腹が膨れてても、すしの入るところは違うっていうじゃないか、え」

大介「ほら、お母さん、いつも中トロ、中トロって言うくせに今日のは上等だよ」

道子「卵もおいしそう」

元子「じゃ、道子、卵食べる?」

大介「駄目。これはお父さんがお母さんにって買ってきたんだから」

元子「だって…」

正道「よし、それじゃあな、みんな、自分の好きなの1つずつ食べよう。な。それじゃあな、お父さんはな、あなごだぞ。大介、えびだろ」

大介「うん」

正道「道子、卵だろ。それでお母さんは中トロと。な?」

元子「はい…」

 

正道「うまい、うまい。どうだ?」

元子「おいしいわ」

正道「ほら見ろ。食べればちゃんと食べれるじゃないか」

大介「力をつけておかないと肝心の授賞式でひっくり返ったら大変だよ」

正道「こら! そこでまた余計なことを言うんじゃない!」

大介「ごめんなさい。コハダもおいしそうだよ、お母さん」

 

涙ぐむ元子。

道子「お母さん?」

元子「ううん、効いたのよ、わさびが。鼻の奥までツ~ンと来ちゃった」

正道「ハハ、そりゃあ、よかった」

元子「本当」

正道「あ~、よかったよかった。よし、それじゃあな、お父さん、次、カッパ巻きだぞ」

大介「僕は…シャコ」

道子「私も」

大介「お母さんは?」

元子「ん、コハダ」

 

電話が鳴る。

正道「僕が出るから。はいはい、大原でございます、はい。はっ? 大介ですか? あ~、ちょっとお待ちください。剣道部の友達だ」

大介「はい、もしもし、大原です。何だ、君か。ああ…。試験が終わったら、すぐ練習だと言ってた。うん、なるべく早めに寄るつもり。じゃあ、朝寄るから。うん…じゃあ、バイバイ」

 

受話器を置くとすぐ電話が鳴る。

大介「はい、大原です。はい…はい、おります。少々お待ちください。お母さんに電話」

元子「誰から?」

大介「さあ。出てみてよ。聞いたような声だけど、僕じゃ駄目みたい」

元子「誰かしら、一体…」

正道にOKサインをする大介。

正道「ん? あ~!」

 

元子「はい、大原でございます」

三宅「昨夜お伺いしました週刊毎朝の三宅です。おめでとうございます。大変遅くなりましたが、特選は大原さんに決定いたしましたんで」←ナビ番組で見たシーン。

元子「!!!」

三宅「もしもし? もしもし? 聞こえてますか? 大原さん。もしもし? 大原さん。もしもし?」

元子「はい…」

三宅「おめでとうございます。特選ですよ。大原さん」

元子「あ…ありがとうございます。あの、ちょっとお待ちください。あなた…」

正道「ああ…。もしもし、はい…」

 

大介「おめでとう! やったね、お母さん!」

道子「お母さん、おめでとう!」

元子「ありがとう…」

大介「やった、やった! やったぜ、やった!」

道子「早くおすし食べなくちゃ」

大介「いいんだよ、そんなのは後でも」

道子「どうして?」

大介「とにかくいいんだよ。ねえ、お父さん」

手で顔を覆う元子。

 

正道「ああ…なあ、おすしを食べてないのに、お母さん、もうわさび効いてるみたいだしな、ハハハ」

元子「いや…意地悪ね」

大介「おめでとうと言って何が意地悪なのさ」

元子「だって…」正道の胸で泣きだす。うわぁ~、この身長差!(萌)

正道「ハハハ…」

 

大介「ばんざ~い!」

大介・道子「ばんざ~い! ばんざ~い! ばんざ~い! ばんざ~い! ばんざ~い! ばんざ~い!」

子供たちの方に向き直る元子。

 

昼、大原家前

郵便配達「電報です!」

 

字幕は”郵便配達”になってたけど、クレジットは電報配達夫…津田二朗さん。舞台中心の人なのね。電報というのは今でいうNTTの職員が配達してたのね? いつもの郵便配達の人とは違う。

 

⚟巳代子「は~い」

 

路地を雑誌を抱えた藤井が帰ってくる。「はいはい…はい、ご苦労さん。こっち、頂きましょう、はい」

巳代子「はいはい」

藤井「あっ!」コケて雑誌を落とす。「あ~!」

巳代子「大丈夫?」

 

週刊毎朝誌面

当選手記

私の八月十五日

あの瞬間の放送員室

 

あの瞬間の放送員室 大原 元子

本文はぼやけて読めず…残念。

 

8月「週刊毎朝」終戦記念特集号に晴れがましくも元子の名前と写真が載りました。

 

週刊毎朝誌面 読める分だけ

応募手記当選発表

「私の八月十五日」の手記は、読者の皆さんのご支

援をえて、二千百九十五通という多数の応募があり、

厳正な審査の結果、左の十六編を選びました。

 

特選(一編)=賞金五万円

 大原 元子=東京都台東区下根岸一七五

入選(五編)=賞金各一万円

 斎藤  明=千葉県千葉市

         会社員、四十歳

 佐藤 宏之=広島県安芸郡府中町山田、出版社員、

       三十二歳

 山田 早苗=鹿児島県熊毛郡…

         地方公務員、三十五歳

 関  安光=神奈川県鎌倉市

       四十歳

 中嶋 恵子=

 

元子の顔写真

特選の喜び 八月十五日というと、私たちの年代のものには、語りつくせない思いがあります。投稿のはじめに書きました甥の死も、栄養失調だったのでしょう、消化不良によるものでした。陸士出身で戦車学校の教官をしていたいまの夫が、決起部隊に加わるのではないか…

www2.nhk.or.jp

最後の方に当時の記事をスクラップにしたものを公開しています。

 

茶の間

週刊毎朝を見ている元子。

巳代子「お姉ちゃん、また祝電よ。ほら、12通いっぺんに来たわ」

元子「うん、そこの台の上、まとめて置いといてよ」

巳代子「はい」

 

藤井「はい、あらよっと…よいしょ」雑誌をテーブルの上に置く。

トシ江「まあまあ、そんなにたくさん」

藤井「ええ、あっちこっち景気よく送りまくらないといけませんからね」

元子「どうもありがとう」

藤井「いえ」

 

トシ江「よかったね、元子。お父さんね、わざと何でもない顔をするのが大変でさ、とっても喜んでんだから」

元子「どうもありがとう。正道さん帰ってきたら一緒に夜にでも行くつもり」

トシ江「ああ、そうしてやっとくれ。喜ぶよ。ね」

元子「うん、フフフ…」

 

藤井「巳代子、ビールまだか? さあ、早く早く」←藤井のくせにえらそーだぞ!

トシ江「まあ、祐介さん」

巳代子「お待たせしました」

 

電話が鳴る。

トシ江「あっ、電話電話」

巳代子「お姉ちゃん、またお祝い電話よ」

 

元子「はい、大原でございます。まあ、どうもありがとうございます。いいえ、まぐれよ、まぐれ…。いや、そんなやだわ、そんな大げさなもんじゃないんですから」

 

藤井「さあ、いきましょう、いきましょう。さあ、乾杯! おめでとうございます!」

 

元子が通話中に飲みだす藤井。おい!

 

つづく

 

微妙な尺余りで「ただいまの出演」

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

元子、よかったねえ~とナビ番組見て知ってたけどさ。

 

主婦が体験記を書くというとこの話を思い出しました。

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これはTBSの単発ドラマで1980年放送。日色ともゑさん演じる平凡な主婦が元子と同じように体験記を書き上げ応募したら当選したという話。

 

しかし、この話、主人公は袈裟乃(けさの)という本名が嫌でペンネーム(蘭子)で書き上げた架空の話で、現代モノなのに元子みたいに裏取りもされず、夫婦そろってテレビのワイドショーに出演したりしている。テレビ局のプロデューサーが藤田弓子さん。日色さんが1967年の朝ドラヒロインで藤田さんは翌年のヒロインなんだよね。

 

結局、ヒロインは新たに原稿依頼されたものの全く書けず、夫(藤岡弘さん)に断ってもらい、賞金も寄付しようと話し合うというなんじゃこれな展開。女性の脚本家というのが信じられないくらい女ってやつは~専業主婦は~って言われそうな内容だったな。そうそう、菅井きんさんと犬塚弘さんが親子役でちょっとだけ出てました。

 

反響が大きいというのはこういうことなんだね~。今までの再放送だと、「はね駒」が再放送きっかけでDVD化されて以来かな。今は、円盤化より配信の方がいいだろうね。

 

この7時15分の枠はDVD化されてない作品をどんどんやってほしいな。=なるべく古いのやってくれ。