徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】たんとんとん #4

TBS 1971年6月22日

 

あらすじ

父の死後、最初の仕事は一軒家の建築。健一(森田健作)は新次郎(杉浦直樹)について修行を始めた。ある朝、健一が自分の留守を訪ねてくれたクラスメートに礼を言っていると、竜作(近藤正臣)にどなられる。

君のいる空

君のいる空

  • 森田 健作
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

2024.1.9 BS松竹東急録画。

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尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。

尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。

*

江波竜作:近藤正臣…大工。

石井文子:榊原るみ…竜作の恋人。

*

中西雄一郎:中野誠也…新築の家を依頼してきた。

生島とし子:松岡きつこ…新次郎の15歳下の妻。

*

夏川朝子:岩崎和子…健一の元同級生。

中西敬子:井口恭子…中西の妻。

*

磯田:岩上正宏…健一の友達。

朝子の父:高木信夫…歯科医。

客:戸川美子…磯田の店に来た。

*

堀田:花沢徳衛…棟梁。頭(かしら)。

*

生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。

 

主題歌

 作詞 山田太一

 作曲 木下忠司

 唄  森田健作

    (RCAレコード)

 

そういえば、オープニングを見ていて、主題歌を歌う森田健作さんの脇にRCAレコードと書いてあったけど、「あしたからの恋」では特にこんな表記はなかった気がするからハナからレコード化する予定はなかったのかな。今回はキャストクレジットの文字が水色になっていたけど、やっぱり見づらいのは見づらい。

 

「あしたからの恋」の録画を確認したら

音楽 木下忠司

唄 小坂一也

だけの表記で作詞作曲が誰かすら書いてなかった。

 

健一が誘導し、新次郎が車を出す。旧ツイッターだと日産チェリーではないかというので調べてみました。

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多分これ。尾形工務店の車の色はラベンダー色? 薄紫みたいな個性的な色。

 

新次郎「おい! 竜作、出かけるぞ。何してんだ? あいつ」

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竜作という名前、「男たちの旅路」では歌手の名前だった。第3部には出てないけど、森田健作さんのこのドラマの役名は竜夫。

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「夕陽をあびて」という山田太一脚本のドラマにもいた。橋田壽賀子さんが別のドラマに同じ名前の登場人物がいるように山田太一さんは”竜”のつく名前が好きなのかも?

 

健一が呼びに行くと、竜作は作業場でタバコを吸っていた。

健一「呼んでるよ、新さんが」

プカ~ッと煙を吐く竜作。

健一「待ってるよ、表で」

竜作「お前、大工になる気なら、このうちの息子だからって甘ったれんなよな」

健一「俺が甘ったれに見えるか?」

竜作「口の利き方に気をつけるんだな。半チクは半チクらしくしてろよな」

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木がいっぱいの作業場でその場でタバコを落として足でもみ消しながら出ていく竜作。昭和のあるあるだったけど危ないよ~。

 

しかし、竜作さん、見た目はめちゃくちゃカッコいい。近藤正臣さんは「柔道一直線」も主役じゃないし、少女漫画の当て馬ポジみたいな感じ? 森田健作さんは少年漫画の主人公っぽいよね。前回、酔っ払ってたときは関西弁だったけど、普段は標準語なのか~。ちょっと残念。

 

新次郎は健一に土地を見に行くから昼に俺一人帰ってくるからね、カンナ研いどけよと出かけていった。

 

仏壇に手を合わせるもと子に話しかける健一。

もと子「うるさいね。拝んでるとき、もの言いなさんな」

健一「あいつ、ずっと雇う気?」

もと子「あいつって?」

健一「うん…月給なんか決めたわけ? もう」

もと子「そりゃ新さんが連れてきたんだもん」

健一「仕事できんのかねえ」

もと子「うん…朝ご飯のとき、ちょっと聞いてみたんだけどね」

 

健一「うちへ住むのか?」

もと子「ううん。アパートが近くなんだって。なんかね、新さんがね、どっかのバーで知り合ってね、そんときからずっと目ぇつけてたんやて」

健一「バーで会ったって腕がいいかどうか分かんないじゃないか」

もと子「なんや? お前、イヤなのか」

健一「いやあ、俺はいいけどさ、タラタラ仕事するヤツだと困ると思ってさ」

もと子「そりゃあんた、2~3日使ってみなきゃ分かんないじゃない。よほどいけなかったら辞めてもらえばいいじゃない」

健一「うん。ああいうヤツは一度、徹底的にぶん殴っとくかなあ」

もと子「なんやて?」

健一「あっ…ハハッ。冗談だよ」

もと子「ケンカしたら承知せんで」

 

「おやじ太鼓」のときは運転手の黒田も住み込みだったけど、「兄弟」の信吾も「あしたからの恋」の正三もアパートを借りていてもう住み込みの時代じゃないんだね。まあ、住み込み家政婦のキクさんみたいなパターンもあるけどさ。

 

健一「あっ、母ちゃん。昨日のカンナね、新さん褒めてくれたよ。よく研げてるってさ」

もと子「すぐ話をごまかすんだから」

健一「ハハハハッ。さてと頑張るかな」

もと子「ハァ~、どこまで本気でやんのかな」

健一「本気さ! 俺は真剣だよ、母ちゃん」

もと子「いいよ。そんな威張らなくてもいいからさ。ノコギリでもカンナでもええから光らしてよ」

健一「よし、やるぞ」

もと子「やれよ」健一の後頭部をバシッと叩く。

 

ラベンダー色の日産チェリーが走る。品川44 す58-89

大きな道路から舗装もされてない住宅街へ。昔の懐かしい風景。

堀田「ああ、ここだ、ここだ。ほら、ねっ?」助手席から降りる。3ドアなので、後部座席から助手席に移動して降りてきた健一。

 

堀田「へえ、こりゃ割合よく整地してあらあ」結構草ぼうぼうの空き地。

健一「思ったより狭いね」←コラッ。

堀田「ハハハハッ。建てるうちを考えてみなよ。これだけありゃ上等だ」

新次郎「ホントね、割にきれいじゃない」

 

ここで健一たちと並び立つ新次郎がでかい! 森田健作さんのプロフィールは175cm。杉浦直樹さんの公式プロフィールは出てこなかったけど、181cmというのは見つけた。それくらいあるいはそれ以上ありそう。結構森田健作さんと身長差あり。

 

堀田「俺んとこは半日だな、こりゃ」

新次郎「うん? ああ。え~っと巽(たつみ)がこっちか。うん? う~ん…」ウロウロと敷地内を歩いている。

www.ndl.go.jp

巽=東南の方角ってことかな。

 

堀田「いいかい? 健坊」

健一「うん?」

堀田「分かっても分かんなくても新さんにくっついてるんだぞ。これから見積もりを出して、うちを1軒建てるまで初めからつきあえるんだからな。ずーっとくっついて見てんだぞ」

健一「うん」

堀田「おまけにこのうちは平屋だ。平屋ってのはな、お前、2階家の半分以下なんだから仕事はやりやすいし、足場はいいし、造作は楽だ。こういう建築で修業を始めるなんてのは、お前、ホントに運がいいんだよ」

健一「うん」

 

新次郎「しかしな、健坊」

健一「うん?」

新次郎「どうしても材料は落ちるからな。カンナ、白くなるの早いぞ」

堀田「ホントだ。お前、現場へ来たって一日これだぞ、これ。ヘヘッ」カンナを研ぐしぐさ。

健一「そんなに早くカンナいかれちゃうの?」

堀田「そりゃそうだ。材木が悪かった日にゃ、カンナなんぞは30分ぐらいであまあまになっちまうな。なっ? 新さん」

新次郎「えっ? いやあ、そんな悪い材料は使わないけどね」

堀田「何度も聞いてるだろうけども健坊のお父っつぁんはな、こういう小さなうちになると一番張り切ったもんだ」

 

敷地の石をどけたり、雑草を抜いたり。

 

堀田「まあ、やっとの思いで金をためてさ、だまされるんじゃねえか、手を抜かれるんじゃねえかって不眠症みたいになっちまうのが旦那だ。こういう小せえうちはな」

健一「ああ」

堀田「そういう旦那にこそ特に念を入れろって、こりゃ、なかなかできそうでできるこっちゃねえんだよ。なあ? 新さん」

新次郎「うん」

堀田「ご祝儀は少ねえし、人は信用しねえし、細けえことをゴタゴタ、ゴタゴタ言ってくる。そういう人に親切にしろってことなんだからな。新さんなんぞは、そういう棟梁で修業した身だ。やっぱりその血は流れてらあな、なあ? 新さん」

 

小さいうちを建てた人にグサグサくることばっかり言うね、頭ぁ(^-^;

 

新次郎「ハハッ。バカにけん制するじゃないか」

堀田「えっ? いやいや、そういうわけじゃないけどもさ」

新次郎「いやいや、いやいや、大丈夫だよ。念入りにやるさ」

堀田「いやね、私の紹介だろ? やっぱり出来上がってから、ああ、いい大工さんを世話してもらったって喜んでもらいてえやな」

新次郎「ハハハッ。いや、俺もね、健坊に基本を教えていく仕事だからね。手ぇ抜いたりなんかしねえよ」

堀田「そういうこった。ああ、健坊」

健一「うん?」

堀田「よく見てろよ。このなんにもねえ土地に1軒、人の住むうちを建てるんだ。ええ? こんな面白(おもしれ)え仕事はめったねえぜ」

健一「うん」

 

新次郎「あっ、頭」

堀田「えっ?」

新次郎「ここの玄関の位置はこれは違うね、やっぱり」広げた紙を見せる。

堀田「そうか?」

新次郎「真南がここら辺りでね。あっ、隣のうちのこともあるか…」

 

堀田「おい! 健坊、健坊」離れていた健一を呼ぶ。

健一「はい」新次郎の脇に来て紙をのぞきこむ。

新次郎「う~ん…うん」紙を持ち歩き移動すると堀田も健一も一緒になって移動する。しゃがみ込んだ新次郎と一緒にしゃがむ堀田と健一。新次郎が左を向けば一同左。

 

制服姿の朝子が尾形家を訪ねた。「あの…健一さんいらっしゃいますか?」

もと子「あなた、健一の学校の方?」

 

朝子は同じクラスの夏川だと自己紹介し、「健一さんにちょっとお目にかかりたいんですけど」と言う。しかし、もと子が健一が新しい現場を見に行ったと言うと帰ろうとする。

 

もと子「でももうすぐ帰ってくると思いますけど」

朝子「いいんです。お元気でってお伝えください。失礼しました」

 

もと子はもう一度名前を確認。夏川朝子だと名乗って帰って行った。

 

今度は縁側に出前持ちの女性が現れた。

もと子「あら、あんたおそば屋さん?」

文子「いいえ、出前のついでなんです」

もと子「ついで?」

文子「あの…江波竜作さん、おたくへ就職したって聞いたんですけど」

 

文子は竜作と同じ土地の出身だと言い、もと子が増築現場に行っていると伝えると、遠くなかったらその現場に行くと言い出す。もと子は会うなら夜とか休みの日にしたらどう?と提案し、あんたが来たことはちゃんと言っとくと出前の途中で遊ばないようにと注意する。名前を聞くと「恋人が来たって言えば分かります」と出ていった。ちゃんと名乗る朝子との対比?

 

もと子と健一が夕食を食べている。

健一「ん? お元気でって?」

もと子「なかなか頭の寄さそうな子じゃない」

健一「そんなことなぜ今まで黙ってたんだよ」

もと子「だって夕方ワサワサしてたんですもの」

健一「うちにいる人がそういうことはちゃんとやってくれなきゃ困るじゃないか」

もと子「困るったって別に急用でもなさそうだったし」

健一「困るよ、ホントに」立ち上がる。

 

もと子「どこ行くのよ?」

健一「それで他になんか言ってた?」

もと子「なにもご飯の途中に立つことないでしょ」

健一「なんか言ってたかって聞いてんだよ」

もと子「何よ、女の子が来たぐらいで目の色変えて」

 

健一「冗談じゃないよ。どんな用だか分からないから気にかかってんじゃないか」また椅子に掛けて食べてる。

もと子「大した用事もないでしょ」

健一「じゃあ、なぜ来たのさ?」

もと子「知らんよ、そんなこと。お元気でって言いたかったんでしょうよ」

健一「お元気でってか?」

 

磯田の実家は雑貨屋? 金物店? 今のホームセンターみたいに何でも売ってる店。磯田ははたきを持って店番している。

磯田「本当? へえ、彼女来たの」

健一「びっくりしちゃったよ、俺だって」

磯田「そりゃお前、すごいじゃん」

健一「とにかくね、俺んちまで来たんだからな。驚いちゃうよな」

磯田「だけど、お前みたいにできないのにホントに惚れたのかねえ」

健一「男はお前、頭じゃないよ。心、きっぷだよ」

 

女性客が磯田に声をかけた。「洗濯機のゴムホースあるかしら? おたく」

磯田「え~、ビニールのならありますけど」

女性「ビニールじゃねえ…冬になると硬くなっちゃうでしょ? あれ」

磯田「いやあ、このごろのは割とよくなってるようですけど」

女性「そう。いいわ、他探すから」

磯田「またどうぞ」

 

健一「どうしたらいい?」

磯田「そうだなあ」

健一「あっ、電話かけて呼び出そうか」

磯田「それでお前、キスしちゃうの?」

健一「バカだね、お前は。そんなことするわけないだろ。そんな勇気あるかよ」

磯田「じゃ、かけろよ」

健一「うん?」

磯田「俺んちからかけろよ」

健一「お…おい。おばさんがいるじゃないか。こんなとこでかけられるか」

 

黒電話が鳴り、白衣姿の男性が受話器を取る。「はい、夏川歯科です」

 

電話ボックスにぎゅうぎゅうに入っている磯田と健一。「あっ、あの…わたくし、あの…」

夏川「なんですか?」

健一「はあ、あの…」

磯田「しっかりしろよ!」

健一「うるせえな。あっ、いや…ちょっと朝子さんお願いしたいんですが」

 

夏川「君は誰?」

健一「尾形っていいます」

夏川「クラスの友達かね?」

 

健一「いえ。そういうわけじゃないんですが」

夏川「どこの学校かね?」

健一「いえ、学校は行ってないんです」

 

夏川「朝子はね、今、受験勉強中。電話には出ません」ガチャ切り。

 

健一「ちくしょう」

磯田「どうした?」

健一「イヤなヤツ。すげえイヤな親父だよ」

磯田「それで?」

健一「取り次がねえんだよ。チェッ…」

磯田「しょうがねえよなあ、それじゃ」

健一「恋愛の邪魔するヤツなんてのは最低だよ」

 

昭和の電話あるあるだね。

 

作業場

ランニング、腹巻姿の竜作がまだ仕事をしている。

もと子「あら、竜作さん」

竜作「あっ、どうも」めちゃくちゃ愛想がいい。

もと子「急に音がしたからなんだろうと思ってね」

竜作「いやあ、どうも」

もと子「遅かったのね」

竜作「ええ、キリのいいところまでやってましたから」

もと子「おなかは?」

竜作「カツ丼取ってくれました」

もと子「そう」

 

竜作「いや、本箱の下をね、補強してやろうかと思いまして」

もと子「ああ、そうか。あそこのうちは書斎の増築してたんだっけね」

竜作「ええ。これ、半端な材料らしいから」

もと子「まあ、そうしてあげなさい。向こうだって喜ぶんだからね」

竜作「ええ」

 

もと子「あんたって割合よく働くわね」

竜作「いいえ」とびっきりの笑顔。

もと子「あんた、そんなに頑張らなくていいのよ」

竜作「続かないっすよ、そんなに」

もと子「そうよ。来てね、やたらに働く人なんてね、かえって続かなくて辞めていくもんよ」

竜作「ハハッ、大丈夫っすよ、俺は。ハハッ」

 

もと子「あっ、そうだ」

竜作「えっ?」

もと子「あの…お昼、恋人が来てたよ」

竜作「恋人?」

もと子「うん、そう言ってもらったら分かるって」

竜作「そんなんじゃないですよ」

もと子「なかなかかわいい子じゃない」

竜作「今度来たら辞めちゃったかなんか言って追い返してください」

もと子「あら、そんなこと言っていいの?」

竜作「いいんですよ。色恋なんか当分縁がないですよ、俺は」

もと子「何言うてんの、若いくせに」

竜作「とにかくあんなヤツ、恋人でもなんでもありませんから」

もと子「なんかわけがありそうね」

竜作「いえ」

 

まあ確かに名乗らないし、ストーカーの手口みたいだ。

 

縁側から健一が「母ちゃん、何してんの」と声をかけた。

 

もと子「あっ、じゃあさ、あの…さっと片づけて帰んなさいよ、ねっ?」

竜作「ええ」

もと子「ご苦労さん」

 

中西家

新次郎「え~、まあ、ざっくばらんなことを言いましてね」

中西「ええ」

新次郎「え~、225万ってとこですね、総工費」

 

15坪の6畳、4畳半、洋間、台所、風呂場、玄関。

 

支払い方法

仕事にかかる前に内金30万。

建て前を済ませて大体総額の2分の1、80万。

仕上げの段階で4分の1の50万。

完成して40万。

いろいろ細かい付帯工事の清算で25万。

 

30年ローンとかじゃなく一軒家が完成するまでに完済しちゃうんだ! そういえば「岸辺のアルバム」だってあと〇年ローンが残ってるって話はなかった気がする。

 

中西「土地があれば、うちはなんとでも頑張れますね、やっぱり」

新次郎「ハハッ、そうですね」

中西「土地の借金が残ってるんですよ、実は」

新次郎「あっ、そうですか」

中西「しかし、無理でもなんでも子供が出来るまでに1軒造ろうって。ちょっと強引なんですけどね」

敬子「無理しなきゃ、うちなんかなかなか建たないでしょう?」

新次郎「ホントですね。工賃も毎年上がってますからねえ」

 

中西「夫婦でものすごくケチになりましてね、もう3年ぐらいこま切れ以外は食ってないよな?」

敬子「イヤ、そんなこと言わないで」

中西「いいさ。どういう金で建てるのか分かってもらっといたほうがいいもの」

新次郎「ハハハッ、怖いな、どうも」

 

中西「で、契約はいつにします?」

新次郎「あっ、それはね尾形のおかみさんと取り交わしてもらうんでね、近日中、伺うと思いますがね」

中西「そうですか」

新次郎「まあ、今日出した金額はホントの概算ですからね」

敬子「もっと高くなることもあるんですか?」

 

新次郎「いえいえ、これでなるべく抑えますけどね。この…仕様書っていってね、細かい約束事をこれからおたくさんと一緒に作ってくわけですよ」

中西「はあ」

新次郎「土台はコンクリートと、え~、屋根はトタン、または瓦とかですね、内装はプリントの合板、塗り壁は一体どこへ使うか、建具、下水、排水ね。もうそういう細かいことをね、すっかり決めてから契約ってことにしないとね、これがもめるもとになるんですわ」

中西「うん、そりゃそうだな」

敬子「ホントにベテランって感じね、新さんは」

新次郎「いえいえ、フフッ」

敬子「頼りにしてます。お願いしますわ」お酒を勧める。

 

新次郎「いやあ、しかし、羨ましいですねえ。こうしてお二人で食を詰めてもうちを造ろうなんて」

中西「何言ってるの。聞いてるんだから、なあ?」

敬子「15も年下の若い奥さんで幸せいっぱいなんでしょう」

新次郎「あれ? 頭、そんなこと言ったんですか」

中西「かわいいお嬢さんがいるんですってね」

新次郎「ええ、まあね。いや、しかしね、おたくさんみたに全て一致協力ってわけには、ハッ…なかなかいきませんわ」

中西「そんなことないでしょ?」

新次郎「いや、愚痴を言っちゃいけないですよねえ、よそへ来て」豪快に笑い、コップ酒を一気飲み。

 

間のCMはファミラのスマートウォッチだった。機能より専用アプリがGooglefitと連携できるかが重要だし、大画面と宣伝されるけど、実際大画面のスマートウォッチは特に女性の腕には邪魔になる。こればっかりは使ってみないと分からない。16,500円が7,980円だというけど、使い始めならもっと安いのから始めてもいいと思うな…ともういいっての! 調べると専用アプリのGlory Fitは連携してるらしい。

www.family-life.biz

あら? これはテレビCMよりもっと安価な3,980円だ。

 

新次郎が茶の間で自らお茶の準備をしていると「一緒に眠っちゃった」ととし子が起きてきた。

新次郎「そこでな、大福買ってきたんだ」

 

自転車屋の向こうで買ってきたと言うと、あそこのなんか食べられたもんじゃないと否定する。新次郎はとし子に食べさせたくて買ってきたと言う。

とし子「ならもうちょっとマシなとこで買ってきてくれればいいじゃない」

新次郎「お前ね、たとえ、大福がどこの大福でもだよ、それを買ってきた亭主の気持ちが大事だとは思わないの?」

とし子「何、ショボくれたこと言ってんのよ」

新次郎「いや、俺が女房なら食うね」

とし子は大あくび。

 

新次郎「たとえ、この大福がまずくてもだよ。僕はその愛情を食うね、愛情を」

とし子「どうしてまずい物(もん)買ってくんのが愛情なの?」

新次郎「いや、だ…いや、俺はこれまずいと思わないもん」

とし子「まあ、いいわ、もう」

新次郎「ねえ、ねえねえ。俺がね、あそこ、ずっと帰ってきたらさ、あそこの店の明かりがこう通りに漏れててね。あっ、そうだよ、売れ残りの大福、いいなあ。で、買おうかなと思ってさ」

とし子「売れ残りがどうしていいの?」

新次郎「いや、だからさ、それはね、昔ね、銭湯の帰りにね、そのなんていうか、こうちょっと硬くなったような大福をね、おふくろがよく買って…」

とし子「ほら! 私のためなんて言っといて」

新次郎「いや、だからさ、そういう昔のおしゃべりをしながらさ、お前とこれを食べようと思ったんじゃないか」

 

とし子「いやね、おじいさんみたい」

新次郎「お前、そういうことを言うもんじゃないぞ」

とし子「死ぬんじゃないの? もうじき」

新次郎「どこ行くんだよ?」

とし子「トイレ行くの」

 

新次郎「俺はね、今までの俺と違うんだぞ、お前」

とし子「どこが?」

新次郎「どこがって、棟梁が死んでさ、おい、尾形んちは…」

トイレに入っちゃうとし子。

新次郎「尾形んちはずっと俺がこれから支えてくんじゃないか。お前、金だってな、5割増しで入るんだよ」

 

トイレから出てきたとし子は、そんなおっきな声出さないでよと注意。「起きちゃうじゃないのよ」

新次郎「いや…」

とし子は寝室の扉を閉めてしまう。

 

新次郎「なんだよ。いいよ、分かったよ。しかしねえ、しかし、こういうときにさ、夫婦がこう…協力し合いたいじゃないか、ええ? 俺やるぞ、そう、あなたやってねって。なんていうか、こうね、一致協力っていうのが欲しいじゃないの。いいよ。いいよ、いいよ。どうせ俺はね、どうせ俺は孤独なんだから、うん。お前の大嫌いな大福食って、酒飲んで腹壊して寝ちゃうから」大福を立て続けに頬張る。

 

新さん、見た目と年齢だけで結婚決めたんじゃないでしょうね?

 

朝の登校風景

立ち尽くす磯田に「尾形いねえと元気ねえな」「コンビで売ってたんだもんな」と生徒たちが声をかけた。

 

尾形家

健一の姿はなく、出勤してきた竜作はもと子に愛想よく挨拶する。

もと子「あんただけね、しっかりしてんのは。新さん、また来ないのよ。もうあきれてものが言えないわ。ねえ?」

竜作「ええ」

 

花束を持って、誰かにさよならと言っていた朝子に磯田が声をかけた。朝子は花束を健一にもらったと話した。「格好いいわ、あの人」

 

磯田「あいつみたいに勉強できなくてっても女の子って好きになるもの?」

朝子「そりゃ、あの人ぐらい格好よければね」

磯田「ふ~ん」

朝子「ごめんなさい」

磯田「ああ、いいさ。俺だってこういうタイプがいいって人だっているもの」

 

朝子さんスラッと長身で磯田と同じくらいあるな。

 

健一が帰宅。「おはよう」

竜作「おい、ちょっと待てよ」

健一「なんだ?」

竜作「朝っからフラフラ出歩くんじゃねえよ」

健一「今日は特別だよ」

竜作「下小屋の掃除はあれはなんだい?」

健一「ゆうべの最後はあんたじゃないかよ」

竜作「誰がやろうと掃除はお前だよ。朝起きたら真っ先に掃除するんだ。他に能はねえんだからな。分かったかよ?」

健一「分かったよ、バカ野郎!」

竜作「チッ…なんだ、この野郎」

 

作業場

新次郎はもと子に文句を言われている。「やかましく言いたかないですけどね。これからはあんたが一番の棟梁なんですからね。それが朝遅れてくるようじゃ下の者の見せしめがつかんでしょうが。私はこんなこと、しょっちゅうは言いたくはないですけどね、今日は言わしてもらいます。だって家を1軒建てる大事なときなんですからね」

新次郎「すいません」

もと子「そりゃね、起こさなかった奥さんも悪いかもしれん。でもあなただって仕事なんだからね。寝るときにさ、いくら酔うてても目覚ましぐらいかけてくれる神経がなくちゃダメよ」

新次郎「ええ」

 

作業場に来た健一。「どうすんの? 新さん、それ、車積むの?」

新次郎「いや、墨付けだ」

健一「うん」

 

もと子の怒りは健一に飛び火。「何よ、あんた。職人が朝からウロウロして仕事になると思うの?」

健一「分かったよ。うるせえおばはんだな、もう」

もと子「おばはんだな、とはなんだよ!」

健一「おっ! 景気よくなってきたな、母ちゃん」

もと子「笑い事じゃありませんよ」

健一「すいません」作業場から走り去る。

 

もと子「ホントにあれは生意気な子なんだから」

 

健一が走った先に竜作が立っていた。「笑い事じゃないぞ、この生意気」すれ違いざま肩がぶつかる。

健一「この…この野郎!」竜作を殴る。殴り合いになり、新次郎が止める。「こら、竜作、健坊、やめろ! おい、やめな!」

 

もと子「お前たち、そんなことで家1軒建てられるのか! やめなさい! やめなさいっちゅうに!」健一と竜作の組み合う腕の間をすり抜けちゃうほど小柄。そしてやっぱり2人よりだいぶ大きい新さん。ドタバタでつづく。

 

健一は先輩の竜作、新さんにもため口だもんねえ。それにしたってランニング、腹巻でもカッコいいってどういうことだ、竜作!