徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #28

TBS  1968年7月23日

 

あらすじ

一騒動起こした赤ちゃんの親が判明した。会社の部長・堀がよその女性に産ませた子だった。堀は母親と一緒に赤ちゃんを引き取りにやって来た。息子の不始末をわびる母親と対照的に、堀の態度は何とも煮えきらず…。

2023.8.18 BS松竹東急録画。12話からカラー。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。58歳。

*

お手伝いさん

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。

イネ:岸輝子…お敏の母。結婚3回目。

*

片桐黄枝子:堀井永子…武男の好きな人。

水原トシ:西尾三枝子…幸子の友人で洋二の恋人。

神尾光:竹脇無我…秋子の恋人。TBS局員。24歳。

杉本:池田二三夫…敬四郎の浪人仲間。

井沢久代:聖みち子…敬四郎の好きな人。

*

堀部長:小池栄

 

今日は登場人物が多いぞ~。

 

タクシーが鶴家の前に止まり、果物かごを持った堀部長と着物姿でひっつめ髪のおばあさんが降りてきた。”昭和のおばあちゃん”のイメージそのもの。堀部長役の小池栄さんが当時40歳でその親なんだからまだ60代なんだろうけどね。

 

あや「社長さんのお宅ともなると大したもんだね」

堀「裸一貫からこれだもの。大したもんさ」

あや「小学校もろくに出てないでえげつないことしたんだろ?」←酷い

堀「違うんだって。そんな社長とは社長が違うんだよ」

あや「お前は甘すぎるよ。そんな人のいいこと言ってるから偉くならないんだ」

堀「分かってますよ。そんなこと女房にさんざん言われてんだから」

あや「ああ、情けないったら。せがれの不始末で親まで引っ張り出されるんだから」

堀「だから言ったでしょ。社長はおふくろには弱いんだったら。僕の首がつながるかどうかの境目なんですよ」

 

あやはめんどくさそうに呼び鈴を押すように言うが、堀は捨てた赤ん坊を正面玄関からもらいに行けないと裏口からだと言う。あやは「御用聞きじゃありませんよ」と反発。

 

あや役の村瀬幸子さんはカメオのおばあちゃん・東山千栄子さん、お敏のお母さん・岸輝子さんとともに俳優座の創立メンバーだそうで、すごい重鎮が並んでたんだね。

それと「おやじ太鼓」の原案?「破れ太鼓」では愛子にあたる奥様役をやっていたそうです。いつか機会があったら見るぞ。

 

広間

赤ん坊を背負ったイネが子守唄を歌う。

イネ「♪背負うた子が泣く 草鞋が切れる」

 

インターホンが鳴る。

 

イネは哺乳瓶を床に置き、背中の赤ん坊に「ぞろっぺいのおやじが坊やを連れに来たぞ」と話しかけた。哺乳瓶は足先にぶつかり倒れた。

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ぞろっぺいは前も言ってた。

 

愛子が裏玄関へ。亀次郎は「あのバカが来たんなら上に上げるんじゃないぞ。その土間でたくさんだ」ともう怒り顔。そうもいかないという愛子に「いかんことがあるか。あのろくでなしのへなちょこ野郎」と怒鳴る。

 

イネ「そうですとも。おたんこなすのうらなりですよ」

亀次郎「いや、お茶なんか出さなくてもいいから。お敏にそう言っといてください」

イネ「はい!」亀次郎が行ってから「水だってもったいないですよ」とつぶやく。

 

裏玄関から入ってきたあやは玄関前にいた時とは違い、しおらしい。

あや「だってお前、とっても敷居が高くて」

愛子「何おっしゃるんですか。さあ、どうぞ上がってください」

堀「お母さん、失礼しようよ」

あや「奥様、情けないやら恥ずかしいやら、なんの因果でこんな思いをするんでございましょう」と涙を拭く。

 

茶の間は裏玄関のすぐ脇だから会話を聞いている亀次郎。

堀「お母さん、僕が悪いことは重々分かってますよ」

愛子「さあ、そんなとこではなんですから」

堀「これだから嫌になっちゃうんですよ。お袋には泣かれる。女房には泣かれる。これじゃ僕だって立つ瀬がないんですよ」

 

亀次郎「このバカ者!」

立ち上がり、裏玄関へ。

亀次郎「何が立つ瀬がないんだ。お袋を泣かせ、奥さんを泣かせ、その上、女と赤ん坊を泣かしてるのはどこのどいつだ!」

堀「はい」

亀次郎「どの面下げてノコノコやって来たんだ。おい、愛子、早く赤ん坊を連れてきなさい」

愛子「さあ、とにかくこんなとこでは…さあ」

 

亀次郎「こんなとこじゃありませんよ。こんなやつにはあんなとこもこんなとこもあるか!」

愛子「だって、お母様がご一緒じゃありませんか」

亀次郎「だから我慢してるんですよ。お母さんがいなかったらとっくに蹴飛ばしてぶん殴って…」

 

あや「社長様。どうか息子の代わりにこのわたくしを…どうぞ! こんな息子を持った親の因果でございます」玄関に手をつき頭を下げ、涙を流す。

堀「社長、申し訳ありません」果物かごのアップになり、パイナップル、バナナ、オレンジ?が映し出される。黄色系が多い。

 

涙を拭く手ぬぐいの隙間から亀次郎の様子を見て泣きまねをするあやに亀次郎は愛子に広間へ通すように言う。

 

広間へ向かって歩きながら「本来ならあんなやつたたき出してやるところだ」と言ってるときに哺乳瓶を踏んですっころんだ亀次郎。

 

イネ「もう、あくたいもくたいのありったけですよ」

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赤ちゃんをおぶって「そんなやつ上へ上げるな! 土間でたくさんで、お茶一杯出すな、水だってもったいない! こうなんですよ」と、別宅にいる三郎、幸子、敬四郎に実況しているイネ。水がもったいないはイネさんが言ったんだけどね。三郎たちは面白がって見に行く。

 

イネ「気をつけてくださいよ。バチと八つ当たりはふいに来ますよ!」

 

広間前で聞き耳を立てているお敏。三郎たちも様子をうかがう。

イネ「おや、まだ始まらないんですか? 気が抜けてますね」

お敏「何言ってんの。田舎の芝居と違うんですよ」

イネ「見たこともないくせに」

 

イネは背中が汗でびっしょりだと赤ん坊をおろしてお敏へ。

幸子「早く置いてきたらどうなの」

三郎「そうだよ、れっきとした親が連れに来てるんだからね」

イネ「あれがれっきとした親だもんですか。馬が草鞋くわえたような顔ですよ」

お敏「お母さん、あれでもね、会社の部長さんなんですよ」

 

敬四郎「ハハッ、大した会社じゃないね」

幸子「そんならあんたは何よ。フーテン族と大して変わりないじゃないの」

敬四郎「あれ? 八つ当たりだね」

幸子「バチが当たるのよ」

三郎「バチと八つ当たりはふいに来るっていうからね」

イネ「そうですよ」

 

広間から「バカ者!」という声が響く。「赤ん坊を連れてさっさと帰りなさい!」

 

三郎たちは慌てて広間の椅子に座る。イネは「ほら、こうこなくっちゃ!」と面白がってる。広間のドアが開き、愛子が赤ん坊を抱っこする。

 

広間

亀次郎「大体、君の言ってることはどこまでが本心なんだ」

堀「いえ、社長…」

亀次郎「いえじゃありませんよ。お母さんがご一緒だから、わしはさっきから多少ホロッときてたんだ。それを君ときたら…」

 

ドアが開き、愛子が連れてきた赤ん坊を堀が抱っこする。「ああ、かわいそうかわいそう」と揺すりすぎじゃない!?

 

亀次郎「そんなかわいい子がありながら、よくも二号だの月給が安くて女房と別居ができないだの、あきれてものが言えんよ」

あや「みんな、あたくしが至らないからでございます。もうこのうえはお優しい社長様のお心にすがって、なんとかこれが立ち直れますように、どうかクビだけは勘弁してやってくださいまし」

亀次郎「そりゃ、わしだって鬼でもなけりゃ蛇(じゃ)でもありませんよ」

 

愛子「時々、大きな太鼓をたたくのが欠点なんですよ」

亀次郎「何? 太鼓?」

さらにくどくど言う亀次郎を止める愛子。

 

亀次郎「そうさ、わしたちは結婚して30年だ。その間、ただの一度も…」

愛子「いいですよ、そんなことは」

堀「いえ、度々、よく伺っております。一度も浮気をなさったこともないし、女按摩に肩を揉ませたこともないし」

愛子「そんなことを会社行って話してるんですか?」

嫌がる愛子に「大威張りだよ。わしたちほど仲のいい夫婦がめったにあるか」とどや顔。

 

あや「そりゃもう、聞くと見るとはあの…一緒でございます。かねがね、これからもおうわさを伺っておりまして、まあ、なんて立派な社長様でいらっしゃられることかと、もうほとほと頭の下がる思いで存じ上げておりました」

 

堀部長は、あやの後ろで立って赤ちゃんを抱っこしてるけど、赤ちゃんは反り返ったりしてる。もっと高い位置で抱っこすればいいのに~。よく分からないけど。

 

あや「それにひきかえ、あたくしなどは主人に先立たれたばっかりに、まあとんだ不幸に巡り合うんでございますよ。あっ、先ほども申し上げたように…」

堀「もういいったら、お母さん」

あや「どうしていいんだよ。こういう機会に社長様によく伺っておいていただいて…」

 

イネが水を運んできた。愛子はジュースか何かあったでしょ?というが、旦那様が…と口ごもるイネに「お敏は何をしてるんだ。早くビールでもジュースでも持ってきなさい」とばつが悪そうにタバコに火をつける。赤ちゃんのいる部屋で。

 

あやは水で結構ですと遠慮し、氷まで浮かせていいただいてとおいしそうに飲む。堀も座って水を飲む。

 

堀とあやの間に座ったイネは「親は苦労し、子は楽をし…って言うじゃございませんか」と言う。「…」の部分は無音になってたので調べました。

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なるほど、だから無音になったのね。亀次郎たちのもその言葉にぎょっとしている。

 

イネ「おお、おお、かわいそうに。赤ん坊は泣くしかないもんね。…なっちゃダメですよ」←ここも消されてるけど、乞食になっちゃダメですよか? 牛乳の瓶を持ってきてあげますよって、あの哺乳瓶の中身は牛乳だったの? 

 

イネが広間から出ようとすると、高円寺のおばちゃん登場。今日は洋装。イネはビールかお酒をお持ちしますと出ていき、愛子も茶の間へ持って行かせると言うのだが、正子は赤ちゃんが見たくて来た。

 

正子「男の子でしょ?」

堀「いえ、女です」

正子「あら、これで女の子なの」

赤ん坊の顔は変わるって言いますもんねと正子はフォローしてるけど、顔が男顔なわけじゃなし、水色の服着てるんだもん。

 

あやたちは帰ろうとするが、正子は自己紹介をすると、今、ビールとお酒が来ると言って止める。

愛子「お酒じゃありませんよ、ジュースですよ」

正子「あら、ジュースなの」

亀次郎「なんです、そのガッカリした顔は」

正子「ああ、いえ、私はもうお酒は真っ平。この前でこりごりですよ」

 

正子は堀に赤ちゃんを私のうちの裏にでも捨ててってくれなかったの?と聞く。私ならうんと大事に育てちゃうわよと言う正子に「はあ、どうも」と頭をかく堀。亀次郎に「こら! 何がどうもだ」と怒りを買う。

 

亀次郎「大体、君はだよ麻雀の寝不足だかお酒の飲みすぎだか知らないけど、そんなむくんだような顔じゃ長生きはできませんよ。そのうちコロッと参っちゃうに決まってんだから」

愛子が止めるものの「わしは人の人相が分かるんだ。君なんか早死にに決まってますよ。それならそのように、もっと親孝行でも子供孝行でもしておきなさい」とビシッと言う。

 

今の時代、こういう発言はパワハラ

 

茶の間

ジュースを飲む亀次郎、愛子、正子。ガラスのコップに入った薄茶の飲み物にストローをさして飲んでいる。オレンジジュースの色じゃないし、ジュースって言ってるからアイスティーじゃないだろうしなあ。色的にはアイスティー

 

愛子「それにしても大した女に引っかかったものね。社長のうちに赤ん坊を捨てていくんだから。それも社員の不始末は社長にも責任があるみたいな手紙まで添えて」

正子「堀さんも苦労するわね、人はいいんだけど」

 

イネはジュースのお代わりいかがでしょうかと茶の間に入ってきた。正子はジュースもやっと飲んだと遠慮する。

イネ「そうだと思ったんです。おビールも冷えておりますよ」

正子「いえ、おビールなんて…ああ、おいしいジュースだった」

亀次郎「もったいないよ、残しちゃ」

正子は残りのジュースをあわてて飲む。

 

亀次郎「とにかく女房の悪いのは3年の不作だよ」

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この言葉、60年だったり100年だったり…さっさと別れろ!

 

イネ「あら、旦那様、私なんかはその逆でございましたよ。今の亭主は3度目でございますけど、ほんとにろくなやつには当たりませんでした。犬も歩けば棒に当たるって申しますけど、ほんとにでくの坊の丸太棒でございましたよ。ですからことわざというものも…お互いさまですね」←「…」の部分はまた無音! 

 

これは「お互いさま」で調べても、困ったときはお互い様くらいしか出てこないし、イネは握りこぶしを合わせるようなしぐさをしてて、正子もぎょっとした表情。割れ鍋に綴じ蓋的なことなのか?

 

イネ「では、おビールはよろしいんでございますね」とジュースのコップを片付けようとするが、亀次郎が「ビールを持ってきなさい」という。

 

亀次郎「おばちゃんの顔を見てみなさい」

正子「えっ、私が?」

イネ「そうですよ。顔に書いてありますよ」

正子「うそですよ、そんな」

亀次郎「まあ、いいから持ってきなさい」

「はいはい、かしこまりました!」と嬉しそうなイネ。

 

愛子「どうしたんですか、飲めもしないのに」

亀次郎「お前とわしは…お互いによく出来てる夫婦じゃないか」←おー? また無音ですか! 今日は放送禁止用語祭りだね。

 

愛子との仲の良さを語る亀次郎。「わしがあの山奥の分教場へ通い詰めたんですよ、なあ? 愛子」

愛子「しつっこくて、いくら断ったってダメなんだもの」

亀次郎「そうさ、熱と力だよ。いや、昼間の仕事でクタクタになっているのに、よくもよくもあの坂を上ったり、あの谷川を越えたり」

正子「艱難汝を玉にする、ですね」

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亀次郎「そうさ、千里の道も一歩より始まるだ、なあ? 愛子」

愛子「とにかく30年ですからね」

亀次郎「夢の間だったよ」

愛子「夢じゃありませんよ、あの苦労は」

亀次郎「そういや、そうだ」

正子「私は今夜あたり夢でうなされますからね」

亀次郎「寝言でも言うさ」

 

イネがビールを運んできた。「あら、コップが1つ余計でしたわ」

正子「何言ってんの。お箸だって取り皿だってちゃんと4人前じゃないの」

イネ「あら、どうしたんでしょう」

亀次郎「いいよ、いいよ、おばあちゃんもひと口飲みなさい」と笑顔。

イネ「はい! そうこなくっちゃ」

 

武男は黄枝子と喫茶店でデート。

武男「長男としては骨が折れるんですよ。弟たちのためにいつも矢面(やづら)に立つのは僕ですからね」

 

黄枝子は亀次郎に対し、嫌な印象はないと笑顔。弟の言うことを真に受けたと言っていたけど、弟はもしかしてピンポンダッシュすらしてないと言い張ってたとか? しかし、美人な人っていつの時代に見ても美人だな。武男に会う気になったのは、武男が黄枝子の側に立って味方してくれたから謝りたかったのだと言う。

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回想ここから

亀次郎「なんだと!?」

武男「そんなおっかない顔しなくたっていいんですよ」

亀次郎「どっちがおっかない顔だ。こんなきれいな顔をしてるくせに」

武男「そうなんですよ。(黄枝子に)どうもすいません」

亀次郎「バカ! 何をお前はニヤニヤしてるんだ。この女はわしに文句を言いに来たんだぞ」

黄枝子「なんて失礼なことおっしゃるんでしょう」

武男「そうなんですよ」

亀次郎「何がそうなんだ! お前はこの女の味方かお父さんの味方かどっちだ」

回想ここまで

 

昭和の朝ドラではめったに回想シーンがなかったので、まだそんな技術がなかったのかと思ったらそんなことはなかった。そういや、橋田ドラマは回想ほとんどないね~。

 

武男「いや…僕はフェミニストなんですよ。夢中になると自分を忘れちゃって」

黄枝子「いい人ね、あなたは」

 

トシのアパート

トシ「びっくりしたでしょ。あんまり汚い下宿なんで」

洋二「そんなこと驚くもんか。僕の子供のころったらもっとひどかったんだもの。僕なんかどっちかといえば、やっぱり金持ちよりも貧乏人のほうが好きだな。父だって母だってそういうところがあるものね」

トシ「そうでしょうね。幸子さんとおつきあいしていてそれを感じたわ」

洋二「あれは素直ないいやつだから」

 

トシ「だけど、私のうちは違うの。博多ってそういう古いところがあるのよ。戦災であんなひどい目に遭っていながら、いまだに家柄だの血筋だの狭い範囲の中で誇りを持ちたいのね。私、だんだん自分の育ってきた環境が嫌になってきたわ。父や母は何が不満で学生運動なんかに熱中するんだって言いますけどね」

洋二「君は偉いよ。とにかくこんな下宿に引っ越しちゃって、うちの仕送りなしにアルバイトでやっていこうというんだから」

トシ「いけるかどうかまだ分からないわ」

洋二「いけるさ、君なら」

トシ「とにかく頑張ってみるつもりよ」

 

洋二「だけどね、ちょっと心配なんだよ」

トシ「何が?」

洋二「僕は28にもなっておやじのすねっかじりだろ」

トシ「そんなこといいのよ。それができる人はそれだっていいのよ」

洋二「頼りないよ。やっぱり男としては」

トシ「私はちっともそうは思わないわ。あなたにはあなたにしかできない才能があるんですもの」

洋二「ウサギやタヌキの絵を描いてる才能がね」

トシ「私は好きよ、そういうあなたが。きっと世の中に認められるときがあるわ」

洋二「そうなればいいんだけど」

 

黄枝子もトシもキリッとした美人系。秋子も幸子もそう。かおるだけちょっと系統違うかな。

 

トシ「だけど、私なんかどうなっていくと思う? 結局、日本の大きな流れの中に泡粒みたいに消えていくだけだわ」

洋二「それでいいんだよ。だから純粋なんだよ、君たちの行動は」

トシ「それならいいんだけど、そうばっかりでもないような気がするの。日本っておかしな国ね。いいことと決まってる原水爆の禁止だってちゃんと3つに分裂してしまうんですものね。学生運動だってそうよ。本当に目指す目的が純粋なら、どうして派閥争いなんかが起こるんでしょう。例えばよ、あなたと私が幸せになるためには一体誰と手を結んで誰と戦えばいいのかしら」

洋二「水原君、それは君と僕の2人で戦っていくしかないよ」トシの手に自分の手を乗せる。

トシ「ダメよ、2人だけじゃどうしようもないわ」

 

武男のデレデレっぷりに比べるとこの2人の深刻さがちょっと怖いね。

 

ダイヤモンドプールのプールサイドでビーチチェアに座り、水着姿でコーラを飲んでいる秋子と神尾。

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↑ダイヤモンドプールってここだろうか?

 

神尾「あきれるよね、日本っていう国は。文学全集だけでも一体いくつぐらい出てんの?」

秋子「一体、どんな人が読むのかしら」

神尾「読むんじゃないんだよ。飾っとくんだよ」

秋子「このごろは洋風のうちが多くなったからアクセサリーに買うんでしょうね」

神尾「大抵、子供の勉強部屋は作るものね、教育ママが」

秋子「うちの会社でもそうだけど、売れてる本は大抵絵が入ってるの。それもいやらしい絵なの。気持ちが悪くって人前では読めないわ」

 

神尾「本は売れるけどさっぱり利口にならない。つまり本当には読んでないんだね」

秋子「文学も厚化粧した紙くずよね。あんなにたくさんの本をちゃんと読んでいられる暇な日本人がいるわけないわ」

神尾「だけど、外人が日本に来ると驚くんだよ。どうして昼間っからあんなたくさんな、それも働き盛りの人間がウヨウヨ歩いてるんだろうって」

秋子「驚かないのが不思議なくらいね」

神尾「変な国だよ」

秋子「何がなんだか分かんないわ」

 

神尾「そうそう、その何がなんだか分かんないで思い出したけど僕たちはいったいどうすればいいんだい?」

秋子「変なときに変なこと思い出すのね」

神尾「だってそうじゃないか。僕たちは少し慢性になっちゃったんじゃないの?」

秋子「何が?」

神尾「何がってさ、僕たちはつまり…つまり普通の話をしすぎるよ。つまり世間話じゃないか」

秋子「あら、そうかしら」

神尾「そうだよ、僕たちはもっと…」

 

プールで騒ぐ声に「うるさいやつらだな」といらだつ神尾。僕と君はいつ結婚できるんだよと迫る。秋子は今すぐは無理だとし、神尾は9月とか10月とかと焦りを見せる。

 

秋子が騒がしい集団が三郎、敬四郎、杉本、久代と気付き、笑って見ている。

神尾「あきれるよね、君のうちの連中には」

秋子「無邪気なのよ、天真爛漫なのよ」

神尾「結婚は無邪気ってわけにはいきませんからね」

 

恋人の家族の悪口は、やめた方がいいと思うぞ、神尾。

 

タクシーから降りた正子とイネ。2人ともフラフラだけど、正子のうちでの見直し。後ろに映る「清和荘」が正子のアパートかな。

 

台所

しょんぼりして歌を歌うお敏。

♪…のうて 夜逃げは つらか

また「…」のところは無音? 

 

この間イネが歌ってたのは

♪腰が痛うて 夜なべは つらか だった。

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なぜかイネが飲みすぎたことで、お敏が怒鳴られたのかな? 寝ていたと思っていた亀次郎を愛子が呼び、そのまま台所へ現れた。

 

亀次郎「バカ者! 人をさんざん怒鳴ったあとですぐに寝られるか。お敏だって泣いてるかと思うと気がとがめますよ!」とすぐ出ていった。

 

夏の雷はカラッとしていると慰める愛子だったが、すぐまた「愛子、愛子、愛子!」と大声で亀次郎が叫んでいる。愛子が出ていくと、お敏の怒り顔でつづく。

 

今日は放送禁止用語連発で無音シーンが多かった。最初に注釈を入れて流してほしいものだけど、ダメなのかなあ? イネさんがこれからお手伝いさんに定着するならまだまだそんなシーンが増えそうだと思ってしまう。

 

結局堀部長は妻と別れて浮気相手と結婚するつもりなのか? いい年してなんだかね。