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【ネタバレ】岸壁の母 第二十八章「生きて帰って!」その三

TBS 1977年12月14日

 

あらすじ

新二(大和田獏)はいせ(市原悦子)の知らぬ間に満州の軍需工場で働く手続きをとっていた。昭和十九年のサイパン島陥落後は空襲がいっそう激しくなり、いせの生きがいは新二の手紙だけとなる。

岸壁の母

岸壁の母

2024.7.31 BS松竹東急録画。

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冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。

いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」

 

端野いせ:市原悦子…字幕黄色。

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端野新二:大和田獏…字幕緑。

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水野のぶ子:小畑あや

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呉服屋の店主(松井):飯田和平

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寮母:滝奈保栄

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音楽:木下忠司

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脚本:高岡尚平

   秋田佐知子

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監督:高橋繁男

 

<新二の出発の朝でした。久しぶりに2人並んで寝たんです。あの子は、すぐ寝息をかき、私は一睡もできませんでした。これでしばらく新二の食事の世話をすることもない。そう思ったら…生まれて初めてのことですが包丁が震えたんです>

 

端野家

先に起きたいせが朝食の準備。新二も自分で布団を片づけていた。

いせ「いいよ。あとで母さんがするから」

新二「しばらく母さんの手伝いもできなくなるからね」

いせ「早く顔洗いな。ご飯にしよう」

新二「うん」

 

2階で荷造りを終えた新二は寝転がって天井を見ていたが、階下へ。

 

いせ「ゆで卵、お塩も入ってるよ」新二のリュックに詰め、腰にお守りを括りつけた。「忘れ物(もん)ないね?」

新二「うん。母さんだと思って持ってくよ」

いせ「父さんとおじいちゃんに挨拶しよう」

新二「うん」

 

仏壇の栄次の写真、割と大きいね。

 

いせ「父さん、あんた、随分、私に苦労かけたけど、一つだけお願いがあるの。聞いてちょうだい。新二を守ってやって。お願いします。おじいちゃんも」

新二「母さん。一人前にしてもらったのにわがまま言ってごめん。こうして、お国のために働けるように成長したのも、みんな母さんのおかげだよ。僕の留守の間、体、大事にしてよ」

 

いせは仏壇の前を離れ、泣きだした。

 

新二「泣かないでくれよ。そんなに泣いたら行けなくなるじゃないか。兵役が済むまでだよ」

 

いせは障子の陰で顔を覆って泣き続ける。

 

新二「心配して泣いてばかりいると体を悪くするよ。母さん、駅まで見送らなくていいよ」

ハッと顔をあげるいせ。「泣かない。もう泣かないから」

 

のぶ子が端野家に来た。腕で涙をぬぐって玄関に行く新二。「こんなに早く怪しまれなかった?」

のぶ子「ううん。おばさん、おはようございます」

 

端野家の前には見送りの人が集まっている。

いせ「さあ、お一つどうぞ。お嬢ちゃん、はい、どうぞ」

子供「どうもありがとう」

 

松井「あっ、ごめんなさいよ」

いせ「あら、旦那さん」お茶やお菓子?を配ってたのかな。

 

河島屋呉服店の旦那も国民服姿で髪も短くなっている。

 

松井「新ちゃん、いよいよだね」

新二「はい」

松井「あんたもさみしくなるね」

いせ「はい」

新二「母のこと、よろしくお願いいたします」

松井「心配せずにしっかり国のために尽くしてらっしゃい。お母さんのことは及ばずながら…無事を祈ってるよ」

新二「ありがとうございます」

 

いよいよ出発の時

新二「じゃ、母さん。駅まで来なくていいから。ホントに」

うなずくいせ。

 

玄関前

新二「皆さん、お見送りありがとうございます。母が一人残りますので、何かとお世話をかけると思いますが、よろしくお願いいたします。端野新二、満州へ赴きました暁は粉骨砕身、頑張る所存です」

松井「端野新二君、万歳!」

一同「万歳!」

 

新二はリュックを背負い、帽子をかぶって家から出ていき、見送りの者たちが「出征兵士を送る歌」を歌う。

出征兵士を送る歌

出征兵士を送る歌

  • ボニージャックス & 林伊佐緒
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

のぶ子も一緒について歩く。

 

    遂完

爭戰亞東大

 

と大きく壁に書かれている前で

男性「浅野順一郎君、万歳!」

一同「万歳! 万歳! 万歳!」

と送り出される者。

 

東京驛

列車に乗り込んでいる新二。

のぶ子「新二さん」

新二「おふくろのこと頼むね」

松井「元気でね」

新二「はい」

一同「万歳! 万歳! 万歳!」

 

列車がゆっくり動きだし、新二はホームの人々に頭を下げる。その中にいせ! 驚く新二。

 

<あのときの顔。あの新二の顔。私の新二。今でこそ少し変わりましたが、長いこと夢に出てきた新二は、あのときのあの顔でございます>

 

端野家

一人正座しているいせ。

 

列車の中

ゆで卵を塩をつけて食べている新二。

 

端野家

いせの耳には新二の歌声が聴こえる。

 

♪湯島通れば 思い出す

お蔦 主税(ちから)の心意気

知るや白梅 玉垣

のこる二人の 影法師

湯島の白梅

湯島の白梅

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石田さんの壮行会で新二が歌い、石田さんがギターを弾いた。

 

暗くなってもそのまま座っていて静かに涙を流すいせ。

 

<何週間かたちました。しかたなくやってるものの仕事にも熱が入りませんでした>

 

裁ち台のまえでぼんやりしていたいせは、手紙が届いたので慌てて玄関へ行き、すぐ封を切る。

 

新二の手紙

「母さん、変わりありませんか? 途中、他の列車の事故で遅くなりましたが、無事着きました。いないと思っていた母さんが東京駅の人波の中にいたときは、びっくりしましたが、うれしかったです。涙が出て、しかたありませんでした。大きな男が涙を流しているのですから、僕の前にいた人たちは少し変なのではないかと思ったことでしょう。僕はなんと思われてもよいと思い、涙を拭きながら、母さんも泣いているのではないかと思いました。入隊するまで友人が世話してくれた会社で働きます。元気を出して働きます」

 

日本国旗と満州国旗が掲げられた工場

満州の国旗ってこんなデザインだったのね。

 

満州重工奉天工場」から出てくる新二。

 

手紙の続き

「寮には風呂場もあり、洗濯も毎日します。ここの景色はとても雄大で気持ちがいいです。朝も早く目が覚め、不思議です。針を持つのが何より苦手ですが、兵隊に行ったとき困りますから自分でやります」

 

洗濯も針仕事も新二がやっている。従軍経験ある世代のほうが家事ができると聞いたことがあるけど、ホントにそうかもしれない。かえって、この子世代から下のほうが「男子厨房に入らず」の教えを受けたのかな~?

 

手紙の続き

「母さんが一人で毎日縫い物をしている姿が目に浮かびます。母さん、怒らないでください。あんなに母さんが反対していたのを押し切って満州へ来たのに新二は意気地なしです。会社から少し離れた所に大きな川があります。一人で行きました。母さんのことを思い出し、我慢できずに川に向かって『母さん、母さん、母さん』と3回も大きな声で東京まで聞こえるように呼びました。誰もおりませんから思いっ切り呼びました」

 

新二<<母さ~ん!>>

 

何処でロケやったんだろ? 誰もいないと言ってたけど、川には小さな船をこいでる人がいたけどね。

 

端野家

裁ち台に手紙を並べて、作業するいせ。

 

<わたくしもできるだけ手紙を書きましたが、書きつけないうえに字が下手で葉書一枚書くのも、もう大変でした。しばらくして新二から初めて給料をもらったといって、お金を送ってきましてね。うれしくって、うれしくって。もったいなくって新二の名義で預金したんでございます>

 

裁ち台で手紙を書くいせ。なにかで肩をたたいてたな。

 

松井「へえ、新ちゃんがね。新ちゃん、親孝行な子だから」

いせ「あの子が働いて、お金を取るようになるなんて…」

松井「新ちゃん、育てるのには、あんたも苦労したからね。早く戦争が終わってくれればいいんだが、どうもこの分だと長引きそうだね。若い者(もん)の徴兵年齢を引き下げたり、四十以上の者まで兵隊に取られる始末だ。私なんかギリギリのところで兵隊に取られずに済んでるが、幸いというか日本は島国だからね。こうやって空襲も受けずに暮らしていられる。これがサイパン硫黄島が敵の手に渡ったら、おしまいだね」

いせ「というと?」

松井「今んところ、飛行機は日本の上空まではなかなか飛んでこられないんだよ。日本まで来るだけの燃料を積めないんだね」

いせ「そうすると、もし、サイパンが落ちたら…」

松井「敵はそこに基地を造る。もし、そうすれば日本までひとっ飛びだからね。毎日でも空襲受けるだろう」

いせ「ああ…」

松井「日本も必死で守ってる。大丈夫だよ」

 

サイパン硫黄島が落ちたら、なぜ危ないのかという説明が分かりやすかった。

 

松井「もんぺや標準服の縫い直しばっかりで腕の振るいようがないね」

いせ「いいえ。仕事があるだけでも」

松井「まあ、辛抱してくださいよ」

いせ「はい」

 

松井「いせさん、あんた、少し痩せたかね?」

いせ「さあ…一人ですから配給物(もん)だけでなんとか」

松井「そらあ、戦地の兵隊さんたちのために私たちが我慢しなきゃならんだろうが、配給物だけじゃむちゃだ。闇の物もなかなか手に入りにくいだろうけど…新ちゃんのことばかり思いつめないで少し気を大きく持たにゃ」

いせ「はい」

 

<昭和19年の夏の初めころだったと思います。新二から兵隊検査に合格したという手紙が来ました>

 

新二の手紙

「甲種合格と言われたときは、うれしくて、これも長い間の母さんの苦労のおかげだと思って涙が出ました。安心してください。お国に役立つ人間になりました。あとは幹部候補生の合格を待つだけです。入隊前に一度、日本へ帰って母さんに会いたいと思いましたが、今のところ、帰国はできそうもありません。しかたないです」

 

工場から寮へ帰ってきた新二は寮母から内地からの手紙を渡された。

 

いせの手紙

「新二。兵隊検査、甲種合格の知らせ受け取りました。おめでとう。母さんもうれしかった。お前もこれで一人前の男になったのだと思うと涙が出て、しょうがありませんでした。母さんものぶ子さんも元気ですから安心してください。幹部候補生に合格したら内地訓練で帰ってくるのでしょう。母さん、楽しみにしてますからね。ちょっと恥ずかしいけど、お前が言ってきた写真を同封します。くれぐれも体に気をつけてください。返事、待ってます」

 

端野家玄関前で撮影されたいせとのぶ子の2ショット。

 

寮母の部屋

新二「おばさん、いい?」

寮母「はい。お母さん、手紙、よかったね」

新二「うん。体に気をつけろって。兵隊検査に合格したこと喜んでたよ」

寮母「お母さん、一人。たったの息子と離れて寂しいね。私の旦那、息子、みんな死んだ。私、一人」

 

寮母さんは服装やしゃべり方から地元の人という設定かな。部屋のたんすの上の写真立てには夫と思われる男性と幼い息子の2ショット。

 

寮母「端野さん、死んだらダメ。お母さん、泣く。かわいそう」

新二「おばさん、見てよ。おふくろと友達だよ」写真を見せる。

寮母「内地のお母さん、とても優しそう。友達、きれいね」

新二「いや…」

寮母「恋人?」

新二「ハッ…」照れて下を向いてしまう。

寮母「フフフッ、ありがとう」写真を返す。

 

縫い物をしている寮母の姿が一瞬、いせの姿に見えた新二は、寮母の肩を揉む。

寮母「あっ、大丈夫」

新二「だいぶ凝ってるね」

寮母「ああ…よい気持ち。ありがとう。お母さん、いつもこうやって?」

新二「たまにね。もう少ししてやればよかったと思うよ」

寮母「親、離れる。本当のありがとう、分かる」

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新二は小島化しなければいいが…しないよっ!

 

端野家

いせの肩を揉むのぶ子。

いせ「いい気持ち」

のぶ子「新二さん、そろそろ入隊するんでしょう?」

いせ「そうね。幹部候補生の試験に早く受かって帰ってきてくれるといいけど」

のぶ子「ええ」

いせ「はい、ありがとう。もういいわ。ありがとう。疲れたでしょ?」

のぶ子「ううん、平気」

 

裁ち台には手紙が何通も置かれている。

いせ「のぶ子さんのうちのほうには出せないからって、いっつも『のぶ子さんによろしく』って書いてあるわ。写真が着いたそうよ、私たちの」のぶ子に手紙を渡す。「帰るときは長い軍刀をさげて帰ってくるって書いてあるけど、いつのことかねえ」

のぶ子「幹部候補生の試験って、ある程度、訓練が済んでからなんでしょうね」

いせ「そうね。このごろじゃ国内でも満足に汽車に乗れないんだから、満州から帰ってこれるかねえ」

のぶ子「おばさん…」

いせ「すぐ愚痴になっちゃって」

 

のぶ子が端野家を出た。

 

ラジオ「臨時ニュースをお伝えします。大本営陸海軍部発表」

 

端野家の家を出て右手奥の店に人が集まっていて、のぶ子も駆け寄る。

 

ラジオ「サイパン島守備に当たりたる帝国陸海軍部隊は圧倒的優勢なる敵上陸軍に対し、果敢なる攻撃を加え、数次にわたって、これを撃退せるも7月7日未明、最後の突撃を敢行。全員、壮烈なる戦死を遂げたり。同島にありし民間人もまた軍に協力し、多大なる戦果を上げたるのち全員、玉砕せり」

www2.nhk.or.jp

新聞の見出しが大写しになる

 

碎玉

 

<昭和19年7月7日。サイパン島は、とうとう玉砕したんでございます。米軍の呼びかけも聞かず、島に住んでいた日本人の女性たちが断崖から身を投げて自分から命を絶ったそうでございます。このサイパンの玉砕を境にして日本はますます負け戦の色を深めていきました>

 

当時の写真が映し出される。

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「本日も晴天なり」ではバンザイクリフの映像も映してて衝撃でした。

 

端野家

帰ってきたいせはハガキが届いてワクワク。しかし文面を見て表情が変わる。(つづく)

 

もういよいよ戦争も末期という感じ。いせが頼りにするのがいつも男性なのが気になる。引っ越してきて最初にそばを持って新二に挨拶に行かせたおばさんの家とかもっと親しくなるものかと思っていたよ。