1964年 日本
あらすじ
巨匠・成瀬巳喜男監督が高峰秀子、加山雄三の共演で描く傑作メロドラマ。舞台は高度成長期の地方の小さな酒店。結婚して間もなく夫を戦争で亡くした礼子は、嫁ぎ先の店を18年にわたって一人で切り盛りしてきた。義理の弟・幸司は、東京の会社を辞めて実家に戻ったが、酒に溺れ、けんかに明け暮れていた。そんな幸司を礼子はいつもかばい優しく迎えていた。ある日、幸司は、礼子に長年抱いてきた本当の思いを打ちあける…。
2024.9.5 NHK BS録画。ためずに見ていこう。白黒。意外とBSシネマで古い“邦画”は珍しい。
製作:藤本真澄
成田巳喜男
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脚本:松山善三
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森田礼子:高峰秀子…字幕黄色
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森田幸司:加山雄三…字幕水色
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久子:草笛光子
孝子:白川由美
ルリ子:浜美枝
森田しず:三益愛子
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野溝:藤木悠
森園:北村和夫
岡本薬局の主人:十朱久雄
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賀谷食糧品店主人:柳谷寛
商店主:佐田豊
店員:中村豊
ホステス:矢吹寿子
賀谷の妻・道子:中北千枝子
警察署長:清水元
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川俣:西条康彦
店員:小川安三
瓜生登代子
浦山珠実
大川秀子
矢野陽子
田辺和佳子
清水由記
紅恵美子
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監督:成田巳喜男
軽トラックで「高校三年生」を流しながらスーパーマーケット清水屋の宣伝をしている。
賀屋食糧品店は卵1個11円。対して清水屋は5円。
バー
清水屋で大量に卵を買って、ゆで卵にしてホステスに早食い競争をさせている野溝、青畑。一人で飲みにきていた幸司は、バカなことはよせと止め、男たちに絡まれ、殴り合いのケンカになった。
森田屋
警察から電話があり、幸司の義姉である礼子が迎えにきて帰ることができた。姑・しずには幸司のことは黙って出てきた礼子。幸司は大学を出たが、半年で仕事を辞め、今は無職。幸司の理想はルンペンで今は理想通りの暮らしをしていると礼子に話す。
集金に行くと出かけた礼子は幸司とは別に帰ってきた。帰ると久子が来ていた。草笛光子さんの変わらなさ、すげえ! 久子は礼子の夫の妹で幸司の姉か。久子は礼子に再婚の話を持ってきた。月給7万円、一昨年妻を亡くして、中学生の娘がいる。
いつまでも家に縛りつけたら義姉さんにすまない気がすると言う久子に再婚する気のない礼子。幸司にお嫁さんがきたらやりにくいわよと尚も勧める。
幸司は賀屋ら商店主たちとマージャンをしていた。スーパーマーケット清水屋は開店1周年。他にもスーパーマーケットができたら、うちみたいな店はパアだと賀屋が嘆く。
マージャンで稼いで帰ってきた幸司は店のビールを買い、飲み始めた。礼子は、しずは幸司に店を継いで欲しいのだと話すが、真面目に話を聞こうとしない。礼子が19歳でお嫁に来たとき、幸司は7歳。それから18年。幸司の父も兄も亡くなり、礼子が店をやってきた。あとは幸司さんにバトンタッチしたいと言う礼子に幸司はふざけるばかり。
リヤカーで味噌樽を運ぶ幸司と店員の川俣。大学出てリヤカー引いてるなんていいんですか?と川俣が言う。清水屋の前を通ると、野溝たちがうちならその味噌を半値で売ろうと絡む。幸司たちが店に帰ると、しずも礼子もいなかった。
昨日、幸司とマージャンをしていた賀屋が首を吊って死んだので、賀屋の家に行っていた。賀屋の妻は、もう一軒スーパーマーケットができたらおしまいだと話していた、スーパーマーケットに殺されたと泣いていた。
喫茶店
森園に会い、店をスーパーマーケットにする相談をする。北村和夫さん、若い。森園は店の立地はいいと褒める。
森田屋
酒屋といっても、調味料も扱ってるだんだね。礼子は電話で砂糖の注文を受け、川俣はバイクで帰ってきて、しょうゆなどの注文を受けてきた。
店に「幸ちゃん、いる?」と若い女性がきた。店の床にガムを吐き出し、幸司が置いていったという腕時計を見せた。礼子は、ルリ子と話したくて店を出た。浜美枝さんも若いね!
しずが孝子から店をスーパーマーケットにするんだって?という電話を受けた。森園は久子の夫なのね。孝子は最初の夫を亡くして再婚している。
帰ってきた幸司としずが話をする。幸司は森園からスーパーマーケットにするなら専務にしてくれと言われてムッとしていた。幸司は店に貢献してきた礼子を重役にしようとしていた。
しずは孝子と久子に相談。孝子は名義だけでも礼子を重役にしたらというが、久子は今後の相続のことなど面倒なので、本心は再婚してもらいたい。サラリーマンみたいに月給をだして働いてもらったらどうかと言う。ずっと礼子が店をやってきたことを知っているしずは幸司の説得はできないと弱気。
森田屋
スーパーマーケットでは80円だったと客に言われて値引きする礼子。幸司はパチンコ屋から景品を持って帰ってきた。今後について礼子に小言を言われる幸司。ルリ子のこともあんな女の子はやめなさいと言う。
幸司は「俺は義姉さんが好きだった」と告白した。礼子は18年間を犠牲にしてきたと幸司さんは言うけど、犠牲になったつもりはないと話すが、母や姉たちは礼子が家を出ることを望んでいる、俺はずっとそばにいたいと熱い告白! 礼子は家を出ると言うが、幸司が出ていってしまった。
帰ってきたしずに幸司さんとケンカしたと話した礼子。しずは、この店をスーパーマーケットにする計画があると話した。
電話が鳴り、礼子が出ると、酔っ払った幸司が公衆電話からかけてきた。礼子は家に帰ってくるよう懇願した。
真面目に店で働くようになった幸司。川俣が辞めちゃったのね。
何となく幸司を意識するようになってしまった礼子。マージャン仲間も幸司の真面目な仕事ぶりに驚く。
店番をしていた幸司にメモを渡して出かけて行く礼子。「お話があります。お寺で待っています」
幸司がお寺に行くと、礼子が待っていた。毎日息苦しくてたまらない、いつか人の噂になる、私と幸司さんとは生きてきた時代が違うと礼子が言い、ある決心をしたから止めないでほしい、明日話すと先に帰った。
孝子や久子も礼子に集められて森田屋に来た。改めて豪華な姉弟だね〜。礼子はスーパーマーケットにすることに賛成し、結婚して半年で夫を亡くし、18年を犠牲にしてきた気がする、一からやり直したい、私には好きな人がいますと話した。幸司は礼子の言うことを嘘と決めつける。
孝子や久子は礼子の言うことに賛成。礼子は午後の列車で一旦帰郷すると部屋を出た。
幸司は礼子の好きな人を確かめると、礼子が好きなのは夫で、嘘を言ったとすれば店の犠牲になったということだけ。幸司は、俺が嫁さんをもらったら帰ってきてくれる?と聞くが、分からないと答えた。
幸司は礼子を見送りたくないと出て行き、久子は礼子を追い出したと思われたくないと帰り、孝子も帰った。しずだけが礼子を駅まで見送った。
列車に乗った礼子。あ! 幸司も乗ってた!
混んでいる列車で初めは立っていた幸司が席が空いてきてどんどん近くに座っていて、ついに向かいの席に。幸司は薬屋の店主にオートバイを売り、できたお金で礼子にハンドバッグを買っていた。礼子の故郷は山形県新庄市。戦争中、勤労奉仕をしていた礼子がしずと知り合い、見込まれた。だから、しずは常に礼子に優しいんだね。
長い道中、途中の停車駅で立ち食いそばなど、よく食べる幸司。礼子は幸司の寝顔を見て涙を流し、次の駅で降りましょうと大石田駅で降りた。礼子は幸司の好意は嬉しかったと言う。
バスに揺られて温泉街へ。え! 「おしん」でおなじみ銀山温泉だ! 温泉宿に泊まった礼子と幸司。礼子は幸司の指にこよりを巻き、明日、しずのもとへ帰るよう約束させた。幸司を見ていてかわいそうになった。礼子自身も告白され、幸司の姿を捜すようになったと話す。幸司は改めて好きだと言い、抱きしめたが、堪忍してと泣き崩れた礼子。
幸司は宿を出て行った。
おばあさんが一人でやってる飲み屋に入った幸司は、女の子のいっぱいいるバーにいて、これから女の子と過ごすと礼子に電話した。
朝になり、荷物をまとめる礼子。外を見ると、指にこよりを巻いた手の持ち主にムシロがかけられ運ばれるのを見た。お連れさんが崖から降りたと宿の男に聞かされた礼子が慌てて外に出て、担架を見ていた。(終)
ええ〜!? ここで終わるのー!!
圧倒的に明るいイメージの加山雄三さんの影のある役が珍しい。切ない、このカップルはうまくいってほしかったな〜。久子が思いっきり嫌みを言う気もするけど、でも、見れば見るほど幸司がカッコよくて礼子とお似合いに見えた。個人的には若大将シリーズで演じた役より、なんか好き。