1991年 日本
あらすじ
原作は村田喜代子の芥川賞受賞作「鍋の中」。おばあちゃんが受け取った手紙で、家族は大富豪の親戚がいたことを知る。訪ねてきたおばあちゃんの甥を名乗る青年と、おばあちゃんとその孫たちのひと夏の物語。
四人の孫は、長崎に近いおばあちゃん(村瀬幸子)の家で夏休みを過ごしていた。そこへハワイから手紙が届く。おばあちゃんの兄・錫二郎(松本克平)の息子だというクラーク(リチャード・ギア)からで、不治の病の錫二郎にひと目逢ってほしいと言うのだが……。
2024.10.6 BS松竹東急録画。本当は8月に録画して見るはずだったのですが、STBの交換によりHDDに録画してたものが見られなくなり再録画。
黒澤明作品
*
製作:黒澤プロダクション
*
提供:フィーチャーフィルムエンタープライズⅡ
*
ゼネラルプロデューサー:奥山融
*
プロデューサー:黒澤久雄
*
原作:村田喜代子
「鍋の中」(文藝春秋社版)より
*
音楽:池辺晋一郎
*
鉦(かね)おばあちゃん:村瀬幸子…字幕黄色
*
縦男(良江の息子):吉岡秀隆…字幕緑
たみ(忠雄の娘):大寶智子…字幕水色
みな子(良江の娘):鈴木美恵
信次郎(忠雄の息子):伊崎充則
*
忠雄(おばあちゃんの息子):井川比佐志
良江(おばあちゃんの娘):根岸季衣
登(良江の夫):河原崎長一郎
町子(忠雄の妻):茅島成美
*
クラーク(おばあちゃんの甥):リチャード・ギア
*
監督・脚本:黒澤明
オルガンで「野ばら」を弾く縦男。絶対オルガンを直すと意気込む。ハワイから手紙と写真が届いた。おばあちゃんの息子・忠雄と娘の良江が鉦の兄・錫二郎(すずじろう)に会いに行ったが、他人同然でおばあちゃんでなくてはダメ、子供たちとハワイへいらっしゃいと書かれており、錫二郎の息子・クラークからもカタカナの手紙が同封されていた。1920年、ハワイに移住し、アメリカ人としてもうすぐ死ぬでしょう。最期に妹と会いたいでしょうと書かれていた。
孫の縦男たちはハワイに行こうとおばあちゃんを誘う。おばあちゃんは今は大金持ちの錫二郎が兄とは信じられない。春野という名字は確かにおばあちゃんの嫁ぐ前の名字だが、錫二郎という名に覚えがない。おばあちゃんのきょうだいは十数人もいる。
おばあちゃん、「太陽の涙」の寿美子の母で新作が鬼ババと言ってた村瀬幸子さんかあ。
このドラマから約20年経ってるから、本当におばあちゃんになったんだな。
孫たちは、おばあちゃんの作った料理が口に合わないと言う。それにしたって、ここに出ている子役たちが懐かしすぎて! みんなよく80年代後半あたりに学園ドラマで見かけた人たち。
長崎に買い出しに出た縦男以外の子供たちは原爆について話す。おじいちゃんは原爆で亡くなった。おじいちゃんは爆心地に近い学校で働いていて、おばあちゃんも結婚するまでは教師だった。
原爆のことをもっと知りたいと長崎の街を歩き回る子供たち。
世界各国から届いた彫像。中国やソ連からも届くんだ。当然、アメリカはありません。
原爆は遠い昔のことで忘れ去られようとしている。それでいいのかな?と思う信次郎。帰りの遅い子供たちを心配して迎えに来たおばあちゃん。夕飯は、たみが作った。
縦男がおばあちゃんのきょうだいの名前を聞き出して黒板に書き出していた。
男
鉄太郎(てつたろう)、銅三郎(どうざぶろう)、銃四郎(じゅうしろう)、鐘五郎(しょうごろう)、釘之助(くぎのすけ)、鉈吉(なたきち)、鍬太(くわた)、鈴吉(すずきち)
女
鍋(なべ)、鉦(かね)、鏡子(きょうこ)
おばあちゃんの父はかなりの変人だった。あと2、3人いたはずだが、錫二郎を思い出せない。金偏こだわりとはいえ、鍋は酷くない?
みな子と信次郎はおじいちゃんをアメリカに殺されたおばあちゃんがハワイに行くことはないだろうと話していると、おばあちゃんがスイカを持って入ってきた。おじいちゃんが死んで45年、昔はアメリカを憎んでいたが、今は好きでも嫌いでもない。戦争でたくさん死んだけど、アメリカ人もたくさん死んだと言う。
忠雄や良江がハワイに行っているせいで孫たちが夏休みの間いてくれるのが嬉しいと言う。おばあちゃんは古いオルガンを弾き、その後ろの黒板に書かれた名前を読んだ。きょうだいはみんな死んだ。
鉈吉兄さんは靴職人の修行をしていたが、5年後、親方の奥さんと逃げた。実家の裏手に小さな小屋をつくり、靴を作り続けた。雷が落ちて2本の杉が心中したところに小屋を建てた。みな子と信次郎は気味悪がり、縦男は明日見に行こうとたみを誘ったが今もあるはずないと笑う。
翌日、森を歩く縦男とたみ。なんだか怖いとたみが言うので少し離れたところから杉の木を眺めた。森から帰ってきた縦男とたみに家に入らないように言うみな子と信次郎。どこかのおばあさんが訪ねてきたが、一言も喋らず向き合っている。
縦男は、おばあちゃんに代わってハワイ宛の手紙を書いた。ハワイに行きたい気持ちもあるが錫二郎の若い時の写真ときょうだいの名前を思い出してもらうよう書いた。
昼に来たおばあさんとは会話していたというおばあちゃん。そのおばあさんも長崎で夫を亡くしていた。
夜になり、おばあちゃんは鈴吉の話をした。一番下の弟で原爆で頭の毛が抜けてきて引きこもりになってしまったが、夏になると滝に泳ぎに行っていた。あとは部屋で目の玉の絵ばっかり描いていた。おばあちゃんが信次郎を鈴吉に似てると言い、縦男たちが笑ったので、信次郎は部屋を飛び出し、縦男にボール?をぶつけた。
信次郎は黒板に自分で描いた目玉の絵を怖がった。
翌日、滝を見に行った縦男たち。滝の中から蛇が泳いできてびっくり。あれは怖い。
おばあちゃんたちが田んぼの中の小さな小屋に集まり、お経をあげていた。みんなで供養するので家には仏壇がない。へ〜! 爆心地から遠いもののおばあちゃんの頭の毛が薄い。
夕方、家の前で鈴吉の描いた目は蛇や人間の目ではなく、ピカの目だとおばあちゃんは言う。原爆が落ちたときのことを話して聞かせる。原爆が落ちても空を眺めていた鈴吉はそれから取り憑かれているように目の絵を描いた。空に見えた大きな目が怖い。
夜、縁側でおばあちゃんは昔話をした。鈴吉が溺れたと知らせに来た痩せた小さな男の子は河童だろうと後で近所の人と言い合った。
おばあちゃんはボケてると言い合う縦男とたみ。みな子が悲鳴をあげて駆け込み、縦男に抱きついた。信次郎が上半身を緑に塗って河童のふりをして驚かせていた。
忠雄からきょうだいの名前を確認したという手紙が届き、ハワイ行きを決断したおばあちゃん。縦男たちは喜ぶ。おばあちゃんは、もうすぐおじいちゃんの命日だから供養してから行くと言う。
しかし、すれ違いで忠雄と良江が帰ってきた。8月9日の原爆で死んだおじいちゃんの命日を済ませてから行くと電報を打ったが、クラークはアメリカ人だから電報を読んだら気まずい思いをするだろうと忠雄や良江が言う。そんなに気ぃ使う? 忠雄の妻・町子、良江の夫・登も駆けつけ、おばあちゃんに挨拶に来たと言いつつ、ハワイの話を聞きにきた。
大人たちはパイナップルの缶詰工場や豪邸の話に夢中。ハワイへ行ってもいいようなことを言って笑う。おばあちゃんは浅ましい、うちは乞食じゃないと一喝する。子供たちを夕涼みに誘って外へ出た。
残された忠雄は頭が古い、良江は頑固だとおばあちゃんの悪口を言う。登は忠雄と良江がおじいちゃんの命日まで長崎に残り、おばあちゃんにサービスして気持ちよくハワイに送り出すよう提案した。
電報が届き、クラークが日本に来ると言う。原爆のことを言われて嫌な気持ちになり、なかったことにしようと区切りをつけるために来るのだと忠雄たちは解釈してガッカリ。登も町子も帰ると言う。なぜあんな電報を出したのよと縦男を責める良江におばあちゃんは私が書かせたと怒った。
空港に迎えに行った忠雄、良江、縦男たち。縦男たちはクラークに会うのは気が重いと勝手に帰った。
忠雄たちと会ったクラークは電報を読んで、みんなで泣きましたと言う。ホテルには行かずに叔母さんの家に泊まりたい、その前に叔父さんが亡くなったところに行きたいと言う。縦男たちは、おじいちゃんのところへ行こうと学校へ来ていて、クラーク、忠雄、良江と合流した。
校庭のモニュメントを見ていると、おじいさんおばあさんの集団が校庭に入り、モニュメントの前で黙祷した。その後、リヤカーに積んできた花でモニュメントの周りを飾る。恐怖を感じる信次郎。
ソファやイスを継ぎ足してクラークのためにベッドを作る縦男たち。忠雄と良江は私たちちょっとみっともなかったなと話し合った。
縁側でおばあちゃんとクラークが話をしていた。クラークは私が悪かったと謝った。よかとですよ。サンキューベリーマッチと握手をするおばあちゃんとクラーク。
縦男はオルガンを直し、子供たちは「野ばら」を歌う。クラークが部屋に来てブラボーと言う。黒板には「welcome!!」と書かれており、ベッドに寝転んでみせるクラークは叔父さんの写真を見たがった。
1990年8月9日
田んぼの中の小屋には溢れるほどの人が一斉にお経を唱えた。
アリの行列がバラの花に登っていくのを見ている信次郎とクラーク。
縦男たちと滝で遊んでいたクラーク。しかし、錫二郎が亡くなったという知らせが入った。すぐ帰国して行ったクラーク。
空港から帰ってきた忠雄たち。一人で家に残っていたおばあちゃんは「兄さん、早く行けばよかった」と泣いた。
おばあちゃんは荷造りしていた忠雄に「兄さん、会いにきてくれたとね?」と急に話しかけたかと思うと、部屋に戻り、大きないびきをかいて寝てしまった。
雷の夜、突然、起きてきたおばあちゃんはピカじゃ! ピカには白い布がいいと子供たちにシーツをかぶせた。
朝になり、おばあちゃんがいなくなっていた。近所のおばあさんがあの日の雲とそっくりだから長崎へ行ったと知らせた。突然、暴風雨になったが、外へ駆け出す縦男たち。
雨の中をひっくり返った傘を持って歩くおばあちゃんと走って追いかける縦男たち。
妙にほのぼのした「野ばら」が流れてエンディング。えっ!
出演者が多すぎて無理! 松竹映画なのに東宝スタジオ?
黒い画面に“終”
話が最後の最後に急転しすぎて戸惑う。いくら90年代でも〜だわみたいなしゃべり方、あんまりする人いないと思う。大人が描いた子供像って感じだった。それにしてもレジェンド子役たちだったな〜。「鬼畜」の子供がこれくらいうまかったらな〜って、まだ言うか! リチャード・ギアは割となじんでいた。