TBS 1970年11月3日
あらすじ
福松(進藤英太郎)と常子(山岡久乃)は、親戚の見舞いで四国へ。修一(林隆三)が手伝いに来たものの、夜になると店には和枝(尾崎奈々)ひとり。そこへやってきた直也(大出俊)とふたりきりになり、気まずい雰囲気になってしまう。
2023.12.26 BS松竹東急録画。
谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。
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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)
井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)
中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。
*
前田新子:岸ユキ…正三の見合い相手。
野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。
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石井キク:市川寿美礼…野口家の家政婦。
中川ます:山田桂子…トシ子、アヤ子の母。
今回は谷口家の両親、桃子、トシ子が不在か…。残り少ないのに寂しい。
どさん子
常子と電話している修一。カウンターにいるアヤ子が修一に「おばさんどっか行くの?」と話しかけてきた。
修一は親父の兄さんが入院したため、四国の高松まで病気見舞いに行くのだと説明。「もう年だからな」
アヤ子「死にそうなの?」
修一「いや、すぐにどうってことないだろうけど親父も若いころ、兄貴に面倒かけたらしいから」
アヤ子「お店のほう、どうなんの? また修ちゃん手伝うのね?」
修一「そうらしいな」
カップル客が帰り、修一がカウンターから出て片づけ。
アヤ子「せっかく繁盛してんのに菊久月のほう休めばいいじゃない」
修一「そうもいかないんだよ」
アヤ子「結局、修ちゃんはこの商売より、お菓子屋商売のほうが好きだってことね」
修一「アヤちゃんも会社辞めて店番するんだって、ほんとか?」
アヤ子「しかたないわよ。だけどもね、あんたにも感謝してもらいたいぐらいよ」
修一「どうして?」←カウンターを拭くたびグラグラ揺れてる。
アヤ子「だってお姉さんが安心してお嫁に行けるじゃない」
修一「バカ。そういう話はタブーだよ」
アヤ子「フフフッ、まったくね。姉さんの婚約者、まだ諦めないでグズグズ言ってんだから」
修一「イヤな男だな」
アヤ子「さあ?」
修一「人間なんてのはな、振られたらサッと諦めるもんだよ」
アヤ子「ひと事だと思って、振られた身にもなってみなさいよ」
修一「あっ、そうだな。悪いな、アヤちゃん」
アヤ子「フフフッ。いいわよ、変に同情しないでよ」
アヤ子は若くて美人なことを鼻にかけ、トシ子をバカにした感じがして好きじゃなかったけど、明るくていいね。
菊久月
客が帰っていき、奥から正三が出てきた。「奥は区切りがついたからそろそろ片づけますよ」
和枝「ご苦労さま。今、お風呂沸かすわ」
正三「いや、いいですよ。銭湯行くから」
和枝「そう? じゃ、今夜はそうしてちょうだい。お父さんが出かけるまでガタガタしちゃって」
正三「旦那も思い切りが悪いからね。修ちゃんと俺に任してのんびり出かけりゃいいのに」
和枝「病気見舞いで気が重いのよ」
正三「胆石でしょ? すぐ治りますよ。旦那の兄さんだもん。きっと頑丈に出来てるから」
和枝「まあ」
アヤ子が立ち寄った。
和枝「会社の帰りね? 遅いじゃない」
アヤ子「修ちゃんのお店でラーメン食べてちょっとね」
和枝「会社も辞めるとなるといろいろあるんでしょう?」
アヤ子「どうってことないわよ。ただお嫁に行くんだろうってうるさい、うるさい」
和枝「やっぱりね」
アヤ子「まさかうちの商売手伝うとは思ってないらしいわよ。年頃だもんね」
和枝「お互いに切ないこと」
アヤ子「何言ってんの? 和枝なんか予約済みの赤紙貼って」
和枝「イヤだわ、そんな」
アヤ子「ご安泰で羨ましいわ」
和枝「どういたしまして。ほら、直也さんったらまだ指輪もくれないのよ」
アヤ子「甘ったれ」と和枝の手をたたく。
和枝「フフフッ」
作業場から正三の歌声が聞こえる。
⚟正三「♪命までもと…」
1970年8月1日発売「みれん町」かな? 遠くでずっと歌ってたけどあまり聴こえなかった。
アヤ子「正ちゃんも鈍感ね。失恋してもすぐああなんだから」
和枝「そうでもないわよ。まだトシちゃんのことになると褒めること」
アヤ子「あら、そう。男なんてダメね。私なんぞ修ちゃんのことなんかパアよ。パアパアしちゃって」
12話では福松がアヤ子のことを「パアパアしすぎる」と表現している。
和枝「無理しなさんな。だんだんと忘れることね」
アヤ子「いずれはお義兄(にい)さんか。くさるなあ」
和枝「偉いと思ってるわよ。アヤ子だからトシちゃんに譲れんのよ」
アヤ子「姉上様とじゃケンカにもならないしね」
客が来たのでアヤ子は帰っていった。
アヤ子が帰ると、和服のますが裏口から出てきた。「まあ、どこ行ってたの? 会社へ電話したら2時間も前に帰ったっていうし」
アヤ子「うるさいね、母さんも」
ます「留守番がいなくちゃ外へも出られやしない」
アヤ子「もう支度出来てんじゃないの」
ます「気がせくからよ。また仲人さんから電話があってね、日曜に来てくれって。でも、いろいろ考えたんだけど、おキクさんと2人で一緒に行ってもらち明かないから野口さんのご主人にでもお願いしてみようかと思ってね」
アヤ子「直也さんのお父さんね? それもいいわね」
ます「やっぱりね、こういうことは男の人が一緒じゃないとダメだわ」
40代の女2人いてもダメで、定年間近の男ならいいって切ないね~。
アヤ子「そうね。はっきりさせといたほうがお互いのためよね」
ます「なんの話?」
アヤ子「キクさんに会ったら聞くといいわ。姉さんと修ちゃんのこと」
ます「姉さんと修ちゃん?」
アヤ子「悪い話じゃないわよ。ねえ、母さん。直也さんのお父さんに姉さんの写真、見しといたほうがいいんじゃない? 顔も知らない女のことじゃ頼まれにくいから」
ます「そうだね。写真持ってったほうがいいかもしれないね」と家の中へ。
裏口から出てきた正三。「うるさいな、まったく。なんだい、トシちゃんの縁談をぶっ潰すぐらいのことは俺だってやってやるよ」
和枝「どうしたの?」
正三「えっ? 隣の奥さんがさ、そこんとこでアヤちゃんとブツブツ言ってんだ」戸を閉める。「思い出しちゃって頭にくるよ」
和枝「トシちゃんのことね」
作業場
正三「キクさんと2人で破談にしてくれって先方に言ってるんでしょ?」
和枝「ええ。キクさんも張り切ってたけど」
正三「ばあさんが2人で頭下げたって迫力ないからね。だから、今度は直也さんのお父さんを引っ張り出そうってんだ」
和枝「そう。あのお父様ならインテリだし、話の筋を通してお断りしたら諦めてくれるわよ、きっと」
正三「簡単ですよ。実は昔から惚れあった男がいたって、それだけのことを言やいいんだ」
野口家
トシ子の見合い写真を見る正弘。「ほう、なかなか美人だね」
ます「ええ、まあ、なんとなくおかげさまで」
キク「トシちゃんはお父さん似でね、菊久月の和枝さんはお母さん似だし、お隣同士、子供はみんないいほうに似て恨みっこなしなんですよ」
ちょっとムッとするます。
正弘「こんなにいいお嫁さんじゃ先方も諦めがつかないわけだ」
ます「まあ、いいご縁で私も喜んでたんです。トシ子だってその気になって返事をしたのに今になってお断りしてくれの一点張りですからね、もう義理が悪くて」
正弘「若い娘さんって難しいね」
キク「いいえ、旦那様。はっきり言っちまえば簡単なんですよ。菊久月の修一さんがトシちゃんをお嫁さんにしたいってことなんだから」←急に言うなあ!
ます「えっ?」
キク「直接本人に結婚申し込んだのよ」
ます「まさか、そんな…」
キク「知らぬは親ばかりだわ。しっかりしてよ、おますさん」
ます「ほんとなの? ええ?」
キク「細かい話をしてあげるから私の部屋へ来なさいよ」ますの隣に行って腕をつかむ。
正弘「ここでもいいんだよ」
キク「いえ、初めっから話すとなると時間もかかるし、話を聞いたうえでまた旦那様にも作戦を立てていただかなきゃ」
ます「修ちゃんが今更、トシ子に結婚の申し込み? ああ…なんてこった。冗談じゃないわ」
キク「あら、すてきじゃないの。それが真実、惚れたってことよ。さあさあ、来な。行きましょ行きましょ、早く、ほら」ますの腕を引っ張る。ますは正弘に会釈して部屋を出ていく。
正弘の正面のふすまが開き、勉が顔を出す。「ああ…キクさんもいい年をしてなんだ。惚れた惚れたって面白がって、悪趣味だ、ありゃ」
正弘「直也と和枝さんのほうはなんとかまとまってよかった」
勉「まだ楽観を許さないぞ、あの2人は」
正弘「なんだ、お前だって面白がってるじゃないか」
勉「まあね」頭ポリポリ。
作業場
和枝「正三さん、まっすぐアパートへ帰んの?」
正三「和枝さん、1人で大丈夫ですか?」
和枝「平気よ。12時ごろには、どさん子を片づけて兄さんが泊まりに来るから」
正三「あすの朝は早めに出てきますよ」
和枝「お願いします」
おやすみなさいと挨拶しあって裏口を開けると直也が立っていた。「こんばんは」
和枝「あら」嬉しそう。
直也「研究会が思ったより早く終わったんでね。だからちょっと」
和枝「茶の間へどうぞ」茶の間へ。
正三と目が合う直也。「いやに静かだね」
正三「和枝さん1人なんですよ。俺が帰っちゃうと」
⚟和枝「直也さん」
直也「1人か、まずいね」
正三「かまやしないでしょ。婚約者なんですから」
直也「そうかなあ」
和枝「何してらっしゃるの?」
正三「直也さんも案外常識人だから」
和枝「えっ?」
直也「僕も誘惑に弱いからな」モジモジ
和枝「まあ、やだ」
正三「いや、男はそれぐらいでなきゃ」
和枝「正三さん、何言ってんの?」
正三「帰りますよ、お邪魔さま」
直也「僕もお茶1杯いただいてすぐ帰るよ」
和枝「あらどうして?」
直也「静かすぎるよ。勝手が違ってね」
正三「帰りにどさん子に寄って修ちゃんによく話しときますから、ご遠慮なく、ねっ? じゃ、おやすみなさい」
和枝「おやすみなさい、さあどうぞ」
茶の間
和枝はお茶を入れるが、緊張してタバコを吸い始める直也。「なんだか変だね」
和枝「こんなこと初めてなんです。このうちに私一人だなんて」
直也「落ち着かないね、こういう気分は」
直也にお茶を勧めた和枝はお茶を飲み始めた直也を見て笑う。
直也「な…なんだ、やだなあ。こっちはかたくなってるっていうのに」
和枝「だって…」
直也「君って、ほんとに若いんだね」
和枝「えっ?」
直也「大きな口開けてゲラゲラ笑ってさ。若いよ、やっぱり」
和枝「知らない。意地悪」プイッと横を向く。
直也「ハハッ。その顔も見慣れたね」
和枝「どうせ…」
直也「おたふくでございます」
和枝「まあ…」振り上げた手でバランスを崩し、直也にしなだれかかってしまい、姿勢を正す2人。
直也「ごめん」
和枝「いいえ、私が…」
直也はお茶を飲み干し、またお茶を所望する。和枝は菓子を勧めるが、直也は甘いものはめったに食べないと言うと、和枝はお酒を勧める。
直也「とんでもない。こんなときにお酒なんて。お茶が一番無事だからね」タバコの煙が自分の顔にかかりまくっている。
野口家
正弘「キクさんの部屋、寒くないかな?」
勉「寒かないよ。ばあさん2人でカッカしてるんだから」
正弘「ばあさんなんて言うんじゃないよ」←キャー、ステキ!
勉「いいって、いいって」
正弘「だいぶ話が長引いてるらしいな」
勉「大変ですよ。さっき様子見に行ったらね、ギャーギャー言っちゃって」
正弘「よしなさい。お前もしょうがないな」
勉「親なんてぼんやりしてるもんだね。菊久月と中川さんは隣同士だろ。修一さんとトシちゃんのことだって今更騒ぐことはないのに」
正弘「親だからびっくりしてるんだよ。嫁に行く話が決まってホッとしていたんだろうから」
勉「回り道をして元に戻っただけさ」
正弘「人間の縁なんて不思議なもんだな」
勉「そうさ。僕だってどこのどんな女の子を連れてくるか分からないよ」
正弘「ハァ…まあ、覚悟はしてるがな」
勉「兄さんと和枝さんにだいぶ鍛えられたからね。お父さんも」
正弘「直也たちが結婚してこのうちに住むようになるとどうだろうな」
勉「問題はキクさんだよ。あれでなかなか意地の悪いところがあるからね」
スーッとふすまが開く。キク「何言ってんですよ、勉さん」
勉「ああ、びっくりした」
正弘「寒くないか? キクさんの部屋」
キク「いいえ、もうホカホカしちゃって」ニコニコ。
正弘「コーヒーでも勉に入れさせようか?」
キク「いいえ。それよりさっきのこと旦那様にお願いしなくちゃ」
正弘「ああ、つまり先方にわけを話して納得してもらやいいんだろ?」
キク「そうなんですよ。やっぱり旦那様、頭がいいからすぐ理解しちゃって」
正弘「ハハハッ」
キク「おますさんときたら、もう世間体がどうだの義理がどうだのって」
勉「キクさんみたいな八方破れはできないよ」
キク「ええ、ええ、どうせ私は血も涙もないですよ」
正弘「なにもそう決めてかかることはないよ。いや、キクさんは情があるよ。優しいよ」
キクは正弘に褒められ照れながら立ち上がるが、勉の「どうだかね」と言う発言にケリを入れる。痛がる勉に笑う正弘。
どさん子
正三もカウンターに入り、手伝っている。
修一「直さんも和枝のヤツも不器用だからな」
正三「2人っきりでさ、今頃困っちゃってんだろうね」
修一「こんなものでも届ければ少しは間がもつだろ」
正三「うん」
修一「正ちゃん、見合いの話はどうなったんだよ?」
正三「兄貴がうるさく手紙をよこすんだよ。役所の友達の妹でね、変な名前の女の子でさ、前田新子(しんこ)とかいうんだよ」
修一「新子…」
正三「なんだかたくあん漬けみたいで気が乗らないよ。だから長野へ帰るまでのことはないさ。今朝、断りの手紙出しといた」
修一「一応、会ってみればいいのに」
正三「田舎のおねえちゃんですよ。何しろおふくろさんが死んでから5年もきょうだいの面倒を見て、それでうちのこともやってたんだっていうんだからね」
修一「苦労してるから気が練れてるよ。うちの和枝や桃子と違って大人だよ」
正三「イヤなんだ、そういう女は。きっと所帯じみてて口うるさいんだから」
修一「写真見たの?」
正三「それが高校時代のセーラー服のでね。カマトトだよ。ああいう写真を送ってくるようじゃ」
どさん子の岡持ちを持って裏口に来た正三。しかし、鍵がかかっていた。「やだな、何してんだろ?」と合鍵を使って中へ。「和枝さん、上がりますよ。ごめんください」と茶の間へ。
喫茶ジローに並んで座る和枝と直也。「どういうんだろう、僕たちって」
和枝「どうって?」
直也「真面目人間なのかな」
和枝「さあ?」
直也「せっかく2人きりになれたのにね。めったにない夜かもしれなかったろ?」
和枝「ええ、でも…」
直也「新婚旅行どこへ行こうかなんて考えてたんだよ」
和枝「なんだか怖いわ」
直也「どうして? 怖いことなんかあるもんか。愛してるのに」
和枝「ええ」
直也「結婚式のことも具体的に決めなきゃいけないしね」
和枝「母が四国から戻ったら伺います」
直也「やっぱり待たれるな」
見つめ合ってニッコリ。
谷口家茶の間
持ってきた料理をテーブルに並べる正三。「まったく和枝さんも子供なんだから。さっさとうちを留守にしちゃって」
⚟新子「こんばんは」←字幕でネタバレ。
正三「はい。誰だろう? 今頃」
裏口に立っていたのは野菜を手に持った女性。「こんばんは」
正三「いらっしゃい」
新子「遅くなりました」
正三「は?」
新子「うちのこと済ませてから汽車に乗ったもんですから」戸を閉める。
正三「あの…あなたは?」
新子「私、前田です」
正三「前田さん? ああ、和枝さんのお友達ですか?」
新子「いえ、私は…」
正三「桃子さんのほうですか?」
新子「いえ。長野から来ました。前田新子です」
正三「新子?」
新子「はい。正三さんですね」
正三「ええ、俺はそうですけど、あなたがつまり、あの…前田新子さん?」
新子「はい。はじめまして、どうぞよろしく」
正三「いや、ちょっと…俺、ちょっと…困っちゃったなあ」
笑顔の新子。
路地
和枝と直也は握手でお休みを言い合う。
直也「ご両親の留守の間、十分、気をつけるんだよ」
和枝「ええ」名残惜しそうに表通りを見ながら帰ってきたが、裏口から正三が出てくる。「どうしたの? 正三さん」
正三「どうした、じゃありませんよ。俺、どさん子行って修ちゃんに相談してきます」走り出して行ってしまった。
裏口を開けると、女性が腰掛けていて、和枝が入ってくると「お邪魔してます」と立ち上がって頭を下げた。
和枝「あの…あなたは?」
新子「前田新子です。正三さんのお兄さんがこちらに手紙で知らせてあるから大丈夫だって言って」
和枝「ああ…正三さんのお知り合い?」
新子「はい」
和枝は笑顔になり、家に上がるように言う。和枝はね、直也以外にはすごく優しいし、気遣いもできる女性なんだよ。
どさん子
ビールを一気飲みする正三。「だから田舎者はやだっていうんだよ。ある日、突然やって来てさ、まったくずうずうしいよ」
修一「かわいそうだよ、そんなこと言っちゃ」
正三「かわいそうなのはこっちですよ。前田新子です。長野から来ました。どうぞよろしく~、だって」←新子のまねをしてしゃべってる。
修一「ハハハハ…」
正三「人のことだと思って面白がっちゃって。ああ、どうしよう、今夜」
明らかに笑わせにかかってるだろ! 修ちゃんもしばらく笑ったままだったし。
修一「いいじゃないか。うちに泊めてやれば」
正三「うん。今から長野へ帰せないしな」
修一「なんだ。正ちゃんも割と冷淡なんだな」
正三「腹が立ってさ、何しろ10年も前から俺のこと知ってるみたいにニッコニコしちゃってさ」
修一「へえ」
正三「でっかくてさ、やぼ天で。あ~あ、やんなっちゃったな」
「サインはV」から2人目に刺客、岸ユキさんが登場。プロフィールだと165cmらしいけど、尾崎奈々さんと並んでも変わりないように見えるので、ますます私の中で尾崎奈々さん逆サバ説浮上。162cmらしいけど、プロフィールでは170cmの大出俊さんとの並びを見るにもうちょっと大きいと思う。そして直也とあんまり変わらないくらいなのが正三。
修一「憂鬱そうだね」←まだニヤニヤしてない?
正三「なんとかしてあした上野から汽車に乗せちまわなきゃ」
修一「なにもそんなに嫌わなくったって」
後ろに座るカップル客を見つめる正三。「やっぱり結婚は見合いより恋愛のほうがいいからな。ムードがあるもんね」
男のタバコに火をつけてあげるカップルの女性。そこまでしなくていいって。
谷口家茶の間
和枝は新子に正三が置いていった料理を食べさせる。「冷たくなってしまったからおいしくないでしょう?」
新子「いいえ。とってもおいしいです」
和枝「兄が作ったのよ」
新子「お兄さん、お料理上手なんですね」
和枝「この先でどさん子って中華料理のお店やってるの」
新子「ああ、それで…おいしい」
和枝は新子にお茶を勧める。「遅いわね、正三さん」
新子「びっくりしてたようだから」
和枝「びっくりすることないのに」
新子「でも、あの人知らなかったから怒ってますね、きっと」
和枝「大丈夫よ、正三さんって優しいから」
新子「優しくって働き者(もん)だって、そうですか?」
和枝「そうよ。うちに13年もいてくれて父も母も頼りにしてるのよ」
新子「写真見て気性の良さそうな人だなって思いました。それで私…でも、正三さん、私なんか嫌いだわ。田舎者だし、なんにもできないし」
和枝「まだお話ししてないんでしょう?」
新子「名前言ったらいきなり飛び出していって」
和枝「兄の店に電話してみますね」修一に電話。
しかし、正三は電話に出るのを拒む。
修一「正ちゃん、今、アパートへ帰ったよ」
和枝「ああ、こっち来ないの? 新子さん待ってんのに」
正三「待っててくれって頼んだわけじゃないのにな」
修一「疲れてんだ。あしたの朝、早く行くよ。だから新子さんのことはお前が面倒見てやってくれよ」
和枝「ええ、それはいいけど」
修一「正ちゃん、ほんとにいいのか? ほっといて」
正三「勝手に押しかけてきたんですよ。俺はずうずうしい女は嫌いだよ」
修一「そんなつもりで来たわけじゃないだろ」
正三「とにかく今夜はもうたくさんですよ」
修一「分かったよ。もしもし、新子さんにね、俺がよろしくって。そうだよ。じゃ、おやすみ」
正三「おやすみなさ~い、だ」←ぼそっと言うセリフが面白い。ビールを一気飲み。
谷口家茶の間
受話器を置いた和枝。「悪いわね。正三さんも疲れてるもんだから」
新子「大変ですね」
和枝「父と2人だけじゃこの店無理なのよ。朝は早いし、夜なべが多くて」
新子「正三さんのアパート近いんですか?」
和枝「歩いて10分ぐらいかしら。あした行ってみる?」
新子「正三さんに叱られます」
和枝「うちは月曜がお休みなの。だから2~3日ゆっくりしてらっしゃい。お休みには正三さんが東京をご案内するわよ」
新子「でも、あの人…」
和枝「あしたまたいろいろお話しできるわよ。あっ、そうそう、兄がね、あなたによろしくって。私、1人で寂しかったんだけど、あなたが来てくださって助かったわ」
新子「ありがとうございます」
和枝と笑い合うも、不安そうな表情の新子。
翌朝、裏口に来た正三にかっぽう着を着た新子が挨拶した。正三もおはようと返したものの「今日もいいお天気のようですね」という新子には「ああ、そうですか」とそっけなく中へ。
正三が作業場で準備を始めると、新子は床の雑巾がけをしていた。和枝も起きてきて店を開ける。今度は表通りを掃く新子。直也が和枝の顔を見に来た。「いや、回り道してでも顔見るほうがいいからね」
和枝「まあ…遅れますよ」
直也「うん。じゃあ、また」
笑顔の和枝を見ていた新子も笑顔に。二人は開店準備を進める。混声バージョンのオープニングが流れてつづく。
今日のあらすじ、別に修一は手伝いに来てないじゃないの。桃子がなぜいないのかは誰も言及しなかった。和枝と直也はメインにならなきゃ平和でいいカップルだし、直也絡みじゃない和枝は心優しき大人の女性。
新子は役年齢はまだ分からないけど、正三が和枝や桃子の友達と思うくらいだから若いんだよね? 実年齢は尾崎奈々さんと同じ歳。調べたら范文雀さんもみんな同じ1948年生まれだった。もうすぐ30になろうって男があの態度はないだろ、正三。
でも、正三と修一のコンビはなんか好き。