TBS 1970年6月23日
あらすじ
直也(大出俊)とのデートの日、和枝(尾崎奈々)は朝からそわそわと落ち着かないでいた。しかし夜になり、予定の時間を大幅に過ぎても仕事を抜けだせない直也に、和枝は怒りを爆発させる。
2023.11.29 BS松竹東急録画。
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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)
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井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。26歳。(字幕水色)
中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。20歳。
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中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。
中川ます:山田桂子…トシ子の母。
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中沢:小林勝也…直也の同僚医師。
トメ子:丘ゆり子…修一の店のアルバイト店員。
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看護婦:坂本眸
医師:花井緑太郎
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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。
本日休業の札の下がる「菊久月」
福松と常子は出かけるため、2階にいる和枝に声をかけたが降りてこない。
福松「何をしてんだ。2階へ上がったきりで」
常子「今夜、野口さんとデートがあるとか言ってたから支度があるんでしょ」
福松「今から支度をすることはないだろ」
常子「うれしいんですよ」
福松「野口さんもよく懲りないよ。昔の男ならひっぱたかれた女を誘うもんか」
2階から降りて来た和枝は、もう出かける格好をしていた。和枝はこれから美容院に行ってセットしてくると言う。ここで出てきた留守番問題! 昭和のホームドラマを見ていると必ず出てくる。鍵を複数所有してないというより急な来客に対応できないことがダメってことなのかな。
福松「おい、留守番はどうするんだ」
常子「もうすぐ正三さんが来てくれるはずですよ」
福松「当てになるもんか」
和枝「来るわよ。自分のことだもの」
常子「じゃ、お前ね、正三さんが来てから出てちょうだい」と和枝の着物をチェックしている。
福松「さあ、行こう行こう。もうこういう話は早く片づけなくっちゃ」
常子「あなた、表から出ましょう」
福松「どうして?」
常子「縁談持っていくんだもの」
福松「ああ、そうか」
2人は店の出入り口から外へ。裏口に行こうとしていた正三が「今からですか」と声をかけてきた。
福松「いいんだな? 話しに行っても」
常子「今更、何言ってるんですの?」
福松「迷ってるんだよ、正三だって」
正三「いえ、迷ってるわけじゃないんですけど、トシちゃんの返事がおっかなくって」
常子「大丈夫よ。とにかく2人で一生懸命話してくるから」
正三「すいません。お願いします」
福松たちは隣へ。正三は中川家に向かって手を合わせ、裏口から谷口家へ。
和枝「お父さんたちに会った?」
正三「ええ。ハァ…いやに改まって表から出てきたでしょ。胸がドキンとしてね。弱いなあ」
和枝「当たって砕けろよ」
正三「砕けちゃ困るんですよ。長年の夢だからな」
和枝「大丈夫そうな気もするし」
正三「大丈夫でない気もするし」
和枝「つらいわね。恋をすると」
正三「今頃、話を切り出してると思うと震えがくるよ、まったく」
和枝「上がってお茶でも飲んでらっしゃい」
ます、福松が向かい合って座り、常子はその間。トシ子がお茶を運んできた。
ます「あの…そっでお話ってなんです?」
福松「縁談ですよ」
ます「誰のです?」
福松「誰がってあんた、決まってるじゃないですか」
ます「ああ、おキクさんの」
福松「冗談じゃない。誰があんなおばちゃんのこと…」と言いかけ、常子が止める。
ます「じゃあ、あの…トシ子の?」
常子「トシ子さんのいらっしゃるところでお話ししていいのかどうか」
トシ子「どうぞ。私もお聞きしたいですわ」
福松「そうだろう。娘には楽しい話だからね」
ます「楽しいも何も相手しだいですよ」
常子「ほんとにね。うちでも和枝の縁談でイヤな思いをしましたわ」
ます「ええ、もうお互いにね断るときって、もう気持ちが悪くて」
常子「ほんとにねえ」
福松は大きな咳払いをして「実は正三のことですがね」と切り出した。
ます「まあ、正三さんですか」
福松「あいつのことはよく承知だろうから、くどくは申しませんが」
ます「正三さんでしたか…」←あからさまにガッカリな表情。
谷口家で水を飲み、茶の間で雑誌を広げながらタバコを吸う正三。電話がかかり、慌てて出た。そうか、急な来客+電話番もあるんだね。
正三「そうなんだよ。落ち着かなくって」
修一「しっかりしろよ。当たって砕けろだ」
正三「イヤだなあ。さっき和枝さんにも同じこと言われたんだよ。ツイてないのかな。ガックリしちゃうな」
修一「粘りだよ。仕事だって恋愛だってぶつかってからが勝負だろ。弱気出しちゃダメだよ」
どさん子に客が入ってきたので「あとで来ないか?」と誘い電話を切った修一。そこにトメ子が来店。「修ちゃん!」
「とうとう申し込んだわね」と怒っているトメ子は福松と常子が隣へ入って行くのを見ていた。「どうせどっちもパアよ。絶対パアにしてやるんだ、私」
修一「バカ! お前に関係あるか」
トメ子「大ありよ。さよなら!」店を出てガラス戸越しに「べー!」と舌を出して去っていった。
男性客「なんだい、あの女」
修一「さあ?」
福松「一生、あの腕なら食いっぱぐれがないし、第一、性質がいいんだ、正三は」
常子「優しいんですよ、とぼけてるようで」
ます「給料いくらです?」
福松「いや、今、手取り8万なんですよ。まあ、10万ほどは出してやりたいんだが、なかなかそこまでいかなくてね」
常子「長野にお兄さんが2人いてね、どちらも堅いお勤めだし」
ます「将来、お菓子の店でも出す当てはあっとですか?」
福松「いや、それは今のところ…何しろこう土地が高くちゃ」
常子「うちでもできるだけのことをしてやりたいって考えてるんですけどね」
福松「いい男だってことは保証するよ。トシちゃん」
トシ子「はい、それはよく分かってます」
ます「この子に前から関心があることもうすうす承知はしとったですが、まあ、結婚の申し込みまでするなんて思ってもみなかったわ」
常子「考えてやってくださいな。一生懸命なんですから」
福松「働いてても時々ぼやっとして困るんだ。どうもトシちゃんのことを考えているらしいが」
トシ子「そんな…」
常子「すぐにお返事はいただけないでしょうから、よくご相談になって」
ます「そりゃあ、よく考えますが、今、大阪の伯父の息子との話も進んどるし」
トシ子「お母さん」
ます「だってほら、もう一つ紙問屋の…」
トシ子「そんなこと今言わなくたって」
ます「言うといたほうがいいとよ、ねえ?」
常子「ええ、いろいろお話もおありでしょうからね」
福松「話がいくつあったって正三ほど人間のいいヤツはいないと思うがな」
ます「いくら人間が良くたって一生のこっでしょ。そっだけで話を持ってこられても」
福松「なにもそれだけっていうわけじゃないですよ」
常子「お父さん、今日はこれで」
ます「そうですか。じゃ」
トシ子「どうもありがとうございました」
路地をウロウロしている正三。福松と常子は中川文房具店の店の入り口から外へ出て菊久月へ。
谷口夫婦の帰ったあとの中川家
ます「ほんとにバカバカしくて話にもなりゃせん」
トシ子「何、プンプンしてるの?」
ます「ずうずうしいよ、正三って男も」
トシ子「どうして?」
ます「話ん途中でもう腹が立ってきちゃって、よっぽどすぐ断ろうと思うたわ」
トシ子「なにもそんなに怒ることないじゃない。正三さんなら悪い話じゃないし」
ます「うん? お前好きなの? あん人が」
トシ子「結婚の相手として見たことなかったわ」
ます「だろ? イヤですよ。家もない財産もない。よくもまあお隣のご夫婦も話ば持ってこられたもんね。表通りで商売してるってことはどう少なく見積もったって2000万やそこらの財産はあるってこっですよ。それを向こうはなんだろ。月8万取ってたって一生そんなもんなんだから。乗っ取ろうと思うとっとよ、あの男は」←ロールケーキをパクつきながらよくしゃべるねえ。
トシ子「そんな人じゃないわよ。第一、この店だって私だけが継ぐわけじゃなし」
ます「私はお前にいい養子ばもろうて2人で商売続けてほしいと思うとっとよ。アヤ子には大森にある地所をやって。断ろうよね」
トシ子、うなずく。
ます「ああ、イヤだね。隣だけに」
トシ子「私から正三さんに話してもいいけど」
ます「向こうさんがご夫婦で来とるとに、お前が直接本人に断るとは変だよ」
トシ子「もう少し考えてみようかな」
ます「ああ、およしおよし。こういう話はね、変に考えてると妙なこつになるからね」
トシ子「修一さんに悪くて」
ます「正三さんの話、断っとに修ちゃんに気兼ねすることはなかたい」
トシ子「がっかりするわ、きっと」
突然、裏口が開き、トメ子が立っていた。「トシちゃん! あいつと結婚なんかしたら後悔するわよ」
トシ子「えっ?」
トメ子「あいつのこと、すごく好きな女がいるんだから」
ます「大きな声で何言ってんの、あんた」
トメ子「見合いだってなんだって邪魔してやるわ」
ます「トメちゃん」
トメ子「好きなもんは好きよ。覚えといてよね」
戸を閉め、あっという間に去っていく。トメ子はいつも去り際を心得てるな。
ます「正三さんも陰で女をだましとるとよ、あの様子じゃ」
トメ子は、トシ子の見合い相手が修一と思ってるのね!?
谷口家茶の間
正三が福松と常子にお茶を出し、「どうもお疲れさまでございました」と頭を下げた。
福松「とにかく返事を待て。2~3日のうちにはなんとか言ってくるだろうから」
常子「いいお返事だといいんですけどね」
正三「あの…どんな様子でした?」
言い淀む常子。トシ子はあまり変わらなかったと言うが、福松は「いや、おふくろだよ。なんとなく感じが悪くて」と話す。
正三「それじゃ、ダメかなあ」
常子は親はどんないいお話だって迷うものだと励ますが、福松は「おふくろがあんなんだからトシちゃんも27になっちまったんだ」という。
正三「6ですよ」
常子「娘2人ですものね。なかなか手放せないわよ」
正三はこれから修一の所へ行き、そのまままっすぐ帰って寝ると言い、もう一度福松たちに「どうもありがとうございました」と頭を下げた。福松は返事が来るまでウロウロせんことだとアドバイス。急に疲れが出たととぼとぼ出て行く正三。
福松「いい年をしてだらしがないよ、あいつも」
常子「あら。あなただって最初、私が断ったときにウンウン言って寝込んだくせに」
福松「バカ。あれは風邪ひいたんですよ」
どさん子
店のテーブルを拭いてる和枝。直也が6時に迎えに来ると修一に話している。今日はおとなしくしてろよとアドバイスする修一。
和枝「あら、もう4時だわ。帰って支度しなきゃ」
まだなんかすんのかとあきれ気味の修一に「もう少しおしゃれをしたいの」と和枝。
修一「あんまり化けんなよ。化粧落とした顔見るとゲッソリするからな」
和枝「やあねえ。それほどおばあちゃんじゃないわよ」
正三が来店。あまり浮かない表情の正三に修一は「すぐに返事はないだろ」、和枝も「そうよ。誰だって考えるもの」と励まし、和枝は家へ。修一はデートで行くところがいないならごちそうしてやるから、この店に連れて来いと言うが、和枝は断って出て行った。
水を出そうとした修一に「ビールください。ガックリしちゃった」と正三。
修一「断られたわけでもないのに」
正三「いやあ、もうダメだ」
釣り鐘に提灯だと自虐。
修一「店の1軒や2軒、なんだよ」
正三「修ちゃんは経営者だと思って、そんな軽いこと言うけどさ、俺には高根の花だよ。だけどさ、正直言って10分の1でも見込みがあると思う?」
修一「あるよ。それでなきゃ俺だって勧めないよ。トシちゃんって女は優しいだけじゃないもんな。頭もいいし、サバサバしてるし、それに敏感だし」
正三「いいところだらけだね」
修一「うん」
正三「ああ、切ない」
修一「飲みなよ、おごるから」
ビールを飲み干す正三。
緑色の電車が走っている風景。これが何線とか分かると面白いんだろうねえ。
アヤ子と桃子が一緒に帰ってきて、裏口のある路地に入る。
アヤ子「ねえ、修ちゃんのお店行かない?」
桃子「何しに?」
アヤ子「ラーメンを食べに行くのよ」
桃子「だってもうすぐ夕飯じゃない」
アヤ子「ラーメンの1杯ぐらい平気平気」←えーっ!?
しかし、アヤ子が表通りに出ようとした桃子を止めた。斜め前は西田不動産。店の前を和枝がウロウロしている。
アヤ子「待ち人来らずって顔ね」
和枝はいつまでも明るいから見てただけと強がりを言う。常子から直也から電話だと聞いた和枝は家の中へ。直也は6時の約束だけど遅れそうだと電話をかけてきた。研究会が今日になり、1時間ぐらいと言ったものの、近くにいた同僚の中沢が1時間で済むもんかと遅れるとうるさいから2時間と言っとけとアドバイス。2時間と聞いて驚く和枝。
福松「今日はいやにしおらしいじゃないか」
桃子「ぐっと抑えてるのよ」
和枝「いいえ。お仕事ならしかたがありませんわ。さようなら」
常子「この間から楽しみにしてたのに」
福松「来ないわけじゃないだろ?」
常子「だって2時間も遅れたらもう8時ですよ。どこへも行かれやしない」
桃子「顔見てるだけでいいのよ。そばにいるだけでいいんだから」
福松「おい、大丈夫か。桃子のヤツ」
常子「えっ?」
福松「いやに分かったようなこと言ってるじゃないか」
常子「そうね。もう大人ですからね」
福松「そばにいるだけでいいなんて言うことに実感がありすぎますよ」
常子「アハハッ、ほんとにねえ」
女らしくて結構じゃないのと動じない常子と動揺が隠せない福松。
医局
中沢もデートに遅れると電話したらガチャ切りされてしまった。「君のはまだいいよ。おとなしいから。もっとも僕は二度もすっぽかしたからな」
もう一人、女房と新宿で会う約束をしているという同僚が電話をかけに来た。
中沢役の小林勝也さんが何となく見覚えあったのは「総理と呼ばないで」の首席補佐官役をやってからかな。
もう一人の医師・花井緑太郎さんは「兄弟」の25話にも出演。
和枝たちの部屋
桃子「待たせても待つ身になるなっていうもんね」
和枝「待ってやしないわよ」
和枝は今日のデートのために初めて下ろした着物を着た。桃子も夏物を新調してもらおうと言い、「姉さんも夏だけぐらいミニにしなさいよ」と言うが、和枝は「お店にいたって暑くてたまりゃしない」と却下。尾崎奈々さんって顔立ち、スタイルともすごい洋風に見えるんだけどなあ、和服姿が逆にもったいなく思える。トメちゃんみたいなミニスカートが似合いそう。
和菓子のイメージを壊すなということで普段から和服なんだね。和枝は修一がぐっと日本調の奥さんをもらってくれれば問題ないと言うが、そういえばトシちゃんは和服似合いそう…。
桃子「でもね、お隣のトシちゃんだって結局店番してるうちにあの年だもん」
和枝「さっさとお嫁に行けばいいんでしょ。うるさいわよ、あんたは」
アヤ子「生意気よ、正ちゃんなんて。でもいずれは来ると思ってたわ。消しゴムだの鉛筆だの安いもんばっかりちょいちょい買いに来てたでしょ。イヤな感じしてたんだ」
ます「もういいよ。断ることに決めたんだから」
アヤ子「近所に知れたらみっともないわね」
トシ子「どうして?」
アヤ子「だってお姉さんがそれだけ安く見られたてことよ。菓子屋の職人がプロポーズするなんて」
トシ子「そんなことちっともかまわないわ」
アヤ子「イヤだな、私。ねえ? お母さん」
ます「なんとなくね」
トシ子「こだわることなんかちっともないじゃない。別にうちだってお偉いわけじゃなし」
アヤ子「そこんとこが微妙なのよ。もしもよ、もしもお姉さんが私ぐらいの年だったら正ちゃんも遠慮したと思わない?」
ます「よしなはいよ、いつまでも」
アヤ子「お姉さんやお母さんが焦ってるって計算したのよ、きっと」
ます「バカバカしい。焦るほどの年じゃなかよ」
アヤ子「そりゃそうよ。だけど正ちゃんのほうはそう思ったのよ」
トシ子「ごちそうさま」と席を立つ。
ます「ほんとに縁談もいいけど、こういう話は一番困るわ。すぐ隣に毎日いる男かと思うと気が詰まって」
アヤ子「知らん顔してりゃいいのよ、平気平気」
トシ子「アヤちゃん」
アヤ子「何?」
トシ子「あんた、毎日お勤めに出て何やってんの?」
アヤ子「何って事務よ。ベテランよ、もう」
トシ子「あんたみたいなものの見方してたら、いくら修一さんを好きでも相手にしてもらえないわよ」と勝手口から外に出て行った。よく言った!
「行っちゃいました」と悪びれないアヤ子。ますに修ちゃんが好きなの?と聞かれると、好きですと答えた。ますは真実味がないと言い、アヤ子自身も好きだ好きだと百万遍言っても誰も本気じゃ聞いてくれないとご飯をパクつく。
ます「なんとなくこんがらっちゃった感じだわね」←なんとなくトシ子の気持ちも分かってる!?
どさん子に行ったトシ子は店を出ようとした正三と鉢合わせ。こんばんはとあいさつしあったものの気まずさからトシ子は引き返してしまい、正三はまた店に戻り、ビールをもう1本注文した。困り顔なんだよな~、小坂さんは。
予定より長引いた直也は7時半に電話し、8時には行けそうもないと和枝に電話した。
茶の間で会話を聞いてる福松は「やめなやめな」と口をはさむ。
常子「今度の日曜にでもしたら?」
和枝「私の好きにさせてよ」
福松「そりゃあどうでもいいが」
常子「8時半から街に出てもしかたがないわよ」
しかし和枝は「お待ちしてます」と電話を切った。
福松「しつこいなあ。あの先生も」
和枝「チャンスを逃したくない気持ちなのよ」
常子「お互いに穏やかで結構だけども、ほんとに8時半に来られるの?」
和枝「向こうも悪いと思うからいちいち連絡してくるのよ。遊んでるわけじゃないでしょ」
2階に上がってきた和枝は窓の外を眺める。
桃子「諦めなさいよ、もう」
和枝「約束より30分遅れるだけよ」
救急車のサイレンが鳴り、桃子も立ち上がって外を見る。ピーポー音じゃなかった。
午後9時36分
何となく茶の間にまだいる常子と福松。直也からの電話を和枝に取り次いだ。怒った和枝は「あなた約束をどう思ってらっしゃるんです? 私をバカにして面白がってるんですか」とまくし立てる。「お医者がどれだけお忙しいか存じませんがそれならそれで約束なんかなさらないでください。迷惑いたします」
直也が心臓発作の患者が…と話すが、「一晩中でも病院にいらっしゃってください。私はもうお待ちいたしませんから」と電話を切った。
福松「1時間でえらい変わり方じゃないか」
常子「終わりまで事情を聞けばいいのに」
和枝「どこまでほんとか分かるもんですか。甘やかすとすぐつけあがんのよ。もう絶対デートなんかしてやるもんですか」
医局
直也「じゃじゃ馬をならす手はないかね」
看護婦「遠慮しないでひっぱたいてやるんですね」←これを女性が言うかぁ。
プリプリ怒って着物を脱ぎだした和枝は「直さんのバカ!」と帯を畳にたたきつける。ザーッとカーテンを閉めてつづく。
私は割と「おやじ太鼓」の黒田も今の正三も好きなので…というか小坂一也さんの顔が好きなせいかそこまでボロクソに言われるかあ?と気の毒になった。
周りに若い女性がたくさんいるのにトシ子を選ぶ立派な男だと思うけどな。まあ10年前じゃ、正三20歳、トシ子16歳に目をつけたと思うと…まあ…ちょっと…だけど…それよりさらに下の和枝やアヤ子や桃子に目をつけなかっただけマシに思えてしまう(;^_^A